さかな季語事典: 2007年7月アーカイブ

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 毎年梅雨も明けたかな、と思う頃に三河湾や大阪湾などから小振りのイワシが到来する。この時期だと大羽イワシも入荷してくるのだが、ボクの眼はそんな見かけ倒しは無視、小羽イワシに釘付けになる。そして念のためにひとつ、ふたつ手に持って確信する。「やっとコイツがきた」んだな、と。
 夏の小羽はそれこそカツオ、サンマをあざ笑うがごとく、ましてや貴族顔のマダイなど闘わずして敗退するほどにうまいのである。
 嘘と思うなら大羽と小羽をともに買い求めて、手びらきにし、皮を剥いて目の前に並べてみて欲しい。かたや体表近くに分厚く鑞を浮かせたように白く、かたやその鑞の層が薄いことを。それではどっちが分厚い脂の層を蓄えているのかというと、小羽の方なのだ。
 小羽イワシは片身半分でちょうど刺身一切れとなる。晩酌のアテにするなら2本もあれば充分。薬味はショウガだけでよろしいな。ネギや青じそは邪魔とはなっても、小羽イワシを味わうにプラスにはならない。
 そして合わせる日本酒だが辛口、甘口を選ばない。むしろ単味、単純な味わいの酒がいい。ここ数日、香川の「川鶴」をやっているのだが、この辛口も小羽に合う。
 外は雷鳴ひびき、土砂降りの雨である。ラジオでは湿度93パーセント、気温20度だという。こんな荒天の深夜に小羽イワシの刺身を口に放り込む、と噛む前に舌の上でとろけていく。そこに辛口の酒を流し込み、まことに小羽イワシはうまいなと痛感する。

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 青あじ(マルアジ)も夏らしい魚である。アジ科のいわゆる鰺にはマアジ属、ムロアジ属、メアジ属などがあって一種類しかいないマアジ属マアジがいちばん美味でいちばん高い。それに次ぐものはなくどれも安くて、評価も今イチ。でも工夫次第ではうまい魚でもある。
 そんな鰺類にあってもっともマアジに似通っているのがムロアジ属マルアジである。マアジよりも細長く、そして背ビレ、尻ビレと尾ビレの間に離鰭という小さなヒレを持つ。
 マアジと比べてどこが劣るかと言うと血合いの多さだろう。血合いには独特の酸味やクセがあり、繊細な人には嫌われるもの。でもボクのように少々野性味を残す人類にはこの酸味もクセもあまり気にならない。むしろ好ましく思えるときもある。
 また初夏から夏にかけて産卵期であって味もいい。しかもマアジの半値以下なんだからお買い得でもある。そろそろ安くなった青じそ、ミョウガ、ショウガ、ニンニク、玉ねぎなどを薬味にに使ってたたき、または「なめろう」なんてのもうまいぞ。

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 和歌山県から小振りのトビウオが来ていて、もしやと胸びれを見たらアヤトビウオだった。このトビウオ夏も盛りの証拠と感じるもの。
 さて塩焼きににぎり寿司にといろいろ食べてみるか?

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やっぱり新子をバラで売るのは無理かな。『高野水産』としてはなんとか小口でも買えるように考えたのだろうけど、腹が切れてしまっている

 八王子綜合卸売センター『高野水産』にバラの新子(コノシロの稚魚)が出ていた。これはめったにないこと。普通は海水を入れた袋に詰めて大中小のような形で売られている。だいたいキロ当たり最低でも5000円はするので500グラム詰めでも2500円はする。また出始めなどはキロ当たり2万円、3万円というのも珍しくはないので初手にはとても手が出ないのである。
 その新子を一生懸命量って100グラム買う。今回の新子の重さの平均を出すためである。ちなみに出始めの頃は1匹3グラムほどである。そして今回は18匹で100グラムだから1匹5グラムほどだと言うことになる。この5グラムくらいの新子が決してうまいものだとは思えない。ボクの考えが正しければ1匹10グラム弱が新子の理想的体重、うまい盛りだと思っている。

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 今回の新子は開いて5分ほど立て塩に、それを水で薄めた酢で一度、生酢で一度洗った。新子だとこれでも酢が強すぎる気がする。このあたりは今後の課題である。

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 江戸前寿司で「新」とつくのは「新子」の「こはだ(コノシロ)」、「新いか」の「墨いか(コウイカ)」、だけだろう? どちらにしても「今年の“新”は高いか安いか?」寿司屋がやきもきすると言う点では似ている。そして19日に八王子魚市場で見つけた「新いか」はキロ当たり5000円だった。いいものはキロあたり8000円くらいだろうから、とても手が出ない。
 1匹どれくらいになるのか、「新いか」は小さくても多くの水分を含んでいるので30グラムから60グラムくらい。今回のは初見にしてはやや大きめだから40グラムくらいありそうだ。ということは1匹で1かんとしてネタの原価が200円となる。手間賃、席料、寿司屋がつける付加価値はいくらくらいだろう。まあ1かん600円くらいなら良心的だな。
 庶民派ぼうずコンニャクにとって「新いか」はまだまだ先になる。これがキロあたり2000円くらいになったら『市場寿司 たか』に持ち込んで「初いか食い」をやらかす。さていつのことやら? あの軽く噛むとパリっとしてしかも柔らかい、旨味は親ほどではなくても甘味はほどほどに楽しめる。去年の「新いか食い」は9月であった。この味わいを思い出しながら「待ち遠しいな」としみじみ思うのだ。
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よっ! 初サンマ

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 本日朝、市場に入っていちばんに目がいったのが「初さんま」の紙の旗。ダイちゃんを囲んで魚屋さんもサンマの箱の値段を見入っている。

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「今年は安いのかね」
「安くはないでしょ。そっちじゃ1本900円だもの」
 この近海の箱売りの横には特種、すなわち高値のものを小分けで売るところがある。
 1本200グラム強だからキロ当たり4000円前後か、去年が安かったので「今年は高く思える」というのもある。でも過去には1本1200円というのも普通だった。そう言えば1本2500円というのも記憶するくらいだから今年もサンマは安定して安いとも言えそうだ。

 サンマには解禁日が二度ある。7月初旬の10トン未満の小型刺し網船の解禁、そして8月中旬の大型某受け網の解禁である。小型刺し網の頃のサンマはまだ北上する群れなので魚体も小さく、脂もほどほど。これがお盆の頃にはずんぐりと太って脂がのってくるのだ。そして値段が庶民的になるのも某受け網解禁以降である。

 八王子魚市場での高値でサンマを諦めていたら八王子綜合卸売センター『高野水産』では小振りながら1本400円で売られている。それでは1本とって、『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんに手渡すと、それじゃもっと買い込むぞと数本を店まで持ち帰る。

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 そう言えば毎年「初さんま」をたかさんと食べていることになる。もちろん1本2千円なんてときには諦めたけど、まあ知らず知らずに恒例行事のようになってしまっている。
 まずは数かん握って、たかさん「初さんま」を
「やっぱりサンマはうまいね。脂は薄いけどオレにはちょうどいい。生臭さがぜんぜんない」

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 ボクもものは言わねども「初さんま」の味わいに感激至極だ。やはり刺身にするなら北上する脂ののりのほどよいサンマが最高である。
「これはお客来なくてもいいかな。持って帰って家族とじっくり“初さんま”といきますか?」
 これって寿司屋の経営者としてはいかがなものだろうね!?

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