管理人: 2006年8月アーカイブ

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 多摩地区のすし屋には何種類かの系統がある。その1が八王子「鮨忠」、「浜寿司」のように地元のすし屋ののれん分け、その2が八王子「寿司富」、八王子「誠寿し」のように都心のすし屋で修業したり、渡り職人(この系統の人たちには寿司職人としても達人と呼ばれる人が多い)から店を構えたもの。これに加えるに八王子でも土着の人たち、すなわち地の人たちの住む地域で店を構えたものと市街地に店を構えているすし屋でもかなり違いが出てくるのだという。「地」に店を構えているすし屋は当然寄り合いや祝儀不祝儀も多く、握りも八王子らしく甘いものなのだろうか、また出前が主体だろうから今イチ洗練されていないのかもしれない。でも実際はいかがなものだろう。常々、この「地」のすし屋を覗いて見たかったのだ。でもなかなか、その住宅地のすし屋に入るのは勇気がいる。

 そんなときに声をかけてくれたのが「誠寿し」さんである。「誠寿し」町田誠さんは上野の「花寿司」で修業した後に生まれ故郷川口すなわち「地」に店を構えている。だから、お客のほとんどが地元の人たちである。

 そんなことで秋山街道がいちばん渋滞する土曜日に川口に向かう。秋川街道は元本郷、中野、楢原ときて川口に来る。八王子から続く住宅地もここまで。その川口の入り口を秋川街道からひとつ奥まったところに「誠寿し」はある。住宅地のすし屋ということで民芸品などで田舎臭い造りかと思っていたら、とても落ち着きがある店構えである。その上、店内も清潔で居心地がいいのだ。

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「誠寿し」町田誠さんは奥さんともども待ち受けていてくれた。
 そこでいろいろ修業時代の事を聞いたり、寿司に関するこだわりなどを聞かせてもらった。そのどれもがなかなかに面白く、我がデータベースにも生かせるものばかり。
 そして実際に握ってもらったら、なかなか都心であっても恥ずかしくない洗練されたもの。なかでも穴子の握りは絶品である。煮穴子をかるく温めて、小振りな握りに。穴子は甘く香り立ち、口に入れるとホロリと崩れる。そこに甘味控えめのすし飯がくるのだが、これが絶妙だ。

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町田さんご夫婦自慢の信楽の器にのせて撮影してきた。

「誠寿し」さんの上野での修業時代のことから、生まれ故郷に帰りついてからのことなど、「市場人の歴史」で折々に寿司の基本知識として取り上げていきたいと思っている。またお近くに来られた方は「並1000円」からという手軽な値段なので「誠寿し」の江戸前握りをお試し願いたい。


誠寿し 東京都八王子市川口町1753-6  042-654-2355


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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 東北岩手から北海道、オホーツクの浅いアマモ場などに棲息する小型のタラバエビ科のエビである。ホッカイエビと言ってもまず知る人はなく、一般には「北海しまえび」として記憶されている。
 産地としては厚岸湖、野付半島、サロマ湖など。野付半島尾だい沼などでの夏の風物詩打たせ網と共に観光資源としても重要なものである。
 産地では特産品としての意味合いから値段が高いものだが、流通の場にあるとその価値はじゃっかん低くなる。この点、中央市場などで取り扱うときには「特産品」としてしっかりした説明が必要だろう。

 野付半島尾での打たせ網は豊かなアマモ場を保全しながら営まれている。帆走する船での底引き網は全国でも希少なもので自然と漁業とのバランスからしてとても貴重な財産となっていると思われる。すなわち古くは漁業自体が自然の営みに優しいものであったはずであり、漁業者がいちばん自然保護の役割を果たす。今、各地で漁師さんによる自然保護や回復の運動がなされているがその嚆矢として注目したい。また漁としてはより自然に優しいカゴ漁もあるが、打たせ網という伝統漁法自体もかけがえのないものだと思われる。流通の場でこれら浅海の貴重な資源を取り扱うときにはこのようなことも肝に銘じておくべきだとおもわれる。

 さて、このホッカイエビは生ではほとんどお目にかかれない。流通しないのである。ただ唯一、手にはいるのは初夏にスナエビなどとともに混ざって入荷してくるもの。ここで丁寧に選別すると20匹前後は簡単に見つかる。この生は残念ながら甘味が薄く、近縁の甘エビ(ホッコクアカエビ)などと比べると数段落ちる。それに比べると塩ゆでは絶品である。ぐんと甘味も旨味も増してホロっとした食感と共に名状しがたい。野津半島、サロマ湖などから茹でて冷凍したものが入荷してくる。これは産地でまだ生きているものを塩ゆでしたもの。確かにこれも捨てがたいが、茹でたてがいちばんうまい。できたら鮮魚として流通して関東でも茹でたてが食べられるとなると魅力的なのではないか?

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市場魚貝類図鑑のホッカイエビへ
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じょじょに未整理の呼び名を整理し、「魚貝類の呼び名・方言」のページを改訂しました。
我がサイトでは全国の魚貝類の呼び名・方言の情報を求めています。
その場合、情報提供者のある程度の略歴、また生物をしっかり同定できているかどうかなどを提示していただいています。もしそのお願いを了承して頂ける方がいらっしゃいましたらお願いします。
http://www.zukan-bouz.com/zkanb/hougen/hougenmokuji.html


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カジカ科を改訂

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クシカジカモドキのページを作成
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カマキリ(アユカケ)のページを作成
http://www.zukan-bouz.com/kasago/kajika/kajika/kamakiri.html


掲載種 1779


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 起きたのはいいのだけれど、考えてみると眠ったのだろうか? 時刻は6時過ぎ、布団にもぐり込んだのが4時半過ぎなのだ。それでも意外なことに体調はすこぶるつきにいい。
 大急ぎで鹿児島県笠沙の、わかしおさんにもらった醤油でタレを作る。これをペットに詰め込んで八王子綜合卸売センターに向かう。今回は八王子魚市場には寄れないのだ。
「平成食品」に飛び込んで「豚肉の薩摩しょうゆ漬け」を作る。それから「市場寿司 たか」で朝ご飯と寿司図鑑用のオニカサゴの握りを撮影。まだ7時前だというのに店は満員御礼。

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 もう一度、「平成食品」にもどって「薩摩しょうゆ漬け」を店頭に並べる。隣の「フレッシュフード福泉」で久しぶりに八王子横山町の魚屋「天野商店」の社長に会う。
「お久しぶりですね」

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「おお、生きていたか。長いこと会わないと死んだのかと思ったよ」
「それはこっちの言うせりふってヤツ」
 日焼けして健康そうに見える。


 そこへ松ちゃん(八王子のそば屋「松あさ」)がボクを見つけるや、
「やっぱりいたよ。イワナ、イワナ、おいでよ」
 イワナをくれるんだなと、のこのこ付いていく。そしてクルマの荷台には40センチオーバーのイワナがドデンといるのである。当然、「早くくれよ」と思って我慢して自慢話を聞いていると、ばたんとクーラーを締めてしまう。

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「な〜んだ、くれないの」
「そうだよ。それでさ、昨日は粘ってね。小さいのはいっぱい釣れたんだけど。川のもっと、奥の、意外に浅い場所に入れたらコイツがきたわけよ。これ取り込むの大変だったの」
 なんだ自慢話の聞き損かよ、と思っていたら
「来週、鮎釣りだから釣れたらあげるから」
 だと言うことで大急ぎで逃げる。

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八王子綜合卸売センター「高野水産」は大混雑、大繁盛

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八王子綜合卸売センター「ビックリ屋(八百屋)」の名物である大行列

 八王子総合卸売協同組合「やまぎし」でマイワシ1キロ、八王子綜合卸売センター「大商ミート」で豚ロース豚カツ用8枚、「伸優」で相生本みりん1本を買う。「伸優」では東肥の「赤酒」の小瓶をくれる。

「大商ミート」で豚ロースを真剣に選んでいたら、
「どこがうまいと思う」
「ここだ」
 ロースの頭に近い方を指さすと、
「ブブー」
 まったく外見的には変わらないのを持って
「ここが正解でした」
 これはまったくボクにはわからない。

 帰宅は9時前。シャワーを浴びて新聞を読んでいたらいつの間にか深い眠りに落ちていた。目覚めたのが1時前。慌ただしく服を着替えて八王子川口の「誠寿し」に向かう。秋山街道は電気店や有名回転寿司などが多く、思ったよりも渋滞していて、川口に着いたのが2時。たっぷり握りをご馳走になり、コーヒーまでいただいて失礼したのが4時のこと。

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 同じく川口の「豆腐工房 三河屋」で柚豆腐、木綿豆腐、おからを買い、帰宅は5時半。
 6時半まで画像の整理。
 夕食にトンカツを揚げて、マイワシのなめろうを作る。焼きナス、ツルムラサキのお浸しで、ボクの晩酌は「庭の鶯」。このトンカツの味わいだが、うまいのかうまくないのか? ぜんぜんわからなかった。なぜなら揚げ終わったときには一切れも残っていなかったからだ。
 8時には前後不覚となる。疲れ果てた。


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 朝方は曇りでほっと一息。八王子魚市場場内に入ってもやや落ち着きを感じる。

 鈴木さんのところには噴火湾から「真つぶ」と書かれてエゾボラモドキ。これは単に澤田水産の誤りだろうか、これがキロ/1100円。

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 近海にはサンマが壁を作っている。どうも大型船のものであるよう。1本100円から200円。これくらいで値段が推移すると漁師さんも困らないだろう。

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 また片隅に今年も大阪湾から「ベッコウシジミ」、そして愛知県弥富市木曽川からもシジミ(ヤマトシジミ)。

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 特種には北海道羽幌から「しまえび(モロトゲアカエビ)」。これがキロ5500円であり、1匹35グラムだから約190円。いい値段だがうまいのだ。

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『源七』ではあんちゃんがにし(アカニシ)を茹でて貝殻から出している。「あんちゃんの茹でたにしはうまい」と言うと一個くれた。

 八王子綜合卸売センターにまわる。「高野水産」には噴火湾から大量の小ハタハタ。大分県「丸昌水産」からメイチダイ。

 八王子総合卸売協同組合「丸幸水産」に根室から「真つぶ」に混ざってクリイロエゾボラ。
 八王子総合卸売協同組合「恒川」でバナナを買うべきか悩むもやめる。どうも最近の子供はバナナが食べたいと思わないらしい。ちなみに「恒川」では大きな室を持っていて自家熟成をしている。

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 ミンミンゼミが鳴いている、アブラゼミも、そしてエンマコオロギも鳴いている。そして息苦しいほどに猛暑なのである。そんな八王子魚市場に入るとムッシュと寿司義さんがあらぬ方を見ている。保健所から来ているお姉さんがなかなか可愛らしいので「見とれてるの」ときくと持っている「温度計が便利だな」と言うことらしい。でも保健所のお姉さんの方にボクは惹かれるけどな。

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 ダイチャンのところには北海道から山のようにサンマが来ている。でも値段からすると23日に解禁になった大型サンマ漁船のものではないようだ。

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 鈴木さんのところには福井県小浜から大きなイワガキ。

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 八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」に立ち寄ると、たかさん老眼鏡をかけながら新子を下ろしている。この姿、なんともじじ臭い。

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 八王子総合卸売協同組合、「三恵包装」で500ミリリットルペットの水55円を4つ。「清水保商店」にはうまそうなオクライカがあったがなんだか買うまでにはいたらず。「やまぎし」の入り会いにメイチダイかタマメイチかわからないものが1本。これは購入。
 八王子綜合卸売センター「平成食品」で豚ロース冷凍肉を1キロ930円。「高野水産」に鹿児島県阿久根市松永水産からオニカサゴが来ていて1本購入。

 そろそろ帰ろうかなと思ったら、なんだか八王子総合卸売協同組合「河村青果」オジサンの漬けた梅干しが食べたくなって一個もらいに行く。これが酸っぱくてうまい。オジサンありがとう。

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 ついでに卵を2パック購入。八王子綜合卸売センター「伸優」で卵かけご飯のしょうゆを1本かうとオマケに昆布醤油をくれた。ありがとう。


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 東京湾に残された貴重な浅瀬・干潟である三番瀬では今でも海苔養殖が行われている。21世紀の現在にあって三番瀬から富津市まで、川崎から横須賀までの地域でとれる海苔が、まさに本場の江戸前海苔なのである。今回の「三番瀬 味付ばら乾し」は三番瀬でとれた江戸前生海苔を使って船橋の海苔養殖漁師が作った言うなればふりかけである。
 千葉県船橋市はアサリ、青柳(バカガイ)、カニ刺し網に巻き網船もあり、都市部にあってまだまだ漁業の盛んなところである。都心から1時間足らず、船橋の都市部から東京湾に向かい、海老川べりにあるのが船橋漁港。そのあたりを湊町というのであるが、古い市場があって、また路地のそこここでアサリや青柳を剥き、甘辛く炊きあげる女達の姿が見られる。そこを、おかずのスズキをぶら下げて家路に向かう老人が通り過ぎる。これ、本当に21世紀の光景だろうか? と疑いたくなるほどだ。
 そんな船橋では寒い時期になると養殖海苔の水揚げが始まる。三番瀬で刈り取った江戸前海苔を港でよく洗い、刻んで板海苔に乾す。これがまことにうまい。都心の江戸前、老舗のすし屋で、三番瀬の海苔しか使わないというところもあるくらいなのだ。そんな船橋の生海苔ではあるが板海苔原料にしたときに味には関係ないが、商品としては出せないというのがでてしまう。これを船橋湊町で味付けしてふりかけにしてみたのが「三番瀬 味付ばら乾し」であるという。
 ふりかけといっても、世間には海苔の風味・味わいの欠片もなく、調味料で誤魔化したものが多い。それが「三番瀬 味付ばら乾し」は海苔の香り味はそのままに、ゴマ油など海苔養殖業者が普段おかずとしている「あきない味つけ」がされて美味である。おつまみやお茶漬けにも向いているというが、ボクは何と言っても炊きたてのご飯にのせて食べたい。ワッシワッシとご飯とともにかき込んで、海苔の旨味、ゴマ油の風味、そこに一味唐辛子のピリがきて、「これ以上太ったら船橋漁協のせいだ」と言いたい気分だ。
 これは余談だが、この「三番瀬 味付ばら乾し」は商品名としては面白みがない。どうせなら船橋漁協の宣伝も兼ねて「江戸前船橋漁師町・三番瀬のり漁師のばかうまふりかけ」とでもしたら面白そうだ。
●八王子魚市場内「源七」

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●問い合わせ/船橋市湊町1の24の6 電話047-431-2041


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 夏バテだ。これではやっぱりタウリンたっぷりのマダコを食わなきゃだめだろう。しかも本場、千葉県富津産。これを生きて居るまま半分に切って、知り合いのすし屋と分けて、大急ぎで市場から帰り着く。そしてせっせと塩もみ。これがかれこれ30分近くかかる。これを番茶なんて無駄なものを入れない熱湯で茹でること2分弱。そのまま自然に冷やす。
 この茹でたてを家人が横合いから切り取っては食っているのが、見ていて我慢できない。と、思い切って足を一本囓る。ついでに缶ビールを空けてクイ、クイ。摂氏33度、全身汗びっしょり、そのカラカラの喉に程良い塩味のたこ足、そして冷たい〜いビール。
 まあ詳しく書いても仕方がない。ただ真夏のタコはうまいぞー。

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市場魚貝類図鑑のマダコへ
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 予め断っておきたいのは、我がブログで「うまい、まずい」を書くときはほとんどが自前で購入しているのだけれど、今回はマルハラフーズさんからいただいたものであると言うこと。いただきものにしっかりした評価ができるだろうか、ちょっと不安だが思ったことを記していく。
 まずマルハラフーズからいただいた「まかない干し」という商品である。これは国産のサバとサンマを使い、しょうゆ、砂糖、米発酵調味料、純米酒、ニンニク、味噌で味つけしたものである。実を言うとこの複雑な味つけで、どんなものが出来上がるのか皆目見当がつかないが、タレとしてみると非常にいい取り合わせである。しかもここには旨味調味料も色素などはまったく使われていない。その点でも子だくさんの我が家では安心できる商品である。
 送られて来たときは冷凍状態である。これに関してはカネマル笹市からも教わったことだけど、干物は冷凍流通しても品質の劣化は皆無なのだ。それを室温で解凍して慎重に焼く。焼き上がったものを食卓で熱いままにご飯のおかずにする。まず、甘味が先に来て醤油や味噌の風味が来る。この味わいが複雑であるのに驚く。その複雑さがバランスがとれているためにくどさには繋がっていない。むしろ食べやすいのだろうか、家人と子供が驚くほどの勢いでむさぼり、2枚があっという間になくなる。その皮までむしゃむしゃ食べて思うに、酒と味噌の発酵してできた旨味が複雑さを呼んでいるのだが、決してサバの旨味を消し去っていない。塩分濃度はそのまま食べるとやや高めだけれど、ご飯に合わせるとちょうどいい。サバの身は箸でほどよくほぐれるのだけれど、これをご飯にのせて咀嚼するといくらでも喉を通りそうだ。
 また、これは酒の肴にも向いている。ただしボクが本日、嗜んだのは二階堂麦焼酎である。ここで製造者の方には申し訳ないが、ほんの少し七味唐辛子をふらせていただいた。我が家の七味は浅草の薬研堀でやや山椒を多めに配合してもらったもの。これがとてもよかったのである。常々思うのだが、干物に山椒や七味唐辛子がとても合うのだ。他には塩サバにはコショウ。干物の販売にこれらの小袋が付いていると面白いだろうなと思うことがある。
 この商品が「漁師まかない干し」であるのは、毎日魚を食べる生活にあって「漁師が食い飽きない味わい」としてまかないに造るものと言う意味だろう。当然、沖合で暮らすサバ巻き網の漁師さんなど、端的に「うまいもの」を作り出さないと日々暮らせないだろうから、このような複雑な味つけの原型が生まれるというのもわかる。
 また姉妹品にサンマを使ったものがある。ここでは細かいことは省くがこれも絶品である。同社の「さんまソフトみりん干し」よりもさっぱりしていて酒の肴にも出来る。ちなみに我が家ではボク以外には「さんまソフトみりん干し」も好評であったことを明記しておく。
 味わいには文句なしなんだが、商品名はこれでいいのだろうか? 「さば漁師まかない干し」はとても説明的でわかりやすいのだが、ある意味特徴がない。例えば銚子は「漁師の交差点」のようなところ。もっと銚子の名を活かしてもいいのではないか、そしてもっと短いネーミング。でも実際に名前を考えるといろいろ難しいんだなと思い知る。「黒潮干し」「漁師干し」「船暮らし漁師干し」「かしき流」、考えれば考えるほどろくな名前が出てこない。結局名前もこれでいいのだろう「さば漁師まかない干し」。

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マルハラフーズ
http://www.maruhara-f.com/index.html


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 今年はなんだか慌ただしくて「春日子」を作れないでいた。そうこうする内に産卵間近になり、真子でふくれたチダイが目に付いてくる。それでも間に合うだろうかと市場で丁寧に三枚おろしにして酢で締める。これが例えるべくもないうまさ。
 チダイは関東では「花鯛(はなだい)」と呼ばれている。これはチダイの色合いが桜の花びらに似ていることから来たのではないか? まことに華奢な、清楚な姿の魚である。
 小鯛というと関東ではチダイとマダイ、キダイがともに入荷してくる。これがともに「春日子」の材料となるのであるが、間違いなくチダイがいちばんうまい。このチダイがうまい最大の理由は皮が軟らかいことである。その上、身もマダイと比べると水分が多く軟らかい。これが酢締めにすることで驚くべき美味にかわるのだがら不思議だ。
 チダイの春日子の旬は初夏から初秋。この美味を逃さないようにしたいものである。

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市場魚貝類図鑑のチダイへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki2/taika/tidai.html


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 我が家の食卓に定期的に登場するのが青森市ヤマモト食品の「ねぶた漬け」である。これは数の子の入った松前漬けといったもの。これでどうして「ねぶた」なのかはまったく意味がわからないがネーミングは非常にうまい(商品名の大切さがぜんぜんわかっていないメーカーが多いのに驚きを感じている)。たぶん、青森に行くとこの名のために格好のお土産になるだろうし、また一度買うと、なかなか味がいいので、また買ってしまうかも知れない。名前からしてローカルな食品だろうと思っていたら、市場の惣菜などを扱う仲卸では定番商品のひとつなのである。
 関東のスーパーなどでもけっして珍しいものではない。当然、桃屋の瓶詰めを買うと同じように家人もこれを求めてきて冷蔵庫に入れている。このように地方の加工食品が全国的に受け入れられるのも、商品名のよさにあると思う。これが「数の子入り松前漬け」だったとしても絶対に全国に行き渡ることはなかっただろう。その上、売値300円前後で70グラム2パックが切り離せて、一回で食べきれるサイズなのも一般家庭にとっては使い勝手がいい。このパッケージもスーパーなどが受け入れやすかった理由だと思う。
 さて、この昆布の粘りが大根やキュウリ、スルメをからめて、その味つけはやや甘口の醤油味。味覚的には純然たる松前漬けである。ここに数の子のコリっとした食感とコクが来るが、確かにこの組み合わせは絶妙である。ただしついつい先に数の子のみ食べてしまうきらいはある。またボクの好みからするに酒の肴ではなく、むしろご飯の友である。このパッケージを見ただけでご飯の用意がしたくなる。家族も同様であるのは、これがあるとお釜が空っぽになることからも明らかだ。
 
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ヤマモト食品 青森県青森市野内浦島56-1


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 暑い日が続いている。こんなときにはお茶漬けがいちばんなのだけれど、お新などでサラリサラリと茶漬けをかき込んでいるとこんどは栄養面で問題が出てくる。夏バテを助長する。こんなときにぜひお試し願いたいのがマアジの開きのお茶漬けである。
 用意するものは少なく、出来るだけいい鰺の開き、熱湯、三つ葉などとワサビである。ワサビは粉でもチューブでもなんでもいい。
 作り方はまずこがさないようにコンガリと開きを焼く。焼いたら手で身と骨・皮・頭などを分ける。この身をご飯にのせて、方や片口の器などを用意。そこに骨や頭や皮などを入れて熱湯を注ぐ。ここで味をみて塩味が足りなかったら一振り。するとこれがいい出汁の出たつゆとなる。これをご飯に回しかけ、三つ葉を散らしてワサビを薬味にする。
 このお茶漬けは我が家の定番のもの。いつも手頃なものでやっていたら、ある日沼津のカネマル笹市からマアジの開きが送られてきた。原料は国産、壱岐周辺のもの。焼いて食べると脂がのっていて、その脂の甘く上品に口中で溶けて行くに泡雪のごとく。あとに鰺の旨味が残りこれはまさに絶品。これを使ってお茶漬けというのは贅沢すぎるかも知れない、と思いながら禁断の果実を囓るがごとくやってみた。困ったことに、あっという間に2合半、食べたのは我が家の子供達。
「もっと食べたいよ」といっても開きはなく、ボクももっと食べたいものだから、最後の一枚はこっそり数日後に楽しんだ。こんなうまいもの「子供達に食いつくされてなるものか!」。

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詳しい作り方はカネマル笹市へ
http://www.kanemarusasaichi.co.jp/index.html


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 朝方から既に猛暑の気配がある。八王子魚市場の駐車場に荷を乗せる人の背中がびっしょりと汗で濡れている。もう手の施しようのない暑さなんだとクルマを降りたとたんに熱気が全身にまとわりつく。
 場内は今日も荷が少ない。これでは職員がどんなにがんばっても、「どうしようもないっすよ」となる。
 青森県から下氷のスルメイカ。これが15入りで3500円と高い。でも身がはっていてうまそうだ。豆あじ(マアジの稚魚)も定置のサバもいつもは場内の隅っこに置かれているはずが、今日は主役となっている。
『源七』にも青森県三沢市漁協から下氷のスルメイカ。

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今日は青森産スルメイカが多かったのだ

 八王子綜合卸売センターに回ると駐車場が満杯に近い。八王子総合卸売協同組合に回り、『丸幸水産』にサンマがあって、1匹450円。

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これでもここ数日の値段からすると落ち着いたところ。この丸幸水産のサンマはいいものだ

 場内を奥に進み『清水保商店』に太田さんがぽつんと立っている。「おいおい」というので一枚撮影。

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 その奥には西八王子の『魚善』さん、並木町の『魚茂』さんが世間話をしている。八王子では人が仲の良きことを「善さん、茂さんの交わり」と言う。これは誠の話なのだ。

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 その『清水保商店』の前で山梨県秋山村の『一二三寿司』さんに会う。


 朝ご飯は『光陽』で他人丼。改めて驚いたのは豚肉が他人であること。

 八王子綜合卸売センター『高野水産』ではお千代と『千代寿司』さんが袋に氷を詰めている。『千代寿司』さんは今年65歳。

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 そこに八王子市川口の『誠寿し』さんが来てまたまた無駄話。あんまり暑いので肉屋の『平成食品』お茶の飲み、またまた無駄話に耽る。


 8時半に『高野水産』のクルマが帰ってくる。クルマから降りるなり、社長が「今日もダメだったよ。荷がない」と言う。しかし下ろす荷の量はやはり多く、また多彩である。

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 ここでショウサイフグ、甘エビ(ホッコクアカエビ)、富津の活けだこを買う。
 もう9時を過ぎて貝の荷が下りてきた。そこに白がい(サラガイ)があって、西八王子のフレンチレストラン『モンモランシー』さんが持っていく。モンさんの魚貝類を使ったフレンチは素晴らしいのだ。

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 ボクなんかのように怪しいオヤジは「こんなものに弱い(惹かれる)」というのが、多々ある。これはまだまだ多量の煩悩を捨て去れないで地上に蠢く有機交流電灯なのだから仕方がない。その煩悩の琴線に触れるものを見つけると「安い物なら」ついつい手が出てしまう。そしてそしてこれが食の世界にあっては「こんなものだ」と言うのが今回の焼きいかである。
 これは八王子綜合卸売センター『フレッシュフード福泉』で見つけたもの。その名もずばり「焼きいか若大将」。この名を思いついた『扇谷』の方、間違いなく40代後半以上だと思われる。当然、加山雄三の『若大将シリーズ』1961年からのファンなんだろうね? また、この奇抜な名前、意外に受けを狙っているようで、スルメイカの小さい商品価値のないものをうまく利用している。その両面からうまく攻めている賢い商品である。
 しかも食ってみると、実際に酒がすすむし、これまた子供達も横からかすめ取って行くくらいだから端的にうまいのだ。

 余談だが青森県というのは東北といういかにも奥の細道のまた果てにありながら、どこか熱帯にも勝るとも劣らない異端の熱気というか自己表現力が満ち満ちていると思う。三上寛、そして棟方志功、太宰治、高橋竹山、青森県出身のアーティストは凄い人ばかりだ。青森県人には水産物の世界にもど〜んと青森のパワーを活かして欲しいものだ。

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ヤマイチ扇谷 青森県むつ市大畑町鳥谷場178-2


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 お盆明けの市場はどないなっているのやろ? とわくわくしながら場内に入ると、鈴木さんなど鮮魚を扱う部署は「しーん」と閑古鳥が鳴く。どうしてだろう? と見るまでもない。荷がないのだ。
「売れちゃったの」と、ダイちゃんに聞こうかとして顔つきからして控える。そこに鈴木さんがのこのこ来て「このサンマ見てよ」と指さす先にあったのが2キロ12本入りで6500円の箱。「1本500円超えてるじゃない」。確かそろそろサンマの中型船が解禁である。解禁したら暴落するだろうサンマがこの時期にこんなに高値を付けるなんて驚くほかない。

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「昨日のサンマ船がやられたでしょ。あれが影響してるんじゃない」
 これは鈴木さん、明らかにハナサキガニの小型カゴ漁船が貝殻島の沖合で銃撃、拿捕されたことを誤解しているのだ。脇にある同じく北海道産の下氷のスルメイカも1ぱい190円であるから決して安くない。

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 八王子綜合卸売センターに回ると『ケン水産』では解凍サンマを1本70円で売っている。『ビックリ屋』は相変わらず混んでいるし、その先の『伸優』で立ち話。内房に遊びに行ってツチクジラの「たれ」を買ってきたという。
 八王子総合卸売協同組合には根室産のハナサキガニを置いている店がある。最盛期とは言え、小振りのもので1ぱい1500円は安すぎないだろうか? 昨日の事件でもわかるようにロシア海域近くでのカニカゴ漁は命がけなのである。これなど輸入ものがなければ倍はするはずだ。

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 安売りの『三恵包装』に立ち寄ると日南市伊比井の「中野商店」の「むかでのり」のみそ漬けが来ている。そして原料にキリンサイ。『三恵包装』の凄いところは、何気なくこんなものを置いてあることだ。


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 どうしてこんなものに惹かれるんだろうと仲卸で白地に赤い紅ショウガの蒲鉾を手にとって、自問自答しながらパッケージの裏側をみたら「揚げかまぼこ」とある。でもこれはどうみても揚げているようには見えない。なんだかへんな蒲鉾だ、と思い買って帰ってきた。
 もう一度裏側を見ると「いとよりだい、はもその他」とあり、色合いからしてそのまま食べるものなんだなと思ってワサビと醤油を添えて食卓に出した。その味わいは上品で軽い、そして魚の持つうまみも感じる。買うときに感じたように「揚げ」た重さがないのはどうしてだろう。また紅ショウガの意味合いはなんだろう。確かショウガの持つ成分は練り製品を硬くするもの。でも、じっさいにそんなことは気にならなかった。それより色合いの割に紅ショウガの味というか苦みなどが感じられないで肩すかしを食ったようであった。でも、これはとにかくうまい。
 とにかく好きな味わいであるが、この蒲鉾、ボクが10年前なら買っていただろうか? 否である。どうも食に関して変に潔癖というか本物志向に走ってしまうのが30代から40代で、そんなに煩わしく「食い物」のことを考えなくていいよ、とアドバイスしてくれる人は皆無だった。そしてこの食に対して無駄に鋭角的な時代というのは多くの人が経験していそうである。この食にこだわるという一見無意味な時間を経てボクの場合、食べ物に適度に遊べるようになってきた。たぶん、定年退職をしたり、またある年齢に達すると多くの人が同じように「食の世界で遊べるようになる」。すると、この「ヤマサ蒲鉾」の紅ショウガがくっきり赤い模様となっている蒲鉾なども「たまには買ってみたい」ものとなるはずだ。
 なぜだろう、人間にはこのようなキッチュなものに惹かれる部分があり、それを適度に解放しないといけないのだ。そうしないと朗らかで、また冒険的で、開拓的な人生が送れない。
 閑話休題。
 この紅ショウガの縞模様くっきりの白い蒲鉾は食料品店では主役ではない。でも、どうにもこの手の商品がないと高品格を欠いた日活映画のようだ。「ヤマサ蒲鉾」というメーカーは極上の鱧や穴子を使った蒲鉾も作っている。そんななか、このような一見キッチュな製品も作るとはさすがに関西のメーカーは凄いのだ。
 最後に「ヤマサ蒲鉾」のサイトを見て思ったことなのだが、ボクなど四国でも関東で言うところの「薩摩揚げ」は「天ぷら」と言っていた。それがいつの間にか「天ぷら」というのを「薩摩揚げ」と呼ぶようになってしまっている。いったい今でも四国では「天ぷら」なのだろうか? 前回、大阪に行った限りでは鶴橋でも野田の市場でも「天ぷら」である。和歌山でもそうだった。この「天ぷら」と呼ぶ地域も気に掛かるな。

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ヤマサ蒲鉾 兵庫県姫路市夢前町置本327-16
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 魚の塩焼きというのは一般家庭でもっとも作れない、作るに困難なものではないかと思う。例えばガス台の真ん中にある魚を焼くスペースだがあれは下に水を入れるためにやや蒸されてしまう。また別に電熱方式のものもあるが、やはりガス代の上に魚焼きの網をのせて作るものよりも劣る。そしてマンションではこれが無理なのである。我が家でも煙が気になって干物を焦げないように注意をはらいながら焼く程度。後は夜になるのを待って炭火でこそこそと魚を焼く。
 当然水産加工品にも「塩焼き」があるのだろうと探したらすぐに見つかった。「東仙」というメーカーのもの。仲卸にきくと高級な干物を作るメーカーであり、味には定評があるというので、じっくり中身を見ないで買ってしまった。仲卸価格から考えると350円から400円くらいするのだろうか。
 そして帰ってじっくり見るとノルウェーニシンのオスの焼き物であった。値段からしてもメスを使えないだろうし、身自体の味わいはオスの方が上。
 裏側に「不要ですが、電子レンジなどで温めると、より一層美味しく召し上がれます」と書かれているのをみて、まず最初にそのまま食べてみる。これは確かにニシンの身の旨味・風味は感じられるものの、硬く締まりすぎている。そこで電子レンジで1分半ほど温める。確かにこれで「一層美味しい」くなった。でもこれが好きかと言われると「ノー」である。
 塩焼きを買ったつもりであったのでより落差を感じたのかも知れないが、とってつけたような味つけがしているのだ。ちなみにノルウェーニシンの「塩にしん」をただ焼いたものは非常にうまい。国産に限るなんて言うのはおかしいのだ。この味わいに家人など「魚が嫌いな人には、この方がいいんじゃない」と言う。でも最近の子供などを見ていると塩焼きは意外に好まれている。それからするとニシンの表面にある醤油や味醂、砂糖の甘味・旨味って本当に必要だろうか? 晩酌の肴に食べていたボクはこのはっきりしないニシン表面の味つけが邪魔でしかたない。
「東仙」のホームページを見ていると(表紙はマックなので見ることが出来ない)サバやニシン、赤魚もあるようなのだが、赤魚などはこの味つけでいいかも知れない。こんどは赤魚を食べてみるかな。また最近なんでも「魚がし」とある商品が多い中、このメーカーは実際に築地に本拠地を持っている。これなら「築地魚がし」の文字も本物だ。

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東京仙印商店
http://www.tosen.co.jp/index.htm


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 昨日の「開市」をもってお盆休みとなった市場。月、火、水と寂しいけれど、激務をこなしてきた市場職員の方達にはしっかり身体を癒して欲しいものである。さてそんな日曜、思ったよりも人出が少なく、寂しい「開市」であった。そして朝ご飯は久しぶりに『市場寿司 たか』にしたのだ。
 時刻は7時過ぎ、先客はふたりだけで「思ったよりも暇かもしれないね」とたかさんが呟く。
「じゃあ、豪海投げ込み丼大盛りにすっかな」
「あいよ」
 と出てきたのが超大盛り豪海投げ込み丼なのだ。これがしみじみ腹減りの朝にうまい。
「もっと値上げしてもいいんじゃないかな」
「いいよ(ノーということ)」
「700円とか、800円とか。朝とはいえ500円は安すぎるよ」
注/早朝6時半から8時半までは500円、11時の昼の開店からは600円
「いいんだって。深夜から働いて市場の人も大変だろ。オレのところで朝飯を毎日食っていくヤツもいるんだから」
「たかさん、お盆明けにもよろしく」

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八王子の市場のことは
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 市場で見かける甘エビといえば普通、本家本元の「甘えび」、「ぼたんえび」、「縞えび(しまえび)」の3種である。「甘えび」は言わずと知れたホッコクアカエビ、「ぼたんえび」はトヤマエビ、そして「縞えび」がモロトゲアカエビである。ホッコクアカエビ、トヤマエビが今では輸入冷凍物ものも多く寿司ネタなどの定番となっているのに対して、本種は入荷量が少なく、総てが鮮魚としての入荷、より「特種」なネタと言えそうだ。
 産地は北海道の日本海側、この周辺でトヤマエビなどのカゴ漁に混ざってとれる。北海道以外の日本海側でとれる量は少なく、市場では希に見かける程度である。入荷の時期は真夏と厳寒の時期は少なく、春から初夏にかけてやや多い。
 値段は高く、安値でキロ当たり卸値で2000円、高いと10000円前後になる。
 甘味は甘エビほど強くなく、粘液質のうまみを膨らませるアミノ酸も少ないようでどこか軽い。その分、プリっとした食感があり、味の余韻がとてもいい。個人的にはこのタラバエビ科3種ではもっとも好きなもの。
 寿司ネタにしてもむき身にしたとき表面の赤い縞模様が残って美しい。当然、刺身にしても色合いの美しさ、味の良さから魅力的な素材だと言える。
 そう言えば、最近のすし屋、料理店などでは市場に買い出しに出てこないというのも珍しくない。いまどき電話一本で仕入れはすんでしまう。そうすると当たり前だがネタがマンネリ化してしまう。市場の仲卸で聞いていても「白身はカンパチ、エビは甘えび、イカは……」なんてやりとりが日常茶飯事だ。これではついつい入荷量が少ないエビに目がいかないということになる。すなわちすし屋のネタケースにモロトゲアカエビなどがある店というのは、こまめに市場通いしている可能性が高い。

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画像は新潟県能生町。佐渡周辺でのホッコクアカエビに混ざってとれたもの

市場魚貝類図鑑のモロトゲアカエビへ
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 これは我が家では定番的な「こまったときのおかず」なのである。値段は小売りで500円以上するのではないかと思うのでちょっと贅沢なのだが、なにしろ電子レンジに2分、パッケージのまま入れることですぐに食卓に出せる。また、甘味も抑えめにしかもマグロの味わいも残して上手に作り上げられているのだ。
 当然、お総菜的なものではあるが酒の肴にもいい。お父さんは晩酌、子供達はこれでご飯と使い分けて、今時の忙しい家庭にお勧めしたい。

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〒:421-0203 住所:大井川町藤守2293-17


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 ウニの旬はやはり夏だろう。そんな真夏の市場に思い出したように入荷してくるのが岩手県宮古のキタムラサキウニである。
「これ、ハズレがなくていいんだよ」
 貝やウニを担当している八王子魚市場の鈴木さんがぽつりともらす。と同時に勝手に試食していくボクへの警戒を怠らないのはさすがだ。宮古からウニが届くと鈴木さんが見本の殻を剥く、そのことごとくを試食している犯人が何を隠そうボクなのだ。まあ、それほど三陸のキタムラサキウニはうまいのだ。
 と鈴木さんがあっちを向いたとたんにたっぷり1個分食べました。ごちそうさま、鈴木さん。

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市場魚貝類図鑑のキタムラサキウニへ
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 さて、今回のシーフードショーで声をかけていただいたのが「長崎県漁連」さんである。思い切った鮮魚の展示で豊かな長崎の海を表現、また多彩な加工品にも目を奪われた。
 長崎と言えば壱岐、五島、対馬のアジ、また鮮魚を見る限り予想以上に高級魚が揃っている。これをいかに県ぐるみで「銘柄化」していくかが課題かも知れない。魚種を考えると大分県や四国の愛媛県にもひけはとらないだろうし、またマアジの質は日本一なのだ。
 また、今回「長崎県漁連」の方達とお話ししていて、その和気あいあいとした雰囲気の中にもいかに県の水産物を売り込むか? の意気込みを感じた。まあ、ネットでの情報も満載である。長崎の水産物の世界をご覧いただきたい。

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ながさきぎょれん
http://www.jf-net.ne.jp/nsgyoren/


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アシロ目を改訂

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アシロ目を改訂
イトヒキイタチウオのページを作成
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掲載種 1777種


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 銚子以北、北海道からベーリング海まで主に太平洋側に棲息しているとある。ただ未だ本州産のものは見ていない。市場でみかける多くは日高支庁から厚岸まで、そしてオホーツク海のもの。貝殻が厚く硬く、「岩つぶ」と呼ぶ地方もあるくらいである。触ると石のような感触。
 市場では比較的よく見かけるもの。そしてもっぱらBつぶとして扱われる。貝殻が厚いので割るには面倒だし、穴をあけるのも厄介、同然歩留まりも悪いので人気がない。値段はキロ当たり1000円前後から2500円くらいまで。2000円を超ることはまずない。
 味は刺身にして甘味があり、コリコリっとした食感も楽しめる。ただし身の色合いが黄色っぽいのが、うまそうな色合いとは思えないようで残念ではある。
 すなわち、これも手間を惜しまず貝殻つきの姿造りにすると立派で見栄えがいい。その上、味もよくて値段も安いのでお買い得なものである。

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市場魚貝類図鑑のアツエゾボラへ
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 ある日、市場で「チーかま」というのを見つけた。「チー」はチーズ、「かま」は蒲鉾くらいはわかる。でも初めてじゃないだろうか、この食品。まじまじと見ていると通りがかったのが納め専門の魚屋をやっている青ちゃん。
「な〜に見てるの。なんだチーかまか?」
「これ知ってるの」
「なにを言ってんだよ、チーかまだろ、チーかま。子供の頃からあるでしょ」
 そこへすし屋の若だんながきて、
「懐かしいな。弁当にはコレですよ」
 なんと一箱買っていった。
 パッケージを見ると「チーズ入りかまぼこ」とある。弁当にチーズを穴に詰め込んだ竹輪はあったけどこんなものは初めて見た。でも「ちーかま」という言葉は「ちーちく」とともによく聞くのだ。
 まあとにかく買って帰り、じっくり晩酌に囓ってみた。「う〜ん、微妙な味だな」。うまいのかうまくないのかと聞かれると「うまいのかな」。甘めの蒲鉾にチーズが点々とあり、確かにチーズの香りがあるし、また乳製品の匂いも感じる。これは日本酒よりも酎ハイやビールに合いそうだ。
 マルゼンのサイトを見ると昭和43年に「おらが幸」という不思議な名称で売り出したとある。でも四国では食べていないし、売っていなかったと思うな。

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丸善
http://www.mrz.co.jp/products/che-kama.html


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富さん、昔がたり

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 八王子市上壱分方町といえば「まんじゅうまつり」で有名なお諏訪様のそば。そこに「寿司富」、富さんの店がある。この富さん、市場職員にいちばん慕われている。ときどき富さんを真ん中にして魚のおろし方や仕込みを職員が習っている光景が見られる。そんな我らが兄貴分、富さんの話が面白い。

 富さん、昭和17年新潟県生まれ。地元で修業して上京。都内を点々と渡りながらすし職人としての腕をみがいた。その大方の技術を教わったのも渡り職人からだったのだという。
 そして昭和30年代の終わり頃、流れて八王子市南町の『鮨忠本店』に来たのだ。そこで出合ったのが横川町さん(『鮨忠第二支店』)。その『鮨忠本店』には当時、横川町さん、元本郷さん(『鮨忠 第三支店』)がいて3人ですしを握っていた。そして一度やめて立川のすし屋に移っていた。
「毎日毎日店は忙しくってな。そしたらよ、ある日親方が、あいつ戻ってきてくれないかって、言うわけよ。それでオレはヤツの居場所をたまたま知ってたんで、呼びにやらされたわけだ。そんでなヤツが勤めていた立川のすし屋にいってさ、外からのぞいたらヤツがなかで握っている。正面から行って店に戻ってきてくれとも言えねえから。店の外に呼び出して『おまえ帰ってこないか』っていたら『うんうん』って言ったんだよな」
 横川町さんが当時を振り返る。

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「昔の八王子は賑やかだったよ。夜になると芸者さんがいっぱいいてさ。オレも芸者さんとの慰安旅行に行ったことがあるんだよ。楽しかったな」
「すしってその頃、いくらだったの(並寿司で)」
「忘れたな。オレらの昼飯は150円だったな。これは自分で払うの」
「昔は賄いがなかったわけ」
「いやカレーなんて賄いでくったものさ。でもな、ご飯はお代わり自由だけど、カレーはお玉いっぱいだけって決まってたの。当時、横川町の奥さんが働いていて飯をもってきてくれるんだけどおかずが足りねーの」
 この時代にはこんなことが普通であったんだという。
「そんなこんなでがんばって一日20本(2斗)握るのは大変だった。でも楽しかったね」

 昭和30年代の終わりから40年代までの八王子は繊維機織りもので好景気に沸いていた。そんな時代だからすし屋は握れば売れるという、そんな状況であったという。今時のすし屋が炊く米は小さな店で1本(2升)、大きな店で5本(1斗)もたけば客の入りは上々だという。それを1斗、2斗のすし飯をたった3人の寿司職人で握るんだから、今では考えられないほど過酷な労働であったようだ。
「でも、あの頃は当たり前に思えたな」
 これも横川町さん。

寿司富 東京都八王子市上壱分方町224-5


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寿司図鑑再開

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長い間休止していた「寿司図鑑」を再開しました。なにしろネタ切れになってしまっていて、手も足も出ないガメラ状態。まだまだ在庫は少量なのですが見切り発車します。


寿司図鑑へ
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 さて最後のマグロのワタ料理が煮込みである。食道、腸などとともに入っていたのが土佐で言うところの「ちちこ」すんわち心臓である。これを味噌で煮込む。これを永野廣さんの弁を借りると「モツなんかの煮込みに負けませんね。うまさでは。それにコレステロールなんかあまりないでしょ。まあ漁師は煮込みと言ったらこれです」。
 ワタはよく水洗い、心臓は適当に切って水に入れて血抜きをする。鍋に水を張り、酒、味噌、ショウガ一片を入れて、マグロのワタと心臓を投げ込む。ガスの火をつけて煮たってアクが出てきたら丁寧にとる。1時間も煮込めば出来上がりである。これほど簡単に、これほどうまい煮込みが出来るのも材料が新鮮だからだろう。
 沖合で今日もマグロと格闘しているであろう香美郡夜須町手結漁協所属の大力丸さん、土佐清水市土佐清水漁協所属の第18司丸さんには感謝。また送ってくれた永野さんにも感謝しなければいけない。
 これで飲(や)るのが焼酎の梅割。マグロのワタ煮込みには焼酎がまことに合うぜよ!

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土佐の廣丸へはここから!
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 土佐の漁師さんに教わったマグロのワタ料理第二弾は食道と腸の唐揚げである。
「そりゃね、夏のビールにはこれが最高ですよ。いくら作ってもすぐなくなります」。土佐の漁師・永野廣さんの話だけでも生つばごっくんである。
 ゆがいて汚れを落とした腸(ワタ)を小口から5ミリくらいに切り、高温で唐揚げにしたもの。下味をつけるよりも揚げてから塩コショウをした方がかりっと揚がるし、味つけも簡単である。
 これはビールの友に絶品! だ。表面は高温で揚げてカリッとしている。そして噛みしめると中からじわーっと旨味が出てくる。やめられない味とはこれを持って言うのだ。
 土佐の漁師はこれでビールを一ケースは飲めるぜよ!

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 高知県はカツオやマグロ漁の盛んなところ。マンガ『土佐の一本釣り』ではないが、黒潮にのり南へ北へ魚をもとめて船を家として戦っているわけだ。
 高知の味わいに詳しい浦戸湾のカニ漁師・永野廣さんに、そのマグロのワタが絶品なのだと教えていただき、その上新鮮極まりないワタを送ってもらった。

 このマグロのワタは香美郡夜須町手結漁協所属の大力丸、土佐清水市土佐清水漁協所属の第18司丸が比較的近海でとったメバチマグロ、クロマグロのもの。永野さん曰く、「遠洋のワタとはものが違いますからね」とのこと。そしてまず最初に教えてもらったのがワタを茹でて酢みそ食べるというもの。

 作り方は、今回のワタは沖で丁寧に汚れを落として新鮮なままに送られてきたもの。そのまま10分くらい湯がき、よく水洗いをして残っていた汚れと脂などを洗い流す。それを4ミリほどに小口から切り、酢みそを添える。

 これが絶品である。ワタはコリコリとした食感。そして噛むほどにジワリと旨味と甘さが浮かんでくる。しかも驚いたことにはこれが上品でクセのない味わいなのだ。これなら辛口の吟醸酒にも合いそうであるし、また麦焼酎などにもいい。
 カロリーも低そうだし、コラーゲンたっぷり。困るのは酒がすすみそうなことぐらいだな、これは。

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 福島県相馬市原釜は日本屈指の漁港である。底引き網あり、サケの定置もある、刺し網も、ミズダコのカゴ漁もある。ここで、困るのが食事である。原釜から松川浦にかけては言うなれば観光地なのだ。当然うまそうな飲食店も多いのだが、どれもが観光客目当ての店ばかり、それで賑やかな地域をさけて飛び込んだのが「おいかわ食堂」なのである。駐車場は奥にあって、そこには大型トラックが何台か止めてある。これは間違いなく地元の客を相手にしている素朴な店に違いないだろう。
 それで裏から店に入ると、店内の賑やかなこと、小上がりには長靴が並び仕事を終えたばかりの漁師さんが生ビールに豪快に飲み干している。
 その脇の隅っこ4人がけのテーブルに座り、品書きを見ると中華系の定食などがあるなか「アサリカレー」というのを見つけてお願いした。そして待つほどもなくやって来たのがやや色濃い目のライスカレーである。『カレーライスの誕生』(小菅桂子 講談社メチエ)を読んでいると昭和10年には各地でカレーが普及していき「ほっきカレー(福島)」「馬肉カレー」などが登場しているとある。当然、松川浦から原釜にかけてはほっき(ウバガイ)やアサリが豊富にとれたのだから「アサリカレー」が作られていてもおかしくない。
 そしていざ食うべよ、と目の前のカレーを見るに驚いた。アサリが殻付きでゴロゴロと入っている。そしてルーを味わってみるに確かにアサリらしい風味はあるものの強力なカレー風味に押されてほんの微かなものでしかない。カレー自体の味は決して悪いものではなく、そこに面倒かけますわ、と言って殻付きのアサリがあるだけなのだ。ご飯もやや大盛りでサラダ付き、まあ昼ご飯にはこんなものも面白いかも知れない。

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おいかわ食堂 福島県相馬市尾浜字追川186-1


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 日本海、太平洋では鹿島灘以北と生息域の広い刺身つぶ(Neptunea)である。エゾバイ科では真つぶ(エゾボラ)とともにもっとも大きくなるもの。
 市場では入荷の少ないものでまとまってくることはまずない。産地は主だって多いという地域はなく、とくにこれを珍重するのが新潟県である。他の地域では大きなものは別としてBつぶ(その他のつぶ)という評価しかない。当然、新潟県などでは高く、関東築地などで安い。特に太平洋側の福島などではエゾボラモドキと区別しないで出荷する。また、形態的には太平洋側、日本海側似ているのだが、味わい的には日本海からロシア海域までのものが上、また身の色合いも白く美しい。
 値段は新潟県など特産物としている県では高く、他の地域では低い。キロ当たり1000円くらいから大きなもので2500円くらいまでマチマチ。価格は安定しない。
 この、つぶの真価は新潟県人のみが知っていると言っていい。日本海でとれるものは甘味があり、身の色合いが美しい。当然、刺身の旨さは真つぶ(エゾボラ)に勝るとも劣らず。このつぶをBつぶとして扱うのはもったいない限りだ。

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日本海は鳥取県産

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福島県相馬市原釜産

市場魚貝類図鑑のチヂミエゾボラへ
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 市場の仲買に「おすすめの干物」を教えてもらっては買っている。そして最近、産地によって微妙な味の方向性があるのではないか? と思うようになった。そして銚子の干物であるが、やや甘味も旨味も濃いものが多い気がするのだ。それを山を行商している人に聞いたときにも、この銚子などからくる色合いの濃い「みりん干し(業者はいろいろ)」のことが話題となった。これがなかなか売れるのだという。
 そんなに人気なら買ってみようかと手にとって業者を見たら「マルハラフーズ」とある。実を言うとこのメーカーは名前だけは知っている。それだけなのだが製品に対するコメントは避けるべきかな? と考えた末の掲載である。
 さて市場ですすめてもらって買ってきたのが「さんまソフトみりん干し」である(これはたまたまあっただけだろう)。この味つけが濃いのだ。サンマは脂があって、そして旨味が強い。そこに味醂やしょうゆ、黒糖、酒に昆布、黒酢など複雑な味つけが加えている。このような味も色合いも濃いものを別名「さくら干し」とも言うらしいが、個人的にはおいしいと思えない。でもこれは個人的な嗜好かなと子供に食べさせたら、なかなか好評なのだ。また市場で焼いて食べても「好きだな」というのと「味が濃すぎてイヤだ」というのが二分してしまった。
 これだから食品加工の世界は奥が深いのだろう。ボクとしてはこれの「あっさり判」をつくってくれないかな、というのが正直な感想である。ちなみに世に言う「みりん干し」で「みりん」を使わないものも多い。それに比べて、本製品には厳選された調味料が使われているようだ。これなど企業の姿勢として好感がもてる。

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マルハラフーズ
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左から『鮨忠 第一元八支店』、『鮨忠第二支店』、『鮨忠 第三支店』さん。ボクは密かにお三方を『花の忠三トリオ』と呼んでいる

 八王子にあって『鮨忠』には支店が多いので営業する町の名前で呼ばれることが多い。『鮨忠第二支店』さんは「横川町」、『鮨忠 第三支店』さんは「元本郷」、『鮨忠 第一元八支店』さんは「元八王子」。以後、町の名でお話をすすめていく。
 このお三方のうち最年長なのが「横川町」さん、ひとつ年下が「元本郷」さん、「元八王子」さんはぐぐっと下がって60代である。この三方の凄いところは仕入れがまめであること、また煮いかなどの仕込みが未だに自宅でしっかりとされていること。またお三方とも現役であることなどである。

 そして今、このお三方にお聞きしているのが八王子での寿司屋の歴史である。
「横川町」さんは現役最年長、すし職人になった昭和25年は、まだ食料統制時代であった。このとき寿司を食べるには客は一合の米を持参、それに70円を加えて一人前のすしと交換していたのだ。そして昭和30年代の半ばまで、一人前の寿司は100円という時代が続いていた。このすしというのが今で言う並。今、八王子での並の値段が1000円から1600円なので、ちょうど10倍から15倍の価格となっているのだ。ちなみに長い間「上」とか「特上」なんてなかったそうでみな一様に「並」を食べていた時期の方が長かったわけだ。
 また八王子の市場も今は北野にあるが、昔は八王子駅に隣接していた。それが今の保健所のあるところに移転して、そして北野に移ってきているのだ。

 さて、折々にお聞きした『鮨忠話』、これまた折々に公開していきたい。


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 八王子ですし屋といったらとにかく多いのが『鮨忠』という店。これは八王子市南町の『鮨忠本店』からののれん分けした店。この『鮨忠』の中でも「横川町」、「元本郷」、「元八王子」のお三方には、寿司に関していろいろ教えてもらっている。
 土曜日教えてもらったのが青柳の仕込みである。
 八王子上壱分方町の『鮨富』さんから「青柳(バカガイ)を掃除して何も入れていない鍋に身の部分を入れて一握りの塩を加える。これを手でかき混ぜながら火にかけて、手を入れられなくなったら冷水に取る」というのを教えてもらった。これは『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんもこれに習っている。
 そして『鮨忠』さんたちのやり方であるが、むき身にしてワタを取り去った青柳を常温の塩水に入れる。これを火にかけて、かき混ぜながら温めていく。そして湯に手が入れられなくなって、青柳の身の色合いが程良く変わったら冷水に取るのだという。
 教えてもらったら、すぐやってみるのがボクの信条である。土曜日に八王子魚市場に残っていた北海道八雲町のバカガイを全部引き取りいざ挑戦。
「鈴木さん(八王子魚市場の貝などの担当)、ごっそり青柳もらって帰るぞ」
 カッコつけて言い放ってみたら。
「あと1キロしかないだろ」
 ニコニコ笑って2百円まけてくれる。あ・り・が・と!

1 むき身にして星(貝柱)、足とワタ、身にわける。

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身(足)の部分にワタが入っている。またこの時期、北海道のバカガイは産卵期なので、ワタと生殖腺を押し出すように取り去る

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ヒモなどはみそ汁や煮物に、貝柱は天ぷらに

2 鍋に身と塩を入れて水を加える。

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このとき水は透明で澄んでいる

3 火にかけて箸でかき混ぜながら時々水の温度を指で確かめる。

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火にかけると水が微かににごり、身が少しだけ締まる

4 どこか透明であった身の部分が白くなり、微かに仕舞ってきたら、ちょうど指を入れていられない温度になっている。
5 これを冷水にとり、水分を切って、身を開いて出来上がり。

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冷水にとったら、こんどは流水下で汚れやぬめりを完全に取り去る

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これがボクの晩酌の肴。青柳の持ち味は独特の苦みと甘味、これに高清水の辛口を2合ほど

 塩と身だけで煎るようにするのと、塩水を使うのと、どちらも甲乙つけがたく味がいい。なにしろ青柳の火の通し方は難しいのだが、このやり方なら簡単に「火の通り」が判断できる。
 寿司などの技術本には熱湯に潜らせるとあるが、明らかにこの『鮨忠』方式、『鮨富』方式の方が上であるように思える。また塩水を使う方が一度にたくさんの仕込みが出来るように思うのだが、これは素人にはわからない。

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「新いか」登場

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 今年の「新いか」登場は8月1日。昨年はどうだったか、と確かめると7月23日なのであった。残念なのは昨年の値段がわからなかったこと。それでは今年はいくらかというと1匹30グラム上でお値段は500円となる。すなわちキロ当たり15000円なのだ。たぶん八王子に来たのがこのクラスだから築地では20000円上のものもあっただろう。
 この「新いか」というのは1匹で1かんの握りになる。すなわち原価計算のやりやすいもの。すなわち1かん原価が500円とすし飯ということ。それでもきれいにネタに仕立てて職人が握ると安くて1かん1000円くらいかな? できれば1500円は欲しいよな? と寿司職人は思っているかも知れない。
 あ、いかんいかん。「新いか」とはいったいなにか? というとコウイカ(関東で墨いか)の春に生まれた新子である。これがなんとも言えずにうまい。この時期に来るのは九州は出水や不知火海などのもの。たぶん新子(コノシロの稚魚)と同じ産地である。本来の江戸前(千葉県富津など)に「新いか」がとれるようになるのは秋なので、値段を考えるとその時期まで待ちたい。
 この「新いか」だが鮮度が落ちやすい。それで冷水につけて入荷。いいものならそのまま生でもいいのだが、ボクは軽く熱湯に通した方がいい。軟らかいが噛むとプリっと少し弾力を感じて程良く噛み切れる。味わいには甘味が勝って、そこはかとなく旨味が感じられる。まあうまいのであるからボクの懐具合からいって秋が待ち遠しい。

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 甘エビが初めて我々の周辺に登場してきたのはそんなに古いことではない。実を言うと北海道でのエビ漁は比較的浅い場所にいるトヤマエビ(ぼたんえび)から始まっている。それが水深の深い場所にいるホッコクアカエビをカゴ漁でとるようになったのは1960年代なのだ。
 その漁獲が増えたホッコクアカエビが「甘えび」という名で一般に広まり始めたのは1970年代からだと記憶する。この時代に始まり盛んになったデパートでの物産展やアンノン族、ディスカバージャパンなどでの旅のブームで徐々に「甘えび」の名が挙がるようになる。
 そして「甘えび」というものを一般名称化させた最大の要因は北大西洋からのホンホッコクアカエビの輸入、そして回転寿司の登場だろう。1958年に大阪に誕生した回転寿司だが、1970年代後半には東京でも珍しいものではなく、ありふれた存在となっていた。そこに輸入の甘えびがあったのだ。ここで初めて生のエビを食べるという経験をした。生といえばイセエビやクルマエビの踊りなどがあるがあまりに高価すぎるし、本当に生がうまいのか疑問に感じる代物である。
 それに対して甘えびは生で食べてこそうまい。甘えび(ホッコクアカエビ)はどうして生でうまいのだろう。それは身にグリシンなどの甘味を感じさせるアミノ酸が豊富にある。また水溶性のタンパク質が大量に含まれていて身が粘液質でトロリとしている。これが相まって甘味が非常に強く感じられるのだ。すなわち甘えびの旨さはまさに「甘さ」にあるとでもいえそうだ。そのトロっとしたタンパク質の粘りが熱を通すと凝固してしまう。甘味の元であるグリシンなどはイセエビやクルマエビよりも少ないために相乗効果がなくなって旨味甘味とも半減してしまうのだ。
 この甘えびの産地は輸入ではロシアが圧倒的に多く、アラスカなどが次ぐ。国内では鳥取県から北海道の日本海側、道東、オホーツク海など。なかでもダントツに漁獲量が多いのが北海道西岸である。漁獲方法は底引き網とカゴ漁である。値段味わい共にカゴ漁でとるものがよく、底引き網漁のものは落ちる。市場で見る限り値の張る甘エビは主に北海道西岸からくるエビカゴ漁のもの。
 留萌、羽幌、増毛、江差、古平など北海道の西岸には甘えびの産地が目白押しであり、ここから来るものは遠路にもかかわらず取り扱いが丁寧であり鮮度がいい。当然高値がつく。また噴火湾のものは色が薄く、小振りのものが多いように思える。他には新潟県からのものにいいものが目立つ。
 市場で値段を見るとロシアなどからの冷凍もので1キロ1000円前後から1600円くらい。国産鮮魚で小振りのものでキロ当たり1400円くらいから、平均して2000円前後、高いときには10000円近いときもある。少ないながら活けものもあり、これは非常に高価である。
 さて、一般家庭では甘えび(ホッコクアカエビ)は冷凍物を食べているものと思われる。スーパーなどで解凍したものを発泡トレイなど移し替えて売っている。確かにこれはこれでうまいのであるが、少し贅沢をして生で流通した国内ものを食べてみてはいかがだろう。その甘さ、そして上品な旨味とプルっとした食感に驚くはずだ。我が多摩地区周辺にもデーパートのみならず魚屋でも生の甘エビ(ホッコクアカエビ)を置いてあるところは少なくない。値段が高いと言ってもあまり大量に食べるものではない。意外に値段はお手軽なものでだ。土日、ファミレスでレトルト食品を食べるよりもずーっと安くつくはずだ。たまには家族揃っての夕ご飯に甘えびなどいいと思うけどな?

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新潟県能生町にて。エビカゴ漁であがったばかりの「南蛮えび」。

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国産の生は透明感があり、プルっとした食感が楽しめる。

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 シーフードショーの会場で「焼きししゃも」や干物などがあって、棚にはみりん干しや鰺の丸干し(これは山陰などに多いタイプ)がある。ここで営業部長の三好憲次さんから声をかけていただいていろいろ製品の説明をしてもらう。
 岡田水産は山口県にあってもともと煮干しなどを生産販売する会社であった。それが現在では「ししゃも」では業界で一位の座にあるのだという。
「へー、凄いな」と焼きししゃもなどをおいしくいただいてきた。そして帰ってこの話を八王子綜合卸売センター内『フレッシュフード福泉』ですると
「岡田水産だろ。知らないヤツはいないよ。ほら」
 店内の段ボールをひっくり返すと「岡田水産」が多いのである。
「この前買って帰っただろ。子持ちししゃも、あれもそうだよ」
 灯台もと暗しとはこのこと。普段食べている「子持ちししゃも(カペリン)」は岡田水産のものだったのだ。
 その「子持ちししゃも」を改めて買ってきた。卸値からすると200円から250円くらいの小売り値だろう。これがじっくり味わって食べるとさすがにうまいのだ。「ししゃも」では日本一になる秘密は味なのかな?

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『フレッシュフード福泉』で見つけた「子持ちししゃも」

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『フレッシュフード福泉』で見つけた「秋刀魚味醂」


岡田水産株式会社 山口県長門市油谷伊上1755-1 tel0837-32-1101


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『カレーライスの誕生』(小菅桂子 講談社選書)を読んでいたらカレーの普及は昭和の初め頃から加速度化する。そして昭和の初期には「次第に各地でそれぞれの特産品を使って、『ご当地カレー』が作られていくことになる」とある。ここに福島のほっき(ウバガイ)、釧路のホタテガイ、マイワシなどを使ったカレーが紹介されている。
 マサバはこの本にはないのであるが、福島で聞いたとき、「ほっき(ウバガイ)のカレーはよく作った」というのとともにカレーには「いろんなもの入れたよ」という話を聞いている。マイワシを使うなら当然マサバを材料としないわけがないのだ。また本格インド料理には魚のカレーというのもあり、本来はカレーは材料を選ばない料理なのだから、今の日本型料理でのカレーは材料があまりに固定化しすぎているともいえる。

 さて、そこで話は飛ぶが9年前の銚子への旅行である。海辺で生き物を探して、とある水産物の観光市場に入った。この観光的な市場の品揃えがまことにあきれるもので、冷凍のタラバから筋子、新巻鮭など銚子と関係ないものが目白押し。むしろ銚子の鮮魚などは隅っこに追いやられている。でもこんなところにオバチャン軍団が殴り込みをかけるがごとくなだれ込み大盛況であったのだからもっと驚いたのだ。そこに堆く積まれていたのがサバカレーである。
 サバカレーは何種類かあって、どれにしようか迷っていると家人が不思議なことを言うのだ。
「父ちゃん、これが本物でしょ」
 どうして本物かというと、「テレビドラマ」でやっていたからだそうだ。それを仕方なく買って帰ったをの覚えているのだが味を忘れてしまっていた。

 そんなときに我が家の近くにポプラという見慣れないコンビニがあり、驚いたことに若狭の天橋立マークのオイルサーディンがある。そしてここにあったのが信田缶詰の「サバカレー」である。これが1個210円なので当然買って帰ってきた。コンビニも侮れないのだ。

 このサバカレー、驚いたことにサバの切り身がゴロゴロと入っている。その切り身がよく煮込まれているのか生臭みがなく、しかも煮くずれていない。そしてカレー自体も適度に辛口でいい味わいなのだ。このサバカレー、残りご飯にのせてそのままチンしてなかなか便利なものである。またホッピーのつまみとして食べるのも悪くないな、なんて缶詰片手に立ち飲みを常習するオヤジは感心しきりなのだ。要するによくできたものであった
 気になってネットでサバカレーのことを検索して初めて知ったのだが、このサバカレーというのは家人の言っていたのが正しくてドラマに触発されて作られたものらしい。そしてドラマの撮影場所となった川岸屋水産でもサバカレーが作られていて、そこもドラマの放映後からの生産らしいのだ。最近銚子で作られている水産加工品に興味を持っているのだが、こんな現代風ないきさつで生まれた水産加工品も珍しいのでは。

 とここで最初の『カレーライスの誕生』にもどるが「サバカレー」は間違いなくドラマ以前にも日本のどこかで作られていたはずである。すなわち福島県「ほっきカレー」、和歌山県では「サザエカレー」なんて言うのもある。またマイワシのカレーがあるならマサバ、ゴマサバのカレーがないわけがない。このカレー材料になった水産物も調べると奥が深いだろう。

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信田缶詰
http://www.fis-net.co.jp/shida/


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