食べる魚類学: 2006年5月アーカイブ

 街歩きをして、魚屋を見つけたら「締め鯖」を買うことにしている。これなら帰宅時間が長くても安心して持ち帰れる。そして江東区三好であるが、季節は初夏。下町の雰囲気のいい魚屋を見つけて「締め鯖(関西での生ずし)」でも買って帰ろうかと思い立ち、これまた気さくなオヤジさんに声をかけようとして……、「マサバのいちばん悪い時期」であるのを思い出した。それで「酢で締めた鰺はないでしょうか?」と聞くと
「酢鰺ならあるけどね。締め鯖がいいよ」
 これがなかなかいい声だ。
 そんなことを言われても、なおかつ買ってきたのが酢鰺である。
 これがてっきり酢締めの鰺だろうと思ったら、違っていた。酢締めというのは、マアジを三枚に卸して、強い塩をして置き、それを洗い流して酢をくぐらせる。もしくは一定時間酢に漬けたもの。でも10枚500円の酢鰺はまったくそんなものではなく、どっぷりと酢に漬け込み、骨まで軟らかくしてある。酢締めの鰺が生ものだとしたら、こちらは保存性のある加工食品といった感がある。
 この酢鰺であるがとにかく軟らかい、薄皮をひっぺかして血合い骨もそのままで舌の上でなんなくつぶれてしまう。そして鰺のうまみのある身と酢の味が口中に広がり、そこに適度な塩気がくる。粉ワサビもたっぷり添えてもらったから。ちょんちょんと乗せて、軽くワンカップを半分だけ。腸のポリープさえ取らなければ3杯はいけたかも、残念至極。
 酢鰺を作っている。食べているという方がいたら教えて欲しいな。我ながら、下町でこんな新たな発見があるなんて思いも寄らなかった。

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●江東区三好にあった魚屋、屋号を聞かないで帰ってきてしまった。また画像を見ても屋号が判明しない。残念である


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 ウナギ屋というのは難しい商売だ。買い入れるウナギから、焼き方、タレなど、その味わいを作り出す要素は複雑多様。それだけにウナギ屋にはいるとじっくりその複雑さを味わい鑑みる。しかも値段からかそれだけのうまさを求めてしまう。

 埼玉県川越はウナギでも有名な土地柄、できればうまい蒲焼きを食べたいものだ、と探してみた。もともとガイドブックなど嫌いなたちで店の構えを見て入るのが常套。
 そんなそぞろ歩きで見つけたのが「深井屋」である。店構えもほどほどに抑制された造りで好ましい。ここで午後のひとときを過ごすのもいいだろう。実際、はいった様子もいい感じである。店のいちばん道路側に座り、道行く人の足元だけが見える低い窓。なんだか時が止まっているように感じる。まあ店内の造りは今風で決してじっくり見てあか抜けた雰囲気ではないが「これはいいんでないかい」。
 そこでウナギの頭の佃煮を肴に熱燗を1本。待つことしばしでうな重(1680円)が出てきた。すなわち蒸しの行程まで済ませたものを焼いて出しているのだ。食通じゃないのでこんなことはどうでもいい。蒸しまで置いておいてもうまいうな重は多々あるのだ。肝吸いが来て新香がきて。銚子にのこった酒を一口にあおってうな重を食う。
 上に1串半の蒲焼き。これが軟らかく香りも悪くないが平凡なもの。どうもこれでは面白くないのだ、食べていてウナギの味わいがそこそこ出てはいる。仕入れからしても間違っていないだろう。タレはやや都会的で甘味を抑えていて、ある意味洗練されているのだろう。でも食っていて良識的すぎる。優等生だ。ウナギ料理に関する限り、これはいけないと思う。もともと野卑な料理なのだ。味わいのどこかに野性的、精悍な躍動感が最低限ないと寂しい。それが「深井屋」には感じられない。
 このうな重を食べていると宮崎の「浜乃茶屋」さんや「うなせん」さんのウナギの旨さが思い出されてならない。我ながら罪な旨さを知ってしまったものだ。ウナギの味わいには「なにかもう一つプラス野卑、野生」が必要なのだ。それからすると「深井屋」は後二歩くらい足りない。
●入店したのは3時前。少々昼時をのがしてしまっている。これで「深井屋」の味わい自体を判断することは出来ない。これはあくまで悪条件での評価。こんな条件でそこそこの味わいを出せるのは凄いのかも知れない

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深井屋 埼玉県川越市仲町2-8


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