2008年7月アーカイブ

yakiuni080712.jpg
●クリックすると拡大

 宮城県、岩手県と地震が続いて、東北の夏は大変なのだ。
 中国でも大地震があって、なんだかイヤな予感がするな。
 オリンピックなんてやってる場合かね。

 さて、閑話休題。
 今回の主役はキタムラサキウニである。
 産地は宮城県石巻のもの。
 石巻は地震の被害は少なかったようで一安心。
 ウニの産地からも、いろいろ考えることがある。
 だからやっぱり産地の情報は大切なのだ。

 1個300円なので大きめのもの、持ち重りのするものを選ぶ。
 これを3個買い求めてくる。
 2個はそのまま生で、これがなんとも美味であった。
 そう言えばウニには白ワインが合う。

 最後の一個は殻を割り、身を片身に詰め込んで、ちょっと戯れにバーナーであぶる。
 焦げ目がついてなかなかうまそうな代物が出来上がった。

 さて、そのお味はと言うと、いきなり半分ほども舌にのせつぶし食べてみる。
 意外に見た目ほどに味がぐっと濃くなったわけでも、甘くなったわけでもない。
 香ばしさもあまり感じない。いや少しだけ味が濃くなったようにも思える。
 それでこんどはじっくりと舌の上にのせて、転がして、味を確かめる。
 やっぱり生よりも旨味は濃くなっているし、熱を通したための旨味の変化がある。
 焼きウニはゆっくり目をつぶって味わうもののようだ。

 さてキタムラサキウニは夏が旬である。
 8月も三陸から北海道から入荷は絶えないだろう。
 懐が暖かければ、酒の肴に一、二個はりこんでみてはいかがだろう。
 ペットボトルの飲み物を節約して、二日で一個は楽しめる。
 ちなみに本日の酒は滋賀県の「琵琶の長寿 純米酒」。
 日本酒には焼いた方がより相性がいいようだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、キタムラサキウニ
http://www.zukan-bouz.com/sonota/uni/kitamurasakiuni.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

kawabata080711111.jpg
●クリックすると拡大

 山口のセトポンは頼りがいのある男の子(おのこ)である。
 まだ冬まっただ中の山陰、山口の旅で萩まで迎えに来てくれて、その上、ボクを連れて行ってくれたのが山口市にある川端市場。
 我が、「市場魚貝類図鑑」が目差すものをずばりと間違いなく捉えてくれていて、この県庁所在地のもっとも生活臭のする場所に誘ってくれたのだ。
 山口は室町時代には守護大名大内氏の本拠地であり、国宝瑠璃光寺の五重塔をはじめ芸術、建築物などに見るべきものが多い。
 ただし、観光というものはしてみたくもない、ので山口市で唯一尋ねたところが市場であるというのが、まさに最上の選択なのだ。
 かえすがえすもセトポンには感謝。

kawabatanaibu0807222.jpg
●クリックすると拡大

 さて、川端市場は路地を挟んで2つの建物に分かれている。
 セトポンが「こっちがええでしょ」と入ったのが鮮魚、乾物などの入った建物。
 これがまことに懐かしい雰囲気を保っている。

 脇から市場に入り、すぐ左側に『鮮魚 松西』という店がある。
 お刺身などがいろいろ並ぶ冷蔵ケースの中にはタチウオ、タイラギ、たい(マダイ)、ひらそ(ヒラマサ)、シマアジ、ばい(エッチュウバイ)などが並ぶ。
 すでに刺身になっているもの、卸し身になって刺身になるばかりのもの。

kawabata08070555.jpg
●クリックすると拡大

kawabatatenntou080705648.jpg
●クリックすると拡大
一見平凡に見えるがよく見ると凄い品揃えだ

 どれも鮮度がよくて魅力的だ。
 サーモン以外は地物でしかも天然物に見えるのがすごい。
 その先に『池田』というウナギ屋さん、その前の『二宮』、『石田鮮魚店(いしだ)』と並んだ魚屋さんに並ぶ刺身、魚も素晴らしい。

obachan0807545.jpg
●クリックすると拡大
注文の舟盛りを作っているらしい。その光景が庶民的でいながら、とても職人的な部分を併せ持つ。ほんまに素敵な光景だ

 その上、よく見ると値段はまことに庶民的。
 旅の途中でなければ総て買って帰りたくなる。
『重枝』に小さなアカガイと逆に大きすぎるサルボウがあったがこれは瀬戸内海産。
 ザルに無造作に入っているのは「たれくち(カタクチイワシ)」の刺身である。
 トラフグの皮が500円はものすごく安い。
 その店にも置かれていたのが「穴子の湯引き」。
 マアナゴを鱧のように湯にくぐらせているのだけど、うまそうだ。
 萩産のアカアマダイが2匹で650円というのも信じられない価格だ。
 マテガイ、たなご(ウミタナゴ)、さごし(サワラ)、めいぼ(ウマヅラハギ)、はね(スズキ)など魚種が多様なのも素晴らしい。

sakanasakana08072145.jpg
●クリックすると拡大

 一階が市場、二階以上が団地のような不思議な建物である。
 だから見栄えはよくないし、入っている店舗も少ない。
 でも例えば鳥取県境港にある観光市場と比べると何十倍も魅力的だ。
 地元なら毎日通ってしまうだろう。
 こんなことで、セトポンがやたらにうらやましくなってきた。
 考えてみると中国地方は細長い棒のような形だが西に行くほど細い。
 山口市はその西よりにあるので瀬戸内海からも日本海からも至近距離にあるわけだ。
 だから毎日のように多彩な水産物に恵まれる。

kawabatachoushuu.jpg
●クリックすると拡大

 その上、肉屋(長州どりというのを売っていた)がまたいいし、乾物屋、八百屋に置いてある品物もいい。
 もう一方の市場にある八百屋、パン屋などがまたまたいいのである。

kunihoro080715.jpg
●クリックすると拡大
国弘商店のお母さんにはおいしい刻みワカメをいただいた。天然のものをていねいに刻んだものだという。これは優れものだった

 まことに山口市民がうらやましいし、市民の方にはこの市場をもっともっと注目して大切にして欲しい。

 旅の途中で魚を買うわけにもいかず、欲求不満となる。
 それで『松西』で見つけた、タチウオの刺身を1パック買い求めて味見してみる。
 少々行儀が悪いが、醤油と発泡トレイで市場内のテーブルに座る。
 セトポンに
「ちょっと我慢できなくてね」
 と断りの言葉を放つと、
「ボクもこんなことが大好きです」
 言ってくれるではないか、うれしいね。
 堅い職業のセトポンにボクと同族の血を感じた瞬間であった。

川端市場 山口県山口市中河原
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

kihada080712.jpg
●クリックすると拡大

 暑い日々が延々と続いている。
 暑さゆるむ気配すらなく、太平洋高気圧よ元気過ぎだぞ。
 いい加減にしろ!
 そんな朝からヒーヒー大汗かいて市場巡りをしているときに見つけたのが「きめじ」。
 1本3キロ半ほど。
 キハダの「目近(めじ 若魚)」なら価格は激安に違いない。
 聞くとキロあたり650円なり。
 1本買い求めて2500円でおつりがきた。
 この「きめじ」が脂がのっていてうまかったのだ。
 大きいので漬け(づけ)にして、鍋にして、唐揚げにして、握りにして、カルパッチョにもして、と大活躍。
 なかでも真夏のひとり鍋がうまかった。

 水、醤油、味醂、酒の地を鉄鍋に張る。
 キハダの切り身を並べる。
 青唐辛子を刻んで、切り身の上にのせる。
 ガスの火をつけて、アクをすくいながら火を通していく。
 出来上がりに大量の大根おろしをのせる。

 煮上がった切り身に大根おろしをてんこ盛りにして酒のアテにする。
 脂がのっているので、甘味があり、舌の上で適度にほぐれていく。
 酒は滋賀県今津町の「琵琶の長寿 純米酒」なのだけど、旨口ながら後味がすっきりしている。
 ピリカラの鍋に出合いの酒だ。

 面白いもので、キハダの「目近(めじ 若魚)」は外見からは脂の乗りがわからない。
 わかるようでわからない、というのが本音なのだけど、今回のものも値は安いし、その割りに鮮度もいい。
 見た目のよさから、逆に脂の乗りが悪いのだろうと思ったら、真逆だった。

 さて、土曜日に隅田川を始め、多摩地区でも大きな花火大会があり、本日日曜日にもどこかで小さな花火大会、祭が催されているようだ。
 道を行く人が多い。
 祭嫌いのボクはのんびり酒に酔い、本日三度目のうたた寝をクーラーのきいた部屋でいたそうとしている。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、キハダへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/maguro/kihadamaguro.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

tukimori080712.jpg
●クリックすると拡大

 島根県出雲地方、石見地方ので「へか」、もしくは「へか鍋」、「へか焼き」。
 同じく益田市周辺で「いり焼き」。
 同じく浜田市で「煮ぐい」というのがある。
 これは要するに地元であがる様々な魚貝類を醤油味で煮ながら食べる、鍋物のこと。
 このような料理は島根に限ったものではなく関西地方ではハモ、長崎県では鶏、また魚貝類を使ったものは無数に存在する。
 でも共通するのは、ともにあまり作られなくなってきているということだ。

 なぜ廃れてきているのか、というとまずいからではなく、材料を揃えるのが大変であったり、核家族化が進んでいたり、また最近の家庭での生活状況が変化していることもあるだろう。

 それでは「へかやき」とはどんなものなのだろう。
 大田市和江の月森元市さんに実際に作って頂いた
 月森さんは大田市(おおだし)和江(わえ)で長年漁協組合長を努め、和江の小型底引きの基礎を築き、また現在問題となっている韓国との争議でも先頭に立ち獅子奮迅の働きをしてきた。

 さて、月森さんのお宅にうかがったのは、まだ4月のこと。
 大田市和江の港は小型底引きの水揚げで賑わっていた。
 その豊富で、生きのいい魚に圧倒され、また和江の女性の働き者で、また魅力的であるのにも惹かれてしまった。
 そのとれたての魚を持ち帰って、「へかやき」をつくる。
 材料はカナガシラ、チダイ、ソウハチガレイなどの小振りの魚。
 ようするにその日とれたものならなんでもいいのだ。
 これが島根半島などではマサバが主役で、あまり他の魚は使わない。
 そこにワカメ、大根、ネギ、豆腐にコンニャクなどを添える。

 まずは鍋に水と生醤油をいれる。
 そこにカナガシラ、チダイ、ソウハチガレイを入れて、少し煮込む。
 少し待ち、大根、コンニャク、豆腐、野菜を加えて、あとは好みの煮え加減で食べるだけだ。

heka080701.jpg
●クリックすると拡大
汁は水と醤油だけ

heka080713.jpg
●クリックすると拡大
そこに魚を入れる

heka080714.jpg
●クリックすると拡大
あとは野菜やコンニャク、豆腐などを無造作に放り込む

heka070715.jpg
●クリックすると拡大
漁師料理だから、あまりきれいじゃない。でも味は最高。旅館などで出すときには、もっと彩りを工夫すればいい

 意外に思えた材料がソウハチガレイ。
 カレイを鍋にいれるという発想がなかった。
「月森さん、えてがれい(ソウハチガレイ)を鍋に入れるのは珍しいですね」
「そうかえ、ここらでは普通だね。カレイはまいよ(うまいよ)」
 確かに、「まずはソウハチガレイから」と、食べて感激至極。
 卵(こ)が甘い。
 身が練り絹のように適度に口の中でほぐれて、これも甘味がある。
 煮汁の味付けが醤油だけというのが信じられない。
 チダイ、カナガシラとどんどん口に頬張り、小骨を出しだし、またソウハチガレイをむさぼり食う。
 合いの手に食べる野菜がうまい。
 豆腐が絶品である。
 これは明らかに魚から大量の出しが出ているに違いない。
 コンニャクが唐突に思えたのだが、これがまたうまいのだ。
 水と醤油だけで、酒も入れないのに魚の生臭みをまったく感じない。

 これは小型底引きの魚がとても新鮮だからだ。
 小型底引きの魚は、水揚げ時にまだ生きている。
 ピョンピョンはねている。
 その生きの良さに酒などはいらないに違いない。
 また小型底引きの魚を使う限り、あまり甘味を加えない方がいいようだ。
 これは大田の街、石見銀山周辺、大田市の温泉地で食べる場合にも砂糖などは不要かも知れない。
 あまりにうまいので、大田に観光にこられる方達にもぜひ、この小型底引きであがった魚で「はかやき」を楽しんで頂きたいものだと思った。

 鍋だけでお腹がいっぱいになる。
 しかし、これほど「へかやき」というのが美味であるとは想像だにできなかった。

nisin080712.jpg
●クリックすると拡大
とれたばかりのニシンの刺身。とても脂がのって美味であった。

kamaboko080712.jpg
●クリックすると拡大
これが和江名物、漁協蒲鉾。ほんまにうまいのである。

naraduke080712.jpg
●クリックすると拡大
月森さんの奥様手製の奈良漬け。島根県では奈良漬け作りが盛ん。家庭家庭の味がある。

 さて、当日は珍しくニシンの水揚げがあり、これも刺身で堪能した。
 このニシンの刺身がうまいこと。
 和江漁協の「漁協蒲鉾」のうまさも再認識した。
 最後に月森さんの奥様手作りのおいしい奈良漬けでしめくくった。
 まことに月森さんには「ごちそうさまでした」。
 感謝の致しようがありません。

島根県大田市観光ガイド
http://www.iwamigin.jp/ohda/kankou/index.html
へかやき
http://www.iwamigin.jp/ohda/kankou/ryori/hekayaki.html
和江漁業協同組合
http://www2.ocn.ne.jp/~waefu/
JFしまね
http://www.jf-shimane.or.jp/
島根県庁
http://www.pref.shimane.lg.jp/
島根県水産課
http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

matuiizumi08071645.jpg
●クリックすると拡大

 ボクは大阪が好きだ。
 大阪の街、市場、飲食店、総て魅力的で西日本に旅すると、ついつい途中下車したくなるのだ。
 そんな大阪でのお土産と言ったら、例えば「551」の豚まんとか二つ井の岩おこし、または阪神デパートのイカ焼きなんて、一般人にはそんなものが思い浮かぶはずだ。
 しかしボクはおおいに違っている。
 なんといっても『松井泉』の焼きあなごがいちばんだ。
 だいたい若い社長のアナゴに対する意気込みが違う。
 例えば西日本には焼き穴子を売る店が思った以上に多いのだけど、もともと市場の店であるせいか、『松井泉』のものがいちばん格安に思える。
 しかもいつ食べてもうまいのも不断の努力のためだろう。

matuiizumi080715.jpg
●クリックすると拡大
大阪市野田の大阪中央卸売市場内にある店舗

 ボクは買い求めてきて、軽くあぶり直してとんとんと切って酒のアテにする。
 家族は、ご飯にのせて「穴子飯」を楽しむ。

 あまり特定の会社の宣伝はしないのだけど、今回はちょっと例外。
 大阪土産といったら『松井泉』の焼きあなごがおすすめでっせ。

松井泉
http://www.matsuiizumi.co.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マアナゴへ
http://www.zukan-bouz.com/unagi/anago/anago.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

sagosi08071354.jpg
●クリックすると拡大

 世の中には、地味な料理というもの、平凡な料理というのがあって、フライなどもっとも「そのような」ものではないか?
 魚のフライは間違いなくうまい。
 だから多少難ありの魚だって、とにかくパン粉をつけて揚げてしまえばいいのだ。
「なんとか食える」
 これがフライというものの役割というか、料理としての格を落としている。

 さて、それではうまいフライ、まずいフライはないのか、というと大ありなのだ。
 アメリカではナマズのフライを好んで食べる。
 そのためにミシシッピ川周辺ではナマズの養殖がさかんだし、ベトナム、東南アジアでもナマズの養殖は重要な産業となっている。
 このナマズのフライなど上のフライだろう。
 ほかに上のものを挙げるとマアジ、マサバ、マダラ、ヒラメ、メダイ、にスズキ、そしてマアナゴ。
 背の青い魚も白身の魚も意外に法則的なものが見いだせなくて困る。
 あえていうとフグのフライはうまくない。
 下手だ。

 さて、昨今豊漁となっているのがサワラだ。
 大型になったものは高いが狭腰(さごし)と言われる小振りのヤツはときにおおいに安い。
 安くて、しかも味もいいし、オマケに卸すのも簡単至極。
 これを1本買い込み、三枚に卸し、血合い骨をのぞき、塩コショウ、パン粉をつけて冷凍保存しておく。
 我が家の言うなれば定番的なおかずなのだ。
 本日も朝方、おかずにこまって揚げたのだけど、うまいので夕ご飯にもまた食べたくなる。

 大分の教育委員会の不正といい、岩手での地震といい。
 不快指数を上げる事件が多い。
 大分の事件など、ボクが裁判官なら無期懲役にしたいのだけど、結局微罪で終わるんだろうな。

 そんな不快指数の高い夕方にはビールを爽快に飲みたいものだ。
 アテは枝豆と狭腰のフライ、これがいいね。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、サワラへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/sawara/sawara.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

houbou080718.jpg
●クリックすると拡大

 我が家にお年をめしたお客様がおいでになる。
 市場でいろいろ考えた末に、焼き物はホウボウに決めた。
 身内なので、そんなにかしこまることもなく、適度に家庭的に。

 産地不明のホウボウは産卵期の痛手から抜け出して、身がふっくらとしてきている。
 脂もありそうなのだ。
 これを4、5本も選んで買い求めてくる。
 旬を外しているために思ったよりも安い。

 まずはホウボウの頭を落として背開き。
 やや強めの塩をしておき、水で洗い流して酒に漬け込む。
 これを冷蔵庫で半日乾燥させる。

 後は焼くだけだから簡単至極。
 でもこんな単純な料理に、お客はいたって感激してくれたようだ。
 焼き残った2枚ほどをお土産にお持ち帰り願った。

 面白いことに酒を使うと、焼き色がきれいに着く割りに硬くならない。
 そこに適度な酒の風味が残る。
 産卵後の荒食いで思った以上に脂があるのか、甘味が強い。
 夏のホウボウ、なかなか捨て難し。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ホウボウへ
http://www.zukan-bouz.com/kasago/houbou/houbou.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 12日は早朝5時過ぎには石巻魚市場にいた。
 まずは場内の圧倒的な広さに驚く。端から端まで歩いたときの行けども行けども尽きぬ感はすごい。

jounai080718.jpg
●クリックすると拡大

「今日は魚が少なくてね」
 尾形清雄さんが済まなさそうに言うのだけど、そここに何げなく置かれている魚貝類の多彩さは国内でも屈指のものだろう。

 赤く染まっているのはキチジ(本標準和名は宮城県で使われていた言葉)、アコウ、バラメヌケ、ニシン、そして問題のギンダラ。

kitiji080718.jpg
●クリックすると拡大
これくらいの大きさになるとキチジ(きんき)は高いに違いない。

horaanago080718.jpg
●クリックすると拡大
ホラアナゴは床一面に広がっている

itohikidara080718.jpg
●クリックすると拡大
イトヒキダラ、オニヒゲ、ヤリヒゲ。みなすり身になる

 床にはホラアナゴが、大きなコンテナにはイトヒキダラ、ヤリヒゲ、オニヒゲが投げ込まれている。
 これをいちいちチェックしていくのだが、メモを取る気にもなれない量である。

 ちょっと混乱した頭を沈めようと、とにかくいちばん端っこまで歩く。
 そこにあったのが宮城県ならではの養殖ギンダラ。
 殺菌冷海水、海水氷の入ったコンテナーにたくさんのギンザケが競りを待っている。

ginrada080718.jpg
●クリックすると拡大

ginzake080718.jpg
●クリックすると拡大
ギンザケはこのように開いて身の色合いを見せて競りにかける

 ギンザケの競り場から、こんどは魚貝類をじっくり見て歩く。
 脇を歩く尾形清雄さんの足取りが速い。
 30代に見える息子さんも一緒で、ボク共々その速さに遅れてしまう。

seri080718.jpg
●クリックすると拡大

 ミズダコ、ヤナギムシガレイ、マコガレイ、ソウハチガレイ、ヒレグロ、ババガレイ、サメガレイ、ミギガレイ、ヒラメ。
 スケトウダラ、マダラ。
 シライトマキバイにエゾボラモドキ。

siraito080718.jpg
●クリックすると拡大
灯台つぶのひとつ、シライトマキバイ

 スルメイカにヤリイカ。
 マアナゴ、アブラガレイ。
 マサバ、ゴマサバ
 ケガニ、ヒゴロモエビ(ぶどうえび)。

 市場の片隅でマボヤ(ほや)が洗浄されていた。
 こんなにたくさんの養殖マボヤを見るのも産地ならでは。

hoya080718.jpg
●クリックすると拡大

「残念ですね。今日はまったく魚がなくて」
 見知らぬ人から声がかかる。
 どうやら昨日食堂にいた人らしい。
「いいえ、そんなことはありません」
 もしも大漁だったら、きっとヘトヘトを通り越してぶっ倒れてしまうかも知れない。

 尾形さん親子に、また秋に来ますと行って石巻を後にする。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 大分県、徳島県、山口県に共通する練り製品が「かつ(フライ)」である。
 大分、山口は「ぎょろっけ」なんていう。
 徳島では単に「かつ」もしくは「魚かつ」。
 形は違うけれど、要するに魚のすり身にカレーや唐辛子などの香辛料をまぜて、フライにしたものという共通点がある。
 意外に3県ほど知られていないのが島根県浜田市の「赤てん」。
 これも同様に和洋折衷の味わいでとてもうまい。
 この練り物をフライにするというのは戦後、東洋水産(現マルハ)などが魚肉ソーセージを開発したときに、他の練り製品の売上が落ちた。それに対抗すべく開発したものが練り製品のフライなのだ。

 これを揚げる直前の形にまで仕上げて、ご家庭で揚げたてをお楽しみ下さいというのが「いそまる本舗」の赤てん、そして新しく開発された黒てん。「黒てん」はイカ墨を使って真っ黒に仕上げている。

 赤黒、どちらが面白いかというとボク個人からすると「赤かな」と勝手に思う。
 それでともに取り寄せてみた。
 赤てんのうまさは、まさにボク好みである。

akaten080718.jpg
●クリックすると拡大

 知り合いに島根県出身で、高校時代の弁当のおかずはいつも赤てんだった、という五十路男がいるが、むべなるかな。間違いなく毎日食べても飽きないだろう。
 やや甘めの練り地にピリカラ風味。
 揚げたてを食べたときの感激はなんともいいようがない。

 そして「黒」は赤てんに対してとってつけたような、イヤだなと思ったら、こちらの方が味は正統派だった。

kurote080718.jpg
●クリックすると拡大

 練り物本来の味はこっちの方がいい。
 そこにフライの香ばしさがきて、少しだけ異端であるのがいい。
 そう言えば「亭主の好きな赤烏帽子」なんていうけど、対するに「黒」はスタンダードな意味合いを持つ。
 黒はじっくり味わうとうまい。

「赤てん」はなんといってもビール、とにかくビールがうまいけど、「黒」は日本酒にも合う。

いそまる本舗
http://www.rakuten.ne.jp/gold/isomaru/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

mebati080718.jpg
●クリックすると拡大

 さて、とうとう梅雨があけたのだ。
 これから数日、耐え難い炎暑が続くはずだ。
 当然、食欲は落ちるだろうし、なんだか体が気だるい、そんな憂鬱な日々が続くにきまっている。

 そんな耐え難い暑い日々にお勧めなのが、出始めた青唐辛子を使った煮魚である。
 今回の材料は築地場内で買い込んだ500円パックのマグロぶつ。
 それが余ったのでもう一度凍らせて保存していたもの。

 解凍して、軽く湯引き。
 水分を切っておく。
 鍋に水、酒、味醂、醤油を煮立たせて、沸騰させてやや煮詰める。
 ここにマグロと青唐辛子の刻んだものを放り込むのだ。
 煮詰めるように強火で、短時間に作る。
 出来上がりに、また青唐辛子を振り込めば出来上がりだ。

 あっという間に出来上がるのに、意外なほどうまい。
 合わせるのは、青森県三浦酒造の「ん」。
 安くて、うまくて、きれのいい酒だ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、メバチマグロへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/maguro/mebatimaguro.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

donsupe0807151.jpg
●クリックすると拡大

 島根県浜田市の「どんちっちあじ」というのは巻き網でとったマアジで脂肪の比率が高く、しかも漁場が近い(鮮度がいい)ものを差す言葉。
 どちらかというとマアジという庶民派の魚に品質保証をつけたものと思ってもらった方がいい?。
「どんちっち」を買う限り、味の方は間違いなく一段上だと思って間違いないのだ。
 でもいずれにしろ、ちょっと地味だな、なんて思っていたら、「どんちっち」というブランドを立ち上げた浜田市で、その上のマアジを試験出荷してきた。
 釣りもの、型がよく、しかも一定期間活かしておいて、出荷直前にしめる。
 そうだ、今ではマアジの代表格になってしまっている「関あじ」と同じ出荷方法なのだ。

 水産物はとるのも大変だけど、それを流通させるのも大変なのだ。
 まったく同じ魚でも出荷する箱の大きさ、量、仕立て方(氷や、下に敷く紙)で値段が変わる。
 だから試験的に出荷することも、最近ではよくあることなのだ。

 この「どんちっちあじスペシャル」も出荷の形態ではまだまだやるべき課題が多い。
 例えば、今回は下に氷を敷いての出荷なのだけど、氷の上に流通時のショックを和らげるクッション材がしかれていない。これだと氷の凸凹が下になる方についてしまう。
 築地では、これだけで大きなマイナス要因となる。
 また一匹600グラムほどもある大アジを8本入りにしているが、5本にする方が値がつく。

 さて、固い話はやめて、今回の「どんちっちスペシャル」を食べてみる。
 当然、刺身にするのだけど、脂が多いものと少ないものを2本もらってきた。
 これは渡邉祐二さん(浜田市水産物ブランド化戦略会議専門部会部会長)が場内ではかってくれたもの。
 総て脂質10パーセント以上なのだけど、方や12パーセント代後半、方や12パーセント代前半とでた。

donsupe071502.jpg
●クリックすると拡大
今回いただいたマアジはすべて直前に脂質を計測してもらった。そろそろマアジのシーズンも終盤となる。それでも12パーセントから13パーセントの脂質ありと出た。

 帰り着いて卸してみると脂質の高い方が抱卵したメス、低い方がオスであった。
 産卵期にはオスの方がうまいと思っていたので意外だ。

 さて、今年はマアジを飽食している。
 とくに島根半島の定置網マアジにうまさでノックアウトされてから、ちょっとやそっとのうまさには動じなくなっている。
 だからこの「どんちっちスペシャル」にも味わいで驚かせられることはなかった。
 ただただ味のいい、脂ののったマアジだ。
 あえて言うと、2本の味では脂の層の厚みが違っている。

donsupe08071503.jpg
●クリックすると拡大

 それでは、「スペシャル」な意味あいはないではないか?
 と思われるだろう。
 否である。
 やはり、これは「スペシャル」なマアジである。
 とにかく脂も旨味も充分であることはくどいほど書いておきたい。
 そこに活けのような食感を感じるのだ。
 もともと長崎県から島根県までのマアジは日本最高峰とされてきているのだ。
 これなら総合点で「関あじ」を超えられるのではないだろうか。

 まだまだ試験的な出荷だが、来年度には「どんちっちスペシャルあじ」で市場を「あっ!」と驚かして欲しいものだ。

島根県浜田市「どんちっち」
http://www.city.hamada.shimane.jp/kurashi/nousui/suisan_don.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マアジへ
http://www.zukan-bouz.com/aji/aji/maaji.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

sijimi08071701.jpg
●クリックすると拡大

 シジミで卸値キロ当たり1000円を超えると、高いな、と思う。
 1500円を超えると、よほど大きいのかな。
 2千円ともなると、絶対に大きいのだろう。
 なんていろいろ思う。
 最近のシジミの値段は国産で見る限り、大きさで決まるようだ。
 そんななかで、それほど大きいとも思えないのに、値のいいシジミがあって、これがことごとく北海道産なのだ。
 ある日、北海道網走湖産のシジミを見つけて、ネット一キロ買い求めてみる。
 荷主は『丸サチ松永水産』。
 なんと値段がキロ1500円だから、これで1500円税別となる。
 安いものになるとキロ当たり600円しかしないので3倍近い。

 さて、じっくり見てみよう。
 形は典型的なヤマトシジミ。
 ややベッコウ色で光沢がある。
 粒が一定で揃って中ぐらい。
 とにかく見た目がとてもきれいだ。

 これを定法通りにしてみそ汁に。
 特徴はまったくアクがない、泥っぽくないというもの。
 汁にはしっかり旨味が出ており、コクがある。
 そして膨らみのいい身には微かに甘味すらも感じる。

 これなら一キロ1500円しても不思議ではない。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、シジミへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/sijimi/sijimi.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

akauni080716.jpg
●クリックすると拡大

 食用ウニの代表格はエゾバフンウニとキタムラサキウニ、ついでバフンウニ、ムラサキウニも加わるが少ない。
 もっと正確を期すならば、全体量からすると、この国産ものよりも輸入ものの方が多いのかも知れない。
 ただ、今回はこのような難しい問題は省くとして、国内のウニのほとんどが北でとれていて、西南部では少ないというのはわかっていただけただろうか?
 西南部というか、本中部以南といういたって曖昧に表現される生息域にいるのがアカウニなのだ。
 これはあまり東京などにはこない。
 築地場内では初夏になるとよく見かけるものであるが、場内数ある仲卸店舗でも一軒か二軒の店先で見るのみ、というもの。
 北海道などのエゾバフンウニと比べて、入荷しても“ひっそりと”したもの。
 
 さて、このアカウニを名古屋の柳橋市場で見つけて思わず買ってしまった。
 これが“アカウニの今期初買い”である。
 買った仲買がぶっきらぼうで、まことに粗っぽかった。
「氷くれますか」というとアカウニをビニールに放り込み、そこに氷をザラリと入れた。
 おかげで後々、ひどいめにあってしまった。
 値段はキロ当たり2500円。

 昨年のアカウニ食べ納めが10月だった。
 やっと持ち帰って割り、そのやや薄い黄色の精巣を見て、思わず、つまみ食い。
 エゾバフンウニの濃厚さはない。
 キタムラサキウニよりも旨味が薄い。
 むしろ一個全部を、手でほじくりながら食いきっても、もの足りないほどに感じる。

 これが酒のアテにすると、ちょっと変身する。
 一片か二片口に放り込んで酒を含むと、ふわっとウニの味わいが浮き上がってくるのだ。
 アカウニを食らうなら、ワインならシャブリ、日本酒なら山形の東北泉とか静岡の磯自慢がいい。
 そんなことを思いながら、隠岐の「高正宗」を口に含むと、これでもいいのかな、と思うのであった。
 五十路になるとストライクゾーンが広がるのだ。

 さて、野甘草の花も、オオケタデの花房も、猛暑の中で元気がない。
 どうやら梅雨はあけたらしい。
 毎年のことだが、気象庁よりも、人の感覚の方が季節の移り変わりに対しては敏感なのだ。
 夏真っ盛りとなった、きっと築地場内にもアカウニが並んでいるに違いない。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アカウニへ
http://www.zukan-bouz.com/sonota/uni/akauni.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

honesen080714.jpg
●クリックすると拡大

 ホシガレイはうまい。
 でも高いな。
 5月、静岡県沼津市沼津魚市場に2キロ上の巨大なホシガレイがいて、担当の山田さんが
「今日は安いよ、キロ9000千円くらいじゃない」
 なんてニヤリと笑っていたっけ。
「買わない?」
 そのときボクは青い帽子をかぶっていたのだけど、
「買いませーん」
 ホシガレイは大きいほど高く、また味がいい。

 そして7月になって築地場内で見つけた活けは600グラム、キロ当たり2500円で手頃だ。
 産地は三陸なのでホシガレイとマツカワガレイが混生する地域だ。
 この両雄、値が下がらないし、瓜二つ。
 マツカワガレイは養殖されているのにホシガレイの養殖は聞かない。
 これ理由があるのだろうか?

 さて、帰宅して卸してみると、身が反り返る、じわりと包丁を跳ね返す。
 このシコ、コリっとしたのが涼やかでいい。
 初日はこの食感を楽しみ、翌日の刺身はうまさを楽しむ。

 さて刺身にしたら、かならずついてくるのが骨せんべい。
 こいつがないと子供達が納まらない。
 ある意味、こっちが主役とでもいえそうだ。

 卸すやいなや、骨せんべいを揚げる。
 二度揚げするのだけど、最初は低温で、二度目は高温で香ばしく。
 揚がったら、紙に取り、振り塩をパラパラ。
「出来上がったよ」
 子供達は呼ばなくても横に立っている。
 父ちゃんが刺身を持って席に着く。
 そのとき、骨せんべいは跡形もなく消えているのだ。
 せっかくビール(偽物ですけど)をあけたのにー。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ホシガレイへ
http://www.zukan-bouz.com/karei/karei02/hosigarei.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

dontitithiraki080714.jpg
●クリックすると拡大

 島根県浜田市のブランド魚「どんちっち」というのは、マアジに関して言うと身の中の脂が10パーセント以上というものを機械で測定して出荷したもの。
 もともと浜田近辺のマアジは脂の乗りがよく、国内でも定評のあるものだった。
 それを島根水産試験場(現水産技術センター)では一年のマアジの脂質を測定し、4月から8月の浜田沖産のものがもっとも数値が高いことを証明、ブランド化を押し進めていく。
 これで最近知名度の上がってきている「どんちっちあじ」の誕生を見る。
 また2005年度には近赤外線を使った測定装置を導入。出荷に当たっては脂質10パーセント以上であることを確認している。
 すなわち「どんちっちあじ」は脂ののったマアジであることを、科学的に証明したものなのだ。

 浜田市のブランド「どんちっち」は市、県、漁協などが一丸となって作り出したもの。
 その中心メンバーのひとり、渡邉祐二さん(浜田市水産物ブランド化戦略会議専門部会部会長)にお会いして、現在の取り組みや脂質を量る機械をみせてもらった。
 そのときサンプルとして、いただいたものがいろいろあるのだけど、それをひとつひとつモニターしていきたいと思う。

 まずは「どんちっち」の代表とも言えるマアジの開きだ。
 まずは形から、一般人から見ると包装も開き方もきれいに見える。
 でも専門家からすると、開き方が稚拙であるという。
 ただし、それはあくまで専門家からの指摘だ。
 よくみると沼津などのアジの開きからするとバラツキや身の切り付けたところが凸凹していなくもない。

 ボクなど大ざっぱな人間にとって、問題なのは味である。
 これは、ぼうずコンニャクがお墨付きを差し上げたいほどの上々ものである。
 なんといっても脂ののっているアジの干物はうまいに決まっている。
 その上、身質が練り絹のようにきめ細やかで軟らかい。
 香りがいいのもうれしいね。
 塩分濃度はご飯を食べるにはいいが、酒を飲むにはやや強めだ。
 アジの開きは酒の肴というよりも、ご飯の友なので、これも合格点だろう。

 この「シーライフ」の「どんちっちあじ」は出色の味わいである。

シーライフ 島根県浜田市瀬戸見町37-18
島根県浜田市 どんちっち
http://www.city.hamada.shimane.jp/kurashi/nousui/suisan_don.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マアジへ
http://www.zukan-bouz.com/aji/aji/maaji.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

benizake080712321.jpg
●クリックすると拡大

 国内ではベニザケはとれない。
 一般的にはそうだけど正確には、ほとんどとれないというのが正確だろう。
 春から夏にかけて量は少ないけどとれる。
 これは三陸近辺がベニザケの回遊の南端にあたるからだ。
 回遊の通り道にあたる根室からのものが多い。
 この根室産のベニザケを築地場内『大音』さんで見つけてすぐに買い込んだ。

 これがまことにうまいのだ。
 生だし、一度も冷凍していない。
 それをムニエルだとか、フライだとかにする。
 このベニザケの身のうまさをどう表現したらいいのだろう。
 苦しむのだけど、とにかくベニザケ独特の旨味があって、これが濃厚なのだ。
 しかもここに適度に脂がのっている。

 その短期間水揚げされる国産ベニザケの料理法として最高峰なのが塩焼きなのだ。
 出来ればカマ(胸ビレから鰓ぶたまでののど頸の部分)をズドンと筒切りにしてこんがりと焼き上げる。
 平凡すぎる料理なのに圧倒的なうまさを感じる。
 脂ものっており、甘味があるのもいい。
 サケ類の身には独特の風味というか臭みがある。
 ベニザケにもそれを感じるのだけど、微かなもの。
 これがアメリカなどでも好まれるものなのだろう。
 敗戦後北洋でのサケマス漁が始まったとき、ベニザケは缶詰になりアメリカへ輸出されていたのだ。
 当然魚臭くないのでパン食に合う。
 その代表的な料理法がムニエルなのだけど、これも絶品である。
 ルイベ、酢締め、フライなど一本のベニザケで大層口福を感じる。

 さて、毎日暑い日が続いている。
 近所の空き地にはオオケタデが美しい紅色の花をたらしている。
 ベニザケの入荷が終わると夏本番となる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ベニザケ
http://www.zukan-bouz.com/sake/benizake/benizake.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

dojou080712.jpg
●クリックすると拡大

 名古屋駅から歩いて数分で柳橋市場に到着する。
 この市場のことはまたご報告するが、意外に淡水魚を扱う店が多かった。
 その一軒が「マルナ淡水魚」で、ここで子持ちの割きど(割いたドジョウ)を発見。
 思わず1パック購入してきた。
 子(卵)も親も、かなりたっぷり入って1260円。
 旅の途中でもドジョウの前は素通りできないものである。

 まずは鍋の地を作る。
 水6に味醂1、醤油1を合わせて一煮立ち。
 ここで味見して加減する。
 ネギを刻む。
 それこそ鍋に入れて溢れるくらいいにたっぷり用意する。
 割きドジョウは湯通しして、冷水にとり、滑りをていねいに落とす。
 背ビレ、腹ビレ、胸ビレなどを手でつまみ取る。
 鉄鍋にドジョウを並べて、真ん中に生の卵を置く。
 地をはって火をつける。
 子に火が通れば出来上がりだ。
 ネギをてんこ盛りにして煮ながら食べていく。

 ドジョウ鍋を作るたびに「もっとたっぷり買ってくればよかった」という後悔の念が浮かぶ。
 山椒をたっぷりかけた割きドジョウがなんともコクがあってうまい。
 これを滋味とでも言うべきなのだろうか。
 食べても食べてもうまいうまいとしかいいようがない。
 そこにコックリと甘味のある卵をつまむのだけど、「ドジョウは夏の味かな」なんて改めて思う。

 冷たくひやして置いた「玉乃光」をときどきぐっとあおるのだけど、ドジョウ鍋に酒は無用と感じるときがある。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ドジョウへ
http://www.zukan-bouz.com/koimoku/dojou/dojou.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

toudai0807.jpg
●クリックすると拡大

 水産物の図鑑を作っていてもっとも困難に思えるのが巻き貝の同定である。
 巻き貝の貝殻の形だけ見ても種はわからない。
 貝殻の厚み、殻皮(貝殻の表面を被う膜)、割って貝殻の断面の色、そして同じ地域での変異、地域を違えての変異。
 巻き貝を同定するのは職人技なのではないだろうか?
 なかなか貝同定職人の技を身につけることの出来ないボクは「日暮れて道遠し」の感を強くする。

 食用貝のなかにもやっかいなのがあって、現在改訂するにも行き詰まっているのがエゾバイ科Bussinumのなかでもヒモマキバイのグループだ。
 これらを市場では「灯台つぶ」と呼ぶ。
 当然「灯台つぶ」は一種類ではなくクビレバイ、ヒモマキバイ、シライトマキバイ、オオカラフトバイなど複数の種が入り交じる。
 この灯台つぶを見かけるたびに逃げ出したくなるほど、その種を判定するのが難しい。
 素人だけではなく、ボクが想像するに専門家と言われる人たちにも混乱が生じていそうだ。

 厚岸産灯台つぶ、これをいい加減にオオカラフトバイとして夏らしい煮貝をつくる。
 まずよく洗って汚れを落とす。
 鍋にみりん、酒、砂糖少々、醤油と水を入れてオオカラフトバイを加える。
 全部放り込んで火をつけてほどよく煮えたら火をとめて青唐辛子を加えて、がらがらと菜箸でかき混ぜる。
 このまま鍋止めをして、冷えたら、また青唐辛子を加える。

 夏らしい、ぴりっとした煮貝が出来上がる。
 選ぶ酒は隠岐の辛口「高正宗」。
 雑味ありなのだけどバランスのいい酒が、煮貝にもってこいだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、オオカラフトバイ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/himomakibai/ookarafutobai.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

mizunamasu0807035.jpg
●クリックすると拡大

「水なます」を初めて食べたのは、もうかれこれ25年も前のことになる。
 当時、釣りキチそのもので毎週土曜日には外房へ、相模湾へ、遠く茨城県、福島県、静岡県にまで深夜クルマを走らせていた。
 さて、時期は梅雨の最中。
 外房はイサキ釣りの最盛期を迎えていた。
 でもたどり着いた千葉県館山市布良の海は大荒れだったのだ。
 午前4時過ぎ。
 宿の前、釣り人の「今日はダメだろ」が挨拶代わりだった。
 やはりその日は船が出なかった。
 こんなとき釣り師は悩むのだ。
 不眠のためにクルマで眠っている間にも海は凪いできている。
 明日は出るに違いない。このままここに泊まってしまおう。
 時間をもてあましたので舘山の町をぶらり歩き、また布良にもどって民宿を探す。
 なかなか泊めてくれる宿がない。
 一軒だけ、船宿が一間だけあいていて、ついでに日曜日はそこから出船することになった。
 その夜に出てきたのが「水なます」だった。
 夕食なのに目玉焼きがある、イサキの塩焼き、ゆでたクルマエビ(?)、冷えたお吸い物、ナスの炒め物などにがっかりしていたら、真ん中にどかんときたのが氷がいっぱい入ったガラスのボウル。
 これが「水なます」だった。
 静岡県にも同じような料理があって、そちらは「がわ」という。
 ようするに魚のたたいた身が入った冷たいみそ汁だ。
 そこに青じそ、ネギ、ミョウガやキュウリなどがせん切りになってたっぷり放り込まれている。
 ごまが入ることもあるし、辛い青唐辛子が入っていることもある。
 ネギではなく玉ねぎのときもある。
 あまりにも簡単に出来て、夏には最高の料理なので、一度食べたら病みつきに。
 今では我が家の定番料理のひとつとなっている。

 魚はイサキ、マアジ、ソウダガツオ類などなんでもいい。
 なんでもいいが、鮮度だけはよくないと生臭くなってしまう。
 できるだけ新しく、出来れば旬のもので脂がのっていてほしい。
 さて、そこで今期初めての「水なます」作りに選んだ魚が島根県浜田市の「吉勝丸」が巻き網であげた「どんちっちあじ」だ。
 巻き網なら鮮度は望めないように思えたのだが、触ってみたらいい感じなのだ。

 大きさは1本100グラムほど。
 3本ほど買い求めてきて、三枚に卸して皮を引き、とんとんと細かく切る。
 片や青じそ、キュウリ、ミョウガを刻んでおく。
 みそをすり鉢ですり、水を入れてといていく。
 そこに氷をたっぷり。
 みその量は氷が入ることも鑑みて大目にする。
 みそ汁状のものがチンチンに冷えたら、アジの身を放り込む。
 アジの欠片がチリっと音を立てるように収縮し、表面にキラキラした脂が浮き上がってくる。
 後は薬味を放り込み、煎りごまも振り、ご飯にかけて食うだけだ。
 我が家では「水なます」だけ作ることはない。
 隣には煮込みハンバーグやポテトサラダがあるのに、太郎はぶっかけ飯で三杯目。
 一年ぶりの「水なます」は最高である。

 うっとうしい曇り空、高い湿度、身体がだるくて不快指数高し。
 そこに冷たくみそ辛い、汁がなんともいい。
 汁にはマアジの脂と、その甘味、そして旨味がほどほどに溶け込んでいる。
 やはり「水なます」用にも脂ののった魚がいいということに気づかされた。

 さて、そろそろ7月も中旬に近い。
 梅雨は明けないのであろうか? 高木ブーじゃなくてゴロゴロ様来てくだされ。

島根県浜田市「どんちっち」
http://www.city.hamada.shimane.jp/kurashi/nousui/suisan_don.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マアジへ
http://www.zukan-bouz.com/aji/aji/maaji.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

atuezobora0807.jpg
●クリックすると拡大

 夏になるとつぶ(エゾボラ類)のコリコリした食感を楽しみたくなる。
 7月7日七夕祭りの日、市場を歩いていたら厚岸からアツエゾボラが入荷してきていた。
 キロ当たり1500円はちょっと高い。
 量りにのせたら1個200グラムだから、300円+消費税だった。

 つぶには「Aつぶ」もしくは「真つぶ」と呼ばれるエゾボラがあって、そこに一段値段が下がるように「Bつぶ」がある。「Aつぶ」もしくは「真つぶ」というのはエゾボラという一種類の巻き貝だが、「Bつぶ」というのは“真つぶ”以外という意味合いがあるように思われる。
「Bつぶ」をざっと羅列していってみよう。
1 フジイロエゾボラ
2 ウスムラサキエゾボラ
3 チヂミエゾボラ
4 エゾボラモドキ(セイタカエゾボラ)
5 アツエゾボラ
6 マルエゾボラ?
7 カラフトエゾボラ
その他無数
 エゾボラの同定は難しく専門家の間でも論争が絶えない。
 そんななかにあって比較的種が判明しやすいものがアツエゾボラなのだ。
 漢字で書くと「厚蝦夷法螺」。
 貝殻が分厚くごつごつしている。無骨で形的に一定で変化が少ない。
 厚岸などからはきれいに並べられてくるのだけど、これも大きさ形が一定だからだ。
 貝殻が厚いから歩留まりが悪く割高になるのを嫌う人も少なくない。
 でも味はエゾボラ同様に素晴らしい。

 まずは貝殻から身を取り出す。
 取り出し方は以下にある。
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/ezobora/sasimi.html
 刺身になる足の部分を割り、唾液腺を取り出す。
 ここには食べ過ぎると酔っぱらったような症状が出る弱い毒(テトラミン)が存在する。
 これを塩をつけて揉み、滑りをとりさる。
 このときていねいに、手を抜かない。

 後は刺身に切るだけ。
 貝殻を生かして盛りつけると立派だ。

 ちょっと貝の苦みがあるけど甘味が強く、コリコリと涼しさを誘う食感。
 夏にはもってこいの味覚だと思う。

 今宵の酒は京都伏見の「玉乃光」。旨口でいながらさらりと辛い。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アツエゾボラへ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/ezobora/atuezobora.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 島根県の水産アドバイザーを引き受けて、いちばんの課題に思えるのが関東での「白ばい(エッチュウバイ)」の価格である。
 先月の築地場内でのこと島根県大田市産だと思われるのがキロ当たり850円、1200円、1400円と並んでいる。普通大きい方が値が張ると思われるだろうけど、「白ばい」に関して関東では真逆となる。
 小さくて大きさが揃っているほど高く、大きいほど値が下がる。

sirobai080711.jpg
●クリックすると拡大
築地場内で見かけた島根県産の「白ばい」。小さい方が高い。

 どうしてだろう?
 それがいたって簡単なのである。
 関東では「白ばい」を刺身にしないからだ。
 もっぱら煮るために小さい方が都合がいいし、ついでに言うならば「巻き貝の煮たものは突き出しの定番」でもある。
 ちなみに「突き出し」とは関西でいうところの、前菜としてのあて。
 どうやら関東の料理人は「白ばい」の刺身のうまさをご存じないようだ。

 関東で巻き貝の刺身というとエゾボラ属が主だ。エゾボラは市場では真つぶ。そこにBつぶなどが加わり、すべて刺身用となる。とにかく関東ではエゾボラ属は刺身用、対する「白ばい」を代表とするエゾバイ属は煮物用に決めてしまっている。

 水揚げの多い島根県人にはこれが不思議でならない。
 隠岐島後でいっぱいやっているときにも、「白ばい」の刺身が出て、「うまいなー」なんて食べながら、関東人の不思議を語り合ったものだ。

 さて、最近、「白ばい」の刺身が関東で流行らない理由が、その滑りにあるのではないかと思うようになった。
 エゾボラ属と比べると塩もみしてもなかなか滑り、粘りがとれない。
 コツは一度にたくさん揉むことだ。
 基本的には関東では「白ばい」が安い。
 だからたくさん買い込んで一度期に揉み取ると、簡単に滑り、粘りがとれる。

sirobai080712124.jpg
●クリックすると拡大

 そして「白ばい」の真骨頂はワタがうまいこと。
 このワタだけは塩ゆでして刺身に添えて出す。
 刺身にワタが加わってなんだか、見た目が豪華である。
 我が家では刺身醤油と(辛子)酢みそを用意して好みで食べる。

 さて真つぶと比べると、やや柔らかい。
 シコっとして甘く、貝の風味と旨味がどんどん混ざって複雑なうまさとなる。
 これは間違いなく日本酒に合う肴。
 本日は隠岐島後の銘酒「高正宗」を一献。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、エチュウバイへ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/aniwabai/ettyubai.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

青鯛の手こね寿司

0

aodai08071245.jpg
●クリックすると拡大

 このところ遅く外出して、深夜に帰宅する日が続いている。
 それでも朝の市場通いは欠かすことがない。

 八王子魚市場で見事なアオダイを見つける。
 入荷の仕立てから神津島、八丈島のものに違いない。
 背中のコバルトブルーが鮮やかだ。
 値段はキロ当たり1800円なり。
 アオダイは関東では人気があり、常に高値で取り引きされる。
 一本選ぶと、ほとんど一キロあって、2千円出しておつりはツーコイン。

 刺身、塩焼き、グリエなどにして、残りは適度に切り味醂と醤油に漬け込む。
 これを久方ぶりに「手こね寿司」にする。
 やや甘めの寿司酢を作り、ここに漬けタレを少々加える。
 炊きたてのご飯で寿司飯を仕立てて、ここに漬け込んだアオダイの身を混ぜ合わせていく。
 そこに刻んだミョウガや青じそを散らし、白ごまをふって出来上がる。

「手こね寿司」とは三重県の郷土料理であり、釣り上げたばかりの魚を適当に刺身にして、それを甘辛い醤油入りの寿司酢に漬け込む。
 飯時には漬け込んだ魚ごと寿司酢を炊きあがったばかりのご飯に混ぜ込んでいく。
 めっぽう忙しい船上であるから、しゃもじでは間に合わず、手で素早く混ぜ合わせるので「手こね」となるわけだ。
 主にカツオなどを使うようだが、ブリでも、またアオダイのように白身魚でも大いに結構。
 簡便さ、手軽さから家庭料理にも取り入れたい料理のひとつだと思っている。

 これを朝ご飯で食べ、茶碗いっぱい残して、寂しいお父さんのお昼ご飯にもする。
 ひとり慌ただしく食べていると梅(猫である)が来て「魚だけおくれ」となく。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アオダイへ
http://www.zukan-bouz.com/fuedai/aodai/aodai.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

TAICHA080703.jpg
●クリックすると拡大

 マダイがうまいというほど月並みな話はない。
 ええ加減にせい、とでも言われそうだ。
 世に「鯛よりうまいイワシ」とか「鯛よりうまいサバ」なら面白いだろうが、「やっぱり鯛は鯛だな」なんて面白くもなんともない。
 でもこの目の下一尺弱の鹿児島県阿久根からきたマダイがうまいのなんのって、絶叫したくなるほどだ。
 普通、「桜鯛」というと春だし、「落ち鯛」というと秋だ。「寒の鯛」というのもありで、冬ですな。
 まさか「夏鯛」はないだろうと思っている人手を上げて。
 きっと無数にいるだろう。
 でも夏のマダイはうまいのだ。
 どうしてかっていうと春に産卵する南日本のマダイは、産卵後腹が減る。
 当然、エサをむさぼり食うのだけど、産後のリバウンドではないけど、腹減りで夢中になってエサを追い、肥えて身体に凝脂たまるのが夏であるわけで、鹿児島県のマダイなど初夏には脂がのりきっている。

 この刺身がうまかったね。
 塩焼きにしてもジュウジュウと脂がしたたり落ちる。
 潮汁もだだごとではなかった。
 そして翌日には「鯛茶でちゃちゃちゃ」。
 これは「ちゃちゃちゃと仕事を終わらせる」なんて意味の「チャチャチャ」だ。

 残り物のマダイの刺身を、みりんと醤油、ショウガの絞り汁少々に漬け込み、胡麻を振り入れ、青じそ、青ネギ、ミョウガのせん切りを加える。
 小半時漬け込んだら、ご飯にのせて、熱湯を注ぎ入れる。
 後はチャチャチャとかき込むのだけど、うますぎるマダイのエキス入り湯が口中をやたらに刺激していく。
 強すぎる旨味、そしてそれを適度に緩和する香辛野菜と、白ごま。

 茶碗一杯4、5分の間ながら、大きな満足感というか、幸福な気持ちはなんだろう。
 さすがに鯛は鯛なのであろうか?
 今回は素直に王道を行くボクなのであった。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マダイへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki2/taika/tai.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

ayatobiuo080630.jpg
●クリックすると拡大

 毎年、暖かくなると入荷してくるのがアヤトビウオだ。
 現在のところ出荷してくるのは和歌山県串本市の「出口水産」だけだけど、たぶん温暖な地方ではまとまってとれているはずだ。
 6月、7月の市場ではツクシトビウオ、ホソトビウオが多く、トビウオが希に入荷してくる。
 そこにやたらに寸詰まりのアヤトビウオが来ると、そろそろ夏本番だなと思う。
 こんなことで「今年の梅雨明けは早そうだ」と思うのは変だろうか?
 アヤトビウオは発泡に並んだところは背が黒く地味だけど、翼(胸鰭)を広げると佳麗だ。
 この文様の色合いは地味だけど、妖艶な夜の女王を思わせる大胆で目立つものだ。
 さて、この美しい翼をまとっている主が、デカ目のずんぐりむっくり、チビデカを思わせる。
 鈍い体形なのでとても飛べそうに思えない。
 このアンバランスな外見は、漫画のキャラクターにでも使えそうに思える。
 市場で手に取った居酒屋の主人が、
「どう見ても、うまそうに思えないなー」
 呟いていたのがよくわかる。

「うまそうに思えない外見」ではあるが、実はなかなか味がいい。
 寿司職人の渡辺隆之さんなど、ボクが持ち込んだアヤトビウオを握りにしてみて、味がいいのでたくさん仕入れに走ったくらい。
 身がしっかりして水分が少ない。すなわち他のトビウオ類よりも食感がいい、シコっとしている。
 旨味も充分にあり、これがいける味なのだ。

 今回はミョウガを合わせて、たたき風にしたが、単に刺身にしてもいい、
 外は朝方からの雨がしとしと降り続いている。
 忙しすぎて、今年はアジサイの花を見ていないのだけど、そろそろ満開だろうか。
 こんなことを思いながら「土佐鶴」を不精にも室温でやる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アヤトビウオへ
http://www.zukan-bouz.com/fish/tobiuo/ayatobiuo.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

月別 アーカイブ

このアーカイブについて

このページには、2008年7月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2008年6月です。

次のアーカイブは2008年8月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。