食べる貝・イカタコ学: 2008年2月アーカイブ

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 ヤリイカが盛期を向かえている。それこそ連日ヤリイカのない日はない。
 大きいほど高いヤリイカであるが、別に大きいからいい、ということはない。しかも小さいヤリイカにはお宝が詰まっているのだ。それが卵だ。
 ヤリイカが含まれるヤリイカ科の特徴は、オスが大きいこと。だから小振りのものはメスであることがほとんどだ。そして産卵期を控えて、ほとんどの胴のなかに卵が張り付いている。

 このヤリイカの卵が、この時期の風物詩とも言える味覚。冬から春にかけて市場に出回るときに、どちらかというと春を感じる味かもしれない。

 小振りのを刺身にする。これはさすがに高級イカらしく甘味があり、しかも透明感のある程良い硬さの一切れは絶品としかいいようがない。

 ここで卸したときの刺身の切れっ端とか、耳とかゲソとか真子とかを取り分けて置いて、翌朝煮つけにする。まあ別に刺身とともに夜に煮つけを出せばいいのだけど、朝の炊きたてのご飯に、ヤリイカの真子入りの煮つけが素晴らしいおかずとなるのだ。

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 このコックリした甘さをどう表現していいか、まことにこまる。確かに甘味の一種ではあるのだけど、旨味「濃く」とでもいうのだろうか、口の中で殷々と広がる。ボクはこの真子をのせたご飯が大好きである。
 困ったことには、原則的には刺身に造った副産物なので、量は少なく、わずかばかり。子供達と分けっこしながら、ご飯にのせて、後は一気にかきこむというせわしないことになる。

 さて、毎年ヤリイカは晩春までは楽しめている。今年もたっぷりヤリイカを食ってやるのだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヤリイカへ
http://www.zukan-bouz.com/nanntai/tutuika/yariika.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 八王子綜合卸売協同組合『マル幸』に「ババノテ」という貝が入荷していた。
 クマゴロウが「なんだろね、これ?」というので見たらエゾキンチャクガイだ。
 エゾキンチャクガイは東北より北の枚貝で、ホタテガイなどと同じ場所に暮らす。当然、ホタテガイ漁をすると混ざるのでまとまれば関東の市場にも入荷してくる。ただし量的には非常に少ないものだ。
 1個100円は高いが、めったに入荷するようなものではない。とにかく10個ほども買い求めて、『市場寿司 たか』で握りを撮影。
 そのとき奇遇にも、ボクの『つり丸』のコラムを読んでくれているという方が居合わせて、一緒に『寿司図鑑』体験をしていただく。
 その身も肝、ワタなどもうまかったー。ヒモだってコリコリと甘味があって、感激。おっ、おおっと、ここでのことは『寿司図鑑』に書くとして。

 持ち帰ったものを刺身と、ムニエルにして味わう。それがまた「絶品」としか言いようのない味わい。刺身の甘さもホタテガイの負けず劣らず、なによりもムニエルがうまかった。どうもこのように「貝自体がうまい」というものには複雑な料理は必要としないようだ。

 久しぶりに味わうエゾキンチャクガイに感激しながら「婆の手」という呼び名は失礼だろう、と改めて思う。「婆の手」というのは根室地方の呼び名らしいが、これが函館だったら「母の手(母貝)」なのだ。
 千葉市の、『どんぐりつうしん』変集長・谷口さんから、お聞きしたところでは、函館では「お母さんの手のようにごつごつしている」から「母貝」というらしい。その昔の炊事で手が荒れた優しいお母さんの手のような貝、これは優しそうだし、いい表現であるな。

 ボク、ぼうずコンニャクは幼い頃に「母ちゃん」を無くしており、その母の愛情というものを知るすべもなかった。これは我が人生でどうにも取り返しようにない、補いようのないもの。当然、母の愛情というのには強く憧れている。
 ひとりエゾキンチャクガイの節くれ立った指のような畝を見ながら、突然名状しがたい気持ちになってきた。なんだか寂しいなー。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、エゾキンチャクガイ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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