2015年7月アーカイブ

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 酒田市の老舗・焼きそば店『米沢屋』は古いビルの路面店で間口が狭い。店に入ると右手にテーブル席、左手にカウンター。カウンターの奥に厨房(鉄板)がある。店の奥に狭い座敷があり、そこにオヤジ4人で座り込むともう身動きがとれない。

 この大柄な(ある意味デブな)オヤジ4人が狭すぎる小上がりにいる、という光景が実に滑稽なのはいうまでもない。しかもこの小上がりにはテレビがあり、柱には不思議な切り絵やワッペンが貼ってある。まるで子供のいる一般家庭の居間に迷い込んでしまったようで、旅人にとってはなんとなく居心地が悪い。

 さて当店は繁華街にある小さな焼きそば専門店で、外観はなんの特徴もない。この外観を見て、興味をそそられる観光客がいるとは思えない。地元民でなければわからない名店といったところだろうか。ただし繁華街にあってテーブル席のある焼きそば専門店というのは珍しいのではないだろうか。

 粉もの文化のメッカ関西で焼きそばは、あくまでもお好み焼きのサイドメニューであって、これだけで店として成立するものではない。焼きそばだけで路面店として成り立っていること自体珍しいと思う。

 当店は『米沢屋・中町店』とある。とすると市内に『米沢屋』は何店舗あるのだろう。また、この焼きそば専門店は酒田市内に何軒くらいあるのだろう。そんなことを調べるのも、再度酒田に来たときの楽しみになりそう。


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 品書きを見ると、これが非常に複雑。とりあえずオススメの「大盛肉玉子」にする。

 待つこと暫し。

 やって来たのは中華蒸し麺そのものの色の焼きそば。肉と卵焼き、紅しょうがのっていて、刻み海苔が散らしている。

 まずはそのまま麺を食べると、しっかりと焼き上げてあるためか香ばしく、塩味がひかえめについている。これだけで十分うまいのだが、地元民の太田さんと加賀谷さんが、さっさとソースをかけているのを見て、ちょんちょんと一ヶ所だけにかけて食べてみる。ソースはいたって普通のウスターソースではないだろうか? 少し甘めに感じられるが、これはソース自体が甘いのか、店で加減をしているのかはわからない。

 生のソースと焼き上げた中華蒸し麺は決して融合することはない。四国では天ぷらにソースをかけるのが普通だが、そのソースがけした天ぷらに似ている。「ソースの味」と、その「ソースを絡める物」はまとまりがなくバラバラなのだけれど、意外なことに生のソースの味がなかなかいいのである。これって大発見ではないだろうか。東京都内のお好み焼き、もんじゃ焼きの店では焦げたソースの味と風味を楽しむのだけれど、この生のソースもいい。

 酒田名物といっていいのかどうかは不明だが、この「後がけソース焼きそば」はくせになりそうな味。ボクが酒田に住んでいると1週間に1度は必ず足を運んでしまいそうだ。

 地元のお二方に聞くと、酒田では昔からソースは後がけであったという。だから単に焼きそばを注文すると、これが出てきていたらしい。とするとかれこれ50年近く前から、この焼きそばがあることになる。


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朝方5時半から米沢市水産市場を見て歩く。この山間部の市場が非常に面白いし、品物も豊富であった。

市場内に食堂などはないので、『かねしめ水産』の社員食堂で朝ご飯をご馳走になる。

『かねしめ水産』の一角にあるこぢんまりした部屋に入ると、ブルーとグリーンのチェックのエプロンがよく似合う、優しげなオカアサンが出迎えてくれた。


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ボクの分は蠅帳の中に用意されていて、後はご飯とみそ汁をいただく。

トレイにはいたって普通に見えるおかずが並んでいるが、このひとつひとつが実にうまいのだ。

鮭の粕漬け、マカロニサラダ、イカのキムチ漬け、きゅうりの漬物、目玉焼き、そしてモズクのみそ汁にご飯。

ボクの理想の朝ご飯そのものではないか。

きゅうりの漬物は山形ならではの「辛子漬け」だろうか。

モズクのみそ汁がやや塩辛いのは山形の山間部置賜地方ならではだろう。また棒だら煮が米沢らしい。

この棒だら煮などは、福島県会津地方と山形県置賜地方の共通した食文化を感じさせてくれるものでもある。それをここ米沢で食べることは大いに意義がある。


さて、おかずが美味しいのも魅力的だったが、それ以上にご飯がうまいのがうれしい。

こんなにうまいご飯なら、『かねしめ水産』の名品「塩かつお」があれば5杯飯も軽い。

米沢に移住すると太りそうだ。

『かねしめ水産』の皆さんありがとうございました。


山形県米沢市『かねしめ水産』

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 酒田市、鶴岡市など庄内地方の夏の味のひとつ。トウモロコシを適宜に切り、だしは使わず水から煮出して、みそを溶くだけの超簡単みそ汁。

 トウモロコシは庄内の人にとっては当たり前だが、他県人、旅人にとって思いもしないみそ汁の具である。

 実際に作ってみたら、だしを使った方がうまいが、水でトウモロコシを煮だしたうま味だけで十二分にみそ汁として成立している。

 みそのうま味とトウモロコシの芯と実から出る甘味で、実にうまいのだから不思議。ついついもう一杯となる味。


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『満月』の基本的な品書きワンタンメンは、待つこともなくやってきた。スープはしょうゆベースで微かに濁っている。やや太めのストレート麺にチャーシューとメンマ、ネギが散らしていて、ワンタンが見え隠れしている。

 スープは明らかに魚介系で、独特の風味がありこれは「とびうおの焼き干し」からくるものらしい。ここにほんの少し渋みが感じられるが、これはスープを取るときの温度が高いせいかも知れない。とにもかくにも十二分にうまい汁である。

 この汁と一緒にすくおうとして、するりと逃げていくのがワンタン。ワンタンは極限にまで薄く、軟らかい。つるりと舌の上をすべり、なかの挽肉のうま味だけが残る。いい感じの口中からの消滅の仕方である。麺はストレートで小麦粉のうま味があり、のどごしも実にいい。ややスープと絡みにくく感じるがこれでいいのかも知れない。

 要するに実に美味しい。「酒田市のラーメンに外れなし」というが、さていかに。先々、酒田市のラーメン店ののれんをくぐるのが楽しみである。


『満月』は市街地からは外れた場所にあり、比較的道幅のある道路に面している。昭和30年代創業の老舗で「酒田ラーメン」の名店として知られている。

「酒田ラーメン」の歴史は大正末年に始まるという。昭和2年にはラーメンを出す店が増えたと言うから、酒田の「ラーメン史」は国内でももっとも古い。古くは煮干しと昆布でとったスープであったが、ここに「とびうおの焼き干し(主にホソトビウオ)」が高度成長期に加わり、いっそう奥の深い味わいのスープになったようだ。塩味もあったようだが、現在の主流はしょうゆ味。ここに太めの麺というのが「酒田ラーメン」の基本形のように思われる。

 また戦前から「ワンタン」と「支那そば」を出す店があり、当然ワンタンメンの歴史も古い。「酒田ラーメン」はワンタンメンも含めた言語であるということも明記しておきたい。

 国内でも喜多方をはじめ地名を冠するラーメンは多いが、酒田市のように、「土地柄を大いに反映し、統一感のあるもの」はない、のではないだろうか? ここに酒田市の食の財産、「本物」を見つけた気がする。

 ちなみに、酒田市のラーメンの世界にワンタンを持ち込んだのは中国の方。昭和初年頃には「支那そば」と「ワンタン」が別々にあったようだ。この「支那そば」と「ワンタン」を一緒にしたのが「ワンタンメン」。昭和13年創業の『来々軒』がワンタンメン発祥の店であるようだ。ここからワンタンメンを出す店が増えた。その一軒が日吉町にあった『満月』で、そののれん分けをしたのが現『満月』であるようだ。

 品書きには「中華(ラーメン、)」に「チャーシューメン」、「スタミナラーメン」などラーメン一式に、「ワンタン」、そして「ワンタンメン」がある。なかでも一番人気が基本的な品書きである「ワンタンメン」らしい。

 店はいかにも地方都市の郊外にありそうな平凡な造りである。真四角に張り出した入り口には三方に引き戸。入ると左手に厨房とカウンター、右手にテーブルがある。

 家族経営ならではの接客で、居心地がよい。厨房内にも緊迫感はなく、テーブルについてワンタンメンを居心地良く待っていることが出来るのもいい。


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