市場図鑑・市場案内の最近のブログ記事

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魚を単に切り身にするだけと書いたが、

実際に見てみないとその技のすごみはわからない。

現在の「切り身屋」が扱うものの多くが

塩漬け(塩鮭)、冷凍品であるが一般人が

この半身を見ると呆然とするはず。

適当に切ればいいと思って切ってみると、

はじめの一刀からもてあますだろう。

意外に丸のままの魚は始末が悪い。

 

例えば『興実水産』で秋鮭の塩物(塩鮭)を1本買ってみる。

「切り身屋」で半身は夕食用に、半身はお弁当用にとお願いする。

「切り身屋」はやにわに1本の塩鮭を取り出すや、

きれいな水にドボンとつけ、

表面の汚れや油(脂というよりも)を落として、

後は5〜6分で頭、かまをオマケに

合計34枚の切り身にしてくれる。


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最近、思うのだけど、実は特売などで

「わけあり」の塩鮭を買うくらいなら1本丸ごと

「切り身屋」で買った方が安いくらいなのだ。

 

家庭内での食事用は1切れ85グラム前後、

お弁当用には60グラム前後で、きれいに並ぶ。

これぞ職人技というもので、年期がものをいう。

実は近年、これができる人は急激に減少している。

機械化したマクロの流通は大手スーパーに任せるとして、

零細、中小の流通の世界としては

この手業が生きる業界に目を向けて

初めて明日があると思うのだが。


八王子綜合卸売市場


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市場には「鮮魚仲卸」を基本として

「乾物商」、「総菜・塩乾」、「冷凍食品」など

重要な脇役的業種が多々ある。

そのひとつに「切り身屋」がある。

「切り身屋」というくらいだから仕事の基本は、

三枚に下ろした魚を一定の大きさに切ることで、

至って単純だが、調べてみると実に奥が深い。

 

東京都の西方、多摩地区にある八王子には

個人営業、共同体で運営している市場が二つある。

(二つは隣接していて、まさか別の市場だとは思えないし、

また思う必要もない)

今回はそのひとつ八王子綜合卸売協同組合という

長ったらしい市場内の『興実水産』という

「切り身屋」をフィールドにいろいろ調べることにする。

八王子綜合卸売市場


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八王子総合卸売センターにある『土谷食品』の

やや大振りの角切り寒天がうまい!

寒天のうまさを口の中にかきこむや

たっぷりと海藻らしいうま味と風味があふれだす。

寒天とはこのような味だったのか、なんて驚きがある。

腹をへこませるために買ったのだが、

予想外の口福感が得られた。

 

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寒天の原料は近年ではテングサ科のマクサではなく

多くはオゴノリ科の海藻が主流になっている。

マクサの産地では、粉末状の寒天などもってのほかというが、

このような気取らない味わいもいいものである。

『土谷食品』の夫婦が「ちくわぶ」を作るのをやめて、

「ところてん」、「寒天」を作るようになると

春たけなわ、夏も遠からじなのだよ。

 

八王子総合卸売センターに多摩地区最大の食のワンダーランド、

不思議な物てんこ盛りの『三恵包装』も新装オープン。

市場においで!!

土谷袈裟治くんも待ってるよ!!

 

八王子総合卸売センター


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 宮崎県延岡市にフグの加工で全国的に有名なミツイ水産がある。
 主にトラフグ、当然他のフグ類に、宮崎にあがるキハダマグロなども取り扱っている。

 もっとも力を入れているのが日向灘にあがるトラフグのみがき(毒を除去してある)。
 これを頂き、2008年の暮れはまことに豪勢極まりないものとなる。
 このトラフグ三昧のことは「寿司図鑑」、「お魚三昧日記」で公開予定だ。

 さて、ミツイ水産が取り組んでいるのが「みがき」ならびに「トラフグの薄造り」の海外輸出。
 宮崎と言えば東国原知事という状況にある。
 とにかく宮崎空港だけでなく、県内どこでも知事の顔だらけである。
 その東国原知事も巻き込んで、延岡で加工したフグを海外に輸出したいと思案中なのだ。

 国内でトラフグを食べるのは主に冬だ。
 トラフグは産卵後は味が落ちるものの、夏場でもいいものが上がるのだという。
 これを季節が反対の南半球に売り込むのは面白い考えである。
 またトラフグの薄造りは、かなりのベテランでなければ作れない。
 それをミツイ水産では予め加工して造りにし、急速冷凍で商品化している。
 また「みがき」の素晴らしさからしてチルドによる輸出も可能だろう。
 宮崎県で加工されたものが南半球で食べられるというのも、面白いではないか。

●輸出・またはトラフグなどの取り扱いに興味のある業者のかたはご連絡をしてみて頂きたい。

ミツイ水産
http://mitsui-suisan.co.jp/


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 山口のセトポンは頼りがいのある男の子(おのこ)である。
 まだ冬まっただ中の山陰、山口の旅で萩まで迎えに来てくれて、その上、ボクを連れて行ってくれたのが山口市にある川端市場。
 我が、「市場魚貝類図鑑」が目差すものをずばりと間違いなく捉えてくれていて、この県庁所在地のもっとも生活臭のする場所に誘ってくれたのだ。
 山口は室町時代には守護大名大内氏の本拠地であり、国宝瑠璃光寺の五重塔をはじめ芸術、建築物などに見るべきものが多い。
 ただし、観光というものはしてみたくもない、ので山口市で唯一尋ねたところが市場であるというのが、まさに最上の選択なのだ。
 かえすがえすもセトポンには感謝。

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 さて、川端市場は路地を挟んで2つの建物に分かれている。
 セトポンが「こっちがええでしょ」と入ったのが鮮魚、乾物などの入った建物。
 これがまことに懐かしい雰囲気を保っている。

 脇から市場に入り、すぐ左側に『鮮魚 松西』という店がある。
 お刺身などがいろいろ並ぶ冷蔵ケースの中にはタチウオ、タイラギ、たい(マダイ)、ひらそ(ヒラマサ)、シマアジ、ばい(エッチュウバイ)などが並ぶ。
 すでに刺身になっているもの、卸し身になって刺身になるばかりのもの。

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一見平凡に見えるがよく見ると凄い品揃えだ

 どれも鮮度がよくて魅力的だ。
 サーモン以外は地物でしかも天然物に見えるのがすごい。
 その先に『池田』というウナギ屋さん、その前の『二宮』、『石田鮮魚店(いしだ)』と並んだ魚屋さんに並ぶ刺身、魚も素晴らしい。

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注文の舟盛りを作っているらしい。その光景が庶民的でいながら、とても職人的な部分を併せ持つ。ほんまに素敵な光景だ

 その上、よく見ると値段はまことに庶民的。
 旅の途中でなければ総て買って帰りたくなる。
『重枝』に小さなアカガイと逆に大きすぎるサルボウがあったがこれは瀬戸内海産。
 ザルに無造作に入っているのは「たれくち(カタクチイワシ)」の刺身である。
 トラフグの皮が500円はものすごく安い。
 その店にも置かれていたのが「穴子の湯引き」。
 マアナゴを鱧のように湯にくぐらせているのだけど、うまそうだ。
 萩産のアカアマダイが2匹で650円というのも信じられない価格だ。
 マテガイ、たなご(ウミタナゴ)、さごし(サワラ)、めいぼ(ウマヅラハギ)、はね(スズキ)など魚種が多様なのも素晴らしい。

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 一階が市場、二階以上が団地のような不思議な建物である。
 だから見栄えはよくないし、入っている店舗も少ない。
 でも例えば鳥取県境港にある観光市場と比べると何十倍も魅力的だ。
 地元なら毎日通ってしまうだろう。
 こんなことで、セトポンがやたらにうらやましくなってきた。
 考えてみると中国地方は細長い棒のような形だが西に行くほど細い。
 山口市はその西よりにあるので瀬戸内海からも日本海からも至近距離にあるわけだ。
 だから毎日のように多彩な水産物に恵まれる。

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 その上、肉屋(長州どりというのを売っていた)がまたいいし、乾物屋、八百屋に置いてある品物もいい。
 もう一方の市場にある八百屋、パン屋などがまたまたいいのである。

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国弘商店のお母さんにはおいしい刻みワカメをいただいた。天然のものをていねいに刻んだものだという。これは優れものだった

 まことに山口市民がうらやましいし、市民の方にはこの市場をもっともっと注目して大切にして欲しい。

 旅の途中で魚を買うわけにもいかず、欲求不満となる。
 それで『松西』で見つけた、タチウオの刺身を1パック買い求めて味見してみる。
 少々行儀が悪いが、醤油と発泡トレイで市場内のテーブルに座る。
 セトポンに
「ちょっと我慢できなくてね」
 と断りの言葉を放つと、
「ボクもこんなことが大好きです」
 言ってくれるではないか、うれしいね。
 堅い職業のセトポンにボクと同族の血を感じた瞬間であった。

川端市場 山口県山口市中河原
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 12日は早朝5時過ぎには石巻魚市場にいた。
 まずは場内の圧倒的な広さに驚く。端から端まで歩いたときの行けども行けども尽きぬ感はすごい。

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「今日は魚が少なくてね」
 尾形清雄さんが済まなさそうに言うのだけど、そここに何げなく置かれている魚貝類の多彩さは国内でも屈指のものだろう。

 赤く染まっているのはキチジ(本標準和名は宮城県で使われていた言葉)、アコウ、バラメヌケ、ニシン、そして問題のギンダラ。

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これくらいの大きさになるとキチジ(きんき)は高いに違いない。

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ホラアナゴは床一面に広がっている

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イトヒキダラ、オニヒゲ、ヤリヒゲ。みなすり身になる

 床にはホラアナゴが、大きなコンテナにはイトヒキダラ、ヤリヒゲ、オニヒゲが投げ込まれている。
 これをいちいちチェックしていくのだが、メモを取る気にもなれない量である。

 ちょっと混乱した頭を沈めようと、とにかくいちばん端っこまで歩く。
 そこにあったのが宮城県ならではの養殖ギンダラ。
 殺菌冷海水、海水氷の入ったコンテナーにたくさんのギンザケが競りを待っている。

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ギンザケはこのように開いて身の色合いを見せて競りにかける

 ギンザケの競り場から、こんどは魚貝類をじっくり見て歩く。
 脇を歩く尾形清雄さんの足取りが速い。
 30代に見える息子さんも一緒で、ボク共々その速さに遅れてしまう。

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 ミズダコ、ヤナギムシガレイ、マコガレイ、ソウハチガレイ、ヒレグロ、ババガレイ、サメガレイ、ミギガレイ、ヒラメ。
 スケトウダラ、マダラ。
 シライトマキバイにエゾボラモドキ。

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灯台つぶのひとつ、シライトマキバイ

 スルメイカにヤリイカ。
 マアナゴ、アブラガレイ。
 マサバ、ゴマサバ
 ケガニ、ヒゴロモエビ(ぶどうえび)。

 市場の片隅でマボヤ(ほや)が洗浄されていた。
 こんなにたくさんの養殖マボヤを見るのも産地ならでは。

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「残念ですね。今日はまったく魚がなくて」
 見知らぬ人から声がかかる。
 どうやら昨日食堂にいた人らしい。
「いいえ、そんなことはありません」
 もしも大漁だったら、きっとヘトヘトを通り越してぶっ倒れてしまうかも知れない。

 尾形さん親子に、また秋に来ますと行って石巻を後にする。

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場内の生け簀でおよぐヤリイカ。これが買えるのだからうれしい

“市場”が大好きだ。でも改めて考えるに“市場”って何だろう? それは現在の観念でいうところの卸売市場など公設市場だけではなく、魚が水揚げされる「河岸」、それから通りの名前だったり、また単なる店舗の集合体であったりする。ようするに人々が何かを求めに来る(買いに来る)物資の集散地でもあるし、人が集まる場所自体でもある。すなわち多様な意味を持つ言語と解釈して欲しい。
 だから萩魚市場前に建っている『道の駅 萩しーまーと』も間違いなく“市場”である。新しく作られた“市場”で、これほど人の集まる場所も少ないだろう。この市場の歴史は浅く、建設されたのは2001年のこと。場内は清潔で、また、驚くのは無駄な飾り付けなどは皆無に近い。それなのにどこか有機的で暖かみがある。
 どうして、これほど親しみやすい空間なのかというと、回りにたくさんの食べ物が置かれていて、その密度が高い。また多様性があり、入るといろんなものが目に飛び込んでくる。驚くべきは、これほどの多様性のある“市場”であるのに清潔無比であることだ。場内に腐食した有機質の臭いがまったくない。

 2月のもっとも観光客の少ない金曜日に、ボクは『道の駅 萩しーまーと』をグルグルまわり、その面白さに夢中になった。今回はこの新しいのに、なぜか懐かしい、そして回ってみるだけで楽しい『道の駅 萩しーまーと』の魅力を考えてみたいと思う。
 ここだけの話であるが、萩には行ってみたい場所が数え切れないほどある。幕末の歴史は面白く、高杉晋作、吉田松陰、伊藤博文の足跡はもとより、その美しく古めかしい城下町自体に惹きつけられるだろう。
 でも萩に来て「食べたいものは」と聞かれると、ぜんぜん思い浮かばない。そん不得要領な状態で『道の駅 萩しーまーと』にくるとやっと萩が漁港であり、新鮮な日本海の幸に溢れている街であることに気づくだろう。
 それほどに『道の駅 萩しーまーと』の水産物への貢献度は高いと思う。

道の駅 萩しーまーと
http://www.axis.or.jp/~seamart/


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 水産棟に入ると、競りは終了している。残っている物が積み上げられることもなく、きれいに片づいた先に仲卸の灯りが見える。
 仲卸の数は39、これは東京足立市場に近いのではないか、どこかしら似た雰囲気がある。また足立市場は青果が分離して活気が落ちたと言われているが、こちらはまだまだ市場内に喧噪感があって賑やかだ。
 仲卸の作りは最近のものと違い、あまりはっきりした仕切がない。だから床に台を置いて、平面を作り、そこに荷が並んでいる。その平面的な一面が一店舗ということになる。

 とにかく手前から見て歩く、ウニ、むきえび、パック詰めのアサリに鮮魚も豊富である。後々わかることなのだが、場内の仲卸はみな店舗が大きく、取り扱う水産物の種類も多い。
 ヤリイカに九州のチダイ、首折れサバ、養殖マサバ。また鹿児島県産のクロホシフエダイがあるのが面白い。この一店舗目の水産会社は新潟県佐渡島に本拠地があるのだという。
 見て回るどの店舗も規模が大きく、置いてあるものは多岐に渡る。鮮魚、塩干、惣菜、冷凍物、練り製品などが雑然と(そう思える)並んでいる。すなわち一店舗でほとんどのものが揃うのだ。

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 きんき(キチジ)、ニシン、マコガレイに青森産のなめたがれい(ババガレイ)、北海道からの八角(トクビレ)。無造作に床に置かれた魚を見て歩く。

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 安達さんに案内されているとはいえ、店と店の区分がわかるようでわからない。
 細い通路を通り抜けると、いきなり目に飛び込んできたのが大きなアカムツで1キロ近くある。値段がキロ当たり13000円というのが凄い。「このアカムツすごいね」というと千葉県内房にある竹岡であがったものだという。

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 航空便のマダイ、東京湾産でも最上級のスズキ、値段もさることながら、こんな店があるというのは柏のすごいところだろう。

 千葉県は水産県でもあり、アサリ、ノリ。東京湾のスズキにメダイにマダイ、外房の「いなだ(ブリの若魚)」、イセエビにアワビ類と豊富である。年間を通すと地物とも言えそうな魚が見られるはずだ。
 また各店舗に置いてあるシジミのほとんどは茨城県涸沼産である。そこに青森県産があって、西日本の島根県産などは見られない。

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 場内を歩いていると、店頭にずらりとマガキ、イワガキが並んでいてなかに島根県隠岐のものがある。これが『柏渡力』という店。
 ボクのバッグに「ぼうずコンニャク」というのを見つけたのか、よく見てますよと声をかけてくれる。
 この店の実力など築地場内にあっても引けを取らないものと見受けられた。

 見て回ること、1時間半ほど。魚の少ない時期なのに、思った以上に荷がある。また高いもの、安いものと多彩なのもいい。
 不思議なのは鮮魚店の数に比べてマグロ屋のが少ないことだ。置いてあるマグロは本マグロを始めて、なかなか素晴らしいのだけど、この市場で目立つのは鮮魚である。
 塩干・惣菜の店を見ているとさすがに千葉県産のものが多い。ここでの主流は銚子産の干物類だ。そこに先ほど旅した島根の海産物を探すがなかなか見つからない。唯一見つけたのが浜田市の「山がれい(ヒレグロ)」の干物である。

 市場から出ると遙か向こうに高層マンションが幾棟も建設中となっている。あれは明らかにつくばエキスプレス柏の葉キャンパスあたり。この『柏市公設総合地方卸売市場』にもっとも近い駅である。
 今、見てきたあまりに有機的な市場の情景と対照的ではないか、考えてみると現代人はあのように無機的なものしか作り出せないようになってしまっている。その無機質な人間が、無機質な言語である「食育」なんて言葉を作るのだ。まったく愚か者め! せめて時代の子供達を無機質な生き物に変えないためにも市場の役割は大きい。柏市の市民よ市場をもっと大切にしろ!

 さて『柏市公設総合地方卸売市場』水産棟の実力は思った以上に高い。例えば、電車を使えば築地まで1時間足らずでたどり着けるだろうけど、そんな必要性は、この品揃えを見るとないように思える。近年地方市場が抱える問題点は丹念に市場まできて品揃えする魚屋、地元のスーパーなどの凋落に起因する。それに加えるとしたら、市場で「自分の目で見て魚を仕入れていく」優秀な板前が少なくなっている。
 市場というものが、いかに食に置いて重要な役割を担っているか、食材を知れば知るほど痛感する。食に関わる人々は、市場をもっともっと活用せねばならない。

柏市公設総合地方卸売市場
http://www.city.kashiwa.lg.jp/cityhall/sosiki/B_KEIZ/KEIZ_KOU/kashiwa_ichiba/Index.htm


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 関東周辺の市場はくまなく見て回りたいと思っている。千葉県の場合、千葉市、船橋市ときて今回は柏に行ってきた。

 我が家から柏市までは、中央線、総武線を乗り継いで秋葉原、秋葉原からは、つくばエキスプレスに乗り替えて柏の葉キャンパスで下車する。ここから歩いても10分ほどで市場到着となる。東京都の西部の我が家からだいたい1時間半でたどり着けるというのは、高速を誇るつくばエキスプレスのなせる技だろう。この新しい鉄道は清潔で快適、また北千住あたりまでは地下鉄であるが地上に出てからの景色もきれいだ。

 柏市は千葉県でも北西部にあって、人口40万人ほどの大都市である。さきほど訪れた島根県の県庁所在地松江市が20万人、我が故郷徳島県の県庁所在地徳島市の人口が26万人であるから、いかに柏市が大きいかがわかるだろう。ちなみに隣接する我孫子市、流山市と合わせると、なんと島根県の人口よりも多い。しかも、つくばエキスプレスによって柏市の北部には高層住宅が林立しつつある。これからますます人口は増えていくのではないだろうか?

 これだけの巨大な人口を抱えるのだから柏の市場はさぞや大きいのだろうと思ったら、あにはからんやこぢんまりと小さい。青果、花き、水産と合わせても8万平方メートルほどに納まる。これはちょっと大きなグランドくらいではないだろうか?
 3つの市場の中では青果が大きく、水産物、花きと続く。市場で頂いてきた資料を見ると、年々取扱量が減少しているのが残念でならない。これは流通(食品を中心に)が市場から離れていっている証拠。市場と離れるということは食べ物が文化的なものから、単に商材として無機質なものに変ぼうしているということだ。
 だいたい近年、個人営業の飲食店ですら市場に行かないなんて、ことがあるらしい。ただでさえ、チェーン店に駆逐されているのに、その大型飲食業界と同じことをしているというのも、本当に愚かしい。これから個人営業の飲食店や食料品店、魚屋が生き残るには市場が重要なポイントになるに違いない。

 さて、今回の柏市場見学は市場の管理を行っている柏市役所の安達さんに案内して頂いた。同行するのは仲良しのマジマジ君である。この方、地方の役人さんにしては勉強熱心だし、なによりも素直なところがいい。あまりにも熱心なのでぼうずコンニャクが弟子いりを許すことにあいなった。
 さて、真面目なマジマジ君との柏市場巡りの始まりなのだ。

柏市公設総合地方卸売市場
http://www.city.kashiwa.lg.jp/cityhall/sosiki/B_KEIZ/KEIZ_KOU/kashiwa_ichiba/Index.htm


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 12日の朝5時過ぎにヤマトシジミさんが駅前ホテルに向かえに来てくれた。向かったのが駅にほど近い松江魚市場である。まだ薄暗い山陰松江は思ったほど寒くなく、穏やかに思えた。
 島根の県庁所在地・松江にある市場はいかなるものだろうか? 普通、考えると青果市場と魚市場の合わさった総合卸売市場であるはずで、今時の振り分け、無味乾燥な鉄筋コンクリートの巨大施設を想像していた。ところが到着した場所はまことにこぢんまりしたもので、見た目も古めかしい。この古めかしさが、ボクの好みの市場だと言うのも明記していおきたい。
 また驚いたことに、ここにあるのは競り場のみ。一般的には仲卸店舗用の区画がないのだ。これは都市の市場としていかがなものだろう。
 クルマをとめ、事務所に入ると、トーボさん、神在月さんなどが待っていてくれた。この建物のなかが暖かく、また外を見ると市場らしい活気に満ちている。

 事務所で帽子を貸していただき、場内を見て歩く。やや荷が少ないのは、海から離れている松江では思いも寄らないことだけど、外海が荒れ始めてきているせいであった可能性大だ。
 魚市場には午前6時になってもトラックが横付けされている。この松江魚市場の特徴が松江・出雲地区を中心とする島根県各地の魚貝類集散地であるということ。
 この日、多かったのが十六島漁港(うっぷるい 平田市)、しまね定置もん(松江市/笠浦、野井、多古、加賀、御津 出雲市/塩津、湖陵、多岐)。また小伊津など釣りものも島根ならではのもの。

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この地名読めますか?

 まず目に付いたのが「沖いわし(ニギス)」これは底引き網のものだろう。さすがにビックリするほど鮮度がよく、これは刺身でいけるなと朝ご飯抜きなので思ってしまう。そしてマエソ。
 湖陵からのマフグもフグ延縄漁のさかんな島根ならではだ。「れんこ(キダイ)」も延縄で揚がったものかもしれない。後々見ていくと島根沿岸でキダイは重要な魚である。
 マアナゴがあって、ここでは「はも」、ハモは「とうへい」というらしい。「草かれい(タマガンゾウビラメ)」、メダイ。
 個人的な意見かもしれないがメダイは日本海側でとれたものの方が、太平洋側でとれたものよりも味がいい。このメダイを見て、ますます腹が空いてくる。
 入相の箱にイシダイ、「ばとう(マトウダイ)」、アイナメ、メイタガレイ、イズカサゴ、チカメキントキ。この産地ならではのたっぷりギュウギュウ詰め感がたのしい。

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「しまね定置もん」は水産物を扱う人は絶対知っておくべきだ。鮮度保持や、丁寧な出荷に日夜心砕いている。

 島根町(現松江市)の「しまね定置もん」の箱にヒラマサと「丸子(ブリの若魚)」、マダイが並んでおかれている。箱に書かれた殺菌海水というのは魚の鮮度保持や、輸送時の安全に大きな役割を果たしている。「しまね定置もん 殺菌冷海水」という文字には注目して欲しい。
 ワカメが並んでいるのは養殖ものに違いない。
 意外に多いのがババガレイだ。関東では高値をつけるものだが、松江あたりではまだまだ評価が低いのだという。そしてババガレイの箱に書かれているのが「インドガレイ」の文字。見た目の黒っぽいところからきた呼び名だろうけど、「インドカレー」とまぎらわしくないのかねー。

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ババガレイの詳しいことは
http://www.zukan-bouz.com/karei/karei02/babagarei.html

 見事なサワラがあり、マハタ。島根を代表する「のどくろ(アカムツ)」もきれいだ。チダイがあって、タイ3種が揃っている。アカガレイ、「水がれい(ムシガレイ)」。

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日本海の「のどくろ(アカムツ)」は太平洋側のものと別物といっていいほど脂がのっている。また浜田であがる泥質の海底にいるものはもっと凄いらしい。参考『島根のさかな』(島根水産試験場 山陰中央新報社 この本おもしろいぞ!)

 サザエ、クロアワビがある。ミズダコがあって、マダコはいない。

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サザエも島根を代表する水産物なのだ!

 松江市鹿島町小津の鍛冶辰夫さんが加工した(ひょっとしてとったのも同人?)ウニの小木箱があるが、この時期ならムラサキウニに違いない。

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これは島根県の寒い時期の風物詩。ムラサキウニ。

 島根県でとれるウニは他にはアカウニ、バフンウニ、エゾバフンウニなど。ただし重要なのはバフンウニ。これは夏にとって瓶詰めに加工される。
「ばとう(マトウダイ)」が島根にとって重要な魚であることは後々わかってくる。もちろん水揚げが多いとか、産額が多いとかではなく、「ばとう」の刺身、煮つけなど県民に愛されている魚であるらしい。

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「ばとう(マトウダイ)」と「えてがれい(ソウハチガレイ)」。

 並ぶ「ばとう」の隣が「えてがれい(ソウハチガレイ)」である。これは島根県特産の「カレイの干物」の原料のひとつ。オヤジとしては、酒がすすんで困るという魚でもある。また同じく干物にして美味な「水がれい(ムシガレイ)」がたくさん並んでいる。
 ムシガレイ、ソウハチガレイ、マトウダイ、そしてアマダイの箱がたっぷり並んでいる、この光景も松江魚市場を特徴づけるものだろう。
●松江魚市場見学はまだまだ続く。

JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/


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