食べる魚類学: 2010年6月アーカイブ

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タイセイヨウサケは漁業の世界観を変えた魚ではないか、と思っている。
大きなくくりでいうと「サケ科で海の中で育つもの」を、サケマスなどという。
ただ日本人がサケマスというとき太平洋に生息するサケ属をいうのであり、本種は大西洋に生息する別の系統になる。
今でも「サケを養殖していることを知らない人」がいる。
世界中で流通する5割近く、ひょっとしたらそれ以上が養殖されたものなのだ、と言ったら驚くはずだ。
そのサケを養殖する始まりの始まりが本種とギンザケ。
特に本種の場合、ノルウェーで始まり、日本だけではなく、ヨーロッパの食生活自体も変えたに違いない。
しかもノルウェーでは一大産業に成長している。

国内のスーパーでもお馴染みとなったサーモン(タイセイヨウサケ)。
切り身もしくは刺身などで売られている。
ギンザケやサーモントラウトよりも格段に高い。
これは冷凍ではなくチルドで空輸されているのだから、当たり前だろう。
では、このお馴染みとなった切り身を、ちょっとモダーンな一皿に仕立ててみよう。

といっても作り方はいとも簡単なサーモンの冷製だ。
材料は一般家庭に常備している玉ネギにニンジン。
そこにスパークリングワインを足せばいい。
なければ白ワインでもいいかな。
ようするに香りのたつ野菜にサーモンをのせて、スパークリングワインで蒸し上げるだけ。
シャンパンならもっとよろしいが、気障でいけねー(立川談志風に)。

合わせる酒もスパークリングワインがいいと思う。
でもボクが選んだのはシメイなのである。
落ち込んだときのシメイは効く。
バックグランドミュージックはペールギュント。
このメロディーにフィヨルドの美しい景色が浮かんでくる。

材料
サーモン切り身1人1枚、玉ネギ4分の1、ニンジン3分の1、ズッキーニ半分、あればローズマリー、タイム、スパークリングワインコップ1ぱい(約200㏄)、塩コショウ適宜
簡単マヨネーズソース材料
マヨネーズ大さじ2、プレーンヨーグルト大さじ1、牛乳大さじ1、下ろしにんにく少々、粒マスタードたっぷり
作り方
1 切り身に塩コショウ、乾燥タイムをまぶしておく。
2 玉ネギ、ニンジンは粗い千切り、ズッキーニは輪切り、ローズマリーは適当にちぎっておく。
3 深いテフロン鍋に野菜を入れサーモンをのせる。ズッキーニを周りに、ローズマリーをのせて、スパークリングワインをかけ回して蓋をして蒸し煮。
4 蒸し上がったら、あら熱をとり、冷蔵庫にいれて冷たく冷やす。
5 冷えたら簡単マヨネーズソース(これも冷たく冷やしておく)を絡めながら食べる。


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八王子総合卸売センター『総市(仲卸)』にスミヤキ(クロシビカマス)が3本並んでいる。
すでに箱はない。
脇に200円の紙があって、
「おおおい、ミノルちゃん、3本で200円じゃないよな」
「はあーー? うるせい、仕事の邪魔するな」
不愉快そうに眉間にしわをよせて、
「買うんなら200円よこせ」
というので1本。

スミヤキの標準和名はクロシビカマス。
カマスとあるが、まったくカマスとは縁もゆかりもない。
昼間は深海にいて、夜になると浅い場所に浮き上がって獲物をとらえて食べる。
どう猛な肉食魚で、なぜか真っ黒で、どうにもうまそうな魚とは思えない。
これを好んで食べているのは、ボクが知っている範囲では相模湾周辺だけだ。

たぶん和歌山県串本産なのだろうけど、ミノルちゃん不機嫌につき確かめられなかった。
帰宅して、お昼ご飯の汁とする。
三枚に下ろして、身をかきとり、とんとんとたたく。
残った皮と骨、こぶでだしをとる。

スミヤキの汁はギラギラするほど脂が浮いている。
口に含んで旨みが濃厚で、ジワっとしみこんでくる。
ほどなのに後口がいい。
さっぱりしている。
心地よい味わいだけが下に残る。
残りご飯にかけたら、この所謂ねこまんまのうまいこと。

最近体調不全なので、なぜか汁が恋しい。
汁が身体を癒してくれている気がするのだけど、栄養学的、医学的にはどうなんだろう。
当然、汁に向いている魚とダメな魚があるが、スミヤキの場合、最上等の部類には入る。
カサゴやアンコウにはない味わいがある。
独特なのである。
低カロリー、滋味豊か。
スミヤキの汁はもっとも身体にしみ通る気がするのだけど、気のせいだろうか?

材料
だんご材料/スミヤキ1尾、山芋適宜、ショウガ絞り汁、酒・塩少々、万能ネギ
汁の材料/昆布、酒、水、塩。
作り方
1 スミヤキは三枚に下ろして身をかきだす。とんとんとたたいて、すり鉢にとり山芋、塩などを加えてする。臭みとりにショウガ、酒。これを団子状にしてゆでる。
2 スミヤキの皮、あら、昆布、水を鍋に張り、火をつけてゆっくり沸騰させる。わいたら火を止めて、漉す。
3 こした汁に酒塩で味つけ、だんごを加えて、芹をちらす。


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