2007年12月アーカイブ

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 ヒラという魚がいる。どんな魚かと問われると、ニシンをもっと平たくして、大きくしたようなもの、と言ったらわかっていただけるだろうか? この魚の難点は小骨が多いこと。真骨類という我々が一般に「魚」と思っている生き物では原始的なものほど小骨が多い。そのもっとも原始的なニシン、イワシの仲間であるヒラには三枚に開いて神経棘、上神経棘、上椎体骨、上助骨、助骨とボクなど、なんど憶えようかと思い立っても、憶えきれないほどの骨棘が身にはある。

 ヒラはこの国の暖かい黒潮さすところならどこでもとれる。大きいし、銀色できれいなので、うまそうに思えるが、ほとんど総ての地域で小骨が多い故に単なる雑魚でしかない。極端な物言いをすると「捨てられ兼ねない魚」だといえよう。
「味はいいんだけど、この骨がねー」
 数年前に大阪中央市場で見つけると、仲買がすかさずこう言ったものだ。
「そうですね。ボクも何度か食べてみようと試してみたんですけどダメでした」。
 食べてまずいというわけではない。三枚に卸して骨を避けながら刺身にすると惨めったらしい代物とはなったが、味わい深いし、脂があるのか甘味がある。でも細切れの破片を拾って食う気にもなれず、「ヒラ=まずい魚」ではないが、「ヒラ=食べがたい魚」と、まあ敢えて食べることもないだろう思い込んでしまったわけだ。

 岡山に今夏行くまでは「ヒラ=食べがたい魚」という既成概念がボクの頭にしっかり突き刺さっていた。それがどうだろう、岡山中央市場にはヒラが溢れていた。なんとヒラは岡山の初夏の風物詩ともいえる魚なのだ。
 場内仲卸で、ヒラを三枚に卸したものを、ほんの1ミリほどの幅で切っているのを見た。そして既に切ってあるのを買って食べてみたのだ。これがまことにうまい。市場内に溢れていたヒラは産卵のために瀬戸内海に入り込んできたもの。だから決していちばんうまい時期とは言えないのだという。それでも薄くヒラヒラした身を箸でつまんで口に放り込むのが止められない。
 それこそ花びらのように薄く切っていたのは小骨を断ち切るためだ。こうすればニシン目の軟らかな神経棘は舌にも口にもあたらない。

 さて、今回のヒラは鹿児島県南さつま市笠沙のもの。送って頂いた定置網漁師の若潮さんによると水揚げされても競りの対象にもならない魚だという。だから値段はただである。
 岡山県でみたものと比べると小振りで体長45センチほど。味の期待はしないまま三枚に卸す。
 そして我が家でいちばん良く切れる柳刃で幅1ミリ以下に切り離していく。薄い切り身はまとめると皿の上でふわりと小山をつくった。
 これがまことにうまかった。ヒラとしてはまだ若魚であるのに、脂ののりも上々、無造作に箸でつまみ口に入れた途端に脂が広がり、甘味となり、そして青い魚独特の濃厚な旨味がくる。

 うまいヒラを食うたびに、岡山県人はなんとうまいものを知悉していることよと感心する。またその鋭い嗅覚を作り出したものは、間違いなく瀬戸内海にあるとも思い至る。

わかしおさんの「お魚三昧生活」
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヒラへ
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茹でてザルに揚げたところ

「なまり節」とは節(かつお節、そうだ節などの総称)を作る工程で煮て、それをザルなどにあげる。それをある程度乾燥させたものをいう。

 節を一般家庭で作るのは決して難しいことではない。例えば、煮て、燻製にして、良く乾かせば出来上がりというもので、要するに至って簡単な工程でしかない。
 こうやって作ったものを「あら節」といい削れば出しがとれる。それでも作るとしたら十日以上かかるので、暮れの慌ただしいなかで、簡単そして、直ぐ出来上がる「なまり節」を作ることにする。

●作り方
1 マルソウダを水洗い。(注/「水洗い」とはウロコ内蔵などを取り、水洗いすること。これ以降、原則的に魚は洗わない)
2 三枚に卸す。
3 皮は引かないでそのまま、熱湯で完全に火を通す。(ゆで汁は、トマト煮込み、カレーなどにも利用できる)
4 ザルなどに上げてあら熱をとったら、腹骨、血合い骨を毛抜きで抜く。
5 これを冷蔵庫、もしくは外で1日干す。
6 干し上がったら出来上がり。

 自家製なまり節を作っていちばんお勧めなのが、塩コショウしてニンニク風味のオリーブオイルで焼く。
 軽く焼く、もしくは揚げて、カレーを作ってもうまい。この場合、ゆで汁は捨てないでカレーに使うといい。カレー以外にもトマト煮込み、中華煮込みにもいい。
 また煮つけにも、マヨネーズと和えてもサラダにと大活躍するだろう。
 余ったら1週間くらいしか保たないので、必ず冷凍保存すること。

 さて、なまり節はいろいろ使えて便利な食材である。最近では消費が落ち込んでいるというのを聞いたことがあるが、もったいないねー、こんなにうまいし、便利なのに。

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 まるで新しい故郷が出来たようだ。秋田からハタハタの三五八漬けが届くとそう思う。
 都会で暮らしていて何が悲しいか、というと各地の郷土料理を食べたいと思っても、本物が食べられないことだ。
 都会でやっと手に入れた各地の味わい、それは郷土料理という名の既製品、もしくは工業製品でしかない。今年のもっとも印象的なニュースが食品偽装であるけれど、ようするに企業として作るものに期待しすぎるのがおかしい。安いものには安い材料しか使っていないのは当たり前だろう。まああのなかで絶対赦せないのは吉兆だけかな。後はすべて“買う側が悪い”のが半分以上だ。

 だから毎年、秋田のなべ婦人から、ハタハタが来ると、秋田が故郷になったように思えたり、また年末の慌ただしい、息苦しいほどの忙しさのなかに、ほっと一息つけるようでありがたい。

「三五八漬け」と言っても関東の人間には馴染みがない。主に東北日本海側に見られる、塩と麹と蒸し米を3対5対8で合わせたもので、多くは野菜を漬け込むのに使われる。
 この「三五八漬け」の味わいの特徴は、麹からくる甘味と醸し出されたアミノ酸の旨味だろう。干物というのは干し上がったときが出来上がりで、あとは食べるだけという単純な加工品でしかない。ところがハタハタの三五八漬けの面白いところは漬物の一種なので、時間が経つほどのアミノ酸発酵が進み、また麹が糖分を生み出しているのだろうか、味にまろやかさが出てくる。

 なべ婦人のハタハタの三五八漬けも送ってもらい、すぐに炭火で焼いて味見してから一週間ほど、徐々に旨味が増してきており、今がいちばんうまい時期なのではないだろうか?
 焼きたてを手でむしり、発酵食品の持つ香りを顔全面に受けながら、それこそハタハタの片身分を口に頬張る。その甘いような、塩辛いようななかに、ハタハタの身のほっくりした甘さがあり、ハタハタの三五八漬けの味わいはまことに優しい。ハタハタはどんどん焼いて、それこそむさぼるように食らう。
 ボクはもっぱらオスを好み、家族はメスを好む。これはメスの味わいのほとんどはポリコリする卵巣にあって、未熟な卵粒の脂と成熟した食感は誰を持ってしても面白く、そしてうまいもの。ただし食べていてなんだか騒がしい。
 対するにオスの身には、その白身、皮自体に味があり、この白子はゆったりと落ち着いて楽しむに足りる味の深みを感じる。すなわちメスよりもオスの方が酒を親しむに向いているのである。

 ハタハタの白子をつつきながら、遠く秋田の街や蒲鉾型の市民市場を思う。来年は、それこそ20年振りに県内を巡る旅にでたいと思っている。(無理かな?)
 秋田のなべ婦人、ありがとうございました。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ハタハタへ
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疲れたなー。声に出して言いたい。
でも明日からは自由時間。
と言うことで、明日は八王子土曜会で朝方から鹿児島県南さつま市笠沙の若潮さんからの魚を分ける会。
そして朝ご飯をどうするか?
『市場寿司 たか』は明日から持ち帰りのみ、とすると隣の『さくら』かな?

八王子の市場に関しては
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 猿の頬のようにぷっくり膨らんだサルボウを八王子魚市場内『源七』でもらって、船橋の湊人になったかのようにせっせと剥く。これをペティナイフで開いて、掃除して、塩をまぶして滑りをとる。最後の仕上げは足糸をとり刺身の出来上がりだ。

 この三番瀬でとれたサルボウは、船橋湊町ではおかずになる貝だ。アサリに混ざったのを、選り分けて、剥いてから甘辛く煮る。また大きめのを取り分けて、おっかさんが丁寧に刺身にする。
 そんな東京湾岸の匂いを八王子にもたらしてきた『源七』が本拠地船橋に撤退することになった。考えるだに、サルボウを剥きながらも悲しい思いになる。

 唐突な撤退は八王子魚市場が真半分に縮小し、パチンコ屋が進出してくるからだ。ボクはパチンコというものはやらないけど、博打というもののなかではもっとも日常に湿潤してきているもの。所謂、無駄に五月蠅い人たちがカジノを忌避するけど、本当はパチンコの方が悪質。日々の暮らしに、“あってもいいもの”かも知れないが、ボクのような“しない人”にとっては忌まわしい存在だ。市場という、本当に暮らしを支える拠点が、そんな博打の施設に成り代わっても許されるものだろうか?

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 旬を迎えたサルボウは大小合わせて15、16個。これを全部丁寧に剥いても刺身は小鉢に盛るほどでしかない。でもこのフネガイ科のヘモグロビンで赤く染まった身のなんと旨味の濃いことだろう。箸でつまんでヒラヒラする、その一片が舌の上で甘味と渋みと旨味を爆竹のようにはじけさせる。
 酒で流し去ってしまうのがおしい。と躊躇しながらも海老名の海老さんにもらった「泉橋 純米トンボカップ」をやる。

 飲みながら、来年からはサルボウは船橋まで買いに行くしかないなー、と思う。もしくは木更津、きんのり丸さんにお願いして、とってもらおうか。どちらにしろ東京湾のサルボウが遠く、遠くなる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、サルボウへ
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八王子市場案内へ
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フグ目全般を改訂中
ナミダフグのページを作成
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ナシフグのページを作成
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シマガツオ科を改訂
オナガシマガツオのページを作成
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二枚貝フネガイ目を全面改訂
アカガイの下ろし方のページを作成
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掲載種 1968


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 ボクの個人的な意見ではあるが、世に出回る魚の中でシマガツオ(エチオピア)ほど重宝な魚も少ないだろう。
 刺身で良し、焼いて良し、煮て良し、また洋に染まって良し。これほど優良な魚であるのに、値段が安いというのも、うれしい限りだ。

 そんなシマガツオを八王子総合卸売センター『高野水産』で見つけて、もっとも大きいのを選んで買い求める。なんとキロ当たり800円(卸値)で1本1600円ほど。

 その夕べ、まずは刺身。頭部は梨割りにして一塩、ビニール袋に放り込んで一夜冷蔵庫。程良い風、天気晴朗なれど風強しのなか干す。片身を下げて、『市場寿司 たか』へ向かい、握りを堪能。
 さてさて、残りましたる身は海老名の海老さんにいただいた柚で幽庵焼きにする。

 幽庵焼きの地、基本は酒・味醂・醤油を1対1対1だけど、今回のシマガツオはやや身が柔らかいので味醂2に醤油1とする。そして翌日がちょうどいい漬かり具合だった。
 当然、夕ご飯はシマガツオの幽庵焼きとなる。
 金ぐしをして遠火で焼く間も、なかから脂がにじみ出る。柚の香りは焼いていてもしない。
 こんがり焼いて、食卓に。
 一口ほぐして口に放り込むと初めて柚の微かな香りがして、シマガツオの旨味が口に広がる。醤油と味醂の甘さは酒にもご飯にも合う。

 シマガツオは今が走りであり、年を越すと益々入荷が増えてくる。週に一度は買い込んで、ときに幽庵焼き、ときにみそ漬け、ときに干物につくる。
 やはり、こんな重宝な魚は、他には見あたらない、と毎年のように思い知る。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、シマガツオへ
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 夜明けを迎えた空はどんよりと曇っている。八王子総合卸売センターに着いたのが7時前。暮れ近い上に三連休初日とあって、なかなか空きスペースを見つけられない。やっと駐車して、『市場寿司 たか』前にくると海老名の海老さんが持ってきたらしい発泡があるだけ。
「おーい海老さん」
 呼んでみるが、返事はない。
 仕方なく店横のテーブルのカバーをどけてコンロや干物を運ぶ。姫は早々と『さくら』へ勝手に入ってラーメン。
 するとまるで妖怪のように海老さんがわいてきた。恐いなー!

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海老名の海老さんはまだまだいろんな技を持っているようだ

 海老さんが取りだしたのが鋳物のどっしりしたコンロで、まずそこに固形燃料を置き着火。その上に岩手の黒炭を積んでいく。そして待つほどもなく、炭がパチっと音をさせてきて、もっとも困難と思えた炭火をつけるという手順がなんなく終わる。海老さん、さすがだー!
 その間にjasminさん、ヒモマキバイさん、ネズミフグさんが到着。jasminさんはスペインでテロに遭遇したと言うことで、なかなか大変な半月であったようだ。

 まず『市場寿司 たか』で腹こしらえ。特ネタのシマガツオ(エチオピア)、コブダイ(寒鯛)を始め、みなさんにお任せ寿司を堪能してもらう。さすがに暮れのせいか『市場寿司 たか』もこんでいる。ボクもぼうずコンニャクスペシャルを早々に食べて、干物を焼き始める。
 そして真菌さん(ご本人が真菌に似ていると言う意味ではない)、そらひとさんが登場。

 最初に焼き始めたのは自家製のキビナゴ。これは当たり前だけど、誰が作ってもうまいもの。ナシフグの粕漬け。

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naohnaohさんにいただいた酒粕でつけたもの。味はいいと思うのだけど、焼いてもアルコール分が残る。酒粕はもう少し寝かせる必要がある

 そしてシマガツオ、コブダイの頭の開き干し。旬を迎えた大型魚の頭部は脂がしたたり、角形七輪から炎があがる。そのたっぷりした脂の甘さ、皮目のうまさは、これまたなかなか好評であった。

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シマガツオの開き

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寒鯛(コブダイ)の開き

 そして真打ちともいうべき、秋田のなべ婦人自家製のハタハタの三五八漬け。この焼き上げるときの香りがいい、そしてたっぷり入った卵。
 これをjasminさん、真菌さん、ネズミフグさんが手でほぐしながら食べている。三五八漬けの麹から来る風味がわかっていただけただろうか?

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ハタハタの三五八漬けは、干物というよりは漬物。麹の香りというか風味がいい。秋田のなべ婦人、ありがとうございました

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 また金曜日に到着していたカネマル笹市のアジの開きは味見程度であったが、プロの作るものの凄さを感じざるおえなかった。
 この日、jasminさんが持ってきたのが唐墨(カラスミ)のフォカッチャ。これが唐墨の香り、やや渋み、と旨味があいまって非常に美味だった。

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これ非常にうまいものだった。jasminさん、こんどお土産にください。他の人にはあげなくていいから

 そして最後にjasminさんの唐墨を薄く切り、ほんの少しあぶって味見。少し塩抜きが足りないようで塩辛いが味はいい。今回の東恵丸さんのボラの卵巣がいかにお買い得であったものか知り、うらやましくなった。来年はボラから自分で卵巣を取り出すことにこだわらない方がいいかも。
 干物を少しずつ分けて、海老さんの柚をいただき、ボクは無理矢理、ネズミフグさんからうまそうな日本酒を奪い。干物会は終わる。

 干物を食べ終わって、八王子総合卸売センター、八王子綜合卸売協同組合を一回り。皆さん『高野水産』、『総市水産部』で魚、『カワベ』で肉を買い、八王子魚市場に移動する。

 八王子魚市場ではマグロ部のムッシュから尾ビレ近くを千円で買い。他の型には血合いぎしを分けてもらう。このあたりムッシュの人の良さがにじみ出ている。
 今年の営業を残して八王子から撤退する『源七』に回る。あんちゃんの作る、こはだも最後かと思うと、少々悲しい気持ちで買い求める。

 11時をまわって八王子魚市場にて土曜会は解散。みなさん楽しんでいただけたでしょうか?
 これからも『市場魚貝類図鑑』にもたらされた干物や海産物、魚貝類をお分けしたいと思いますので、また集まっていただきたい。
注/八王子土曜会は誰でも参加自由です。

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静岡県沼津市 カネマル笹市
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 寒くなるとキビナゴの入荷が増えてくる。キビナゴはたくさんとれる時期が旬である。その上、値段は安く、市場では箱売りとなる。当然、2キロ、3キロと買い込むことになると、大量消費するための算段が必要となる。そんなとき必ず作るのが干物である。
 干物には家庭で作った方がうまいものと、市販のものがいいものに分かれる。市販のものでうまいものというと干すときに熟成が必要なもので、例えばキビナゴのような小魚だと、この熟成がむしろ無駄な苦みとなってしまう。だからうまいキビナゴの干物は家庭で作るに限るのだ。
 さて、実際にキビナゴを一箱買い込む。そのあらかたを干物にし、そして夕食には鍋、刺身が定番だ。今回は鍋、刺身は置いて、さて干物作りの話。

 八王子総合卸売センター『総市』水産部で見つけたのが愛媛県産のもの。一箱2キロを半分だけ買う。この値段が400円なり。
 鍋用をとりのけて、まずは大きめの発泡に放り込み、上から塩をふる。この塩加減はやや控えめに。

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 ここで20分ほど待つ。ただ待っていてもつまらないので『市場寿司 たか』でお茶をみながら無駄話。
 20分たったら、これを水洗いする。
 これを発泡のフタの上に揚げ、斜めにして少し置き水切り、持ち帰る。
 後は干しザルに並べてしっかりと干す。このときネコなどに注意すること。ザルに広げる最中にも油断は禁物。

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松太郎よせ!

 キビナゴはやや硬めにしっかり干した方がうまい。

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ザルを傾けるとパラパラとする感じが、干しあがり

 この脂ののった時期のキビナゴの干物の味をどう表現すべきだろう。その魅力の最大のものはやはり旨味と適度な苦み、脂から来る甘味かな? とにかく食べても食べても食べ飽きない。

 我が家に松太郎というネコがいて、ボクが食べている干物の半分はくれるものと考えているようだ。でもキビナゴだけは2本しかあげない。面白いのはキビナゴの干物をあげると「ウニャー、ウニャー」と鳴きながら食べている。この「ウニャー」は「うまい」なんだろうか? ネコ研究家のヒモマキバイさんにお聞きしたい衝動に駆られる。まあとにかく「ウニャー」と鳴いても、もうあげないからね。

 さて、朝昼晩、お茶請けに食べてもうまいものだが、ボクとしてはやっぱり肴としたい。キビナゴの干物にビール、合うぞ! 例えば熱燗、合うなー。焼酎、もっといいかも。ということで酒の進むこと。
 後々、必要となってくるのは食べ過ぎない自制心だけかな?

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、キビナゴへ
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 一年でいちばん疲れる暮れを迎えている。それで寝不足と、やらなければいけないことを膨大に抱えて不機嫌極まりない。気持ちが悪くて朝ご飯が食べられなくて、やっと10時になって朝ご飯を食べる。目の前にあるのは、たかさん特製の『豪海投げ込み丼 ぼうずコンニャクスペシャル』だ。

 今年はあまりいい年ではなかった。なによりもいやだったのが政治や経済、社会といったものが最低の状況に置かれているというのが、まざまざ見えてきたことだ。

 だいたい道路公団は犯罪組織に等しいのに、民営化してもまだその体質を変えようとしない。首都高速は信じられないほどの値上げをしようとしている。盗人猛々しいとはこのこと、犯罪者は謙虚になれ! そして値上げする前に会社自体の無駄をなくせ!
 ここで思い出したのだけど、今年の春、東名のサービスエリアでクルマを止めると、隣にトラックがとまっていた。見ていると動いているように見える。ボクも疲れていたので、目眩のせいかな、と思ったら、やはり動いている。慌てて、トラックのドアを叩くと、中に人はいるようだが、後ろのベッドかなにかで眠っているのだろう。困惑していたら、いつの間にか、これもトラック運転手らしい人が来て、おもむろにドアを開けて(開いていたんだな)サイドブレーキを引いた。「疲れてるんでしょう」と言ってそのひとは消えたが、こんな運送業、運転手の苦労もそれこそ、ろくでなし、道路特定財源に群がるウジ虫である道路族と悪の限りをつくした道路公団にヤツラのせいだ。我々一般人も流通業の人たちももっと怒りを表にするべきだ。
 また厚生省、防衛省、文部省、全部だめだな。役人さんも個人的につき会うといい人ばかりなのに、どうしてなのか? 人生五十路を向かえても謎だな。
 また食品偽装とは言うけれど、「賞味期限」なんて考えついて制度化したヤツは水虫以下の人間だ。いや水虫はまだ素直に生きているだけなので、考えた人間そのものが「最低、最下位、ろくでなし、ウンコ、生物界に必要がない」というものだ。お前こそ「消費期限」切れだ。そして「賞味期限切れよ」なんて食べ物を捨てているヤツも大バカ野郎だ!
 ついでに人の親として言って置くが、須賀川市の女子中学生が柔道の部活中に暴力癖のある男子生徒に暴行され、意識不明になった事件はもっと全国規模で注目した方がいい。これは須賀川第一中学の悪質な体質がもたらしたものだし、またはっきりした傷害罪なのだから大急ぎで加害者、そしてこの事件を隠蔽した校長、柔道部部長(コイツら悪質な共犯者だ)を逮捕すべきだ。暴行を加えて、女子の様子がおかしくなってからの後の処理からすると、明らかに学校関係者は悪い。親として許すことができない。この中学生が一日も早く元気になることを祈る。
注/ぼうずコンニャクはスポーツ選手が爽やかだとか、スポーツは素晴らしいなんて爪の垢、真菌の大きさほどにも思っていない。だいたい都内電車内でのスポーツ選手の態度はろくでもない。最低ラインだ。
 他にもいっぱいある。薬害のこと、新幹線のこと、まったく無駄な独立行政法人のこと、全部書いたら切りがない。
 さて最後に安倍晋三さんにつぐ。自然破壊を未だに進めて恥じない自民党の右翼系党首が「美しい国」という言葉を使うな! ハレンチ極まりない。恥を知れ!(注/右傾も左傾も嫌い。人はほどよく生きるのだ)
 そして来年こそは自然保護を訴える人々の力を見せつけるのだ。もっと政治、社会に関心を持とう、とボクは誓うのだ。

 さて、こんなことを思いながら食べた、『豪海投げ込み丼 ぼうずコンニャクスペシャル』だけど、持ち込みのナシフグ、メヒカリ、こはだが入ってうまそうだった。でも怒りながら食べたので、味がわからなかったのだ。

 さてボクの一年に一度の怒り、おかしいでしょうかね?

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 フグ目フグ科トラフグ属の魚が一般にいわれるところの「河豚」である。総てのトラフグ属にテトロドトキシン、青酸カリの千倍ほどの猛毒が含まれる。ただし筋肉(所謂身)はほとんどのフグが無毒か、少量の毒しか持っていない。だから身を食べる分には安全なのであるが、ここで問題なのが多くのトラフグ属の皮に強い毒があるということ。この皮には鰭(ひれ)も含まれるわけで、残念ながら鰭酒(ひれざけ)として使えるフグは少ない。
 その少ない中の一種類がトラフグであり、よく「ひれ酒用の鰭」として売られているものはシマフグだったりする。世間に出回る安いフグであるショウサイフグ、マフグなどはともに皮に毒があるので注意が必要だ。
 せっかくトラフグを手に入れたのなら鰭(ひれ)は有効に使いたい。
 フグをさばくとき、最初に鰭を切り取とる。切り取った鰭は発泡スチロールに貼り付けて、干す。よく干し上げたいので晴天の日、二日ほど干した。

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 これを備長炭でこんがり、ところどころ焦がして焼き上げる。焼き上げながら安い本醸造を沸き上がるほどの熱燗にする。温めた湯飲みに、焦がした鰭を放り込み。そこに沸騰した酒を注ぎ入れる。そのままフタをして、待つほどもなく、待ち、熱いうちにすする。
 うまい鰭酒を作るコツはしっかりヒレを焼き上げること。日本酒は吟醸系はダメで、純米酒か本醸造を使うこと。ボクがいちばんおすすめなのは島根県の「王禄 本醸造」。これを沸騰するまで熱する。

「アチチ」と言いながら、そーっとすする、その唇全体が熱く、そして舌先からジワリと旨味が広がってきて、そこから口腔の上の方にアルコール分がはい上がる。
 トラフグには腹ビレがない。だから胸ビレ、背ビレ、尻ビレ、尾ビレ、5つの鰭が一匹分だ。小虎なのでこの鰭全部使って一杯の鰭酒とした。それも湯飲みを持つ手がヒリヒリとするほど熱燗で、そこにトラフグの鰭の香ばしい香りがツーンとくる。そして深い旨味が口全体、胃の腑までしみ通る。

 さて、トラフグの鰭酒のうまさは、寒さとともに増してくる。

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 九州から宅急便で25センチ前後のメジナが4匹とどいた。北九州の釣り師黄幌型さんからのもの。
 黄幌型さんはかねがね、大分の寒メジナのうまさを書いていて、ボクもいちど食べてみたいものだと思っていた。

 黄幌型さんは「靴底サイズ(この表現面白い)」という表現をしている、やや小振りのものだけど、ワタを抜いた腹にはべったりと脂がついている。

 この刺身がいい味だった。さすがに寒のメジナはクセがなく、身も美しい。そして皮近くに均質に含まれる脂が甘く、そして全体に旨味がある。

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 八王子総合卸売センター『市場寿司 たか』で握りに仕立てて、これまた食べてみたが絶品。この味はボクよりも、たかさんが惚れ込んだようだ。
 この大分磯釣りのメジナ、『市場寿司 たか』で食べられますので、お試し願えるとうれしい。

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 私もたかさんも味の良さは太鼓判を押します。

 このうまいメジナを送っていただいた黄幌型さんに感謝。

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小虎もうまいなー!

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 小虎(小振りのトラフグ)が手に入って、まずは下ろす。白子はなくて、身とヒレ、皮。残念ながら皮から「遠近江」をそぎ出すのは諦めて捨ててしまう。時間があって、まな板に貼り付けた皮を包丁で研ぎ出していくと「遠近江」はとれなくはないが、やはり素人の悲しさで時間がかかるのだ。後は頭部から目、脳みそをきれいに取り去る。これで毒の除去はできたことになる。

 身は三枚に卸して布巾にくるんで冷蔵庫へ。粗で小鍋仕立てのちりとする。たまたま冷蔵庫にあるだけの白菜と豆腐。大根おろしに八王子総合卸売センター『さくら』の唐辛子味噌(ここのは味噌が入っているわけではなく、唐辛子をすり下ろして寝かせたもの)、万能ネギ。

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 時はそろそろ10時を回っている。今日は燗酒にして、煮えるそばから粗をシャブリ、豆腐を食い、柚を数滴落とした汁をすすって孤食を楽しむ。
 この小鍋仕立てで飲む熱燗はなんともうまい。
 当たり前だけど小虎は小といえども味は濃く、汁にもたっぷり旨味が溶け出している。

 翌日、夜は小虎刺し。やはりフグの身は一日寝かした方がいい。余分な水分の抜けた身はシコっとして、旨味がジワリと浮き上がる。

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 本日の酒は冷や。用意した柚も浅葱も不要であった。

●柚は海老名の海老さんからいただいたもの。感謝感激しております。
●器は岡山県倉敷市の武内立爾さんにいただいたもの。この頃、この皿に盛るのが楽しい。

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八王子の市場に関しては
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 今期初めて分葱(わけぎ)を買った。送ってもらったときは忙しくて、冷凍保存してあった倉橋島日美丸さんからの針いか(コウイカ)のゲソと和えた。
 これが不可解なことに、これから冬の寒い時期になろうかというのに春を感じて、爽やかな気分になれてうれしかった。(この“うれしい”は与謝蕪村の「夏川を こすうれしさよ 手にぞうり」の“うれしさ”と同じだ)
 分葱は秋に苗を植えて、春を待ち、そしてようよう彼岸の頃にとれるもの。当然、八王子綜合卸売協同組合『河村青果』のお姉さんのところで見つけたのは促成野菜だ。今でこそ、「温室育ちか」と興ざめだけど、ほんの数十年前までは「促成栽培」は高級野菜に冠された言葉である。
 もちろん春の分葱ほど香りが強くなく、辛みも薄い。でも旬の針いかのゲソの旨味の中にある「生“臭み”」を、その「青“臭み”」で消し散じてくれる。

 これがとにかく例えようもないほどにうまい。
 慌ただしく、疲れ切っていて、体調不良の日々に、こんな味わいが欲しかったのだ。こんな“うれしさよ”と思わせるもの。

 産卵期は春から初夏のコウイカは寒の時期がいちばんうまい。だから身に甘味がある。そこに春野菜の分葱がきて、京都の白みそと合わせて、酢みそ和えとなる。
 東京都といえども丘陵地の日野市、八王子市は寒いのだ。四国では見たこともなかった霜柱の、毎朝10センチ以上にも伸びるのを見て市場に向かう日々が始まっている。冬来たりなば、春が恋しい。

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掲載種 1965


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 寒くなって、うまくなる魚は多いのである。人に言わせると「冬にまずくなる魚はないだろう」というくらいで、市場で魚を見ていても欲しいものばっかりで困る。なかでももっとも魅力的な魚がヒラソウダである。
 この皮下に真っ白な脂の甘いこと、そして赤身ならではの旨味。
 和歌山県串本から入荷したヒラソウダ、なんとキロあたり500円というのを見て、居酒屋のオヤジが呟いた。
「これカツオと比べてどうかなー?」
「“どうかなー?“。失礼な。無礼ものめ、下がり居ろう」
 ボクはヒラソウダの家臣、まるで助さん・角さんのようになって一喝する。
「おいおい、おい、一食ったら。このお方の偉さがわかろうってものよ」
 こんなやりとりに安すぎるヒラソウダはあっという間に八王子総合卸売センター『高野水産』の店頭から消えてしまった。

 それで残ったのが一本だけ。失敗したなーもー。
 ヒラソウダは下ろすそばから包丁にべったりと脂をつける。その包丁を引くのが重いこと。半身を刺身にすると、出すと同時に一切れも残らず消え去る。そしてまた半身。

 ヒラソウダを酒の肴にというお父さんの目論見は露の如く消滅。後の2切れだけいただいて、欲求不満のため酒を過ごす。

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 沼津魚市場が生まれ変わるというか、新しくなる。それまで野ざらしだった地物の競り場がしっかりと衛生管理された現代的な建物となったのだ。
 その名を「INO」、これを「イーノ」と呼ばせる。残念ながらこの命名は面白くない「毒にも薬にもならない名前だな」と思った。予言するようで悪いのだけど、この「INO」という呼び名は直ぐに忘れ去られるだろう? ちなみに謂われに関しては沼津魚市場のホームページをご覧いただきたい。

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 ただ、この建物に入ったときの清潔感と、見学者用の通路の適度な高さなどに感心させられる。
 例えば、この建物に入るときには長靴などを洗う水槽を通らなければならないし、また搬入口も一カ所に絞られている。衛生管理もこれからは行き届くだろう。
 一般の方、観光客の方も、この程良い高さの見学通路で、ひとしきり沼津の魚を見て、市場周辺の飲食店、もしくはこの「INO」の上にある飲食店舗でおいしい魚を食べるというのは魅力的だろう。
 蛇足かもわからないけど、その食べる魚貝類が地物だったらなおのこといい。

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活けのアカザエビ

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底引き網で深海からあがるタカアシガニ

 この日、移転が終了していたのは活魚部門だけ。まだまだこの建物の真価はわからない。でもその水槽の見やすさや、大きくなったことで、名産のアカザエビ、タカアシガニなどが美しい。

 さて新年には完全に移転が完了するはずで、建物の上に出来上がった飲食店舗とともに真っ先に見に来なくてはならない。

沼津魚市場
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 このところ小笠原からカノコイセエビが入荷してきている。このようなデカイエビとか、変わった魚とかが好きで、もちろんいい魚もたんと持ってくるのが八王子総合卸売センター『高野水産』である。この『高野水産』は毎日激安、仕入れたものは残さないので有名。まあ宣伝してもいいことがあるかどうか、わからないけど、宣伝してやるかな!
 この社長、撮影されるのが大好き。だから自慢のデカイ、カノコイセエビと記念撮影。
 まあどうでもいいことだけどね。

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 松尾芭蕉の句に「あら何ともなや きのうは過ぎて ふくと汁」というのがある。この芭蕉の「汁」が現在で言う「鍋」であるとされているが本当だろうか?
 ボクは「鍋」ではなく、文字通り「汁」なのではないかと思っている。だとしたらその「汁」とはどのようなものだろう。勝手な思い込みかもしれないが「みそ汁」に違いないと考えている。(注/松尾芭蕉1644年〜1694年が活躍したのは元禄期。この時代まだ関東での醤油醸造は盛況ではなく、また醤油自体が高価だったなどの考察はここでは置く)
 あまり根拠のない説なので、真面目に考察されても困るのだけど、とにかくボクの直感である。「みそ汁」は日本酒にとても合う。「きのうは過ぎて」を現代語訳すると「昨日は飲み過ぎて」であるから、「汁」はまた酒の肴でもあったはず。松尾芭蕉は「きのう」仲間と一緒にフグのみそ汁で酒を過ごしてしまったに違いない。

 ボクが酒場に行って常々不満に思うのは、鯉料理の店はともかく一般に「酒の肴としてのみそ汁がない」ということ。例えば東北・北海道などの市場の食堂でみそ汁をお願いすると、ジャガイモ、ニンジン、大根などを放り込んだカジカのみそ汁が出てくることがあった。これが何度も煮返して、見た目は決してよろしくない。でも煮返すことで、汁に旨味が出て、とても濃厚にうまいものになっている。そして、このみそ汁を飲むと、ついつい酒が欲しくなる。ましてや「ふくと汁」の旨さはカジカよりも数倍上。だから酒の肴としても断然上なのだ。

 仕事で遅く帰った日、なかなか直ぐに寝付けるわけでもない。そこで日本酒、例えば高知県の『酔鯨 特別純米酒』などをコップに満たして、さてアテは何にしようかな? と冷蔵庫をのぞく。
 見つかったのがマフグのみがき(毒を除去したもの)1匹分。囀りを切り取り、適当に切り、湯通しする。付着した粘液をよく取り去って、昆布とともに水を張った鍋に放り込む。ここに味醂を少々。
 2杯目の酒をコップに満たして、鍋のコトコトいうを見る。待って待って、出しが出たなと思ったら仙台味噌を溶き入れる。この酒の肴としてのみそ汁には麦麹はダメ、愛知の豆麹豆味噌もダメなら、白みそもダメだ。あえて選ぶとしたら江戸の甘味噌、信州の赤みそ、京都の桜味噌、そしてボクとしては仙台味噌がいちばんいい。
 味噌を溶き入れても、もう少し我慢してコトコト煮ていく。そしてやっと椀にとったら、ネギを盛る。決してネギを汁の中で煮てはいけない。

 味噌というのは不思議なもので、濃厚な汁もさっぱりさせる。また味噌自体は旨味もあるのに、その塩味自体は単味に近いように思える。だから酒の肴としては、日本酒の後味を適度に洗い流しながら、また酒をやる、そういった飲み方になる。

 寒に旬を迎えるフグ。汁にすると旨味がたっぷり出る。また旨味をたっぷり放出して、まだまだ身自体もうまい、これが不可思議でならない。

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駿河底引き鍋

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 沼津から帰ると、寒い時期なら夕食は鍋ということが多々ある。何しろ、沼津までの往復、そして持ち帰った魚の撮影、整理をすると立っているのがやっとという状態に陥る。
 だからもっとも手間いらずの料理を選んで鍋なのだ。当然持ち帰った魚が主役で、今回のものはコクチフサカサゴ、フサカサゴとソコアマダイの粗、赤えび(ツノナガチヒロエビ)。

 改めて言うまでもないが、駿河湾底引き網でとれたものならなんでもいいのであって、ちょっとここで駿河湾鍋材料ランキングを揚げてみよう。
1位 アカムツ
2位 あんこう(キアンコウ)
3位 かさご(ユメカサゴ)、イズカサゴ、フサカサゴ、コクチフサカサゴなど
4位 アラ
5位 油ごそ(ヒウチダイ)
6位 カナガシラ類色々
7位 ごそ(ハシキンメ)
8位 エビ色々
9位 ふぐ(ヨリトフグ)
10位 でんでん(ワキヤハタ、オオメハタ、ナガオオメ)

 これは一瞬で思いついたものであって、深く考えるとどんどん変わっていきそう。
 そんななかに含まれないがソコアマダイ、ソコアマダイモドキは出しが出てうまいのである。その頭と粗を二匹分と、しゃぶしゃぶ用の赤えび(ツノナガチヒロエビ)で暖まる。

 加える野菜は三つ葉と白菜、大根にシイタケ。
 まずは粗を入れて、その身をせせりとり、しゃぶり。次いでエビをしゃぶしゃぶしていく。ツノナガチヒロエビは熱を通すと甘味がでる。これを生醤油でくらう。

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 酒も進み、最後の雑炊はあっという間になくなったのである。
 またこんなとき秋田の踊る中年剣士さんとなべ婦人にいただいたのが、秋田県横手市平鹿町『舞鶴酒造』特別純米原酒「田人(たびと 人が2つ重なる)」。これがうまいというか、するすると喉を通りすぎて、あっという間になくなる。幸せだな!

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 午前1時に布団からやっと抜け出す。身体がだるい。今年の体調の悪さは、生まれて初めてのもので近場の沼津行なのに不安を感じる。どこといって悪い部分があるわけでもなく、ただぼんやりとした体調不良を抱えながらクルマで南下、東名にのる。
 1時半に自宅を出て、ゆっくり走って、沼津着が3時半。競り場について菊貞・菊地利雄さんのトラックはあるものの18番の柱あたりが一段低くなって駐車スペースになってしまっている。見上げると屋根もここで切れて目が入っている。これは19番から先が将来フィッシャマンズワーフのような建物になり、18番までが陸送を扱う場所として残るから、とりあえず屋根を切った模様だ。

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 この日、西風もなく穏やかである。久しぶりの底引き網の選別を見る。太共丸、大成丸、和丸など大きな青いバケツが並ぶ。底引き競り場の地面を見ると、競り場にくる底引き網の船名がたくさん書かれていて、本日はほとんど全船が集まることがわかる。

 志下の選別を見ている間に、光徳丸、招福丸、福徳丸、滋愛丸、ぞくぞくと戸田のトラックが到着して競りのために魚を広げる場所がなくなっていく。そのとばっちりを受けたのが福徳丸さんで、バケツをおろせないまま暫し、待ちの体勢になる。

 底引き網の魚貝類を競りのために広げるとき、いちばん最初にカゴに入れていくのがエビ類である。しかも高いものから、というのがいつものごとく。その頂点にあるのがアカザエビ、サガミアカザエビとボタンエビ。以下はぐっと値段が安くなり、本えび(ヒゲナガエビ)、赤えび(ツノナガチヒロエビ)、縞えび(ヒカリチヒロエビ)、甘えび(ジンケンエビ)。

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 魚ではニギスが多く、次いでかさご(ユメカサゴ)、目光(アオメエソ)、ごそ(ハシキンメ)はなくて油ごそ(ヒウチダイ)が多い。他には、ひげだら(ヨロイイタチウオ)、アラ、マアナゴ、でんでん(ワキヤハタ、オオメハタ、ナガオオメ)、大きなカイワリにアカアマダイ、ソコアマダイにキアンコウ。ギス、げほう(トウジン)、のどくろ(チゴダラ)、一番端っこの小トロにはオキトラギス。

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 残念ながら面白い魚はいなくて、ヤマトトックリウミグモ、オオコシオリエビ、ソコエビジャコ、センジュエビ、サギフエなどが点々とあるのみ。

 福徳丸の奥さんと立ち話、ソコアマダイ、目光(アオメエソ)、赤えび(ツノナガチヒロエビ)、縞えび(ヒカリチヒロエビ)をお土産にいただく。いつもいつもお土産をいただいて感謝。

 定置網が接岸しているのは知っていたのだが、あまり選別をしている雰囲気がない。それで不安になってしまって、走っていくと、ほとんど雑魚が捨てられた後。少し残った雑魚のなかにクロヒラアジがあって、これをいただき。ギンイソイワシ、オオグチイシチビキ、キビナゴ、キタマクラなどを選別台から拾う。

 底引き網、定置網などを見て、途中、新しい沼津魚市場の建物『INO』を見に行く。こちらにはまだ活けものだけしか移転しておらず、広い空間がまっさらのままある。(これに関しては別項をたてる)
 ここで活けものを見て、また古い競り場に戻る。

 また釣りものらしい荷の中にマハタモドキ、コクチフサカサゴを見つける。これは佐政水産の青木修一さんに競り落としてもらう。

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 そう言えば、この日、菊地利雄さんがとても忙しそうだった。どうやら新しい競り場などの雑用に追われているらしい。

 柱でいうと20番近く、かなり離れているのに赤い色が目に飛び込んでくる。気になって見に行くと伊豆半島ならではの地キンメ(釣りもののキンメダイ)。この深紅のキンメダイのきれいであること。その隣にピカピカと光るタチウオとともに沼津ならではのものだ。

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 またポツンと置かれていたのが「なのり」。産地はわからないのだけれど、本来は沼津周辺でとれたカヤモノリを板状に干したもの。これはたぶん正月用ではないだろうか?

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カヤモノリのことを沼津周辺では「なのり」。三重県では「むぎわらのり」と呼ぶ。軽くあぶってご飯にかけたり、お吸い物にいれたりする

 7時前になってやっと菊地利雄さんに会うことができた。ここでいろいろ話をして、また慌ただしく競り場の方に菊地さんが消えていく。

 競り場を見るのも一段落着いたので『たか嶋』に向かい。途中沼津魚市場冷凍部の山田さんに挨拶。『やいづ屋』を覗いて、『たか嶋』の店内に入る。
「みそ汁ください」
 疲れ果ててカウンターに座ると、職人さんが
「今日はおひとりで?」
 そうなのだ。今日は甲殻類の専門家である飯塚さんは、風邪でダウンしている。ちょっと寂しいものだなー。

沼津魚市場
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 ボクは名前に「郎」がつくのが大好きだ。息子も「太郎」だし猫も「松太郎」、乗っているクルマも「次郎」という名にした。だから食べ物でも「太郎」はいいのである。ということでヨシダシーフーズの干物に「木枯し太郎」を見つけて“買わずにいられない”ほどの衝動を感じた。

 どうやらこれは南下し始めたサンマの脂が少ないものを選んで、食べられない頭を取り去り、やや干し加減に仕上げたものらしい。これを見て思い出すのが千葉県、伊豆半島、紀州(三重県、和歌山県)などで作られるサンマの丸干しである。南下してきた脂のないものを、秋風に強く干し上げる。独特の渋みというか熟成された旨さが楽しめる晩秋から初冬にかけての風物詩といった代物。これよりは脂があるようで、「木枯し太郎」は軟らかく、塩が強くない。

 ヨシダシーフーズには「サンマの酒香干し」というのがある。脂ののったサンマに酒の風味が加わったものでサンマの干物としてはもっとも優れたものである。そこにあるのは脂と酒がもたらすまろやかな味わい。それからすると「木枯し太郎」はより脂の少ないサンマを選んで作っているようで、さっぱりしている。焼きながら食うと、止まらなくなりそうな味わいといった方がわかりやすいのだろうか。

 ボクはこの干物に「木枯し太郎」という名をつけた理由がしみじみわかる。これは気仙沼に木枯らしの吹く頃に作る、といった意味合いもあるだろうけど、「からっと木枯らしのような味がする」からに違いない。

ヨシダシーフーズ 宮城県気仙沼市東みなと町
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 広島県倉橋島の日美丸さんからの荷物には小振りのクロアナゴも入っていた。小振りといっても、大振りのマアナゴくらいはある。
 これをどうしようと思案しながら開き、その脂がありそうな真っ白な身を見ている間にハモのように「ちり鍋」にしてみようと思い立った。それでこの日、夕食の主菜は「クロアナゴのちり」となる。

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 クロアナゴもこれくらいの大きさなら骨も細く軟らかい。骨切りするに、ハモよりもむしろ手応えは弱いくらいに、包丁が身に沈み込む。これを熱湯に放り込み、花びらのように開かせて、冷水にとる。味見すると、思った通り、脂がのっていて、口の中でホロリと崩れる。

 当日は塩焼きも食べてみたかったので、鍋材料としては寂しい。だから白に白を足す形で「すけ白(すけしら スケトウダラの白子)」を助っ人にして、芹、タモギタケ、他いろいろ。
 クロアナゴというと大きなものばかりに当たってきたので、いつも悪戦苦闘していた。それがこのサイズならハモに負けず劣らず美味だ。これは最近の一大発見である。

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 鍋の後に焼いた塩焼きもうまいものであった。雑炊に満腹となった家族を尻目に酒の肴としてゆっくり味わって食べることが出来たのも幸いした。やはり「酒はしずかに飲むべかりけれ」だな。

広島県倉橋島『日美丸』へ
http://ww5.enjoy.ne.jp/~kogera0401/
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明日は沼津です

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 明日は久しぶりの沼津魚市場行です。
 浅曳きも始まって、期待大。
 ボクを見かけたら声をかけてください。


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 八王子魚市場に着いた途端目に飛び込んできたのが、見事な「むき鮫」。これは北の海に多いアブラツノザメのはらわたを出し、厚い皮を剥いた物である。
 産地は青森、そして「むき鮫」と言えば田向商店だ。アブラツノザメは東北では普通のサメであり、高級な練り製品などに使われる。けれども大型で見事なものは鮮魚としていろいろ料理に生かせるのだ。

 我がサイトでお馴染みの田向さんが出荷してきたアブラツノザメの特徴は、触るとわかるほどの脂ののりである。そして身色のきれいなこと。
「これ一本買うよ」
 言ったものの既に売却済み。ちょっと残念であるが、これからどんどん出荷してくるのだろう? さて煮つけにムニエルに、フライに、いろいろ料理法を考えて待つかな?

青森県青森市「田向商店」
http://www.tamukaisyoten.co.jp/
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 大都魚類での反省会の後、8人で二次会へ。ボクが築地の怪人、つきじろうさんにリクエストしたのが「多け乃(たけの)」である。私が初めて築地に足を踏み入れてはや30年なのであるが、飯を食うならこの店がいちばんうまいと思っている。この思い込みなど、毎朝築地で3食は食べている、つきじろうさんには“お笑い”かも知れないが、とにかく「魚のうまい築地の店」というと場内にはなく、この店が浮かんでくる。

 問題は過去に定食しか食べたことがなく、ビールはともかく日本酒が飲めるのかが不安だった。そんな不安は、つきじろうさんがすぐに払拭してくれる。さっそく『多け乃』の二階を予約して、場外に出る。ここでヒモマキバイさんは忙しそうに「明日の宴会用の魚が足りない」といってもう一度場内に。
 途中、場外の「三軒屋」で血合いありのかつお節を買い込む。この店はお願いしてから削ってくれるし、店の人も親切。この日、古草さんと、キヌバリさんが一緒で、店のオジサン、あんまり2人が美しいので、ボクが削ってもらった残りをプレゼントしていた。

『多け乃』は晴海通りから路地を入ったところで、なかなか見つけづらい場所にある。しかも方向音痴のボクは過去に晴海通りからしか来たことがなく、鮟鱇さん船頭で路地裏に突然みつけたときには別の店かと思った。しかし中に入ると、いつものようにたくさんの品書きの紙が下がり、そこから階段をトントンと上がると、ヒモマキバイさん、つきじろうさんたちが待っていてくれた。既にカワハギの刺身などが注文されていて、つきじろうさんが馴れた手つきでコップを配り、ウーロン茶を冷蔵庫から出して、どんどん机の上を宴会らしくしていってくれる。そして乾杯してのビールがうまいね。

 さて、料理はなにがいいだろう。考えるまでもない。名物の天ぷら盛り合わせ、刺身盛り合わせに、煮つけに、ポテトサラダ。

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 二階にいるのは我々だけで、従業員の方はいない。どうやって注文するのか? というのを、つきじろうさんが説明してくれる。それは階段を上がって冷蔵庫の真横。そこに塩化ビニールのパイプがあって、そこに紙切れに書いた注文を入れるというわけだ。それが一階についてからの段取りもいいのだろうな。刺身も天ぷらも、ほどよい間でやってくる。この素早さこそいい店の最低条件なのである。

 大皿に盛られた刺身。墨いか(コウイカ)、メバチマグロの赤身、なかずみ(コノシロの15センチ前後)、わらさ(ブリの50センチ前後のもの)、あわび(メカイアワビかな?)はなんとなくわかるが白身が難しい。ヒラメ、ホウボウ、そしてもうひとつがどうしてもわからない。ひょっとしたらマトウダイかもしれない。やはり白身というのは難しい。

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 どれも鮮度が良く、吟味されている。また赤身がうまいのは特筆すべきかも。

 長太郎さんとは利根川の話、古草さんの絵、話題は尽きず、酒がクイクイ進むほどに楽しいな。(でも、帰り着いたら、何を話したかぜんぜん憶えていない)

 次にまたまた大皿三枚の天ぷらがくる。穴子(マアナゴ)にシロギスに、かき揚げ。このかき揚げが丸くネギ一杯で、中にはイカらしいものが入っている。天ぷらもカラリと揚がって、軽い味わいなのがさすがだ。

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 そこに真っ黒な煮魚。ヒラメの頭などいろんな魚のアラが放り込まれ、ざっかけなく煮つけられている。煮汁の黒さとは裏腹にさっぱりした味わいなのも、技ありだね。

 たくさんおしゃべりし、皆さんと仲良くなり、ビールも冷酒(伏見の『富翁』)も机に並びきらないくらい飲み、うまいものてんこ盛りで満足度200パーセントの宴となった。これで支払はひとり4000円ほど。やはりボクは築地じゃ『多け乃』がいちばんだな。改めて思うのだった。

 蛇足ですけど、ぼうずコンニャクは一度一緒に酒を飲んだ人は親戚になるのだ、と思ってしまうクセがある。ということで今回も親戚が増えたなー!

一日十食、つきじろうさんの『春は築地で朝ご飯』
http://tsukijigo.cocolog-nifty.com/blog/


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 ムロアジの仲間の味の特徴は“干物にしてうまい”ということ。特に冬になってオアカムロに脂がのってきて、その干物も旬を迎えているわけで、市場で見つけてはせっせと干物作りに励む。

 我が家ではアジ科の魚は総て背開きにする。今回の三重県産は背開きした切り口からして白濁して、頭をなし割にする包丁に脂がべっとりと着いている。
 さてどうして背開きかというと、初めて作った干物を背開きにしただけの理由で、深い意味合いはない。よく干物の開き方の説明で腹側、背側の利点をアレコレ書いているが、どうも説明に説得力がない。きっと産地でも昔からのやり方だからという「あまり深く考えないで」やっているだけだと思えてならない。

 これに振り塩をして、もう一度開いたものをとじてラップで密封してひと晩寝かす。家庭で作る干物は当然あまりたくさん作るわけではなく、ボクなど1匹でも2匹でもかまわずに干物にしてしまう。というわけで例えば干してから「えん蒸(干物を束ねて密閉してねかす)」できるわけでもなく、また立て塩にして塩水をもなんども使うわけでもない。すなわちアミノ酸発酵(熟成)させる余地がないのだ。振り塩にするのは立て塩は塩加減、つける時間が難しく、「いつもの塩焼き」のように味つけするほうがわかりやすい。
 要するに塩加減は塩焼きと同じ、熟成は干す前に寝かせることで補うのが我が家風。

 これを初冬の素晴らしく晴れ上がった日に、8時間ほど干し上げる。この日は適度に風があり、吊した干物がゆらゆらと揺れている。絶好の干物日和だ。

 これを翌日、お昼ご飯のおかずにする。大きすぎるので半身にして、焼きながら、ワクワクするような香りが立ち。「早く焼けないかな」とそわそわする。
 残りご飯を温めて、みそ汁はインスタント(八王子総合卸売センター『総一商事部』で買ったもの。最近のものはよくできている)だけど、なかなか主菜が出来上がらないのだ。
 やっと焼き上がって干物をむしり始めると食卓に走りのぼってきた野生むき出しの動物がいる。これがまるで獲物を見つけたチータのような姿勢をしている。ということは、やっぱり干物に突進してきた。
 あとは猫との戦いとなった。仕方なく尾の方も焼き、仲良く食べる。この猫にもわかる味の良さというのは本物かもしれない。まず香りがいいし、旨味が強く、身質も素晴らしい。

 猫を追い払いながら食べても、あまりじっくり味わえるということにはならないようだ。うまいことはうまいが、満足そうに手をなんどもなめなめ、顔をぬぐう猫ほどにはオアカムロの味を楽しめなかった。
 次回は猫の寝ている間に食べることにするのだ。

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 八王子魚市場内『源七』の若だんなにメカジキの切り落としをもらって、普通は煮つけて晩酌のアテにするのだけど、主夫としてはたまには子供にこびた料理を作らなきゃならない。ということでメンチカツ風にフライを作る。
 作り方はいたって簡単至極。
 メカジキをとんとんと包丁でミンチ状にする。
 玉ねぎのみじん切りをフライパンで炒めてさましておく。
 メカジキのミンチ、炒め玉ねぎ、ほんの少しの牛乳、セロリの青い部分、塩、ナツメグ、コショウ、小麦粉少々を良く混ぜ合わせる。

 これにパン粉をつけて揚げるだけだ。できるだけ揚げたてを食べて欲しいのでお父さんは台所。家族は食卓で揚がるのを待っているというのがベスト。

 これはあまり魚臭くない魚料理でご飯にもパンにも合う。またメカジキの切り落としは脂がのっているので、揚げたてはトロっと軟らかく、味に膨らみがある。
 お父さんは太郎にお願いして、一個だけ分けていただき発泡酒の友とする。

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 広島県倉橋島の日美丸さんからキキョウニシをはじめ、いろんな魚貝類が送られてきた。そこに飛びきりの「はまち」と小振りのクロアナゴがはいっていた。
 瀬戸内海で「はまち」というのは決して養殖ものという意味ではなく、出世魚ブリの40センチから60センチほどのをさす言葉だ。
 この「はまち」、日美丸さんのメールでは「いなだ」とあった。「いなだ」は主に神奈川県相模湾で30〜40センチ上くらいまでの若魚をさす言葉。広島県倉橋島では関東での「わらさ(ブリの50〜60センチほどのもの)」クラスを軽い気持ちで「はまち」と呼ぶらしい。

 この持ち重りのする丸々と太った「はまち」を水洗いして、三枚に卸し、当然のごとく刺身にする。

 そのとき、遠く20年前の初めての「わらさ釣り」のことを思い出す。場所は千葉県館山市相浜。ハリス5号の一本バリ片天秤のコマセ釣り。船中初っぱなから「わらさ」がかかる。これはどう見ても50センチ上の見事なものばかりで、ドキドキしながら「次はボクかな?」なんて、待っても待っても「わらさは来ない」。やっと来たのがホウボウ、そして小マダイ、イサキにイスズミ。船中では「わらさ」、カツオまできて、次々にグイーンと釣り竿が曲がっている。豪快だ。うらやましい。
 どうやら上がりの時間となり、唯一「わらさ」に見放されたのがボクだけらしいということで船頭が気にしてときどきタナを見に来る。そしてやっとやっと来たのが「いなだ」なのである。そのサイズからしてとても「わらさ」と呼べず、よく言っても「いなだの大きいヤツ」なのに、船中みんなで「よかったなー。わらさが来て」なんてなぐさめてくれたのだ。
 この悲しい釣行を思い出したのは日美丸さんが釣り船だからだ。そのホームページを見ると「わらさ級」を2本も3本も釣り上げた人がいる。「ああ、こんなに釣りのうまい人もいるんだな」と悲しい、そして惨めな気持ちになる。そしてボクも立派な「わらさ」、倉橋島での「はまち」が釣りたいなー、と切望。その内、日美丸さんにお願いして「はまち釣り」したいなー、とも考えるのだ。

 閑話休題。
 三枚に卸していると包丁にべっとりと脂がついてくる。確かに日本海のブリほどではないが、まことに「うまそうだ」。これを平作りにして冷蔵庫に一時保存。
 アラを出刃でとんとんとバラしていく。これをボウルにとり、大量の塩をまぶし、待つこと暫し。アラの切り身が汗をかいてきたら、湯通し。冷水に取り、汚れ、ウロコなどをきれいに洗い流して、下ゆでした大根とともに鍋に放り込む。たっぷりの水に酒と砂糖少々。火をつけてコトコト沸いてきたら丁寧にアク取り、しょうゆを加える。
 このままひと晩煮る。

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 夕食の「はまちの刺身」がうまい。それはまさにうまい刺身であって、「脂がうまい」のではない。魚本来の味がいいのだ。

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 ちょっといい気分になって、翌朝のこと。「はまち」のアラは骨まで軟らかくなり、大根は色づいてメノウのように見える。大鉢に盛り、食卓に出すや大根の争奪戦が始まる。これは不思議なことではないだろうか? 料理としては「ブリ大根」なのだから主役は魚の方であって、大根ではない。でも大根があっという間になくなって、「はまち」を食べているのは大人だけとなる。その内、妻までが大根のとりこになってアラはボクが食べる係になってしまったようだ。実際アラだってうまいのだけど、「はまち」の旨味を吸い込んだ大根はもっともっとうまいらしい。

 日美丸さん、ありがとうございました。

広島県倉橋島 日美丸
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 大急ぎで場外に抜けて、長崎県漁連直売所そばの休息所に。着いたのが7時24分で、いきなり鮟鱇さんから「遅い」と言われる。集まった人を見回すと、やはり今回も“多過ぎ”である。「責任者出てこい!」、「それはボクだった」、トホホホ……。
 皆さんに挨拶していたら、中に変な人が混ざっていて、よく見ると、つきじろうさんだった。カップ入りの旨そうな、温かそうなものを持っていて、
「朝ご飯のデザートです」
 そんなことを言いながらデザートのカレー丼を食べている。この方、定食(単に定食だけではなく、いろいろオプションつきらしい)を食べて、デザートにラーメンかカレーなんかを食べて、しかも甘いものも好きだと言うことで、うらやましいような、恐いような。そう言えば一日5食食べているという噂もある。

 正門から入ろうと思ったら、鮟鱇さん「海幸橋からにしましょ」と軽く無視される。まあ責任者は鮟鱇さんなんだからいいんですけどね。

 海幸橋を渡り、左に折れて、場内の建物に辿り着く。築地場内は扇の地紙の形になっていて、海幸橋に近い方が要、遠い方が広がっている。このアール状の形態は昔鉄道が全国から魚貝類を運び込んできた名残である。場内のそこここで見上げると、鉄骨が湾曲して屋根を形成していて美しい。場内には横方向にいくつも通路が通っていて、要に近い方が短く狭い。そのためいつも築地場内案内をするときには2列を省いて3列めから外側に歩く。それでも歩く距離は長く、歩ききった後は疲労困憊する。

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 今回の参加者で常連さんは、まささん(子連れ。娘さんお父さんに似ていない。可愛い)、ヒモマキバイさん、鮟鱇さん、つきじろうさんだけ。ちょっと心配なのがharseeさんとjasminさんという強力な「買い上手」がいないこと。しかも初参加者には築地場内を見たいという方が多い。これではいかほど魚を購入していいのかわからない。

 場内歩きも淡々と終わるのかなと思っていたら、予想外というか、若いんだから当たり前かも知れないけど、賑やかさと、華やかさを添えてくれたのが古草さんとekoさん。冷凍マグロがゴロンゴロンと並んでいるのを見て、「うわー」と言い。マグロ用の長い包丁見て、これでチャンバラをして二、三人斬り殺してみたいと言い。ズワイや生きているマハゼに驚き。養殖マダイをその場で血みどろにして締めているのを見て感激している。しかもこのふたり、「お魚さん、死んでしまって可愛そう」なんて思ってはいないらしい。恐るべし!

 長太郎さん、ノンちゃん、他、ボクは人の名前が憶えられないので、ひとりひとりの当日の行動は見ていないのだけど、やはり場内が別世界であることには感動してくれたようだ。

 さて、一通り歩いて見て、やはり、今回は「買い」の土曜会ではなく「見学」が主となったようだ。ひとりがんばっていたのがヒモマキバイさんで旬のホウボウ、せいこがに(ズワイガニのメス)、つぶ(エゾバイ科の巻き貝)、ながらみ(ダンベイキサゴ)、活けシャコ、ボクとヒモマキバイさんとで八角(トクビレ)などで、あまり買い物らしい買い物をしていない。

 場内歩きで恐いのが、魚の値段の幅である。それこそ同じ種類の魚で1キロ1本1000円前後から、数万円までの開きがあって、プロにとっては納得いく値段でも一般人には理解できないもの。だから場内は難しい。そんな危惧がまったく不必要なほどに「買い気」のない会であった。やはり、今回しみじみ感じたのがharseeさん、jasminさんの偉大さである。次回から主催者になってもらおう。

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 10時前には大都魚類第二会議室に入り、反省会と買い物を分ける会を催す。ここでもヒモマキバイさんの慎重さには驚嘆するが、ボクのようないい加減をもっとうとする生物には面倒くさくて見ていられない。でもこの慎重さゆえに買い物分けッ子会は無事終了。しかもなんと大都魚類の尻高鰤さんからお土産までいただきました。ありがとう尻高鰤さん。

 さて、それでは二次会に参りますかね、つきじろうさん。


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 連日慌ただしい日が続いている。なかでも比較的仕事の少ない金曜日で、それでも布団にもぐり込む前に見た、道路特定財源のニュースに眠れなくなってしまった。ほんとうに自由民主党の道路族というのは悪質な生物である。撲滅すべし、なんて思う。
 ということで眠れなくなって、気が付いたら、そろそろ4時。そのまま気分転換に歯を磨き、パソコンをつけて、返信を2通。4時半には我が家を出る。駅までの道はまっくら。中央線が見下ろせるところに来たら4番線に電車が滑り込むのを見る。ということは39分発に乗り遅れたわけだ。4時台の中央線は本数が少なく総て各駅停車。
 そこに乗り込こんでくる人たちが面白い。きちっと身なりを整えた若い女性は、早朝からどんな仕事なんだろう。明らかに繁華街で一夜を明かした集団。新宿駅で山手線に乗り替えて新橋へ。原宿駅周辺が真っ暗闇なのに驚く。
 新橋から中央市場行きのバス乗り場に急ぐと、無常にもバスは発車したばかりで交差点を右に曲がろうとしている。頭がクラクラするので、生まれて初めて入るドトールで、一度も飲んだことのないカプチーノ。テーブルまで来ると砂糖がない。頭脳は砂糖が欲しいと言っているが、どこでもらえばいいのか、わからないので我慢する。カプチーノが意外にうまい。ちょうど飲み終わったときバスが来る。

 6時半過ぎ、バスが場内に入っていくと、まだ薄暗い中、すでに一般客、外人さんが右往左往している。そして、例の大和などのすし屋前には長い長い行列。

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早朝から行列してまで食べるすし。いわゆる「築地グルメ族」というのは市場に何を求めてくるのか?

 なにか食べてから場内というのがいつものことなのだけど、この一般客のガヤガヤに混ざるのがいやなので、とにかく茶屋を通り抜けて、場内扇の要から一直線に抜けて外側から仲卸を見て回る。

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 実を言うとボクは場内にある茶屋の雰囲気が好きだ。建物の片隅で飲み物を温めたいたり、暇そうに椅子に腰掛ける老人がいたりする。ここだけ時間が止まっているように思えるのもいい。

 相変わらず白熱灯が煌々とともる場内。やはり、正月ものが目立ってきている。数の子、新巻鮭、蒲鉾。蒲鉾の赤い包装紙が白熱灯の下でやけに浮いて見える。サケを専門に扱う店舗が、なんだか慌ただしい様子なのも師走らしいな。

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国産もののサケよりも輸入されたギンザケやベニザケの方が高い

 ちなみに店頭にある塩鮭は「秋鮭(サケ)キロ当たり580円」、「時鮭(サケの北洋や遠洋のものの若魚。脂がのっている)キロ当たり900円」、「養ぎん(チリ産ギンザケ)キロ当たり850円、800円」、「ベニザケキロ当たり1400円、1350円」、

 それに反して鮮魚は低調で、面白いものは皆無だ。やっと琴線に触れたのが多分厚岸産だろうエゾボラ属の巻き貝。見たところエゾボラモドキ、クリイロエゾボラと現在の資料では種名のわからないもの。
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「まつぶ(エゾボラ)」、クリイロエゾボラ、エゾボラモドキと不明のつぶ

 また産地がまったくわからないものにウスムラサキエゾボラ、フジイロエゾボラなどがある。八王子では見られない大型のエチュウバイは山口県、石川県産。このところ島根県産をあまり見かけない。

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アカガレイは裏側が赤いほど鮮度がいい。隣のパックはマダラの白子

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根室産の殻付きエゾバフンウニは毎年いちばん寒い時期に入荷してくる。厳寒の海でどうやってとるのだろうね

 今期初めての根室からのエゾバフンウニ、見事なアカガレイ、メスガニ(ズワイガニ)が溢れている。熊本からはハマグリの特徴がまったくない「ハマグリ」らしいもの。
 コウイカ(築地では「墨いか」)、ワカサギ、カワハギ、キアンコウ(本あんこう)が見事だ。「あんきも(輸入もののキアンコウの肝)」、「白子(輸入もの、国内もののマダラの精巣)」もたっぷり。
 他にはキジハタ、アオハタ、ニシン、スケソウダラ、ババガレイ、こはだ、なかずみ(コノシロの8センチから15センチ前後)、「なまこ(マナマコ)」、アカガイ、オオマテガイ。マイワシはいいものではあるが、ほとんど2000円前後なのに驚く。
 冬を思わせるのはマダラのフィレ、マダラの一本入り。一本入りはメスがキロ当たり800円、オスがキロ当たり1500円。
 並ぶトラフグのみがき。天然もので1本17000円、養殖で6000円〜8000円ほどだ。

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この「みがき」は毒の部分を除去して身と皮などをきれいに箱詰めしたもの。鮮魚としてのトラフグを買うより上だと思う

 またヒガンフグ(築地では「あかめふぐ」)、マフグ、ショウサイフグ、シロサバフグもある。マダラもフグも鍋材料で、仲卸の店頭に浅葱というのも冬らしい。


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『虎定』の前まで来てオヤジさんにこの前にもらった「きぐち」が検索ではフウセイだったという話をしていると、なんと7時15分を回っている。大急ぎで場外に向かう。
■場内での価格はほとんど総てが「キロ単価」


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リンクのページ
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ニチロサケミュージアム
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おいしいってなんだろうね?ブログ
http://oisi-nandarone.seesaa.net/
紋処
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吉河(水戸市青柳公設市場)
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器は竹内立爾さんのまな板皿。いただいたときには、そのよさの半分しかわからなかった。最近、非常に好きになっています。改めて竹内さんに感謝。

 ある日、市場を歩いていたら「淡路から墨烏賊(すみいか)がきたよ珍しいね」と八王子総合卸売センター『高野水産』社長から声がとぶ。
「へえええ」と見ると、どこか違っているのだね。そう外套(胴の部分)の頂点。すなわりコウイカ類のいちばんお尻の部分が、そそうしたように汚れている。ひっくり返すと、これがシリヤケイカなのである。
 シリヤケイカはとれる年と、とれない年があって、極端である。豊漁年にはそれこそ「わく」という表現が的を射ているほどに「とれてとれて困る」。
 大阪湾、淡路島周辺では今期シリヤケイカが多いのかな、と思えるほどに連続入荷である。しかも鮮度抜群で、値段が安いので、ついつい主役のコウイカ(すみいか)を通り越してシリヤケイカに手が伸びる。

 さて、この「尻焼烏賊」という奇妙な名前は、一般に頭の先に見えるが、実は身体の一番後ろ側、それこそ「尻」の当たりから赤褐色の分泌液を出すことから来ている。だから、イカを裏返しにして外套(刺身などにする部分)を押すと、尾籠な話だが、それこそナニをちびったように褐色に汚れてくる。

 市場では「この“すみいか”いいね」と寿司職人に人気があって、飛ぶように売れいくのはコウイカと区別されずに扱われているからだ。

 瀬戸内海では「真烏賊(まいか)」と呼ばれる。これは間違いなく味がいいためだ。
 さて、コウイカと刺身にしてどっちがうまいか食べ比べても、食べている内に区別がつかなくなる。グリシンからくる甘味が強く、旨味も舌に余韻を残していく。そしてモチっとした食感。

 天気予報ではないけれど、シリヤケイカ情報というのはないかしらん。もしあったら楽しいだろうな。
「今期のシリヤケイカ情報。初冬から大阪湾ではシリヤケイカがわいています。わいています。この大発生は今後も続く模様です。また東京湾東部千葉県側でも大発生のきざしがあります(これはフィクションですよ)」
 ラジオからこんなアナウンスが流れてきて、「そうか今年はシリヤケイカを食わないといけないなー」なんて思う。楽しいだろうなー!

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八王子の市場に関しては
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 朝方の冷え込みが厳しい。そんな市場の片隅に積まれている荷から赤い尾ビレがはみ出している。三重県から入荷してきたオアカムロだ。
 アジ科ムロアジ属に種は多い。しかしほとんどが加工用となり、漁獲量の多い割に市場で見かける機会が少ない。そんななかではオアカムロは市場への登場回数の多いもの。

 旬は寒い時期。秋になり、そろそろ霜の季節だなというときになると途端に脂がのってくる。

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 旬は寒い時期。秋になり、そろそろ霜の季節だなというときになると途端に脂がのってくる。
 三重県産というオアカムロを選る。脂は皮下に層になっており、魚体を触るとウロコを通してもぬらっとして存在が感じられる。そして出来るだけ大きいものを2本買い求める。これが2本で1キロ200グラム。値段は600円ほどとなる。
 この一本を『市場寿司 たか』に持ち込み、握りにして味わい。一本はその場で開いて、塩をして、ひと晩寝かして干物にする。

 この握りがうまかったのだ。オアカムロは鮮度が落ちやすいので買い求めたその日だけ、刺身になる。また難点が多い魚でもある。たかさん曰く。
「血合いが大きいわね。それに身の色合いも赤っぽいしね」
 握りをじっくり見ても、その半面近くが血合いだ。そして身にやや酸味を感じるのも血合いのせいだ。
 でも握りの味はいいのだ。酸味さえ気にしなければ脂がのって、その甘味が感じられるし、回遊魚ならではの旨味の多さもある。

 さて、師走になって生のうまさを確認。後は干物が出来上がるのを、冬晴れの空を見ながら待つのみ。

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 ハガツオは関東では「ほうさん」「とうさん」よ呼ぶが、これは身体の縞模様から「棒桟」、「唐桟」という江戸時代に流行した織物に名を借りたもの。また多いのが「きつね」という呼び名で、これは顔つきがずばり似ているからだ。ハガツオの呼び名ではこの「きつね」というのが、ボクとしては好きなわけで、これはまあ他の食べ物でも「きつね関係」はみな好きだというのに起因している。私のこの単純な発想を笑っていただきたい。
 さて、今回試みようとしているのはハガツオの干物。「きつね」とつくと“きつねうどん(大阪の)”でも、“きつねずし(関東のいなりずし)”でも食べ始めると大食いに走る気があるボクだから、これもそれにちなんで“きつね干し”と名付けることにする。

 きつねうどん、きつねずしに共通する材料が醤油だ。だから今回は唐辛子醤油、味醂のみで味つけする。「唐辛子醤油」は熊本県宇土市の『熊井醤油』のもので、八王子総合卸売センター『伸優』にいただいた優れもの。ハガツオは細長く棒状に切り、地に漬け込む。

 漬け込むこと一夜にして早朝から干して、晴れた日で夕暮れまで。やや乾き気味にしてみた。

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 これがなかなかホクホクした身であり、そこに青魚特有の旨味があって、舌にちょっとピリリとくる。ビールの友にいい。残念ながらご飯のおかずとはならず、もっぱら肴として消費している。

 過去にヒラソウダガツオの干物を作って、これがとてもうまいものだった。それ以来、サバ科の回遊魚をみつけると干物を作って試しているが、ハガツオはなかでも上々のもの。ハガツオは小さくても1キロを割ることはない。とすると往々にして、タタキなどにして余ったところは煮つけや、唐揚げなどにしていたのだけど、ここに定番料理として干物が加わったのだ。

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伸優
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オオマテガイの不幸

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 マルスダレガイ目マテガイ科の二枚貝は美味なものが多い。当然、東京湾でも健在なマテガイのうまさは、最近こそ忘れられているが、その昔は有名であったし、瀬戸内海のアカマテガイ、北海道のエゾマテガイとうまいものだらけ。
 では、マテガイ、アカマテガイ、エゾマテガイが市場にあるかというと、なかなか探しても見つかるもんじゃない。今年こそアカマテガイの岡山県からの入荷を見ているものの、本来は市場には皆無といってもいい。

 それでは市場にマテガイはないのかというと、「これでしょう」と持ってきてくれるのが韓国産のアゲマキである。そして「これは“本まて”」なんて偉そうに出してくると、オオマテガイであったりするのだ。すなわち市場で“まてがい”というとアゲマキとオオマテガイということになる。アゲマキはマテガイ科ではなくナタマメガイ科なので“マテガイの仲間”とするのはおかしい。でもオオマテガイはれっきとしたマテガイ科なので“市場でのマテガイ”は今やオオマテガイということになる。
 オオマテガイで困るのが産地がはっきりしないということ。一様山口県と荷受けなどから回答を得ているが、県内のどの地域かがはっきりしないし、また荷主までたどり着けていない。マテガイ科は汚染や環境変化に弱く、日本中で漁の対象となっている地域自体がほとんどない。それなのに晩秋から春まで毎日のように入荷を見るオオマテガイって、いったいどこでとれたんだろう。

 さて、謎解きはおくとして、とてもうまい二枚貝であることは間違いない。砂を噛んでいなければ、そのまま炭火に乗せて焼く。身はやや硬めだがたっぷりボリュームがあるし旨味甘味がある。そして焼けるそばから香ばしい。
 そして我が家では刺身にもする。刺身にするのは水管と足の部分。オオマテガイを横たえると太い棒状で、漢字の「一」に見える。その左右が「前後」にあたり、水管と足が出てくる。これを剥いて、開いて、湯引きする。

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 水管の口の部分が「ミミズみたい」という寿司職人がいて、確かによく似ているけどこれは湯引きすると目立たなくなる。でも残念なことに湯引きしても色合いが悪いのは変わらない。まるで出来の悪い芋羊羹のようではないか?
 食うまでは箸が動かない典型的なものがオオマテガイだ。実際一口舌にのせ、咀嚼を始めると旨味があって、甘く、食感も申し分ない。「寿司ネタにしてもうまいね」とは『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんだけど、その色合いから店に置こうとは決して言わない。でも家庭では見た目よりも味がよければ刺身で食べてもいいのではないだろうか?

 さてオオマテガイも冬到来を告げる水産物のひとつだ。飛騨焜炉を出して、食卓で焼くもよし、また湯引いて刺身として食べるもよし。

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厚岸のマガキ

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 北海道厚岸・厚岸湖の小振りのマガキを初めて見たのは3,4年前だっただろうか、市場の貝担当者と試食して「うまいねー」と顔を見合わせたのが昨日のことのように思い出される。それから厚岸のマガキは毎年のように入荷してくるようになった。そして今や築地を始め関東の市場で見ない日はないほどに人気がある。

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 今回買った厚岸のマガキは他の産地から比べると、かなり小振りである。殻ごと量ると一個70グラム前後。例えば岩手県産でできるだけ小さいのを選んでも100グラム以上あるので、いかに小さいかがわかるはずだ。薄っぺらい殻を剥いても、あれれというほどに痩せている。これは広島県、岡山県、宮城県産などの盛りあがるほどに膨らんだ身とは対照的に思える。

 でも、このやや痩せ気味の身をおもむろに口に放り込んだとき、そこからわき出す硬くしまった食感、そして濃厚で、しかも後口のいいうまさにビックリするだろう。それこそこのカキの食卓を囲む人たちが顔を見合わせるほどにうまいものである。
 マガキの味わいは、どこかグラマラスなものだ。旨味にボリュームがあって、例えば一種の渋みをともなって口の中で膨らんできて、その数個で旨味中枢も食欲も満たされてしまう。ところが厚岸だけではなく北海道のカキの味わいというのは、どこか鋭角的で爽やかな後味で、いくら食べても、食べ飽きない。この双方ともボクとしては好きなのだけど、味の印象は厚岸のマガキが強く残る。

 だから冬になると毎日のように食べるマガキに適当に「厚岸産を食べる」を挟んでいる、2,3日あけて、また厚岸という風に。ここにサロマ湖産があるともっといいのだけど、関東で見る限り、北のマガキは厚岸がいちばん手に入れやすい。

 そして個人的な話になるが今週は幸不幸とりまぜていろいろありすぎた。また年末にかけての慌ただしさも早々始まっている。疲れはたまるばかりで、市場巡りでマガキを手に取る回数が増えている。
 そんなときに北の冷たい湖に育つ、マガキを食べるというのは心癒される気がするのはボクだけだろうか? 北海道ではマガキの育ち方もとても遅く、この小振りのマガキですら幾年も冷たい氷下で沈んでいたのだ。この冷たいが、栄養分にとんだ北の湖のマガキ、風邪気味のボクにも元気をくれそうに思う。違うかな?

厚岸漁業協同組合
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