2008年10月アーカイブ

市場魚貝類図鑑に参加しませんか?
市場でのお買い物、築地土曜会へのお誘いは
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また料理やお魚の質問は
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今週土曜日は八王子総合卸売センターで土曜会のようなもの。
八王子の市場に関しては
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焼き穴子で湯豆腐

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 夜、遅く帰った日は、シャワーを浴びる前に昆布を沈めて小さな火をつけておく。
 さっぱりしたら昆布をとりだして、酒たっぷり、味醂少し、塩で味を調える。
 そこに焼き穴子と、豆腐を入れて、またトロトロとたく(煮る)のだ。
 温めるのではなく、豆腐に焼き穴子のだしと、塩味をしみこませていく。

 岡山中央市場『喜水』で買い求めた焼き穴子は小振りなのだけど、とても味が濃い。
 また小振りなのだけど脂がのっている。
 この吸い物ほどに味付けした出しの中で、焼き穴子は旨味をだし、しかも塩気、昆布の旨味を染みこませていく。
 ゆっくりゆっくりたくことによって、だしがらにはならない。

 煩わしいこと、面倒なことを、小一時間で片づけると、ちょうどうまい具合に豆腐が煮えている。
 合わせる酒は「一ノ蔵 掌」。
 しみじみうまい酒で、しかも辛く、切れがいい。
 理想的な酒に、ほどよく味付けされた豆腐が胃の腑を温めてくれる。
 焼き穴子の味も上々。

 年中開けっぱなしの本の部屋の窓から、やっと11月らしい重く冷たい空気が入り込んでくる。
 冷や四、五ぱい飲んでの、涼風が気持ちよいな。
 
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 どうして「熊蝦」なのか、不思議で仕方がない。
 標準和名のつけ方を間違った典型的な例だと思う。
 この国に、大型のクルマエビの種は多く、クマエビもそのひとつ。
 クルマエビは「エビ界の覇王」のひとつで、そのお仲間だから三国志の主人公くらいの存在感がある。
 ただし、ここで問題なのが最近見かけるのが、冷凍輸入ものだらけということ。
 国産はめったにみかけない。
 これはお役人さんや政治家、土建業の方達が、浜辺や磯場を完膚無きまでに破壊したせいだし、我々の日々の暮らしのだらしなさのためである。
 ボクもクルマエビの仲間を見つけるたびに反省しきりだ。

 今回のものは八王子綜合卸売協同組合『マルコウ』のクマゴロウが産地不明のまま買ってきたクマエビだけど、一度も冷凍していない、まぎれもない国産もの。
 これをゆでて味を見たり、また天ぷらにしたり。
 そして姫のたっての願いでおでんにも放り込んだ。
 我が家の姫はおでんに入ったエビが大好きなのだ。
 いつもは冷凍エビなのだけど、今回のものは値の張る国産なのだから贅沢だ。
 おでんお鍋に放り込んで半時間ほどで食べられる。
 これが甘くて、エビの香りがあってうまいのだけど、姫はもっともっと煮込んだ方を好む。

 おでんを作って仕事に出かけ、帰り着いたら姫が怒りをあからさまに、
「どうしてエビ、一本しかないの」
 ちなみに我が家は11人家族なので、一本だって大散財なのだ。

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アイゴ科を改訂
アイゴのページを改訂
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セダカハナアイゴのページを作成
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掲載種 1992


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 岡山市というところでは毎回のように発見がある。
 今回のものは岡山中央市場内でみつけた「げたミンチ」である。
 これは地元瀬戸内海でとれたウシノシタ科の魚をミンチ状にしたもの。
 鱗とワタはとってあるけど、骨はそのまま入っている。
 10月18日に岡山中央市場にあふれていたのが、アカシタビラメに思える。
 とすると、この「げたミンチ」の原材料はアカシタビラメと思って間違いないようだ。

 さて、これをどのように料理するのか、市場で改めて聞くと、
「最初になー、油で炒めるじゃろ。そこにゴボウなんかいれて、汁にするんじゃ」
 これはまさに岡山ならではの「ふな飯」と同じもの。

 こんな簡単な料理もないわけで、だしもいらないし、野菜だって普段あるものばかり。
 料理時間は10分とかからない。
 出来上がったものは澄んだ汁にミンチ状のアカシタビラメが沈む。

 ご飯にかけて食べるわけだけど、このうまさは表現するのが難しい。
 でもシャバサバ、いくらでもいけるわけで、上品で旨味の強い汁が、炊きたてのご飯をどんどん腹に押し流してくれる。
 このうまいだしは「げたミンチ」のなかの骨から出ているように思えるし、この骨がときどきコリっと歯に当たるのが、これまた抜群に楽しい。

 この「げた飯」、材料からしてもカロリーは低いだろうな。
 とすると岡山県人は三杯飯を食っても太ることはないはずだ。
 ボクも岡山に生まれていたら、こんなに腹も出なかったろうなー。

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 北海道紋別市の『まるとみ 渡辺水産』、渡辺さんからケータイがはいる。
「お待たせしました。やっとオヒョウが手に入りました」
 この一瞬のうれしさをいかに例えるべきか。
 それこそ踊ってしまいたいほどに、うれしい、うれしい! うれしい!!

 北海道紋別市は遠く、中一日かけてやってきたオヒョウは小振りながら、素晴らしい鮮度、そしてきれいな個体である。
 しかも送料もオヒョウも、渡辺さんのご厚意に甘えることとなった。
 これでは紋別に足を向けては寝られない。
 ただ、待てよ、とすると日本全国からいろんなご厚意を頂いているボクは寝る方角がない。

 さっそく撮影して、『市場寿司 たか』で卸してもらう。
 すしに関しては置くとして、今回は素直にムニエルにする。
 だれでも知っているだろうけど、(もちろん知らなくても悪い明わけじゃない。普通だ)ムニエルの作り方を書く。

 フィレにして塩コショウ。
 少し置いて、小麦粉をつけてバターで焼く。
 ゆっくりこんがり焼き上げるのがコツ。

 オヒョウの身にはまったく個性的な匂いもクセもない。
 まことに上品極まりない白身である。
 こんな身質の魚こそ、ムニエルなんかにすると化けるわけで、まるで魔法使いに会ったシンデレラのようだ。

 バターの焦げた香り、塩気を感じて、そこにちゃんとオヒョウの甘味に思える旨味が存在する。
「トレビアーン」
 というのはこんな時のためのフランス語だろう。
 ボクはまるでアランになったように陶酔して呟いてしまう。
「トレビアーン」

 『まるとみ 渡辺水産』さん、ありがとうございました。

『まるとみ 渡辺水産』
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ウチワエビを改訂
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オオバウチワエビのページを改訂
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マトウダイのページを改訂
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オヒョウのページを作成
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掲載種 1991


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マトウダイの蒸し肝

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 島根県浜田市『浜田魚商マーケット』は魚好きのパラダイスなのだ。
 ここでいろんな魚に出合い。
 またいろんな発見をする。
 なかでも面白いのが、例えばシイラの卵巣とか、アイゴの卵巣、バショウカジキの内蔵などが別売されていることだ。
 ちなみにバショウカジキは本体よりも「わた」の方がうまいともいう。
 今回、見つけたのがマトウダイの肝。
 トレイいっぱい450円なりを買い求める。

 これを自宅に送り、日本酒につけておいた。
 一日漬け込んで適度につぶして、塩加減をし、ホイルで巻いて蒸し上げる。
 ようするに「あんきも」を作る要領だ。
 20分ほど蒸して、これを半日冷蔵保存。

 冷えたのを切り分けると、これはまさに佳肴となった。
 やや大振りのを口に入れると、トロンとして甘味が強い。
 そこに濃厚な旨味が出て、その割りに臭みがなく、後味が短い。

 浜田市のお隣、大田市温泉津の銘酒『開春 純米酒』をやりながら、島根の旅を振り返るのだけれど、こんど行くときは温泉にでもつかりしっかり旅情を感じたいものだ。

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 相模湾では「角鰺(かくあじ)」と呼ばれ、地元の魚やなんぞでは、なかなか高級なのがカイワリ。
 これが流通にのってしまうと、とたんに安くなる。
 ある意味、「安いのにうまい」という買い手にとっては重宝な魚であり、まあ見つけて買わないなんてボクには出来ない相談だ。

 さて、刺身にしてよし、と思って買ったのだが、買った当日が忙しすぎた。
 翌日となって、まだまだ刺身でもいけるが、ここは素直に塩焼きにしようではないかと思い至るのだ。
 水洗いをして、水気をよく拭き取る。
 腹の辺りに切れ目をいれて、振り塩をする。
 ワタを出した腹腔に塩を指でこすり込むのも、コツなんですね。
 また化粧塩というのがあり、鰭などにぼてっと塩をまぶしつけるのだけど、これは決して伊達じゃない。
 これも塩焼きのコツのコツだと思うのだ。
 例えば、強い塩気を感じる鰭自体がうまい。
 鰭が焦げるのを防ぐ。
 もしも塩加減が弱ければ、食べるときに補ってくれる。
 それに塩焼きのあとに骨湯というのをやるとしたら、この化粧塩がこれまた非常に利いてくるのだ。
 さて、振り塩して一時間くらい置く。
 魚焼き器に耐熱煉瓦を置き、金ぐしを売って、後はこんがりと焼き上げる。

 焼き上がったばかりのカイワリは、まことに香りがよい。
 身をおもむろに手でアツツといいながら割り、このような手早に食うべき料理は、手早にくうのだけど、身の適度に繊維質で、口の中でホロホロと崩れていくのが快感を呼ぶ。
 甘味というか、芳醇な旨味がいっとき押し寄せるのもいい。
 カイワリを食うたびにカイワリの塩焼きはうまいのだな、と痛感することになる。

 さて、あらかた食べたら、化粧塩した鰭を囓りながら、酒を飲む。
 今回の酒は鳥取県智頭町の「諏訪泉純米吟醸」。
 カイワレの塩焼きに合うようだ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、カイワリ
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タモリ見つけた!

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 タレントのタモリのことを初めて知ったのは高校生の時だ。
 考えてみるともう35年も前になる。
 朝のせわしない登校時に同級生がなにかを持ち上げるそぶりをして、やたらにおかしがっている。
 これが深夜放送でのタモリの噂だった。
 それからすぐにテレビ画面にも登場して、我ら山間部の高校生にも知らぬものはない、という存在になったのだ。
 今ではマンネリで見ると(ボクのようにテレビから遠ざかっている人間には)「無駄な存在」にしか思えないが、その当時の衝撃はすごかった。

 そんな「たもり」が瀬戸内海にもひっそりと暮らしているのだ。
 標準和名をセトダイ、すなわち「瀬戸内海の鯛」という。
 山陰の町から伯備線に乗り、やっと明るい瀬戸内にでて、セトダイを見ると、「おお岡山に来たのだな」と改めて思う。
 セトダイの場合、広島でも播州兵庫県でも山口県でも、同じような感慨に浸れるだろう。

 さて、改めて、岡山中央市場でセトダイを発見。

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 仲卸にトコブシがあって、産地を聞いても「どこだっけなー」なんて言う。
 値段は3千円台であり、たぶん台湾産ではないか。
 するとフクトコブシということになる。

 久しく食べていないので買い求め、さてどう料理するか、と思ったら家族から「ムニエル、ムニエル」とリクエスト。
 簡単にできるので、ボクも楽チンにムニエルを作る。

 作り方は簡単至極。
 塩コショウして、小麦ををまぶし、バターで焼くだけ。
 あっという間に出来上がりだ。

 このバターとトコブシの甘味・旨味が相乗効果になって、うますぎて困ります。
 そんな状況に陥る。
 値の高いものなので一人一個ね、なんてお父さんは寂しく宣言するのだ。

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 ガヤガヤいるから北海道で「がや」と呼ばれるエゾメバルは関東に来ると珍しい魚になるのだな。
 そんな光景が八王子総合卸売センター『高野水産』にあった。
 八王子市内で刺身で有名な『スーパーイシカワ』さんが、
「これなんて言うの、カサゴのように見えるけど、ちょっと違うしね」
 そしてフレンチのシェフが、
「箱には“がや”だってさ」

 なんなのかわからないのだから、手がでない。
 それで「エゾメバルだよ、うまい魚だと思うよ」と一声かけてやる。
 ここからはあっという間に荷(発泡の箱)はすっからかんになる。

 ことほどさように魚の名前さえわかれば売れるし、利用されるのだ。
 これを二本ほど買ってきて、まずは水洗い、そして塩を振り、鰭に塩をまぶしつける。
 そして肝心なのがワタを出した腹の中に、塩をこすり込むのだ。
 シッポのあたりに串を打ち、逆さまに吊して、2、3時間寝かす。

 これを遠火の弱火で、ゆっくりあぶる。
 ここまでの工程でおわかりいただけただろうが、ようするにエゾメバルは鮮度落ちが早く、その原因は少々水っぽいのだ。
 「そんなことはないだろう」と北海道の方は思われるだろうけど、関東まで来るとクロソイや「まぞい(タヌキメバル)」と比べると、鮮度は明らかに悪い。
 だから少々水抜きしてやるのだ。
 「じゃあ、開いて干物にしたらいいだろう」と言うのは短絡的。
 むしろすかすかになってしまう。
 ただし、これもうまいと言えばうまい。
 そこへいくと、開かないで、ジワリと焼くと、表面が香ばしくぱりっと崩れるようで、中は芳醇な味わいを残す。

「また“がや”食いたいね」
 なんて気持ちになる。
 北の海ではまとまってとれる魚だし、工夫次第ではうまいのである。
 近年、不況のせいか珍しい魚が関東にこなくなっている。
 “がや”なんて珍しい部類ではないのだけどね。

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 島根県浜田市は大きな港を持ち、また石見地方ならではの古典芸能を保持している歴史の町でもある。
 この町は当然のごとく水産加工の盛んなところで、カレイの干物生産量では日本一ではないかとも記憶する。
 港に入港してくるのは巻き網船、底曳網などで、多種多様な魚貝類が大量に水揚げされるのだけど、中でも浜田市民の大好物であるのがマトウダイだ。
 マトウダイは浜田市では「馬頭(ばとう)」と呼ぶ。
 「的鯛」は側面にある大きな斑点からくる漢字で、「馬頭」はそのユーモラスな顔つきからきている。
 ボクはどちらかというと、「馬頭」の方が好き。
 フランス語ではサン・ピエール。
 聖人ピエールという意味合いだけど、きっとこのひと馬面だったに違いない。

 さてこの浜田市民が、いや島根県人が大好きなマトウダイを、フライに加工したのが『大磯』。
 市内にある、それこそ元気いっぱいの食品加工会社だ。
 ボクなど部外者からみたら、輸入魚を使っても採算がとれそうにないフライ材料に、それ自体、なかなか値の張るマトウダイを使ったらさぞや「儲からないだろうな」と心配してしまう。

 そんな心配も食ってみると解消する。
 マトウダイというのは一定の大きさのものが揚がるわけではない。
 それで「いそまる本舗(大磯)」のもてんでんばらばらだ。
 これを見て感激するのは魚をよく知る人だけだろう。
 なぜなら、これこそ前浜の魚(地魚)を使っている証拠だからだ。

 さて、とにかく揚げてみる。
 フライなんだから、当然おいしい。
 さくっと揚がったのに魚のジュ(エキス)が飛び出してきて、これがまったく生臭くなく、旨味がほんのり浮かんでくる。
 うまいうまいとたっぷり揚げたマトウダイのフライをすぐに平らげてしまったけど、フライというのは本来そんな料理なのだ。

 さて、パンに挟んで食べていた太郎が、「もうないの。パンが余ったんだけど」と文句を言う。
 ご飯を食べていた姫も、「もっと欲しいよ」ときた。
 仕方なく的鯛のフライ、追加だーい!

いそまる本舗
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 翌16日は久しぶりに午前6時過ぎまで眠る。
 旅館で朝食というのもめったにないこと。
 そのまま石見銀山までクルマで。

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石見銀山の観光客はどれくらいいるのだろう。落としていくお金は年々少なくなっているという

 海岸から銀山までの距離を知る。
 浜田市で浜田水産事務所、浜田市と会議。
 昼食を挟んで、午後は浜田に水産会社を見学する。
 夕方、島根水産技術センター。

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島根水産技術センターには未利用の魚を教わりにいくはずだった。でもこの光景に出くわすと正常な気分でいられない

 漁業生産部長の由木さんとお話しするはずが、底曳網のゴミ(不要なもの)の整理をしているのに出くわし、仕事を完全に忘れる。
 夜、浜田市の有志と酒を飲む。

 翌17日は浜田港の朝競りを見て、「めさまし」で朝ご飯。

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定置網の水揚げを見ていたら思わぬ人に再会した。さてその人の名は?

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浜田魚市場前の魚商マーケット(通称)は日本でもっともいい魚が見つかるところ

 魚商マーケット(ここは本当に素晴らしい)で無闇やたらに魚を買う。
●注/島根県の水産物を買うことも仕事であるような気がする。自由に買えなくなってきている。島根の水産振興が頭から離れない。
 そして松江に向かう。
 松江『大鯛寿司』で30分間食事。
 午後から水産課の会議。
 この会議に悪戦苦闘する。
 真剣勝負を挑んでいるのだけど、県職員の方達、柳のように受け流していく。
 夕方、岡山へ向かう。
 大阪を目差すか、倉敷の武内家を目差すか悩んだが、それ以前にボクに体力が残っていない。
 疲れ果てて岡山駅前ユニバーサルホテルに向かう。
 ここで名前にだまされたことに気づく。
 このホテル、駅から歩くと10以上かかる。
 疲れているのでこんなことに腹が立ってならない。
 少しホテル周辺を歩くが、めぼしい店がない。
 ローソンで水と食物を買い、ホテルに帰りダウン。

 翌18日早朝に岡山中央市場にタクシーで向かう。
 ここで大きな誤算。
 そんなに遠くないと思っていたら、なんと料金が2300円なり。

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ヒラ、ままかり(サッパ)、サルボウ、ぎざみ(キュウセン)、あみ(アキアミ)、マアナゴ、ヨシエビ、あしあか(クマエビ)、ガザミ、がしら(目張とも。カサゴ)など岡山県人が好むさかな大集合

 仲卸を見て県水の合地さんなどと島根の水産物の話をする。
 朝食は関連棟。
 バスで岡山市内に向かい。
 正午まで岡山の魚をデパートなどで見て、のぞみで東京に帰る。

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岡山市内のデパート魚売場。サワラ、げた(アカシタビラメ)、アキアミ、ぎざみ(キュウセン)、ヨシエビなど地物が並んでいる

 そう言えば、新幹線ホームのいちばん後ろに、「のぞみ500型(形かな?)」は1号車の端のドアは開きません」なんてことを書いている。
 ボクのような鉄道に詳しくない人間には意味不明。
 だいたい岡山のバスの停留所に路線図がないことも含めて、岡山市、岡山駅は旅人に親切ではない。
 帰宅は午後5時。
 夜9時過ぎにはダウンしたいな、と思ったらハードディスクが一台壊れる。
 それからの過酷な時間のことは書くこと差し控える。

 最後に今回の旅までに、いろいろご教授頂いた方に感謝。
 マリンフーズの方達。
 またマルハニチロホールディングの山口さん、『ひめこカンパニー』の山下社長、おふたりのアドバイスがなければ、今回の旅の主目的に触れることも出来なかったと思う。
 深く深く感謝いたします。

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 水産物アドバイザーとして島根に通い始めて、そろそろ8か月になろうとしている。
 地方の水産物を売れるように、また水産業を活性化さるためには「なにかをしなくてはいけない」、でも「行政もJFも漁業者も水産関連の業者も限界がある」という状況にいる。
 そんな課題を持っての旅は、そんなに楽しいものではないというのを今回改めて感じたところ。

 さて、14日早朝に鳥取県鳥取市にいなくてはいけない。
 それでいろいろ交通機関を調べてみると、連休の移動日と、格安な交通機関を求める傾向からバスは無理。
 また深刻な高所恐怖症を抱える身にはできれば飛行機は使いたくない。
 結論として、13日の早朝に我が家を出て、新幹線利用で鳥取を目差す。
 そこに問題があって、12日の深夜においてまだやるべき仕事を済ませていないのだ。
 仕方なく、早朝3時に起きて、やり遂げたのが6時過ぎ。
 そこから最終的に旅の支度を点検してから、こっそりと家を出る。

 朝方ののぞみは空いている。
 姫路着が10時59分。
 2時間弱市内を無駄歩きする。

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姫路と言ったら「姫路城」だけど街の方だって、とても楽しいのだ

 それから「特急はくと」で鳥取県智頭町に。
 津山にすべきか智頭町にすべきか悩んだ末に、選んだのだが、思った以上に発見はなかった。

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ボクの姉から上の世代の映画が多いのだけど、なんとなく総てなじみ深い気がする

 敢えて思わぬ拾いものだったのが、『西河克己映画記念館』。
 それから鳥取市へ。
 『たくみ』で買い物をしたり、軽く酒を飲んだりして、余計に市内の衰退振りを知る。

 翌日14日は浜勝商店の十九百さん、鳥取市議の児山良さんに案内をしていただき湖山池を見て回り、大黒さんと賀露港、「かろいち」を見学。

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湖山池の石がまを見る

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地物が多い、そして安い、農産物も売っている。いい市場だと思うねー

 そこから境港へ。
 途中、道の駅『赤崎』、米子市の『ふれあい村アスパル』に立ち寄る。
 米子市でヤマトシジミさんに合流して、境港には午後4時過ぎに到着。
 ここで水産庁の上田勝彦さんを交えて会議。
 この上田さんとの出会いは我ながら、衝撃的。
 詳しくは後ほどにして、「後でじわじわ効いてくるウエカツ水産」と銘記しておく。
●ウエカツ水産総本舗
http://ueka2007.naturum.ne.jp/
 夕食はウエカツ水産の上田さん案内で市内「美佐」にて「紅がに料理」
 「紅がに(ベニズワイガニ)」尽くしなんだけど、ズワイを超えそうなうまさにちょっとたじろぐ。

 翌15日は午前中境港魚市場、仲卸市場を見てから、松江市に。

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境港でのベニズワイの水揚げ

 松江市の方と簡単な会議。
 午後、JFしまね『松江魚市場』で会議。
 そのまま大田に向かう。
 和江港にて島根県小型機船漁業協議会会長吉田敬治さん他と会議、夕競りを見る。

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夕方の競りがいかに大変であるかを知る

 ここで日本の漁業が抱える様々な問題点を改めて思い知る。
 大田市内で一泊。
 夕食で「へか焼き」などを食べる。
 もしもここで食べた「へか焼き」がいろいろ試行錯誤の結果生まれたものなら大失敗であると思う。

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今日から旅に出ます

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本日は岡山県津山市、もしくは兵庫県龍野市を見て歩き、鳥取県智頭町にも立ち寄って、鳥取市内へ。
14日は鳥取賀露での水揚げ、市場を見てから、午後には境港へ。
境港で一泊。
15日は境港の水揚げを見て、松江市内で会議。そのまま大田へ向かいます。
大田で一泊。
16日は浜田。
17日は浜田から松江に帰ります。
帰路に向かうのは17日の夕方。出来れば大阪か岡山に立ち寄りたいと思っています。
私、ぼうずコンニャクを見かけましたら気軽に声をおかけください。


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 例えば、せっかくの土曜日だというのに、家族がバラバラに夕食をとることになったとする。
 こんなときによくやるのがグラタンなのだ。
 グラタンほど簡単に作れる料理はない。
 材料は小麦粉、牛乳、塩・カイエンヌペッパー・ナツメッグ(コショウでもいい)、そしてとろけるチーズ。
 作り始めて15分後には、「後は焼くだけ」となっている。

 とにかくソース・ベシャメルを作る。
 テフロンフライパンにバターと小麦粉を入れて火にかける。
 あとはヘラでかき混ぜながら、固まってきたら牛乳でゆるめ、固まってきたらゆるめるを繰り返す。
 塩で味を調え、香辛料を振る。
 あっという間にトローっとした白いソースが出来上がる。
 かたわらのフライパンではほんの少しのベーコン、バター、玉ねぎ、ニンジン、はなたけ、ブラウンマッシュルームを炒める。
 今回は刺身用に買ったばかりの殻ほ(殻付きホタテガイ)があったので、これをむいて貝柱を4、5等分。
 この間、ベシャメルをかき回すのは太郎なのだ。
 まずは帆立の貝殻にソースを少量、キノコと野菜を入れて、またソース。
 ちなみにここからは子供の出番。
 帆立の身、キノコと野菜、ソースにとろけるチーズをのせる。
 貝殻の大きさを考えないでどんどん乗せていくので小山のようになっている。
 できましたるグラタンは5つ。
 最後にオーブンで子供が帰ってくるたびに10分から15分ほど焼き上げる。
 温度は出来るだけ高い方がいい。

 酒の肴をとられたお父さんは寂しくウルメイワシの干物なんかで晩酌。
 チンとなったら、いっきに食卓へ、一気になくなってしまう。
 少しだけ分けてもらうのだけど、ホタテガイのグラタンは芳醇で貝の旨味が濃厚。
 たまらなく美味だと思うのだけど、まだゆっくりたっぷり食べたことがない。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ホタテガイ
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カツオの生醤油漬け

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 吉野ます雄の『鮓・鮨・すし すしの事典』を読んでいたら「長崎県ではカツオを大きく切って小半日、しょう油に浸したものを辛子で食べる」とあり、実際に5時間つけてみたという。
 これをすしネタにしてうまかったというのだが、今回は買い求めたのが金曜日なので自家用につくる。
 カツオは4等分に割ったもの。
 宮城県気仙沼からきたもので脂がのっている。
 これをこのままなんにもしないでビニールに入れて醤油を注ぎ入れる。
 ショウガの絞り汁を加えて5時間待つ。

 できましたものの、しょうゆを切り、刺身に切るのだけど、表面がねっとりしている。
 包丁が重いのは身がしょうゆの塩分でしまっているせいだろう。
 皿に盛りつけて和辛子をのせていく。
 カツオと言ったらニンニクが欠かせないので、薄切りにして添えておく。

 5時間も生醤油に漬け込んだのだから、しょうゆ辛いのだろうと思ったら、むしろ味が薄かった。
 その分、カツオの味は生きているように思える。
 辛子と、ニンニクを合わせたのもよかった。

 見た目もきれいだし、それなりにうまいのだけど、なんだかもの足りない。
 これは関東の辛口のしょうゆを使ったせいではないだろうか?
 むしろ九州や山陰の甘口のしょうゆに一日漬け込んで食べた方がよかったようだ。
 次回再度挑戦とあいなる。

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 テレビなどの旅番組でサメが出てくることがある。
 例えば和歌山県での「サメのゆびき」とか青森県での「棒ざめ料理」とか。
 すると決まったように、「サメって食べられるんですね」とか「サメって初めてです」とか「ちょっと恐い」とか、ちょっと身を引くような、そんな情景になる。
 まことにつまらない、テレビという媒体がいかにもやってほしいリアクションであって、これをいかにもそれらしくやってのけるタレント(?)というのがおぞましいし気持ちが悪い。
 マスコミ自体が、リアクションを考えてタレントを選んでいるのだろう。
 「お前は化け物か?」と言いたくなる、このようなロボットのような生き物が大嫌いだ。
 最近このようなやらせ横行のテレビ番組が、つくずくイヤになり、気持ちが悪くなり、「この国は大丈夫か?」と不安を感じる。
 このようにマスコミが「正しい情報ではなく絵を欲しがる傾向」はいつ頃始まったものだろう。
 食に関する情報を伝えるときに報道の基本的な誠心が欠けているように思える。
 このあたりボクが詳しく書くよりも小関敦之(築地王)さんの『築地で食べる 場内・場外・“裏”築地』にわかりやすく書かれている。
 この本は単に築地礼賛でないのが素晴らしい。

 いかん閑話休題なのだ。
 ボクが言いたいのはサメってただの食用魚なのだ、ということ。
 しかもクセがなく、食べやすく、万人向けの味がする。
 そのサメを使った我が家の定番料理が「サメフライ」だ。

 用意するのは「もうか(ネズミザメ)」か「棒サメ(アブラツノザメ)」。
 今回は「もうか」で作った。
 フライの作り方など書いても仕方がないだろうがあえて書く。
 「もうか」は適当に切り、塩コショウする。
 小麦粉をまぶして、溶き卵をくぐらせて、パン粉をつけて揚げる。

 このサメフライの味をどう表現しようか。
 さくっと揚げた食感のよさのなかに、サメの肉から芳醇な香りが立ち上がってくる。
 そして急激に熱が加わり、サメの肉のジュが閉じこめられていて、それが染み出してくる。
 サメの肉は魚でもない、牛肉でもない、もっと淡白で旨味のあるものだ。

 こんなものを食べさせているせいなのか、我が家の子供達は近所のハンバーガー屋のなんとかフィッシュをまずいと言う。
 とても食べられたもんじゃない、とも言う。
「当たり前だサメフライを食べて、なんとかフィッシュが食べられるわけがない」

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ヤツシロガイ入荷

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八王子総合卸売センター『高野水産』にて。10月10日に撮影

 久しぶりに八王子にヤツシロガイが入荷してきた。
 関東、東京湾でもお馴染みの貝なのだけど、築地を始め関東の市場に来ることは少ない。
 荷がどこから来たのか表示がなく、しかも仲卸も知らないと言うことで、産地不明。
 荷の仕立て方から茨城県北部から福島県にかけてと想像する。

 魚貝類には入荷量の非常に少ないものがあり、ヤツシロガイもそのひとつ。
 だから珍しいかというと、そんなこともない中途半端な巻き貝だ。

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 昨年から熱中している料理のひとつがエビの甘辛煮というやつ。
 あまりに簡単すぎて困る困るという、“料理する”というのが恥ずかしいほどの一品なので、これを急遽、酒のアテの「おしのぎ」としておこう。
 「おしのぎ」とは、お食事をお出しするとき、懐石膳などで軽く空腹を抑えるための料理のこと。
 とりあえず、コップ酒をそそいでしまった、でもなにもアテがないというときにざざっと作るもの。
 普段は冷凍エビなんかで作るのだが、シバエビが出盛りとなっているので、市場で髭をからめて買い求めてきて、結局明日朝にでも天ぷらにしてしまおうというのを、煮ることにする。

 まずは軽く水洗い。
 よく水分を切っておく。
 酒、砂糖、しょうゆ、少量の水を沸騰させて、少し煮詰めたところに放り込み。
 ていねいにやるなら髭くらい取りたいが、コップ酒を持っての料理故、そんなことはどうでもいいのだ。
 終始強火で、エビを返しながら短時間で煮上げる。

 これを手を使って野性的に食らう。
 殻から身をせせりだし、せせりだしする。
 途端に甘味のある香ばしいエビの味が口いっぱいに広がる。
 そして冷や酒をあおる。
 またエビを食らう。
 ちょっと窓を開けて涼風を入れ、また酒をあおる。
 深夜ながら、酒がすすみ、困ったなーと思う。

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 このところ、小イワシ(マイワシ)の入荷が最盛期となっている。
 たかがイワシと侮るなかれ、刺身にして並べると航空便のマダイが恥ずかしそうに縮こまる。
 晩酌のアテに五、六本選んでいたら少ないながらカタクチイワシが混ざっている。
「ミノルちゃん、これどこのイワシ」
「三崎だろ(神奈川県三浦半島三崎)」
 八王子総合卸売センター総市のミノルちゃんにもう一枚袋をもらって、カタクチイワシを集める。
 我ながら、ちょっとせこいな、と思いながらひとつかみほど。
 一匹だけウルメイワシも混ざっていたのだけど、掌でキラキラして三浦半島での水揚げ光景を感じさせてくれる。

 ミノルちゃんにマイワシ分の200円を支払い帰ってくる。
 まさかカタクチイワシの天ぷらの方がうまいなんて、夢にも思わないで。

 頭を取り、ワタをとって強塩水で洗う。
 これに小麦粉をまぶし、薄衣をつけて高温で揚げるだけなんだから、これほど簡単な料理もありませんな。
 揚げたてを食らうのだけど、まことに香ばしく、カスンと潰すと、濃厚な青魚の旨味がトンと浮き上がる。
 一瞬のことなのだけど、これがいい。
 ほんの小皿に盛るほどなのが恨めしい。

 このような小体なものって、「肴」という文字よりも、やはり「アテ」だ。
 「アテ」というのは大阪弁で、軽いおつまみといった意味合い。
 こういったものが酒飲みオヤジにはまことにうれしい。

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 市場をよくよーく歩いていると、ときどき声がかかる。
「ちょっとさー、メカジキが残っちまってさ。持ってかない」
 八王子魚市場の大物部ムッシュが、こんなことを言ってくれるときは大サービスしてくれることが多い。
「なになに、おお、いいねー。いくら?
「千五百円でいいんだけど」
「でもこれ2キロ近くない。大丈夫」
 当然の如く喜んで買わせていただく。
 これを見ていたのが八王子並木町の魚屋『魚茂』さんで、
「これ、そんなによくないよ。脂が少ないだろ」
「そうかな。ウチなんてこれでもうれしいね」

 さて、持ち帰るや、塩コショウ、粉チーズを振る。
 小麦粉をまぶし、溶き卵をくぐらせて、パン粉をつける。
 本当にフライほど簡単な料理はない。
 2キロくらいあるので、なんと10枚以上のフライが出来上がる。
 今夜の分、8枚を残して後はお弁当用に冷凍庫にしまう。
 なんと1500円と、少々で今晩のおかずとお弁当材料が確保できたのだ。

 あとは夕食時にカラリと揚げるだけ。
 ダイエットのために「ボクは半分しか食べられないの」なんて唄いながら、寂しくビールを飲む。

 夕刊には緒方拳の急逝がのっている。
 さすがに太閤記の記憶はほとんどないが、必殺仕掛け人の梅安は素晴らしかった。
 彦次郎役の田村高廣も死んでしまったよなー。
 ボクの世代がテレビで盛んに見ていた俳優達がどんどんいなくなってしまう。

 外はアオマツムシの声。
 今年はやけに静かじゃないか!

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 市場に「平きん」がぎょうさん来ていた。
 すべて下田産。
 この下田産であることの意味合いがいまのところよくわからない。
 とれる海域もわからないし、時期なども突然たっぷり入荷してくるから余計にわからない。
 キンメダイよりも深い場所、沖合にいるために、普段余り見かけない。
 たぶんかなり遠くでとっているのだろう。

 さて「平きん(め)」というのは標準和名のナンヨウキンメのこと。
 キンメダイとの違いは、「脂」ののり具合だろう。
 どちらかというとさっぱり、上品だといえば、上品な味がする。

 さて、値段はキンメダイの半額以下。
 700グラムほどで800円弱しかしない。
 これを持ち帰って、すぐに半割にして、振り塩。

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背開きにして振り塩したら、寝かせるのがコツなのだ

 ビニールに包んで一日寝かせる。
 そして、また一日冷蔵庫で干し上げるのだ。

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二日目に出来上がる

 こうやって簡単至極に出来上がる「平きんの開き」がいつ食べてもうまい。
 我が家ではボクがおもむろに手で焼き上がったものを解体する。
 湯気がプワーンと上がるのだけど、こらがまたいい匂いだ。
 なんだろうな、この甘い匂い。
 エビ殻を焼いたような風味は平きんの赤い皮からきていそうだ。
 差し出す皿に白くてたっぷりした身を取り分け、取り分け、骨をシャブリ、皮を食らっていると半身などあっという間になくなる。
 また半身焼きながら、酒を飲むのだけど、ボクはこんなせわしない時が好きなのだ。

 最近、お好みなのが、我が家の近所で醸されている「多摩自慢」。
 安い酒だけど、切れが良くて、ついついクイクイとコップ酒がすすむ。
 平きんの皮を肴に良くできた多摩の酒というのも幸せだな。

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 築地、太田市場から八王子に来たクロホシフエダイについていたラベルが素敵だった。
 ネットで調べても、「江川水産」のことはよくわからなかった。
 しかし、このわかりやすいラベルは面白いし、目に付く。
 これはひとつの理想的なラベルだろう。
 クロホシフエダイを関東まで送り出すというのも見事だ。
 鹿児島の『江川水産』がんばれ!

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 八王子綜合卸売協同組合『やまぎし』は川崎北部市場で仕入れを行っている。
 当然、神奈川の地物がくるわけで、そこに魅力がある。
 10月2日、通りかかるとシライトマキバイだろうと思えるものがあり、福島県産かなと思って、よくよく見るところんと丸いNeptunea(エゾバイ科エゾボラ属)が混ざっている。
 これは明らかにヒメエゾボラモドキである。
 それでシライトマキバイだろうと思ったBuccinum(エゾバイ科エゾバイ属)をもう一度見ると、明らかにスルガバイなのだ。
 ヒメエゾボラモドキとスルガバイは東京湾、相模湾、駿河湾であがるもので、実を言うと神奈川県だとしたら間違いなく長井港のエビカゴ漁の副産物だ。
 北のエゾバイ科の巻き貝はそれこそ頻繁に市場に来ているが、東京湾から南のものはほとんど目にする機会がない。
 買い求めてきて酒蒸しにしたり、刺身にしたり、握りにしてもらったりしながら、三浦半島には長い間行っていないな、なんて思う。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ヒメエゾボラモドキ
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スルガバイ
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 ボクにも、こんなものは作りたくない、なんて料理がある。
 その最たる物が、フライにスタッフドする、そんな小手先料理。
 こんなものを創作料理だなんて思うおかしな人がいるが、本当に、おかしいだけではなくて、程度が低い。
 マイワシはただ単純に塩コショウして、フライにする方がうまい。
 うまいにも関わらず、中に青じそとベーコンの端切れを詰め込み、包み込んでフライに揚げる。

 こんな矛盾する料理を作ってしまうのも、ボクがお父さんである上に主夫だからだ。
 子供達は、この小手先料理に市販のタルタルソースをつけて食べているし、ウスターソースというのもある。
 我が家の女達など日本食研にいただいた、試作品のカルパッチョソースをからめている。
 ボクも真似したら、このカルパッチョソースがよくできている。
 フライの目先がかわっていい感じだ。

 さて、こんな小手先貧乏くさい料理を作ると、子供達は「今日も魚なの(怒り)」という顔つきにならない。
 一週間に一度は小手先をきかせる所以である。

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 秋になって、久しぶりにイガイ科のエゾヒバリガイを見た。
 なかに一個体エゾイガイらしいものを発見して買い求めてきた。
 さて、出荷するときに荷主(産地仲買)の書いた魚貝類名が「ムール」である。
 最近ではムラサキイガイだけでなく、エゾイガイにもエゾヒバリガイにも「ムール」と書かれている。
 そのうち国内での呼び名「しいれ」とか「しゅうり」とか「にたり」とはか消えてしまいそうだ。

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