多摩地区のすし屋には何種類かの系統がある。その1が八王子「鮨忠」、「浜寿司」のように地元のすし屋ののれん分け、その2が八王子「寿司富」、八王子「誠寿し」のように都心のすし屋で修業したり、渡り職人(この系統の人たちには寿司職人としても達人と呼ばれる人が多い)から店を構えたもの。これに加えるに八王子でも土着の人たち、すなわち地の人たちの住む地域で店を構えたものと市街地に店を構えているすし屋でもかなり違いが出てくるのだという。「地」に店を構えているすし屋は当然寄り合いや祝儀不祝儀も多く、握りも八王子らしく甘いものなのだろうか、また出前が主体だろうから今イチ洗練されていないのかもしれない。でも実際はいかがなものだろう。常々、この「地」のすし屋を覗いて見たかったのだ。でもなかなか、その住宅地のすし屋に入るのは勇気がいる。
そんなときに声をかけてくれたのが「誠寿し」さんである。「誠寿し」町田誠さんは上野の「花寿司」で修業した後に生まれ故郷川口すなわち「地」に店を構えている。だから、お客のほとんどが地元の人たちである。
そんなことで秋山街道がいちばん渋滞する土曜日に川口に向かう。秋川街道は元本郷、中野、楢原ときて川口に来る。八王子から続く住宅地もここまで。その川口の入り口を秋川街道からひとつ奥まったところに「誠寿し」はある。住宅地のすし屋ということで民芸品などで田舎臭い造りかと思っていたら、とても落ち着きがある店構えである。その上、店内も清潔で居心地がいいのだ。
「誠寿し」町田誠さんは奥さんともども待ち受けていてくれた。
そこでいろいろ修業時代の事を聞いたり、寿司に関するこだわりなどを聞かせてもらった。そのどれもがなかなかに面白く、我がデータベースにも生かせるものばかり。
そして実際に握ってもらったら、なかなか都心であっても恥ずかしくない洗練されたもの。なかでも穴子の握りは絶品である。煮穴子をかるく温めて、小振りな握りに。穴子は甘く香り立ち、口に入れるとホロリと崩れる。そこに甘味控えめのすし飯がくるのだが、これが絶妙だ。
町田さんご夫婦自慢の信楽の器にのせて撮影してきた。
「誠寿し」さんの上野での修業時代のことから、生まれ故郷に帰りついてからのことなど、「市場人の歴史」で折々に寿司の基本知識として取り上げていきたいと思っている。またお近くに来られた方は「並1000円」からという手軽な値段なので「誠寿し」の江戸前握りをお試し願いたい。
誠寿し 東京都八王子市川口町1753-6 042-654-2355
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