食べる魚類学: 2005年7月アーカイブ

 ヌタウナギは正確には魚類ではない。アゴもヒレもなく動物学的にはタイやイワシの硬骨魚類、サメやエイなど軟骨魚類と分けられて『無顎口上綱』となる。この『無顎口上綱』にもメクラウナギ目とヤツメウナギ目がある。ヤツメウナギは意外に北日本では珍しいものではなく昔から滋養強壮の薬であったり、またやや高級な味わいとして珍重されてきた。それがメクラウナギ目は海産水産物としてそれなりに資源があるのに食文化のためかほとんど未利用であったのだ。
 実際、メクラウナギ目で国内で利用されているのを見たのは新潟県での「穴子」がクロメクラウナギであったのを実験したのみである。このクロメクラウナギは夏に産卵回遊してくるのを漁獲する。また太平洋側ではムラサキヌタウナギが見られ、これなど漁獲した魚を傷つけるものとして厄介者扱いを受けている。そしてまたヌタウナギも同様なのである。この厄介者たちが近年脚光を浴びている。
 それは我が国では利用されない、厄介者が韓国では高級食材なのだ。当然輸出されている。その輸出している漁業者に聞くと、「韓国ではとんとんと刻んで野菜と炒めるとか、煮込むとあするとうまいっていうね。今じゃ取るそばから韓国の業者が持っていくよ」。どうして韓国ではそれほど珍重されるのか、定かではない韓国での食べ方。まあなにはともあれ食べてみなければ始まらない。
 それで在日韓国人の方に調べてもらった。その食べ方が野菜と炒めて、薬念醤(ヤンニョンジャン)と酒、少しの醤油で味付けるというもの。「ヌタウナギのさばき方はわからないけど適当にトントンと切るのよ」という乱暴な話であるが、これに挑戦した。
 とにかく粘液質のヌタウナギをトントンと切る。切ってもまだ蠢いているのをゴマ油で炒める。そこに玉ねぎ、ピーマンなどを放り込み酒でゆるめた薬念醤を回しかけて、醤油で味を調えた。炒める内にもヌタウナギから粘液がでてまるで片栗粉でとじたようなものとなった。これを熱いウチに食べてみる。
 薬念醤の味わいなのだろうか、ヌタウナギにクセや臭いはなく、まるでモツを食べているような食感。噛むとジャリっとした食感があるのは脊索とそこから出る神経突起だろうか? これは少し気持ちが悪い。でも慣れれば平気だろう。それ以上に何度も噛んでいるととそこはかとない旨味が湧いてくるし、魚の肝のようなコクもある。これは夏にスタミナ食として食べるにはいいのではないか、と思った。
 日本各地の港でメクラウナギ目の魚はうち捨てられている。これ隠れた漁業資源、食材として活用すると面白いかも?

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