食べる魚類学: 2008年9月アーカイブ

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 朝は思った以上に気温が低く、「寒い」と感じるほどだ。
 それで市場に出かけると、フグをあちこちで見かける。
 八王子の市場にはフグ調理師の資格を持つ仲卸が何店舗かあり、気温が下がると、途端にたくさんのフグが集まってくる。
 ただし、ボクが目をとめるのは間違ってもトラフグじゃない。

 八王子綜合卸売協同組合『マルコウ』の前にあったのはショウサイフグに「あかめふぐ(ヒガンフグ)」、そしてマフグだ。
 この3種だと、どうしてもヒガンフグ、まぎらわしいことに市場では「あかめふぐ」を選ぶことになる。
 クマゴロウに毒の除去をお願いして、ていねいに青い紙にくるんで持ち帰る。

 市場からの帰り道、中央線の土手に彼岸花が満開となっている、明日は秋分の日。
 ヒガンフグは布巾にくるんで冷蔵庫に仕舞い込み、仕事に出かける。

 さて、火曜日の休日はありがたいような、ありがたくないような。
 どことて行く当てもなく、また我が家のご先祖の眠る墓は遙かに遠い。
 お彼岸らしいこともしないで、その夜はヒガンフグでいっぱい。

 三枚に卸して、適度に薄皮を取り、皮目を直火であぶる。
 すぐに氷水に落として、後は簡単、ほどよい厚さに切りつける。

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皮目をしっかり焼く方がいい

 今年の「初ヒガン」は、思ったよりもうまい。
 まだまだ旬とは言えず、やや旨味に欠けるが、シコっとしっかりした身質に甘味と焼いた香ばしさを感じる。
 ヒガンフグは十月、十一月、そして師走となり、どんどんうまくなってくるはずだ。
 そして来年春のお彼岸には時期が終わる。

 ちょっと深酒になってしまって、若くして彼岸に渡ってしまった兄や、またボクがまだ幼い頃に死んでしまった母のことを思う。
 彼岸にヒガンフグを食うと寂しくなるものなのだ。

9月24日のメモから
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヒガンフグへ
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 八王子魚市場に「もうか(ネズミザメ)」が入荷してきていた。
 もちろん丸のままではなく肉のかたまりとなって。
 産地はネズミザメの水揚げ高ダントツ一位の宮城県気仙沼である。
 臭いを嗅いだり、触ってみた限り、鮮度良好に思える。
 こんなことをやっていたら、近所の魚屋のオヤジさんたちが近寄ってきた。
「サメ買うのかい。もうかだね」
「昔はこのあたり盛んにサメを売ってたんでしょ?」
「そうだけど、これじゃないよ。棒だよ、棒」
「だって、昔は丸のまま貨車(鉄道)できて、それぞれの店で剥いていたっていうじゃない」
「あー、そりゃ、もっと昔だな」
「オレらの時代はやっぱり棒ざめ(アブラツノザメの剥き身)が主だな」
「戦後すぐまではサメの皮を剥いてさ、それをまた売るの。こうやって(ゴシゴシするまね)漬物にする大根を磨くのに使うからさ」
「そうそう、懐かしいな。ウチのお袋もサメの皮で大根ごしごし洗ってよく漬けてたな」
「もうかは最近買わないの?」
「買わない、売れないからね。棒だって売れないよ」

 この腹側の脂ののってそうなところ(キロ当たり600円)を1キロ買ってくる。
 そして『市場寿司 たか』で刺身にする。
 通りかかったこれまた近所の食料品店のオヤジをつかまえて三人で食べてみる。
「あれれれ、うまいね。クセないし。ちょっと肉(獣肉)って感じだけど」
 たかさんはこの手のものを苦手としているが、
「うん、オレもうまいと思うな。ニンニクがあるともっといいかな」
 本当にこれがうまいのだ。
 例えば牛肉の刺身のようだ。

 実は今年の6月に広島県三次市に立ち寄った。
 このあたり備北地方は「わに(サメ)」をよく食べる地域として有名である。

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三次市のスーパーに売られていた「ねずみわに」

 この「わに(サメ)」を食べるというのは先々述べていくとして、市内のスーパーを歩くと、総ての冷蔵ケースにパック入りのサメがおかれていた。
 サメは2種類で、方や「いらぎ」というのだけど、たぶんアオザメだろう。
 こちらは安い。
 もうひとつ「ねずみわに」は間違いなくネズミザメ。
 産地表示が「宮城県」とあるからには間違いなく気仙沼だろう。
 この2種類をホテルに持ち帰り食べてみたら、なかなかうまいのだ。

 関東でサメを食べるとしたら煮つけか、フライなどだろう。
 広島県の北部でサメの刺身を食べるようになったのは、島根県で明治時代にサメ漁が行われるようになって、さかんに芸北に持ち込まれたからだという。
 サメは体内に多量の尿素を持っており、これが海水の塩分濃度と体内とのバランスをとる役目をしている。
 これが死後分解されアンモニア類として体内に蓄積する。
 アンモニアが腐敗するのを抑制して、冷蔵施設のない時代には山間部での生食用として重宝されたのだ。

 思ったよりも食べやすく、またおいしいサメの刺身を食べてみて、ますます“サメを食べる文化”の衰退を残念に思う。
 残った「もうか」は帰宅後、フライとして夕食のおかずにした。
 これぞ「シャークフライ」なのだけど家族には大好評だった。

市場魚貝類図鑑のネズミザメへ
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 仲卸の入相(入合 いりあい)にシマイサキが1尾、ぽつんとあって、「いくら」と聞くと、量りにのせて「150円でいいわよ」というので買い込んでくる。
 その場で背開きにして、持ち帰って振り塩。
 ビニール袋で寝かして、冷蔵庫で干す。
 半日ほども干し上げて、出来上がったものを冷凍庫にしまう。

 遅く帰った日に、これをアテに酒を飲む。
 酒は「東北泉 特別本醸造」。
 この酒は室温でやっても切れがいい。

 さて、あぶった干物を適当にむしる。
 パソコンを打ちながら酒のアテとして食べるのだけど、これがなかなかうまいのである。
 味が深いというか、微かに日向臭いような、これは風味といった方がいいのだろうね、個性的なものがある。

 二杯目のコップ酒を飲み干して、ただちにパソコンを終了させてダウンする。

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 秋になってアカカマスの入荷が目立ってきている。
 不思議な魚で、産卵期が夏だとしたら、春に味がいいはずなのに、産卵後の秋から特に冬にかけてがおおいにうまい。
 うまいからだろか、値段もこの時期に高めであるように思う。
 八王子魚市場に見事なのをみつけて、値段を聞くと、キロ当たり1800円だという。
 いい値段で、明らかに高級魚だ。
 産地は愛媛県。
 軽く体表をなぞるとぬめっと脂を感じる。

 今回は、旬到来のアカカマスを、王道である塩焼きにする。
 なに、カマスの塩焼きほど簡単な料理はない。
 水洗いし、後は前後真半分に切る。
 振り塩をして、二時間ほど待つのだ。
 後は串を打ち、魚焼き器の上に耐火煉瓦を台にして、強火の遠火で焼き上げる。

 コツと言うほどでもないが、塩焼きはできるだけ焼きたてを、すばやく食うこと。
 アツツツ・ツーなんて箸を使わず、手づかみするのもいいねー。
 いいねー、いいねー、秋のカマスのうまさよ。
 どうしてこのように旨味が濃いのだ。
 まして皮下がしっとりしているのは脂がにじみ出てきている、からだねー。
 一本焼き上げると、また一本、また一本と焼き上げる。

 この真っ向勝負のうまさに酒を飲むのも忘れてしまっていた。
 秋のカマスは身体にも優しいねー。

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 天候が不安定な9月。
 それでもマイワシの入荷は安定している。
 とくにいいのが三河湾などからくる小イワシ。
 たっぷり脂がのっているので、刺身だ、天ぷらだ、フライだ、鍋物だって、毎日のように食べても、食べても、食べ飽きない。

 我が家では、出来るだけ市場でマイワシを卸し身にしてくる。
 頭をちょんと落として、手開きにする。
 八王子総合卸売センター『総市』のまな板で、小イワシを開いていたら、魚屋歴50年のサブちゃんが「へたくそだな」なんて手を貸してくれる。

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魚を卸して50年のサブちゃん

 さて、今回の主役は、この手開きして、取り外した中骨、小骨。
 軽く片栗粉をまぶして、カリっと揚げてしまう。
 油の温度ははじめは低温で、じっくりと。
 一度、油から取りだして、高温で二度揚げする。
 これが我が家の定番料理「骨の唐揚げ」、略して「骨から」だ。

 このようなものを作ると、すぐに反応するのが子供達で、食卓には数十秒しか存在しないのだよ。

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 先週のなかばあたりから夏バテの症状が出ている。
 ちょうど朝方4時過ぎまでパソコンに向かい。
 軽くシャワーを浴びて、よく身体をふかずに眠ってしまってから、なんだか気だるい日々が続いている。
 しかも最近深酒が続く。

 そんなとき八王子総合卸売センター『やまぎし』で見つけたのがカナドだ。
 川崎北部市場で仕入れている店なので相模湾などの魚が入相でくることがある。
 それがなかなか楽しいのだけど、カナドを買ってしまうとは、疲れが脳みそをおかしてしまっている、気がする。
 カナドはいやな魚だ。
 ウロコは硬いし、棘は鋭い。
 買った途端にその鋭い背鰭がビニール袋を刺し破る。

 帰宅して、カナドをまな板にのせて考える。
 こんな小魚一匹では、料理のしようがない。
 仕方なく、三枚に卸して、とりあえず刺身にする。
 刺身と言っても小皿にこんもりといったささやかなものだ。
 カボスをぎゅーっとしぼり、生醤油を回しかけて酒のアテにする。
 ちょっともの足りなくなるほどに旨味も甘味も微かである。
 それでもカマスの干物の合いの手にはいい感じであるなー。

 新聞をひろげるとプライムローンだ、迷走台風13号だとか、レタスが高いなんて暗い話ばかり載っている。
 ボクの頭の中も真っ暗闇なので、相乗効果的に鬱に追いやられていく。

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サワラの酒塩焼き

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 魚偏に「春」と書くからおかしなことになる。
 まるで「サワラの旬が春」であるように思われる。
 サワラの旬は秋から春にかけて。
 春は「名残のサワラ」であって、もっとも美味な時期ではない。
 サワラのスペシャリストが揃う、岡山中央市場で聞いてみる。
「サワラは冬に和歌山とか淡路でとれるのが最高です。春になって岡山あたりまでくると味は落ちてますね」
 こんな答えが返ってくるのだ。
 だから「サワラの旬は春だ」なんて思っていたら大間違いだ。

 さて、そろそろサワラもうまかろう、と2キロほどのを買い求めてくる。
 1キロ1200円だから1本税込みで2500円見当だ。
 三枚に卸して、切り身にして、強めに振り塩。
 焼く、1時間まえに酒に漬け込んでおく。
 酒は旨味のあるものを選ぶ。
 料理用酒だけは淡麗辛口はだめだ。
 後は焼くだけだ。

 今回は焼きゴボウ、焼き里芋、甘長唐辛子にミョウガとスダチを添えた。
 まだまだ秋らしくはないが、皿の中が豊かに見える。
 外から聞こえてくるのはコオロギの声で、まだまだアオマツムシは影をひそめている。
 この時期はもっとも昔ながらの虫の集きを感じ取れる。
 そして旬目前のサワラのうまいこと。

 酒は新潟の「鶴齢」。
 ついつい飲み過ぎてしまう旨酒である。

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 子だくさんなので、料理は「子供中心」に考える。
 それでも我が家の場合、必然的に大量に魚を食べているわけで、“なんとか無理矢理でも魚を食べさせる”ことになる。
 炊き込みご飯というのは、そのような時の救世主的な料理法だ。

 サワラの皮目に焼きをいれて、ネギやショウガ、青じそなどをのせてぽん酢をかけ回す。
 ようするに「サワラのたたき」なのだけどついつい作りすぎてしまう。
 あまったサワラはもったいないので、薄口醤油にまぶしておく。

 翌朝、水加減したお釜に、残ったサワラ、ゴボウ、ニンジンを放り込み。
 酒、薄口醤油、塩で味加減して、あとはガスの火をつけるだけ。
 30分もすれば蒸らしも終わり、おいしい炊き込みご飯ができあがる。

 お金も、暇もないのに子だくさんの我が家では、こんな工夫が日々大切なのだ。
 天にかざったユズは市場の八百屋さんが「一個持ってけよ」とオマケしてくれたもの。
 こんな人情がありがたいねー。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、サワラ
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 「巻繊(けんちん)」とは“巻く”とか“せん切りにする”とかいう意味がある。
 主に禅宗がこの国に入ってきたとき、鎌倉時代以来使われてきている言葉だ。
 現在では主に“せん切りにする”という方に重きをおいて料理名となっているようだ。
 それで我が家の定番料理、「あんかけ」にも「巻繊」を冠している。

 血合い骨、腹骨を取り去ったゴマサバは塩コショウして片栗をまぶして揚げる。
 出来るだけカリッと香ばしく揚げて欲しい。
 片やカツオ節だし(だしはなんでもいい。インスタントでも結構)を煮立たせて薄口醤油、塩、味醂で味加減。
 ここにせん切りにしたニンジン、セロリ、ピーマン、シイタケを放り込む。
 野菜はあまり煮ないで、もう一度味加減。
 片栗粉であんにする。
 皿に揚げたコマサバを置き、あとはあんをかけるだけだ。

 皿の中でゴマサバをほぐしながら、野菜とあんごとすくって、ご飯にのせて食べる。
 こんな簡単な料理だけど、【「魚は死んじゃっても食べない」と言ってた近所の小学生がお代わりする】くらいに、万人向きのおかずである。

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「コバンザメってうまいですよね。本当にうまいと思うんですけど、このあたりでも誰も食べないんです。僕だけだと思うんです、食べているのは」
 定置網漁師、わかしおさんは音を区切ったように、たどたどしく話す。
「どうやって食べているのかな」
「ウチでは煮たり、焼いたりですけど」
「今夜は鍋にしようと思ってるんだ」
「ああ、あー、それはいいと思いますね。合うでしょう」
 今回の「若潮便」(鹿児島県南さつま市笠沙)の中身は珍魚ひしめく中にたった一匹のコバンザメが入っていた。
 お礼の電話が、ついついコバンザメの話で盛り上がってしまう。

 コバンザメはサメの仲間じゃない。
 きっとよくよくコバンザメを見たことのある人は少ないと思うけど、頭にある小判型の吸盤を除けばいたって普通のお魚である。
 ただ、ちょっとちゃっかりもので、大型の魚にくっついて、そのおこぼれや、近寄ってきた小魚などを失敬してる。
 このずうずうしいやり方から人間世界にも当てはめて「コバンザメ商法」なんて言葉がある。

 夕方になるとガクンと気温が落ちる今日この頃、そろそろ鍋もありだろう。
 わざわざ、早生の白菜を買い、木綿豆腐を買いして、小鍋仕立てにする。
 揃えました材料は、本当に少ない。
 白菜、ニンジン、白ネギにシイタケ、木綿豆腐にかぼす。
 そこに皮をとり中骨を取り去ったコバンザメを加える。
 コバンザメの皮は硬く、とても歯が立ちそうにない。
 中骨はもっと頑丈で鋸持って来いというほどだ。

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 骨を使わない分、カツオ節だしで補ってやる。
 そこに酒と塩。
 主菜ではなく、ほんの脇役的な鍋だから簡単に作る。

 コバンザメの味わいはメダイに近い。
 スケトウダラなどよりも上の上品な白身である。
 今回のものは70センチほどの雌(めす)で大きな卵胞を抱いていた。
 そのために身に脂はなく、ややもの足りぬ味わいであった。
 加うるに、わかしおさん曰く、もっと大きい方がうまい、ということと。

 さて、コバンザメの旬を知るために、次は寒くなってからもう一度挑戦したいと思う。

わかしおさんのお魚三昧生活
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 八王子魚市場、ムッシュの持ってくる「ばちがいい」。
 毎日、冷蔵ケースの切り口を見てため息が出る。
 さすがにそちらは手が届かないけど、ときに見事な切り落としが手に入る。
 それがまことに素晴らしいとしかいいようがない。
 しかも安い。
「筋の多いとこだから千円でいいや」
 よろこんで買ってきたら、量がすごいのだ。
 ブツで楽しみ。
 その濃厚な旨味と、脂がたっぷりであるのに興奮し、酒がすすみ、そして結局食べきれなかった。

 余った分は細かくたたいて下ろしニンニクと生醤油に和えておき、翌朝ご飯のおかずにする。

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 白ネギ、白ごまを薬味にして、刻んだ青唐辛子を天におく。
 子供用には青唐辛子をのせないものも作る。
 この「ばちのニンニクたたき」は銘々小皿に取り、もう一度、生醤油で味加減をしながら食べる。
 見た目は地味だけど、食べると、まことに旨すぎる、ご飯の進みすぎるおかずとなるのだ。
 いつも朝から二杯飯、三杯飯になる。

 今や、米食わぬ、魚食わぬと騒ぐ世となっている。
 国もマスコミもやれ「食育」だ、食料の自給率が低いと大騒ぎだけど、こんな地味で、しかも“うますぎるおかず”があれば、そんなもの一挙に解決できそうな気がするねー。

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新子をつける

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 9月になっても、まだまだ新子の季節は終わらない。
 むしろこれからだろう。
 流通の発達から産卵の早い九州からの入荷が増えたため、新子の季節は早まった。
 最近では初夏から秋までが「新子の季節」だが、江戸前でとれた魚くらいしか手に入らなかった高度成長期以前までは本来は秋の風物詩だったのだよ。

 まあ、新子の基本的な話はともかく、私流「新子の漬け方」をご披露したい。
 ともかく市場で「新子」を見つける。
 握り寿司にするとしたら1尾で1個のすしになるくらいの大きさ。
 これを八王子魚市場で見つけて、その場で開く。
 ボクが開いていると、あっちこっちから「へたくそ」なんて声がかかる。

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「ウロコを取る前に背鰭を落とすんだよ。本当にぶきっちょなんだから」

 本当なんだから「怒る気にもなれません」なー。
 数えてみると12尾ほど。
 大小あるのは、ボクの選び方があまいためだ。
「もっと修業をしろ」
 八王子魚市場のあんちゃんから声が飛ぶ。

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1 持ち帰ったら、塩辛い、高濃度の塩水を作る。

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2 ここに開いた新子をいれて4分前後。(大きさによって長さが違う)
3 これをたっぷりの酢で洗う。

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4 一度酢を切り、また新しい冷やした酢に入れて、表面が白くなったら大急ぎで引き上げる。

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だいたい3〜4分見当。すぐに白くなるので注意が必要

5 これをザルに上げて酢を切り、冷蔵庫で寝かせる。

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6 だいたい3、4時間で食べられるが、翌日がまたうまいのである。

 我が家では酢は業務用の20リットル入りを買う。
 銘柄はミツカンの「山吹」という赤酢。
 だから新子もちょっと赤く仕上がる。

 これはまさに酒のアテ。
 ちょいちょいつまみながら、酒をやる。
 面白いのは、子供達にも大人気であることだ。
 新子というのは思ったよりも脂があり、トロと甘味を感じるし、背の青い魚独特の旨味もある。

 外で鳴いているのはコオロギたちである。
 もはやセミは主役の座を降りている。
 その内、主役は外来種であるアオマツムシに代わるのだけど、こうやって季節がかわるのを感じながら、「今年はいつまで新子を楽しめるのかなー?」なんて思うのだ。

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 北海道、青森、秋田などから「ごり」としてウキゴリ属(ハゼ科ウキゴリ属)が入荷してくる。
 このほとんどはジュズカケハゼだと思われる。
 後可能性としてはビリンゴも考えられるが、これはボクの宿題としておきたい。

 入荷は産卵期の春と、秋から初冬。
 産卵期の春よりも、秋から冬にかけて美味であるように思う。
 9月の声を聞いて、「ごり」をよく見かけるようになった。
 見かけるたびに少しずつだけど買い求めてくる。

 我が家での料理法はいたって平凡なもの。
 まずは簡単に水洗いして、そのまま唐揚げにする。
 片栗粉をまぶして、揚がったら塩を振るだけだから、料理するなんてもんじゃないね。

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 もう一つはさらっとたく(煮る)。
 ボウルに「ごり」を入れて塩を振り、滑りをとるために軽く揉む。
 これを熱湯にくぐらせる。
 鍋に味醂、酒、砂糖、醤油を煮立たせて、少しつめたら、「ごり」を放り込む。

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 唐揚げは酒のアテ(肴)だけれ子供にとっても魅力的。
 たきものは、これも酒のアテだけど、ご飯にのっけてくらっても、これまた結構なものだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ジュズカケハゼ
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 ボクの食に関する表現の最大級のものは「びっくりしたなーもー」である。
 あまりにもうまいものに出合うとまるで交通事故にでもあったような衝撃を味わう。
 そんな衝撃を八王子総合卸売センター『さくら』でくらってしまって、今立ち直れなくなっている。

 ことは一昨日まで遡る。
 広島県倉橋島の日美丸さんからハモをいただく。
 まずは握りずしにして、余ったものを『さくら』のまささんに、「なんとかしてください」とお願いしたのだ。
 これが典型的な「丸投げ」というもの。
 そして出来上がったのがシンプルな中華煮込みなんだけど、「びっくりしたなーもー、びっくりしたなーもー、びっくりしたなーもー」と三回繰り返してしまったくらいにうまかった。
 一緒に試食した寿司職人のたかさんが「隣でこんなものだされると、うちにお客が来なくなるよ」と嘆く。
 八王子で居酒屋をいとなむ、やっちゃんなんて言葉が出てこないようで黙り込んでしまう。
 どうやったら、こんなうまい中華煮込みが出来上がるのか、疑問難問、解けない謎なのだ。

 単純な鶏ガラスープの中身は骨切りしたハモ、キクラゲ、白菜のみ。
 これをあっさりと煮込んでいるのだけど、塩加減が抜群にいい。
 塩加減絶妙の鶏ガラスープのなかで、ハモがちゃんとハモの旨味を感じさせて、脂のあるハモなのでトロンと口の中でほぐれる。
 一皿を試食だけというのが辛く試練に感じる。
 これなら独り占めして、ご飯にかけて飽食したいくらいだ。

 たかさん、やっちゃん、ボクの三人で『さくら』まで行き、まささんに「おそれいりました」と頭を下げた。
 そしてそしてたどり着いたのだけど、まささんにお願いして、『さくら』で魚貝類を使った中華料理の会、もしくはコースを造ろうかとなった。
 どんな献立にするのか、魚はなににするのか、現在検討中である。
『さくら』の前を通りかかったらお尋たずねいただきたい。

八王子の市場に関しては
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市場魚貝類図鑑のハモへ
http://www.zukan-bouz.com/unagi/hamo/hamo.html


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