食べる貝・イカタコ学: 2007年6月アーカイブ

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 ある日、八王子魚市場内『源七』に立ち寄ると若だんなが片隅で料理している。それを眺めているのが小山のとっつぁんで、「なんだ?」と思って入っていくと電子レンジがチンとなった。とっつぁん、電子レンジから「サトウのご飯」をとりだし、古めかしいラーメン丼に入れる。すかさず若だんなアサリの味噌煮込みをかける。
 これは言うなれば、“深川丼”と言われるもののひとつだろうか?〈深川丼には、アサリを醤油味で煮た汁をかけるもの、アサリのみそ汁をかけるもの、アサリの炊き込みご飯の三型がある。まあ最後のひとつは“深川飯”と呼ぶべきかも知れない〉
 でも香りが違うぞー。そうだインスタントの味噌ラーメンの香りである。ショウガとコショウなどの入り交じった、どこか中華な香りが感じられる。

「これ、味噌ラーメンのスープだろう」
「そうだようん、わかったか?」
「じゃ、麺とか他の具はどうしたの」

 そこで煮えていたのは、味噌スープにネギとたっぷりのアサリだけ。
「捨てたに決まっているだろう」
 こんなもったいないことを言うのである。この罰当たり目。

 そんな会話をまったく無視、いい年をして小山のとっつぁんはどんどん飯をガッショグワッシとかき込んでいく。これがもの凄ーく、うまそうだ。だいたい大手メーカーの作ったインスタントラーメンには様々な工夫がなされている。当然、たった一袋の粉末スープにだって多大な労力と研究が詰まっているのだ。そこに船橋の沖合、三番瀬でとれた、今まさに旬のアサリの剥き身を投げ入れて、「まずいわけがない」。
 ご飯は二人分しかない。ここはぐっと我慢して、ひょいひょい味見すると、「やはりやはりうまい」。旨味成分の多い、味噌スープに、これまた味の濃いふっくらしたアサリが相乗効果である意味至味となっている。
 この旨さはグルメとか食通には「出来ないだろう」もので、悔しいけど、「次はボクの分も作ってね」とお願いする。

市場魚貝類図鑑のアサリへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/marusudaregai/asari.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 5月の半ばから北海道白老の『宮森水産』から茹でたクシロエゾバイが毎日のように入荷してきている。これがまことにうまい。このクシロエゾバイ自体が関東の市場では珍しく、茹でたものは今年初めて見た。

 市場で一般的に「白ばい」と呼ばれているのは日本海のエチュウバイ、カガバイ、ツバイなどである。だから「白ばい」は日本海のものといった概念が生まれる。でもこのエゾバイ科のエゾバイ属で色合い、そして貝殻の質ともに似通ったものが太平洋側でもとれていて、少ないながら入荷してくる。これが北からラウスバイ、キヌカツギバイ、クシロエゾバイ、カシマナダバイなどである。クシロエゾバイは北海道の噴火湾から東でとれるもので、太平洋側のもの全般に言えることだが入荷総量は少ないが味は抜群にいいのである。

 あんまりうまいので八王子綜合卸売センター『高野水産』に積み上げられた荷から1つ、2つ、3つとついつい拾い食いしている。オマケに高野社長自らボクの隣で、つぶを食っているんだから、誰が食べてもうまいんだろうね。
 今年初めて見たのも不思議だし、気になって『宮森水産』に聞いてみると「塩ゆでのつぶは昔から作っていましたよ。でも関東にはあまり出したことがなかったんです」とのこと。
 またこのエゾバイ属の小振りのつぶを白老では「泥つぶ」と呼び、カゴ漁でとるのだけれど、その難点が貝殻のもろいこと。貝殻を持ち、ほんの少し力を入れるだけでモロモロと壊れてしまう。だから水揚げされたら「塩ゆで」にしてしまうんだという。
 エゾバイ属は茹でたり煮たりして、この上なく美味なもの。その料理するのに、それほど腕を必要とはしないが、宮森水産の「ゆでつぶ」の旨さはなかなか真似の出来ないもの。
 さて本日も2,3個とつまみ食いしてしまった。明日も入荷してくるのだろうか?

宮森水産 北海道白老郡白老町虎杖浜116
●市場魚貝類図鑑のクシロエゾバイへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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