管理人: 2008年12月アーカイブ

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 年末年始に何も買わないのが我が家流。
 薬師神かまぼこさん、沼津の山丁菊地利雄さん、宮崎のミツイ水産さんなど、頂きもの多々であることもあるが、やはりハレの食い物はそんなにうまいもんじゃない、というのがわかりすぎるくらいにわかっているからだ。
 それでも必ず作るものがあって、それが数の子。
 お節料理の中でももっとも簡単だし、我が家に関する限り子供も大好きである。
 塩漬けの数の子と、干し数の子があるが、塩漬けの方が一般的。
 干し数の子は高いし、非常に手に入れるのが難しい。

 我が家の場合、キロ当たり3000円前後のこわれた塩数の子を買ってくる。
 毎年500グラム見当で買い求め、二回にわけてつくる。

 作り方はいたって簡単。
 水の中につけて塩抜きをする。
 何回か水を替えて半日から一日。
 水の温度などによって塩抜き時間は変わってくるようだ。

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 食べてみて、ほとんど塩分を感じなくなったら、薄皮をていねいにていねいにむきとる。
 塩抜きが中途半端だと、苦みが強く残る。
 水分を充分にとり、ザルなどに上げておく。

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 漬け汁を用意する。
 昆布と鰹でとっただしに、味醂、酒、薄口醤油、塩を合わせて一煮立ち。
 酒と味醂はあらかじめ煮きっておく(アルコールを飛ばす)といい。
 漬け汁にいかに醸造香、アルコールを感じさせないかがコツだともいえそう。

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 ここに塩出しした数の子を漬け込む。
 ひと晩から一日漬け込むと完成する。

 数の子のうまさは、明らかに渋みと一体化したものだ。
 渋みが甘味を生み出し、またうまさというか濃くを感じさせる。
 卵粒のプツプツしてホコホコした感じもうまさのひとつだ。

 数の子をつくると、食卓にあってついつい箸が伸びる。
 だから500グラムではもの足りなかったな、なんて感じる。
 おいしいものはもの足りないくらいがちょうどいい、そう思うのだけどね。

薬師神かまぼこ
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ミツイ水産
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 今年も沼津の山丁菊貞・菊地利雄さんから西伊豆安良里の「潮かつお」が届いた。
 もちろん昔ながらのやり方で大振りのカツオで作った本格的なもの。
 つくりますのは魚武水産である。

 毎年いただくので、この「潮かつお」がないと新年がものたりなく感じる。
 最初の年には部屋に飾って新年を迎えた。
 翌年は菊地さんにおたずねして「暮れに切り分ける」ことにする。
 やはり団地というのはこのようなものを飾るには無理があり、それよりも早く食べたいというのが先に立つ。
 それで数え日前なのであるが、切り分けて、一部を築地土曜会の方達にお裾分け。
 さっそく久しぶりの「潮かつお湯漬け」を食べる。
 残りご飯にのせて熱湯をそそぐだけの至って簡単な、料理以前の一膳がすこぶるつきにうまい。
 面白いもので塩辛い「潮かつお」からたっぷりとだしが出る。
 そのうまみでご飯を書き込むのだけど、ひとりこっそりサラサラやっていたら、我が家の姫が真似をしてサラサラ。
 この湯漬けは家族の大好物でもある。

 さて、一年というのはまことに短い。
 あっという間に過ぎ去ってしまう。
 湯漬けをかき込みながら、ふともの悲しくなってくるのはなぜだろう。

潮かつお かきこむ暮れや もの悲し
             ぼうずコンニャク

 静岡県沼津市菊地利雄さんに感謝。

魚武水産 静岡県賀茂郡賀茂村安良里655-1
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 本日日曜日が開市、明日29日、30日、31日で、今年の市場もお仕舞いのお仕舞いなのだ。
 さて、暮れの市場、「どんなんかんなー」ということで画像をアップします。

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十一屋ジャパンに来ていたテレビ局のお姉さん。隠岐知夫村の「神葉漬」のことを放送してくれただろうか? 「神葉漬」は隠岐知夫里島ならではのホンダワラの漬物。海藻を使った漬物は珍しいし、関東では十一屋ジャパンでしか手に入らない。

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総市から高野水産。この通り最近ではもっとも混雑の激しい場所となった。

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総市でマグロを売る元気すぎる、さぶちゃん。「たまにはオレのこと撮ってくれよー。なあああー」

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ジャックス冷凍部。ここにお宝を多々発見。向かいはカワベでコマちゃん大忙し。「今日は三角バラの筋があるからな」。

八王子の市場に関しては
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ハゼ科ヨシノボリ属を改訂
オオヨシノボリのページを作成
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掲載種 1996


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やっと仕事納め

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 帰宅して一風呂あびてほっとしてコップ酒をいっぱい。
 多摩自慢の「無加唐」で、これは我が家の家計が緊急事態に陥っているためだ。
 今年はいろいろやりすぎた。
 その分、お金が貯まるかというと、この暮れになって財布はすっからかんとなる。
 へそくりがないでもないので、なんとかなりそうだけど、世間以上に我が家の方が危険だな。
      ●
 今日は朝から寒かった。
 駐車場に下りるとき頭がクラクラする、やたらに手が冷たい。
 睡眠時間は4時間。
 それほど深刻な状態でもないのに年のせいだろうか?
 午前8時過ぎ、感じる気温の割りにクルマのドアは凍りついていなかった。
 湿度が低いためらしい。
 市場で冷凍食品や肉などをまとめ買い、しょうゆを買う。
 暮れ押し迫っての買い物を減らすためだ。
 帰宅は9時半、正午にはまた都心に出た。
 用事は午後10時ちょうどに終わる。
 早く終わるはずで、古書店街で憂さ晴らししようと思って、へそくりをたっぷりポケットに用意してあったのに残念。
 古本屋のあの棚、この棚の買いたい本を思い出して臍をかむ。
 帰路、東西線がやたらに混む、武道館で大きなコンサートがあったようだ。
 そして中央線も。
     ●
 現在27日の0時半となっている。
 もういっぱい酒を飲むか、どうか悩み結局諦める。
 ここ数日撮影した画像180枚を整理保存する。

 今年は忙しすぎた。
 『市場魚貝類図鑑』を最終形に近づけようとしている。
 その改訂がぜんぜん進んでいない。
 新たなページ作成も出来なかった。
 撮影した画像は間違いなく一年で4万枚を超えているだろう。
 貴重なショットが多かったのでブラッケットで撮ったせいもあるけど、撮影するよりも整理(捨てる・保存)に数倍の時間を要した。
 全国(この国以外からも)から膨大な情報が洪水のように頭脳に注ぎ込まれた。
 これを残すだけでヘトヘトになる。
 魚貝類の呼び名・方言が整理できていない。
 旅も多く、しかも本来の『魚貝類を探す旅』はほとんど出来なかった。
 課題である利根川、霞ヶ浦が遠く遠く思える。
 利根川、霞ヶ浦の漁師さん達の年齢は高く、一年が重い。
 沼津に行く回数も極端に減っている。
 得るものも多く、失うものも多かったように思える。
 生活人(暮らしを営む)でもあるので料理も洗濯も仕事ととして考えている。
 だからボクの毎日は市場でいるとき以外は分刻みとなる。
 これがボクの疲労の最大の原因である。
     ●
 この項を起き抜けの午前10時から書き次ぐ。
 八王子にきんのり丸さんとjasminさんが来ていたけど、とても行けるような状態ではない。
 失礼しました、としかいいようがない。
 本日は一年分の疲れがどっと押し寄せている。
 抵抗しないで、朝酒を飲み、もう一眠りしようと思っている。
 ラジオからは永六輔の声が聞こえてくる。
 現在のところ生きている人類でもっとも尊敬している方なので、この声を聞いていると安心して眠れるのだ。
 目標、午後3時まで居眠り。

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 八王子魚市場内『海老辰』に「阿武隈川産背焙り鮎」と書かれた発泡があった。
 蓋をとるとアユの焼き干しが入っている。
 このような特種すぎるものが流通の場にくることは珍しい。
 明らかに天然物。
 脂のすくない落ち鮎を使ったものだろう。
 わらで連にしてある。

「いくらだい」
「千円でいいかな」
「千円か、微妙な値段だね」

 値を聞いただけで通り過ぎる。
 翌日、それは同じように店先にあった。
 ぜんぜん売れていない。
 たぶんどのように料理するのかわからないのだろう。
 だから千円という値段が微妙に思えるのだ。
 たぶん注文を受けて仕入れてきて余ったものに違いない。

 普通焼き干しは水で戻してたきものに、もしくは焙って熱燗をそそいで旨味風味を楽しむ。
 急激に冷え込んできているので「鮎酒」も一興ではないか。

 さて、飛騨焜炉におこした炭を入れる。
 火の盛りに、故郷から来た餅を焼き、干し芋を焼く。
 これは子供達の楽しみだ。
 [夕食にご飯を食べなくてもいい]というのが食卓に開放感を生む。
 さて、その内に炭の勢いが衰える。
 そこに焙り鮎を乗せて、じっくり待つ。

 焦げ目がついてきた頃、酒たんぽで燗をする。
 熱燗も熱燗、火がはいるほどの熱燗にする。
 器は陶器で厚みのあるもの。
 今回のは小坂明さん作の見るからに暖かみのある深鉢にした。
 これも熱湯の中に放り込み、とても手で触れない状態となっている。
 ここからが勝負だ。
 熱湯のなかから器を取りだし、香ばしく焼けたアユを入れ、火燗をそそぐ。
 アユがジュっと音を立てる。
 ここに木でできた羽釜の蓋を乗せて待つ。
 計っているわけではないが、この間が長い。
 無限に思える瞬間というのがある。
 他のことをいろいろ考えればいいのだけど、時計の秒針をついつい見てしまう。
 長い(?)待ち時間のはて、蓋を取ると酒がうっすらと琥珀色を帯びている。

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 あとは熱いウチにいっきにすすり込む。
 思った以上に濃厚な旨味を染み出させていて、酒の中でアユ独特の川の香り、日向の香りが浮き上がってくる。
 しかも飲み口はサラリとしてる。
 酒はすすり。
 口に含み含み飲まなくてはいけない。
 この「阿武隈川産背焙り鮎」のいいところはよく焼き枯らしている点。
 まったく生臭さがなく、カツオがカツオ節になる如く、「焙り鮎」という乾物として完成しているのがいい。

 残ったアユに薄口醤油を垂らして、これもぬる燗のアテとした。
 酒は一の蔵「掌」。

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 年末の市場にはあまりめぼしい鮮魚がない。
 あえていえばマグロ類がおすすめなんだけど高い。
 庶民としては不況なんだから、かしこくうまいものを食べたい、と思う。
 それなら出来るだけ安いマグロ(メバチマグロ、キハダマグロ、ビンチョウマグロ)を買おう!
 またお金持ちは、どうせなら晴れの日なんだから100グラム2000円以上の本鮪(クロマグロ)を買ってもらいたい。
 値段も上なら、味も上々、そして人生は最高潮、絶好調なんて、うらやましい限りだ。
 そんな輝ける黄金の日々はボクには関係なし。
 人生色々ですな。

 我が家では安いマグロの切り落とし、しかも冷凍物を買っておく。
 食べたくなったら塩水にくぐらせて解凍。
 もし万が一ドリップが出てしまったらよく水分を切っておこう。
 解凍に失敗したら、水分をできりだけ取り、いきなり生醤油と煮きり味醂の中に漬け込んでしまう。
 所謂漬けというやつである。

 後に用意するのはマグロのぶつ、もしくは漬け、ヤマトイモ(粘りの強いもの)、正月なので格好つけてウズラの卵に練りワサビ。
 料理と言うほど、やることがないのだけど、ここで大問題にぶち当たるのだ。
 「やまかけ」というのは「山芋(ヤマイモもしくはヤマトイモ、ナガイモ)をかける」という意味合いだからマグロが先で上からとろろをかけてしまうのが正しいはず。
 でも見た目がきれいじゃない。
 しかも私の好みなのだけど、一切れ一切れのマグロにクルクルととろろを回しからめて、ワサビをのせ、生醤油につける。
 だからボクの「やまかけ」は実は「やま敷き」となる。

 ヤマトイモとマグロを合わせただけの、こんな料理がほんの数年前まで嫌いだった。
 ぜんぜんおいしくない、なんて見向きもしなかったのだ。
 我が家で断然「やまかけ」が好きなのは不思議なことに子供達であって、いつもボクは作るだけの人。
 それがあるときふと食べたくなって、「一切れおくれ」と分けてもらったら、意外にうまい。
 「こんなまずいもの食えるか」と思いこんでいた日々はなんだったのだろう?
 ことほどさように人の好みなどと言うもは一定しない、理屈ではないということが、五十路になってますますわかってきた。
 蛇足だけど、ウズラの卵、ボクには無用だ。

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 大阪鶴橋でカオリフェを食べた。
 「カオリ」はエイ、「フェ」は刺身のこと。
 要するにアカエイの刺身を鶴橋の迷路の、そのまた狭い路地にある『よあけ』で焼酎の水割りのアテとして注文したのだ。
 店にないものは店主自ら近所(鶴橋の商店街・市場)に走りって買いに行くというのが『よあけ』流で、エイを買うところから始めたのに、あっという間に出てきて、これぞまさしく素敵なタイミング! である。
 カオリフェについてきたのが辛子酢みそ。
 この辛子酢みそで食べるアカエイの刺身がうまかった。
 アカエイ自体がうまかったというよりも辛子酢みその味がよかったといった方が正確だ。
 さて、ボクはこの時点でクーラーバッグに商店街でカオリフェと辛子酢みそを買い求めていたのだ。
 帰宅して、またしてもカオリフェを食べたのだけど、辛子酢みそがたっぷり残ってしまった。
 さて、いい魚はないのだろうか? と見つけたのがテングダイ。

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テングダイも鱗はひくのではなく、包丁ですき引くのだ。

 テングダイの刺身は非常に美味。、なんだけどちょっともの足りない。
 クセのない白身にありがちなことだけど、個性に欠けるのだ。

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 ちゃんと刺身を用意して、テングダイのすき引きしたウロコを落とした皮をそのままに焼き切りにする。
 ここに白ネギを散らして辛子酢みそをかけてみたのだ。

 これがまさしく病みつきになる味。
 テングダイはやはり皮目を生かした方がうまい。
 皮下に脂があって甘い、そこにちゃんと旨味が感じられて、微かに焼いた香りがくる。
 そして唐辛子みその酸っぱさと辛さ。
 絶妙だね。
 この鶴橋の魚屋でもとめたものは唐辛子と、たぶん少量のコチュジャン、味噌、酢を合わせているのだろう。
 ニンニク、胡麻油は入っていない。
 考えてみるとカオリフェや白身魚にはニンニクや胡麻油は香りが強すぎる。

 酒はマッコルリといきたいところだが、立川の居酒屋『太鼓』さんにいただいた「赤霧島」。
 芋焼酎独特の臭みがほとんどなく、クイクイ飲める。
 うますぎる焼酎に、うまい肴で幸せだなー!

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掲載種 1995


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 最近市場でみかける日生産の小粒ガキ。
 これがやたらにうまい、ついつい買ってしまう。

 備前市日生町は隣はもう兵庫県赤穂で、岡山県でもっとも東に位置する。
 島と複雑な入江が、豊かな魚貝類を育てるのだろう。
 全国的にも有名なカキの産地となっている。

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この小さなパックマガキがうまい。

 仕事を終えて帰宅が11時半。
 小腹がすいているし、軽くいっぱいやりたいところ。
 さて、冷蔵庫に1パックの生ガキ。
 生食用だけど、すでに夜遅い時間なので鍋に仕立てる。
 ねぎをたっぷり刻んで、マガキを大根おろしで洗う。
 日本橋にある新潟県アンテナショップで買い求めた麹の多い甘口米味噌。
 これを酒と味醂でねり、少量の昆布だしを加える。
 鍋は業務用の最小のもの。
 弱火に掛けて置いてシャワーを浴びるのだ。

 さっぱりしたら、小鍋がぐつぐつと煮えている。
 酒のアテなのでここにカキを全部放り込み、すぐに刻みねぎも盛り上げるようにする。
 この甘味のある味噌とカキのなんと相性のいいことか?

 カキには適度な渋みがあり、その渋みがあるから甘さが感じられる。
 また甘味と渋みにふっくらした身の食感。
 これらが相まってマガキのうまさとなっているのだ。
 マガキとみそ味の汁とねぎを一緒くたに、れんげですくいながら食べていく。

 合わせるのが多摩自慢の本醸造。
 ぬる燗にして二合ほど。

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 翌14日は朝3時前に起きる。
 金沢駅西口からタクシーで金沢中央卸売市場に。
 午前3時半の市場は明々と明るく、人いきれがして荷を運ぶトラックが走り込んでくる。
 残念ながら探している島根県隠岐のエッチュウバイはなく、替わりに福井県産だというエゾボラモドキ、エッチュウバイが並ぶ。
 さて場内には膨大な発泡の箱、箱。

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 これを見ながらウロコ水産にあがっていく。
 総務の下出さんに挨拶して、場内の案内をしていただく。
 これが発見に次ぐ発見。
 関東ではあまり見かけない山形県からの荷、七尾湾など石川県内の鮮魚。

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金沢名物の「どじょうの蒲焼き」。金沢に来たらドジョウなんですよ、ドジョウ

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金沢に並ぶズワイガニのオス、メスの量に圧倒される

 そして膨大なメスガニ(ズワイガニ)があって、オスの方は量的には少ないもののずば抜けた量には違いない。
 午前6時過ぎ、ウロコ水産で島根県にとって貴重な情報をたっぷりいただく。
 まことにウロコ水産さんには感謝の致しようがない。

 さて、ここで意外すぎる人物に会う。
 その人はボクとヤマトシジミさんの前に突然あらわれたのだ。
 クルクルまるい印象的な目。
「ぼうずコンニャクさんわかんないんですか?」
 わかるわけがない。
 このとき初対面なのだけど、初対面ではないような。
 この方こそ木枯らし平社員こと宮木屋さんなのだ。
「あなた名古屋にいたはずじゃ……」
 突然金沢に来たくなったらしいのだけど、本当に不思議な、不思議な人だ。

 金沢中央卸売市場で朝ご飯。
 ヤマトシジミさんがポツリと「近江町市場に行くんですか、ボクやめようかな」。
 かなり疲労が溜まっているようだ。
 無理もない昨日はほとんど隙間無しの日程だったのだから。
 それでも無理矢理近江町市場に連れて行き、たっぷり買い物につき合わせる。
 ボクの勝手な意見なのだが、水産振興で大事なのが、できるだけ各地で水産物だけではなく野菜など食全般を見ておくこと。
 水産業というのは食の生産なのだから、食いしん坊ではければ振興できないのだ。
 近江町の路地をいっぱい歩いていっぱい買い物をした。
 これが『市場魚貝類図鑑』を作る糧ともなる。
 でも、ヤマトシジミさん疲れただろうな。

 午後となり、ボクは東に、ヤマトシジミさんは西にと帰路に就いた。
 ボクが乗り込んだのが特急はくたか。
 越後湯沢からは新幹線の「とき」。
 今年はたくさん名前つきの特急列車にのったものだ。
 でもどうしてJRの特急名って平仮名なんだろう。

 ボクは途中、越後湯沢で途中下車。
 街を歩き回ったがなんの集荷もなし。

 月曜火曜の宮崎県延岡市への旅、水曜日を挟んでの金沢への旅。
 けだし疲れた一週間であった。

 これをもって金沢への旅はおしまい。
●次回から魚貝類を探す旅は『市場と漁港の旅』に移動する。
http://itibaminato.seesaa.net/

赤えびエイト
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/8495/untitled4_001.htm
金沢中央卸売市場
http://www.kanazawa-market.or.jp/Homepage/
ウロコ水産
http://www.urokosuisan.co.jp/
石川中央魚市
http://www.kanazawa-market.or.jp/Homepage/
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 日々朝の冷え込みが厳しくなってきている。
 駐車場まで下りていく階段は落ち葉に埋まっているようだ。
 カサッ、カサと降りていくとパートに向かうオバチャンが、階段を半分登ってきて、「ここからが辛いのよ」と、これが朝のご挨拶のようなもの。
「まあ、あと一息ですから」なんて手を振って、また階段を下りて、クルマにたどり着くと、ドアが完全に凍り付いている。
 一二の三で無理矢理にドアを開けると、バリっとイヤな音がする。
 車内は全面ガラスが凍り付いて、薄ら明るく、まったくのサイレント。
 エンジンをかけて、氷が溶けるのに5分以上かかる。
 この何も考えない時間が最近とても好きになっている。
 悪くないのだ。
 食べ物を買いに行くのだから、人によっては作る料理のことを考える、のだろうか?
 残念ながら市場に行くときに、絶対にやってはいけないのが「予め作る料理を考えておくこと」なのだ。
 その日、作りますものは「市場が決めてくれるの」であって、ただただいいものを見つけて買い物をするに限る。
 クルマで行くこと10分足らずで八王子魚市場、ここを簡単に見て回り、八王子総合卸売センターに。
 このとき8時半を回っている。
 大急ぎで高野水産に走る。
 
 トラックから降ろしたばかりの荷が店の台に運ばれてくる。
「小振りのヤリイカがあって、(キロ600円で)安いな」なんて、思っていたら、そのヤリイカ目がけてあっちからもこっちからも買い手が伸びてくる。
 やっと十本ほども確保して、仲卸でワタと墨袋を取り除く。
 胴に縦に走る貝殻(透明な板)も取り除いて、そこにゲソを詰め込む。
 午前8時、吹きさらしの市場での水仕事の冷たいこと。
「冷たいな、冷たいよ」
 ついついこんなグチをこぼしてしまう。
「バカ野郎、今日なんかあったけーほうだぞ。文句言うんじゃねー」
 なんて近所の居酒屋のオヤジから、厳重注意の罵声が飛んでくる。
「わけーのに泣き言いうな、オレなんか50年もそんなことやってるんだからな」
 こちらは相模原のレストランのオヤジである。

 朝、仲卸のまな板は、いうなれば戦場である。
 たかだか小ヤリの下ごしらえに5分もかかっていると、すぐに「おらおら、どけよ」なんて文句が出る。

 この日は自宅で仕事。
 これがボクの理想なのだけど、こんな日は月に一日か二日しかありはしない。

 このところやたらに日が暮れるのが早い。
 あたりが真っ暗になったとき、鍋にニンニクとたっぷりのオリーブオイルを放り込んでとろ火をつける。
 オイルにニンニクの香りがついたら、玉ねぎと近所から頂いたセロリのコンカッセを投入。
 ここにホールトマトを握りつぶしながら入れる。
 できるだけ弱火で、鍋のなかがぷつぷつわいてきたらヤリイカを鍋に並べるようにする。
 後はじっくり待つのみ。

 この料理のコツは出来る限り弱火で、トマトの甘味を逃さないこと。
 もうひと味ほしければ、コンソメキューブを加えてもいい。

 仕事は後、もう一息。
 小一時間で終えたら、夕食の支度にかかる。
 アジ煮干しで出しをとり、千葉の海人つづきさんに頂いた里芋をたき、海老名のエビさんにこれまた頂いた柚をおろしてまぶしつける。
 水菜のごまみそマヨネーズ和え、アカササノハベラの韓国酢みそ和え。
 脇役の小ヤリのトマト煮込みはココットに入れてオーブンで熱している。
 粗挽き黒コショウと塩だけで厚切りロース肉を焼き。
 ブロッコリーの脇芽をゆでる。
 これが今夜の夕食である。

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 小ヤリのトマト煮込みはまことに簡単至極、手間いらずな料理だ。
 でも魚貝類の料理はおしなべて単純で、簡単な料理法が向いている。
 軟らかな小ヤリが甘い。
 これはヤリイカの持つ甘味を感じさせるアミノ酸とトマトのグルタミン酸から生まれたもの。
 面白いのは煮詰まったトマトの方にもヤリイカの旨味が感じられること。

 さて、我が家は朝と夕、必ずご飯をたくのだけど、今日はバゲットとクルミ入りのパンがカゴに乗っている。
 当然子供達は大喜び。
 お父さんは最近益々貧乏なので多摩自慢無加糖をやる。

2008年12月15日
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 その土地ならではのものを買い求めたい。
 旅人はおしなべてそう思っているはずだ。
 だから市場を歩きながら、そんなローカルな食べ物を探す。
 金沢中央市場『山甚商店』でみつけたのが練り製品の「ふかし」というもの。
 丸く1センチほどの厚みで、市場で見つけたときは白く、裏側がえすと赤い。
 すなわち裏表で紅白となっている。
 なんだか見た目に目出度いのが徳島県で「お嫁さん菓子」と呼ばれている「池の月」に似ている。
 一瞬「ふかし」という言葉がわからない。
 考えてみると蒸し蒲鉾の意味だろう。

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金沢近江町市場でみつけた様々な練り製品

 練り製品の蒲鉾には「蒸す」、「蒸して焼く」、「焼く」の3種の作り方がある。
 金沢で見つけたものは「ふかし(蒸し)」て作る蒲鉾であるから、その製造法が蒲鉾の意味となってしまった。

 これがあっさりした甘味で魚の旨味は希薄ながら柔らかくていい味だ。
 とくに澄まし汁など汁物にいれたときに最高にいい。

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 この「ふかし」という食品のことも調べてみなければ。
 例えば、この「ふかし」という蒲鉾は石川県金沢周辺だけのものだろうか?

やまは食品 石川県白山市八田町430
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市場でご飯は
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 オオメハタなんていっても誰もわかるまい。
 むしろ関東では「白むつ」と言った方がいい。
 それでもせいぜい釣り人くらいが、「あれか」なんて相槌を売ってくれるだけだろう。
 大きくなっても20センチから25センチほど、ザラザラしたウロコで目ばかり大きい。

 そういえば最近テレビに出てくるアイドルというのが、非常に目の大きな娘が多い、とすれば今流の容姿をしているのかも。
 ボクなんかが小学生のころの元祖アイドルに中尾ミエ、園まり、伊東ゆかりの三人娘というのがいた。
 この三人の顔のてんでんばらばらなところ、それが昭和60年代から70年代までのテレビのよさだった。
 それからすると現在は画一的だ。
 すなわち伊東ゆかりの目がやたら細かったのにアイドルだった、といいたいだけなのだ。
 東京タワーの見える場所を舞台にした「グーチョキパー」(1964年らしい)というドラマがあって、そこにジュディ・オングが登場してきて、「目の大きなお姉さんはきれいだ」と思ったときから、テレビに出てくるお姉さんの目がどんどん巨大化したという印象がある。

 閑話休題。
 オオメハタは東京湾、相模湾では釣りで、駿河湾、熊野灘以南では底曳網で揚がる。
 九州などではまとまってとれて築地などを賑わすことがある。
 刺身にしてよし、煮つけ、塩焼きにしてうまい。
 ついでに加えるとすしネタとしてもうまい。

2008年12月17日
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メスガニはうまいよ

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 最近市場がよいでついつい買ってしまうのが「メスガニ」だ。
 鳥取県、島根県での松葉蟹(「マツバガニ」)、福井県の越前蟹(「エチゼンガニ」)はともにズワイガニをさす言葉だが、ともにオスのことでもある。
 対するにメスガニは「コッペ」とか「セイコガニ」とか「コウバコバニ」なんて呼び名があり、冬の日本海での隠れ味的なものだった。
 値段も日本海側でとれたオスがキロ当たり5000円から12000円なのにたいして、メスはキロ当たり1000円ほどしかしない。

 そのメスガニを見つけたのが八王子綜合卸売協同組合『マルコウ』。
 クマゴロウがいなくて産地が聞けなかったが、どうやら三陸産ではないだろうか?
 値段が1ぱい350円。

 メスガニのゆで方は難しい。
 身の方はすぐにゆであがり、肝心のミソ(卵)に火が通るのが遅いためだ。
 ゆでること10分で皿に盛る。

 子供達が最初に手を出すのが外子。
 見た目はうまそうなのだが、ひとくちで見向きもしなくなる。
 やっぱり足の身を食べ始めたときに、こっちは静かに内子で燗酒を飲む。
 身の方を食べていると、酒を飲む気になれないのだ。

 さて、内子は濃厚な旨味と甘味があって、酒で流してなおよし。
 身の方だって味がいい。
 メスガニは季節をとわす入荷してくるもので、時季はずれを買うべきかどうか悩む。
 悩むのだが、我が家ではメスガニは晩秋から暮れまでの味と思っている。

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八王子市場案内
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 寒くなると関東の市場に目立って増えてくるのが「ぶわたら」。
 マダラの加工品で「ぶわ」は腑分けのこと。
 すなわちマダラを解体して、身だけにしたもので、「生」と「塩蔵」がある。
 今回はスーパーなどでもよく見かける「塩蔵ぶわたら」の話だ。
 これが便利で優れものなのである。
 マダラ自体はアラスカやカナダからの輸入物ながら加工のメッカは宮城県。
 なかでも石巻は目立った存在だ。
 もともと宮城県はマダラの加工がさかんに行われてきた。
 生の、地先のマダラを解体(ふわけ)して「生ぶわ」、「塩蔵ぶわたら」として、鮮魚としても関東に送り込んでいた。
 関東と宮城県の水産的な繋がりは当然、古く明治期に開通した東北本線に行き当たる。
 昔、水産物の流通は鉄道が頼りだった。
 今のようにトラック輸送にかわったのは、そんなに昔のことではない。
 現在でも過去にでも地方の水産物に頼ること大であった東京にあって、東北宮城は一大供給地だったのだ。
 当然のこと、「ぶわたら」は関東でも明治期以来の伝統食材であるはずだと想像して止まない。

 なぜ関東に「ぶわたら」が入荷してくるかというと居酒屋に“湯豆腐”という品書きがあって、ここに必ず入ってくるからだし、関東の家庭でも鍋物の主流が「ぶわたら」を使ったものだからだ。
 この「塩蔵ぶわたら」を使ったものを私流ながら勝手に「関東風湯豆腐」と呼ぶことにする。

 「関東風湯豆腐」の出合いは30年以上も前、東京下町小岩で暮らししていたときだ。
 居酒屋で湯豆腐をお願いして、やって来たのが野菜も入った鍋物。
 そこになにやら見慣れぬ魚が入っていた。
 白身魚らしいけどわからない、その正体が「ぶわたら」だったのだ。
 四国徳島人にとってマダラの存在は遠い。
 湯豆腐といったら、だしのなかで豆腐が浮かんでいるだけ。
 単純なものを予想していたので、間違って別の見知らぬ鍋物がやってきたと思ったほどだ。
 後々考えてみると、関西の湯豆腐よりも高目となっている。

 と言うことで、東京で初めて食べた湯豆腐がうまかった。
 以来30年、「関東風湯豆腐」が好きだ。
 それであれこれ理想の「塩蔵ぶわたら」を探していて行き当たったのが『天佑丸冷凍冷蔵』のもの。
 だから『天佑丸冷凍冷蔵』の「ぶわたら」を見つけるとついつい買ってしまうことになる。

 大振りのマダラを使っているため、半身買いでも一キロくらいになる。
 当然湯豆腐だけでは食べきれない。
 残ったらバターで炒めてパンに合わせたり、塩抜きしてフライにしたり、ホワイトシチューに使ったりと大活躍だ。
 面白いものでトマトと煮込んでもうまい。
 昔、イギリスとアイスランドでマダラ漁をめぐって紛争が起こり、これを俗に「タラ戦争」という。
 マダラが好きなのはこの国だけではなく、ヨーロッパ諸国も同じなのだし、その理由がパンやジャガイモなどとまことに相性がいいためなのがよくわかってくる。
 ああ、そうだマダラはご飯よりもパンに合うというのも書いておくべきだ。

 さて「東京風湯豆腐」の作り方は簡単極まりない。
 ぶわたらは湯通し、そえる野菜は白菜と春菊くらいでいい。
 後は主役の豆腐だが、できれば豆腐屋さんの豆腐といきたいな。
 だしは昆布のみ。
 味付けをするのだけど、酒と少量の塩のみ。

 鍋に向かって燗酒をやる。
 まずは「塩蔵ぶわたら」を総て鍋に落として、豆腐を泳がせる。
 豆腐がふわっと浮いてきたら、豆腐を皿にとる。
 ぶわたらも皿に取り、また野菜を加える。
 そこにあうのは生醤油で、生姜と白ネギを用意する。
 あと、柚、スダチ、一味唐辛子。
 この鍋、酒がすすむし、また豆腐の温まる間がとてもよろしいな。

 そのうち身体が熱くなってくる。
 食べ、呑み疲れて、ふと窓を開けたときの新しい空気の冷たさが気持ちいい。
 こんなときに限ってドコドコドコーカンカンカンカーンと中央線が八王子に向かう音がする。

天佑丸 宮城県石巻市魚町1の10の8
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今回の旅の一枚は、大阪市「城東市場」そば、てんぷら『槇屋』の優しいオバチャン

 4日間の旅から帰ってきました。
 前後に私的な日を作りましたが、非常に仕事めいた旅となりました。
 まことに水産の世界は大変な状況にあり、行政本来のやりかたではなく、新しい“活路”を県という存在が見つけだすのは至難の業。
 それでもアドバイザーである限り、県の方と真剣に向き合う必要があるわけで、松江での2日間はすさまじく体力を消耗しました。
 ただ、考えてみるに島根ほど、外部からドンキホーテと見なされようが、また無理と思われようともがむしゃらに水産の世界にあたらしい活路を探している県はない、と確信しました。
 今回は県の方との歩調もあい、アドバイザー自身としての活路を見いだした島根行でもありました。

 初日にお伺いした北九州市「にぎわいづくり懇談会」、13日に見知らぬ旅人に親切、また愉快に接してくれた大阪の方達に感謝。

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 近江町市場をみてから、お昼ご飯は野町犀川大橋たもとにある寺喜屋で昼食。
 ヤマトシジミさんと別れて片町、香林坊などを歩く。
 この人通りの多い大通りは観光客にも、ボクのような旅人にもまったく意味のないところと思われる。

 午後3時過ぎ、疲れは頂点を迎えて、金沢駅から西にあるホテルに向かう。
 ここでも歩く人や自転車に優しくない駅の造りに余計に体力を消耗する。
 ちなみに駅から西に向かうのに金沢市民も苦労しているのは間違いない。
 横断歩道のない道を高速で走るクルマを避けながら渡る高校生の自転車に、無能人に街の計画を造らせる恐さを見る。
 国や地方自治の関係者にいいたいのは「脳みそがコンクリートで出来ているようなろくでもない設計者、もしくは街の計画立案者」に“人が生きていく街造り”をさせてはいかんよということ。
 西口から地下にもぐり、また上がってやっとホテルにたどり着いたときの疲労は名状しがたいものだった。
 仮眠すること1時間で、また外出する。

 金沢駅東口でヤマトシジミさんと待ち合わせて、香林坊にある『魚半』に向かう。
 考えてみるとヤマトシジミさんの場合、朝方6時から中央市場を見て、短時間ながら会議。
 それに続く近江町市場見学、午後にはまたまた会議だったのであるから疲れ甚だしいに違いない。
 まあ肥満はしていても若いのだから大丈夫かな。

 目指すは香林坊の『魚半』という店。
 ここで『ごり料理』を食べる。
 店は半料亭風のもので、高いのか安いのかわからない造り。
 出てきた「ごり料理」のつたなさに驚いたのだが、金沢でアユカケもしくはカジカがいかに高価であるかだけは確かめられた。
 『魚半』に来たのは愛知のうなたろう君の情報による。
 「ごり料理」で有名な『ごり屋』という老舗料亭があって、こちらでは「ごり」以外の料理が、「ごり」以上についてきて非常に高価な料金となっている。
 その点、『魚半』はよしとすべきだろう。

 あまりに高価な「ごり」に食べるものも食べられなかった。
 片町の今風の店で腹の虫をなだめてホテルに帰る。

 ボクの場合、月曜日、火曜日と宮崎県延岡市。
 水曜日深夜金沢に向かって睡眠時間は3時間ほど。
 深夜バスで3時間眠れるようになったのは進歩といわねばなるまい。
 それにしても疲れ果てた。

 金沢の旅 04へ続く

金沢中央卸売市場
http://www.kanazawa-market.or.jp/Homepage/
ウロコ水産
http://www.urokosuisan.co.jp/
石川中央魚市
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ツバイはうまいよ!

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 エゾバイ科の巻き貝にはエゾバイ属とエゾボラ属があって、前者は刺身にもなるが主に煮ものに、後者は煮ものにもなるが主に刺身になる。
 ともに煮ても刺身でもうまいのだけど、エゾバイは刺身にして柔らかく、煮て柔らかい。
 エゾボラ属が煮ても刺身にしてもコリコリしているのとは大きな違いである。
 柔らかいのが好きか、コリコリしたのが好きなのか、これは人それぞれである。

 さて、最近煮てうまい巻き貝というと関東の市場に氾濫するが如く、また欠かすことの出来ないものとなっているのがエゾバイだ。
 市場ではもっぱら「磯つぶ」と呼ばれている。

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これが「磯つぶ」と呼ばれるエゾバイ

 これがまことにうまいのだけど、それに匹敵して、柔らかさの点で上回っているのがツバイなのだ。
 島根県では揚がってくるものが黒く汚れているので「黒ばい」なんて呼ばれる。
 関東では小振りのエッチュバイと一緒くたになって「白ばい」。
 なんて対照的な呼ばれ方なんだろうと、人の印象づけられ方の多彩さに呆れる。

 エッチュウバイが殻長(高さ)20センチ近くなるのに対して、こちらはせいぜい5〜7センチほどの小振りのバイである。
 小振りだから煮る、酒蒸しにするなどに向いている。

 今回のものは八王子綜合卸売協同組合『マルコウ』で見つけた産地不明のもの。
 面白いことにツバイの頭はいつもだいたいはげている、はげて頭がちょん切れていたりする。
 めったにきれいなのにはお目にかかれないのだ。
 そんなべっぴんさんのツバイだったから買い求めた。
 これほんまにツバイなんだろうか?

 撮影して、よく見て、眺め回す限り、やはりツバイに違いない。
 醤油と酒で煮あげて食べても、やはり甘味があってうまい。
 この柔らかくて甘味のある端正な味わいはツバイ以外ではありえないのだ。

 島根県では近年ツバイの水揚げが減っているという。
 エッチュウバイよりも深いところにいるのだけど、地域によっては幻の貝だね、なんてことになっている。
 そのためだろう、市場でもあまり見かけない。
 見かけたら、絶対買って食べて欲しい巻き貝のひとつだ。
 
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明日から旅に出ます

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明日10日は北九州市で市場巡り。
旦過市場ほか無数の小さな市場があるとのこと、雑誌『雲のうえ』を携えての町歩き。
「雲のうえ」は地方誌の中でももっとも優れたもの。
こんなものを島根でも出せたら素晴らしいのだけどね。

11日は朝方は松江魚市場、水揚げ状況を見て、終日会議。
12日には朝から夕方まで会議。
できましたら13日には大阪で自由な市場巡りのときを過ごしたい。

さて、先週より、島根県水産振興の会議議題を書き、報告書を作る。
雑誌連載を書きためる。
魚貝類の撮影と、料理の撮影。
同定検索。
画像の整理。
図鑑の改訂。
生活のための仕事。
その上、なぜか最近やたらに眠いので身動きのとれない状況に陥っている。
この行き詰まりを旅が解消してくれるかな?
最近、個人的には不幸のどん底にあるので、転機が欲しい!


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 八王子総合卸売センター『さくら』で話し込んでいると、カキフライが出てきた。
 ボクはけっしてお客じゃない。
 敢えて言えば、店にとっては迷惑極まりない怪しい存在だ。
 この日も、場所を借りて仲間と話し込んでいただけなので、つくづくすまないね、と思いながらカキフライを口に放り込む。
 今年は慌ただしくて、これが何度目のカキフライなんだろう。
 ひょっとしたら初物ではないだろうか?

 まるで洋食屋のように盛りつけられたカキフライ。
 脇にあるのは自家製のソースではないか。
 揚げたての香りに、誘われるように箸がでる。
 かりっと揚がったパン粉が香ばしい。
 そしてなかから、濃厚な旨味の塊とかしたマガキの剥き身。
 カキフライはフライとスープを同時に食べているかのごとき料理なのだ。
 その味わいは複雑で芳醇である。
 けだし、まささんの揚げ方の絶妙であることよ。

「まささん、カキフライって品書きにあったかな」
「ないよ、ウチは中華だから」
「じゃあこれは賄い(夫婦の食事用)なの」
「頼まれればお客にも出すけどね」

 中華料理屋のオヤジがつくったカキフライが、そのへんの洋食屋で食べるものよりも断然うまいなんて、困ったものだ。
 とは思いながらも、お代わりが欲しくなるほどうまい。
「まささん、お代わり」
「いやだよ、オレら夫婦の分がなくなるでしょ」

 さてさて、今年の師走も猛スピードで日付が替わっていく。
 すでに旬日が過ぎてしまっているのだ。
 気がついたら2009年になっていたなんて、そんなこともありえそうだ。
 雑木林の階段を登ると、カサカサと落ち葉の音がする。
 よく見ると灌木で裸木となってしまったものがある。
 毎年この早く葉を落としてしまう木の名前が知りたいと思う。
 思いながら、調べ忘れて、また次の年もそんなことを考える。

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八王子の市場に関しては
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アマダイの若狭焼き

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 ボクが船釣りを始めたのがちょうど27年前のこと。
 相模湾の比較的近場でマダイ五目で出船していた。
 マダイが主役ではああるが、いろんな魚が釣れるわけで、水深の深い場所で必ず混ざってくるのがアマダイであった。
 その当時、釣り宿の年寄り船頭(明治生まれ)にとって、不思議で困ることというのがあって、それがアマダイなのである。
「おらお、子供の頃あお、こんなもんクズだったお。食ってもうまかねえし、みそ汁にもなんねーお」
 その当時から、アマダイ釣りで稼ぐ漁師がいたそうで、それが小田原、茅ヶ崎などのジイサン達には不思議で仕方がなかったのだ。

 ぐっと現在に話をもどす。
 今では相模湾で延縄などをやっている漁師はほとんどいない。
 例えば横須賀市佐島大楠漁港でも一人もしくは二人といったところ。
 その延縄であげたアマダイが幾らするかというと、浜値で1本一万円以上なのだ。
 同時にあがったマダイの2倍近い値段。

 これは漁師の手取りなのであって、ここから築地などに行くと、いったいどのような値段となるのか、想像できない。
 さて、築地を歩きながら探すアマダイはキロあたり5000円前後が妥当だと思っている。
 小振りで500グラムくらいなら3000円出しておつりが来る。
 持ち帰ったら半分だけウロコをすき引きし、半分はそのまま。
 そう言えば、アマダイの鱗を包丁でバリバリなんてやっているのをテレビで見たことがある。
 あんなことをやってしまったら柔らかすぎるアマダイの身がすり身になってしまう。
 アマダイは持ち方からして、卸かたからして細心の注意を要する。
 二枚に下ろしてすき引いた半身は昆布締めにし、半身には振り塩をしてビニール袋に密閉して1日寝かせる。
 これを翌日焼くのである。
 残った半身はウロコがついたままである。
 こちらに日本酒を塗りながら焼き上げる。
 ウロコ側はこんがりと、身の方はしっとりするのがいい。
 このとき慎重であらねばならぬのが串打ち。
 今回もちょっと失敗して、4本打つ金ぐしの1本が浅すぎた。
 アマダイの季節は秋から冬にかけてで、産卵期をすぎると味ががくんと落ちる。
 この時期に何本のアマダイを食べられるのか、できれば2桁食べたいものだと思うのだが、無理だろう。
 だからいつまで経っても串打ちがうまくならない。

 さて失敗とはいえ、若狭焼きは本当にうまい、
 鱗側の皮を剥がしてカリカリと食べてから、練り絹のような柔らかい繊維質の身を食べる。
 このアマダイ独特の風味をどう表現していいのか未だにわからない。
 皮で蓋をしていただけに、取り去り、身を剥がすと一度期にアマダイの香りが立つ。
 そしてアマダイが「甘鯛」じゃなかろうか、と考えた人の気持ちがわかる、その甘さ。
 この半身をそれこそ骨の際まで食べて食べて、しゃぶってしまうので、後に残るのは骨だけとなる。
 アマダイの若狭焼きだけは猫もお裾分けに預からないのでつまらなさそうだ。

 最後にクイズをだす。
 アマダイでどこがいちばんうまいのか?
 部分(場所)で答えていただきたい。
 食べてみるとすぐにわかるはずだ。

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 学校給食のない日のお昼はボクが用意している。
 いちばん良くつくるのがカツサンド、ハムカツサンドで太郎の大好物。
 それにときどき変化球。
 なかみのカツ(フライ)をエビにしたり、ホタテにしたり、ニシンの酢漬けにする。

 そして今回は安かったために買いすぎてしまった三重県産のゴマサバ。
 たくさん買い込んで開いて干物にしたのだけど、それでも2本ほどあまる。
 三枚に卸して血合い肉骨を抜く。
 塩コショウ、タイムを振る。
 これを通常通りにフライにする。
 別に書く必要はないと思うけど、小麦粉をまぶして、溶き卵をからめ、細かいパン粉をつけて揚げるだけ。

 ロールパンに切れ目を入れて、レタス、ラディッシュ、ゴマサバのフライを挟み込んで出来上がり。
 これに市販のタルタルソースとケチャップを添える。
 我が子ながらケチャップ、マヨネーズ好きで、タルタルソースが嫌いらしい。
 使い終わったケッチャップの減り具合に驚き、マヨネーズまでかなりの減り具合なのにまた驚く。
 太郎が食べると、食卓が汚れて困る。

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 石川県の郷土料理に「いわしの塩煎り」というのがある。
 金沢市から能登半島にかけてつくられるものだと思われるもので、料理するとも言われぬほどに単純なもの。

 カタクチイワシもしくはマイワシのウロコ、頭、ワタを取り去る。
 これをひたひたの塩水でゆでて、そのゆで汁を捨て、水分がなくなるほどに煎りつける。
 季節を問わぬ料理で、夏から秋にかけてはマイワシの小振りなものが手にはいるので、寒くなってくるとそのマイワシが大きくなりすぎるのでカタクチイワシにかえる。

 今回は出始めたカタクチイワシを「塩煎る」ことにする。
 頭とワタを取り去るのはいたって短時間で出来る。
 問題は水加減である。
 我が家では小さなテフロンフライパンを使う。
 これに魚がかぶるくらいの塩水を入れて沸騰させる。
 カタクチイワシを入れて、じっくり火を通す。
 ゆで汁を捨てて、煎るのだけど、これはほどほどでいい。
 皿にたっぷりの大根おろし。
 そこにカタクチイワシを盛って、酢をかけ回す。

 食卓では酢に漬かったのに醤油が染みた大根おろしをのせながら食べる。
 ボクが思うにこれは酢の物であって、ご飯のおかずではなく、箸休めのようなもの。
 そして格好の酒肴である。
 最後に注意点をあげると、とにかく大目につくること。
 こんな単純な料理ではあるが子供にも大好評。
 へたに少なくつくるとお父さんの食べる分がなくなる。

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 ボクにとっての干物の季節到来である。
 要するにハエが飛ばなくなったのだ。
 最近では11初下旬ですらハエがいる。
 だから干物を干すのはもっぱら冷蔵庫の中。
 これじゃあ、どうにも風情がない。
 やっと師走となって、外に干せるようになった。

 せっせと魚を開いては干す。
 朝ご飯に晩酌に干物を食らう。
 干物三昧の日々となる。
 初手は干物にして最高にうまい魚である「スミヤキ(クロシビカマス)」。
 和歌山県串本市の出口水産からきたもので一キロなんと格安の500円(卸値)。
 1尾で200円ほどしかしない。
 真っ黒で、骨が多いので、なかなか買い手がいない。
「こんなうまい魚買わねーのかい」
 安いのでうれしくなってたっぷり買い込む。

 そして面倒なので、市場でいきなり開いてしまう。
 こびりついた血液などを良く洗い。
 振り塩をしてしっかりビニール袋に密閉する。
 冷蔵庫で一日寝かせて、冷たい師走のベランダにて干す。
 個人的にやや乾き加減の方が好きなので、ほぼ一日干してしまう。

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 これを遅く帰ってきて、熱燗とともに手でむしりながらやる。
 小振りなので脂はどうだろうと心配していたら、指がべとべとするほどにのっている。
 これが甘味のように感じられるのだけど、渋みが同時にくる。
 渋いというと悪い意味合いにとられそうだけど、干物が美味であるための一条件である。
 しかも、旨味が強いのだろう、旨口の燗あがりした日本酒に非常に合う。

 そろそろ日付の替わる時間なのだけど、遅く読む新聞の見出しが暗い。
 文字を負っていくとますます暗い思いになる。
 そして麻生という総理大臣は、軽佻浮薄、無能、滑舌悪く、祖父の七光りを受けているだけなのに、身の程を知らぬヤツであることが明白にわかる。

 ただ唯一道路族笑う年末となりにけり ぼうずコンニャク

 けだし、吉田健一という人は偉い男であったことよ。

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 金沢中央卸売市場で歩きに歩き、荷受け、仲卸で島根県の水産物の評価などを聞く。
 これがなかなか疲れるのだ。
 なにしろ無類の市場好きであるし、市場にある水産物青果ともに大好きなのだから歩いているだけで短時間に膨大な情報が頭に入り込んでくる。
 ちなみに最近のフードライターなんてヤカラの食の知識なんて、幼稚園に入る前のレベルでしかない。
 職業にすると食への好奇心が薄れるのだろうかね。
 金沢の地納豆を見つけた、練り製品の種類、天然らしいキノコがあってイグチ科らしいなど、これらはおいおい書いていくことにする。
 仲卸に据え付けの火鉢があって炭で暖をとっている。
 きっと厳冬期には絶えられないほど冷え込むに違いない。
 ふと、井上靖『夏草冬濤』をもう一度読み直したくなる。

 中央市場を後にしたのが9時前。
 市場があるのが北陸本線の西側になるので、ここからバスに乗り、金沢駅をこえて、こんどは北陸本線の東側にある武蔵が辻で降りる。
 これが3度目の近江町市場である。
 ここでも一部建て直し中で改装を始めている。
 20年ほど前にきたときより、変に小ぎれいになり、北陸の庶民の市場らしさ、質実な部分が安っぽくペレペラしたものに変わりつつある。

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 さて、ここで金沢のこと。
 金沢は戦国時代から江戸時代にかけて佐久間氏、前田氏と大大名の居城が造られた。
 その戦国期以来の城下町であることは平城ながら戦国時代の面影は曲がりくねる通り、路地などに感じられる。
 普通観光客が訪れるのが、金沢駅の東側。
 浅野川、犀川に挟まれた市街地。
 バス通りが駅から東南に弓なりに曲がって、武蔵が辻、香林坊、片町へと続く。
 この通りの左右に金沢城、兼六園、武家屋敷がある。
 ただボクは今回が3度目なのだが兼六園にも武家屋敷のある通りにも、東の廓にも行ったことがない。
 観光らしい観光はまったくしていない。
 だから一般的な概念としての金沢はまったく知らないと明言しておきたい。

 近江町市場はたくさんの路地。
 路地の左右に魚屋、塩干・練り製品の店、青果店が並ぶ。
 この市場の歴史は古く、加賀一向宗の尾山坊建設(1546年)のときに近江商人の門徒衆が移り住んだところ。
 近江商人が移り住んで市場を形成したので「近江町」の文字がある。
 江戸享保年間までは加賀藩の御膳所であったが、享保6年(1721年)に庶民も利用できる市場となった。
 これが金沢の台所と呼ばれる所以である。
●『聞き書 石川の食事』(農文協)より

 庶民の台所として親しまれたことは、現在にも続いている。
 金沢ならではの総菜類、加工品に野菜類が豊富なのも生活密着型の小売店が多いからだろう。
 そこに観光客相手の店が入り交じる。

 大通りからの入り口近くにゆであがったカニが並ぶ。
 ズワイガニのオスとメス。
 オスが1ぱい1万円からと、なかなかいい値段なのだ。
 またその昔安いので、子供のおやつにもなったという「香箱かに(メスガニ)」が1ぱい1000円を超えるというのもすごい。

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 関東で買えば、高くてもこの半値である。
 ちなみに八王子の市場での価格が12月1日にメスで1ぱい350円(卸値)だから、日本海側はズワイガニがもっとも高く売り買いできる地域といっても過言ではない。
 この金沢での値段が高すぎるというのではない。
 むしろ関東など中央市場を通り過ぎてきたものが安すぎるのだ。
 ただロシア産がこのなかにかなり混ざっていて、金沢にまで来て、輸入物のズワイを買うことはない、だろうと思うのだけど。

 魚屋にはエッチュウバイがかなり見られた。
 やはり北陸から新潟にかけては、もっともエッチュウバイを好むのだというのがまざまざとわかる。

 がんどう(ブリの若魚)、水魚(ノロゲンゲ)、ウスメバルに赤らばちめ(ハツメ)などみな素晴らしい鮮度である。
 これを金沢の普通の主婦が買っていく。

 午前10時を回る。
 午前6時からの市場回りで足がガクガクしてくる。
 ヤマトシジミさんと通りを渡り、なんとスターバックで休む。
 ここで金沢で見た水産物の流れを簡単に整理する。
 今回の金沢での視察は島根県の水産物のことを考える上で、収穫が大きいであろうことを確認する。
 話はそれてしまうけど、スターバック(うちの姫などは“スタバ”という)の店内に入ったのは初めてだ。
 わけのわからんコーヒー(?)、トール キャラメル マキアート420円なんてものを注文してみたらうまい。
 考えてみると、ぼうずコンニャクにスタバはお似合だな!

金沢中央卸売市場
http://www.kanazawa-market.or.jp/Homepage/
ウロコ水産
http://www.urokosuisan.co.jp/
石川中央魚市
http://www.kanazawa-market.or.jp/Homepage/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


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