2009年4月アーカイブ

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 上着を羽織っていると、ときどき蒸し暑く感じるときがある。
 市場でTシャツ一枚で歩いていたら、柏餅を見つけた。
 八百屋にニガウリ(ゴーヤー)があって、すぐに買い込む。
 そして魚屋にエゾアワビ。
 これがやたらに安い。
 仲卸の社長に「どうしてこんなに安いの」って聞くと、「不況のせいだろうね。アワビ安くなってるよ。それにコレ韓国産だしね」。
 そうだったのか、ウォン安がこんなところに影響を及ぼしているんだ。

 キロ当たり4500円で、3尾買って1200円と少し。
 1個あたりの重さが80グラムから100グラムほど。
 色合いから養殖ものだとすぐにわかる。
 このアワビ、間違いなく国内の業者の脅威になっているはずだ。
 と思いながらも買ってしまっている自分が情けない。

 さて、生で握りに、持ち帰って「踊り(焼く)」に、そして今期初の「水貝」を作る。
 まずは塩水を作る。
 かなり濃いめの塩水で、とても飲めないほど。
 熱湯で塩を溶かし、そこに昆布を差し込む。
 あとは冷えるのを待つ。
 これが我が家の「水貝」の下地の作り方。
 冷えたら氷を入れて冷やす。
 アワビに塩を振り、ボウルの中で転がし、水で洗う。
 貝殻から外し、ワタはゆで、身(足)は口を外して、適当に来る。
 縁のビロビロはとっても取らなくてもよい。

 これを地に沈めるだけ。
 しょうゆも酢みそも無用。
 ただ下地の塩味とコンブのだしで楽しむ。
 下地もキンキンに冷やし、氷をたっぷり使ったら、まさに夏の味覚となる。

 材料費400円ほどだから、ペット飲料3本分。
 これでこんなに贅沢が出来る。
 
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 築地場内『ヤマセ 村清』には面白い食いものが大量にある。
「さすがは天下の築地だ」と店頭を見るたびに考える。
 つけ加えると盛りだくさんである上に、発見がある。
 今回の浜浦水産の「幻魚」などその最たるものだ。

 近年「幻魚(ノロゲンゲ)」も人に知られるようになってきている。
 テレビなどでもたびたび取り上げられるようで、鮮魚が築地などで見られるようになっている。
 ただこの魚は鮮度落ちが非常に早い。
 鮮魚で食べるとき汁ものや鍋物にするのだが、気をつけないと生臭い。
 だから新潟県など日本海側ではたくさんとれると干物に加工する。
 干し加減は産地によって様々だけど、ボクの好みはカラカラに干し上げたもの。
 昔「上乾」といったもので、「あぶって食べる」もの。
 近年の一般的な干物は「焼いて食べる」。
 新潟県上越市の片岡鮮魚店さんに、かなり昔のことだが、この「上乾」のノロゲンゲをいただいたことがある。
 あまりのうまさに感激したものだが、それとおっつかっつのものが、浜浦水産の「幻魚」だ。

 やはりこんがりあぶって食ったら、ビックリするほど味わいが深く、香ばしさにうっとりして、幸せな気分となる。
 いちばん印象に残るのが最終的に口に残る渋みだ。
 これを冷酒で洗うようにする。

 やはりノロゲンゲの干物は酒の肴として最上のものだ、改めて感動する。
 困ることは酒が進むことくらい。いいとこだらけの浜浦水産の「幻魚」だ。
 
浜浦水産
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 八王子総合卸売センター『土谷食品』のオヤジさん、オバサンが新潟からたくさんの蕗のとうをとってきた。
 そして振り向くと『高野水産』に“メゴチ”。
 産地は福島県原釜なので、間違いなくセトヌメリだ。
 底曳網でとったもので、東北のものは選別が悪い代わりに安い。
 買い求めたら、仲卸のまな板で、せっせとおろしていく。

 水分を切るように紙に包み。
 夕方、からっと天ぷらに揚げる。
 ともに揚げるのは新潟県産蕗のとう。

 蕗のとうの苦みに、セトヌメリの上品な白身の味わい、ネズッポ科ならではの皮目の風味。
 冷や酒がうまい。

「今年はこれが最後だね」
 蕗のとうをひとつ手に持ち、オヤジさんが呟いたっけ。
 そう言えば天ぷらという料理にも春を感じるな。 

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 魚を調べていると、また撮影したいと思っていると、なかなか手に入らない種がある。
 なかには本当に珍魚といえるもので、努力しても無駄なものもある。
 でもむしろ平凡だけど、産地に行かないと見られないものが大部分なのだ。
 北国のカレイ類などその最たるものだろう。
 今回のコガネガレイ、シュムシュガレイ、ウマガレイ、トウガレイ、ツノガレイなど、北海道に通っても手に入れたい。
 そんなとき手をさしのべてくれるのが紋別にある『まるとみ 渡辺水産』。
 今回のコガネガレイは北洋ガレイ3種のひとつ。
 冷凍のみすぼらしい画像しかなくて、なんとかちゃんとした画像が欲しいものだと悪戦苦闘していたのだ。

「今日、コガネガレイが揚がったので送ります」
 こんなケータイがかかってきて、その荷物の届いたときにうれしかったこと。
 思った以上の大きさ、全体を櫛鱗で被われていて、ザラザラしていること。
 なによりも、その黄金色の鮮やかなことに感激する。

 さて、こんなに感動をもたらすカレイなのだから、さぞやうまいのだろうと思われるだろう。
 残念ながら、水分が多く、マコガレイなどと比べて、そんなにうまいカレイではない。
 いろいろ作ってみて、いちばん味のよかった料理がフライであった。
 ようするにクセのない白身である、という平凡な評価しかできない。

 こんなありきたりな評価だけど、コガネガレイのちゃんとした自己評価ができるまでの、長き歳月を思うと、食べていて喜びがこみ上げてくる。
 改めて『まるとみ 渡辺水産』さんには感謝いたします。

まるとみ 渡辺水産
http://marutomi-kani.com/
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 三多摩地区に住んでいると、山梨県はまことに、ほんのお隣。
 八王子市街を抜けて、高尾山を縫い、相模湖を見て、神奈川県をかすめて、ほんの数十分で山梨県到着。高速だったらなんと20分もあれば山梨県の看板を見る。
 山梨名物が「煮貝」である。「貝」はアワビのこと。駿河湾であがったアワビを、くさらないように醤油に漬け込んで運んだ、それがとてもうまかったので、甲州名物煮貝となったらしい。
 まあ、山梨に近く住んでいるので、ついつい煮貝を作ってしまうというのは牽強付会だけど、とにかく我が家は「煮貝」が好きですきで困っている。

 今回のものは福岡県だろうから来たトコブシにメガイアワビが混ざっていて、これを2個だけ買ってくる。
 キロ当たり3800円で、支払いは千円でおつりがきた。
 持ち帰り、汚れを落として、鍋に放り込む。
 酒と水半々を加え、塩と濃い口醤油で味つけ。
 鍋に蓋をして、ことことアクを取りながら煮て、また蓋をしてことことたく。
 出来上がったら蓋をしたまま、夕方まで待つのだ。
 こんな簡単な料理はないだろう。

 メガイアワビの身を貝殻から取りだして、適当に切り、また貝殻にもどす。
 煮た汁をかけ回して、見事な煮貝の出来上がりだ。

 これはあくまでもボクの酒の肴なのだけど、老若男女嫌いという人はまずいないだろう。
 だから食卓に出すのはあらかた食事の終わったとき。

 口に放り込むと、この軟らかなアワビの身からジワリと甘みがくるのだけど、その甘みが微かな渋み(旨味)と合わさって舌に口腔に引っかかる。
 アワビのうまいのがぱーっと広がって、また食感がいいので、ながながそれが噛むことで続く。

 これぞ天からさずかった美味。
 世の荒波をひととき忘れてしまうのだ。
 
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、メガイアワビへ
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 一般に「オコゼ」といわれる高級魚はオニオコゼのこと。
 図鑑などでの基本的な名前(標準和名)には「オコゼ」はいない。
 つけ加えると東北での「オコゼ」はケムシカジカのこと。
 また釣りなどをやっていて、「オコゼだから気をつけて」なんて注意喚起される、その魚はハオコゼだろう。
 ここで登場する主役は当然オニオコゼだ。

 市場で活けのオコゼを見ると、「夏も遠くないな」と感じる。
 本来五月のことだが、最近では四月の中旬に、もうこんなことを思うようになった。
 夏と言っても、その気配なのであって、「風立ちぬ」で冬の入り口の秋を感じるのとは違っている。
 身体が冬の寒さを忘れたころに、寒がもどってくる。
 四月五月の寒の戻りは、まことに身に染みる。
 この寒の戻りの春に出てきたばかりの活けのオニオコゼを、魚屋と値段の駆け引きをして一尾だけ買う。
 これは味見。
 キロ3000円と小振りにしても安すぎる。やはり不況なんだな、と改めて感じる一瞬だ。
 これを『市場寿司 たか』で握ってみて、また活けの歯ごたえを楽しむ。
 そして本当の「お楽しみはこれから」なのだ。

 オコゼを買って、握りを食べたのは午前10時前のこと。
 それから半日以上が経っている。
 疲れ果てて仕事から帰ってくる。すでに深夜である。すぐには眠る気になれず、かるく酒をあおる。
 ここにオコゼが汁となって登場する。
 オコゼのあらは湯引きして冷水で汚れを取り去る。
 小鍋に水、酒をたっぷり、刺し昆布、オコゼを入れて一煮立ち。
 アクをすくって、昆布を取りだし白みそを加える。
 ここからアクをすくいながらことことと。
 時間は20分くらいかも知れない。
 この間にシャワーを浴びて、着替えして。

 冷や酒をちびちびやりながら、つゆショウガをふり、碗にオコゼの白みそ仕立て汁をそそぐ。
 ここに和辛子があるといいのだけど、今回はなし。

 白みその汁がうまいのは当たり前だけど、それ以上に汁の中でトロリとなったオコゼのあらがうますぎて、うますぎて、酒が一瞬とまってしまう。
 オコゼの身は柔らかく、ゼラチン質の鰭まわりは白みそと渾然一体となってしまっている。
 名状しがたいものだが、あえて表現すると、くみあげ湯葉のような状態で、そこに甘みがあるのだけど、それは魚の旨味からくるもの。また適度に繊維を感じるのだが、これも口の中でほどけるような、とろけるような。

 ボクが、これこそ最上の酒の肴と考えているものは、「最上ながら数知れず」ある。
 これは矛盾、人生は矛盾だらけなので、その最たるものである。
 なかでも、もう一回選抜して、残るだろう最上の酒の肴が「オコゼの白みそ仕立て汁」なのだ。

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ドクウロコイボダイのページを作成
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コブセミエビのページを作成
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掲載種 2006


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今週も忙しいな!

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 忙しさは先週から続いている。
 土日で食材図鑑魚貝類編のメモを書き上げる。
 このメモは2通り。完全版と出版社用。
 出版社のものはページ数も限れれているので、4百弱、自家版は1000種くらいにはなるだろう。
 後日ヤガラさんに見せたら、重要性の度合いを記号化せよ、という。これはいいアドバイスだ。
 月曜日朝方までに書き上げて、月曜日の朝、市場に向かう。

 八王子総合卸売センター『高野水産』に根室から大きなバカガイ(青柳)。キロ当たり1500円でも買って損はない。
 これをたかさんに渡し、仕込みを見学。握りを撮影する。
 個人的にはアカガイよりもバカガイ(青柳)の方が好き。
 活けを仕込んだばかりのものは、最高にうまい。
 残りは全部、『さくら』夫婦が食べる。
 午前中、コブセミエビ、ゾウリエビの撮影。

 都心に出て、夕方まで雑事。
 夕方、浜田のイッチャンに会い、高津川(島根県西部を流れる川でダムがなく、日本一の水質を誇る)漁協の方とともに、銀座『三州屋』。刺身、竹の子の土佐煮など総て美味。

 新富町のホテルに一泊。
 翌21日は早朝から築地案内。大都魚類で会議。
 朝方仕事の合間を縫って、つきじろうさん、まさぞうさんと朝ご飯。
 二人の食べっぷりを見ていると、人生の総てを捨てて朝飯にかける、これって幸せなんだろうかと首をひねる。二人とも幸せになってくれよなーーー!

 正午まで築地。
 青山一丁目まで出て『べにや』に立ち寄り、Rさんと無駄話。その後、出版社の方と打合せ。
 地下街でお昼ご飯。Mさんごちそうさま。
 9時過ぎまで雑事。
 帰宅は10時半。すぐにダウン。

 水曜日は午前5時前に起きて、図鑑の改訂、寿司図鑑作成、ブログ。
 朝ご飯を食べて、また改訂。
 午後都心に出て、9時まで雑事。
 帰宅後、午前3時まで改訂。

 木曜、本日は朝方6時過ぎまで寝てしまう。
 図鑑改訂、画像保存。
 朝ご飯はサスヨ水産の「どんちっちあじの開き」、なめこ納豆、ワカメのみそ汁、玉子焼き、海苔。

 市場には午前8時半到着。
 ラジオからいずみたくの「恋の季節」。
 八王子綜合卸売協同組合『マル幸』に活けのオニオコゼ。
 キロ当たり2500円に負けてもらって500円なりで購入。
 クマゴロウに卸してもらい、『市場寿司 たか』に持ち込む。
 オニオコゼの握りは、思ったほどうまくない。
 たかさんに、いずみたくの話をすると、
「遊星少年ソランの原作者って、いずみたくなんだよね」
 これは間違い。「遊星少年」ではなく「宇宙少年ソラン」、原作者ではなく主題歌の作曲者。
 帰宅するラジオからスマップの、くさなぎ剛、強制わいせつで逮捕の報道が流れる。

 午後には都心へ。
 電車でも、くさなぎ剛の話題だらけ。
 酔って全裸になったらしい。裸になったくらいで逮捕されるとは可愛そうな。
 顔が浮かばないので、どんな子だったのかわからないけど、君はそんなにおかしくないよ、と言ってあげたいな。
 ボクの周りには酔うとすぐに裸になるヤツが2,3人はいる。

 都心に出て、帰宅は11時過ぎ。
 帰る道すがらツツジの花を見る。季節はどんどん進んでいる。
 そろそろ眠くなってきたが、もう一がんばりするのだ。

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ムラソイ類を改訂
ホシナシムラソイを削除
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エゾワスレガイのページを作成
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掲載種 2004


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 ヒメジは北海道から九州までの前浜にいたって普通の、平凡極まりない小魚だ。
 この小魚の真の価値を知る人は少ないんじゃないのだろうか?
 刺身よし、煮てよし、干物にしてうますぎるし、その上、だしをとっても特上だった。
 ヒメジのうまさを知らないヤツは「くいしんぼ失格」だなとつくづく思う。

 さて今回の「ひとぼし(ヒメジ)」の煮干しは京都市舞鶴市にある『長谷川巳之助商店』のもの。
 「舞鶴にヒメジの煮干し」があると教えてくれたのは誰だっけ、忘れてしまって申し訳ない。
 ここで改めて感謝致す。
 秋に取り寄せて、キロ当たり2600円ほどだから、煮干しとしてはそんなに高くない。
 近年ではカタクチイワシの平均的な値段と同じだろう。
 干し具合も上々で、見た目からして期待感が湧いてくる。

 これを昆布と一緒に沈めて、半日ほど待つ。
 ことこと火に掛けて、煮立ったところで昆布と、「ひとぼし」を取り出す。
 だしは微かに黄金色をしており、非常に澄んでいる。
 味をつけずに口に含むと、ヒメジならではの風味が浮かんできて、そして後から旨味がくる。
 ここにジュンサイなどを入れてみたいものだ。
 もしくはマツモ。
 ネギや三つ葉は香りが強すぎてだめだ。
 いろいろ考えた末に千葉県佐原の「白味醂」と塩味だけで、この「ひとぼし」の汁を楽しんでみたが、これで充分だった。

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 沖縄では具のないただの汁を「んなしる」というらしい。(『沖縄料理物語』(古波蔵保好 作品社)
 貧しいゆえの具がないということだが、「ひとぼし」のような上品で繊細な汁に具は無用かも。
 そしてむしろ具のない汁の方が上等ではないか。

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 そして里芋とたき、大根と炊き、生麩とたいてみる。
 里芋とたいたら、うまかったのなんのって。
 名状しがたい味わいとなった。
 ヒメジのどこか淡白で軽い旨味が、里芋と合わさって、なかなか不思議な調和を見せている。
 画像は使った「ひとぼし」も添えてみたが、これは蛇足だな。

 徳島の片田舎で育ったがために、だしに使った煮干しなどはそのまま煮てしまう。
 例えばみそ汁のときなら、そのまま取り出したりはしなかった。
 これがいやでいやで仕方なかったのだけど、五十路になっても嫌いだな。
 
長谷川巳之助商店 京都府舞鶴市浜318
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ちぬ飯をたく

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 クロダイの入荷が盛りを迎えている。
 それこそ活け、締めたクロダイを見ない日はないだろう。
 味がいいのに値段が安い。
 市場に入荷してきているクロダイを見ると、どんどん腹がふくれてきている。
 産卵期間近。
 はやく食べないと、春の旬を過ぎてしまう。
 刺身、カルパッチョ、サラダに塩焼き、うしお汁。
 さすがにタイ科の黒い鯛はうまいものだ。

 さてそれでも残った半身をご飯に炊き込む。
 瀬戸内などでやくやる「ちぬ飯」だ。
 半身にべた塩をする。
 塩をべたべたとたっぷりまぶす。
 時間を置き、半身から水分が染み出してきたら、水洗い。
 水気をよくふきとって、水加減を終えた釜に入れる。
 味つけは酒と塩と醤油少々、ショウガのせん切り。
 普通に炊いたら出来上がりだ。
 今回のものは刺身用に三枚に卸して、残ったものなので、血合い骨もとっている。
 このまま釜の中でほぐす。
 突然、作り始めた「ちぬ飯」なので薬味は三つ葉の茎のみ。
 あるものだけで作るのが家庭料理だ、と思っているので、「これでいいのだ」。

 やや塩っ気の聞いたご飯。
 これを腹減り状態を癒すべく、フンガふんがと書き込む。
 ご飯にじわりとクロダイの旨味が浸透している。
 これだけで、おかず、飯、酒の肴の役割をこなす、優れた料理だ。

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 「ちぬ飯」は瀬戸内では、「ちぬ」丸ごとを炊き込む。
 現代の家庭ではとてもこんなことは出来そうにない。
 朝な夕なに炊くご飯の、たぶん多くの家庭で2合、3合といったところだろう。
 この程度の炊飯にはクロダイ半身で充分だ。
 例えば、刺身の残ったものを、そのまま使っても簡単至極だろう。
 さて我が家では「作る料理に行き詰まったら、魚貝類の炊き込みご飯」となる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑クロダイへ
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 三度目の正直というではないか? 有楽町「わした」でまたまた「グルクン」を買う。
 やっぱりタカサゴではなくクマササハナムロだった。
 よくグルメ雑誌などに沖縄旅行が掲載される。
 そこに必ず出ているのが「グルクンの唐揚げ」。
 これが明らかにクマササハナムロであることがしばしばある。
 クマササハナムロは尾鰭の文様からすぐに区別がつく。

 とすれば「グルクン」=タカサゴではない。
 ここにニセタカサゴというタカサゴぞっくりさんを加えて、「グルクン」は三種類の魚の総称に違いないと確信する。
 どうでもいいことなんだけど、テレビや雑誌で明らかにクマササハナムロを指さして「タカサゴ」です、と説明するタレントとかグルメライターには魚を見る目がないということだ。

 さて、今回の沖縄県のアンテナショップ「わした」の「グルクン」がベトナム産クマササハナムロというのに別の疑問が沸き上がってくる。
 なぜ県のアンテナショップなのに輸入魚を売っているのか?
 ひょっとするとタカサゴ、ニセタカサゴがあまりとれなくなっているのではないか?
 昔、沖縄出身の方と酒席で一緒になって、「グルクンの蒲鉾(確かこう言ったと思う)がうまいんですよ」と聞いたことがある。
 すり身にするほどとれたはずの「グルクン」を輸入しなければならないのだ、これも驚きを感じるところ。

 三種ともクマササハナムロ属、その特徴は身質が水っぽいこと。
 ようするに単に塩焼きにしても、そんなにうまくない。
 逆に唐揚げにすると、かりっと香ばしい。
 やっぱり「グルクン」の唐揚げはうまいな、と思う一瞬である。

 最後になってしまったが、こんど「わした」に寄れたら、沖縄の蒲鉾買ってみなければならない。
 原材料はなんだろう?
 
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白海老の天ぷら

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 世の中にはうまいに、決まってるじゃないか、てな食べ物がある。
 今回の小エビの天ぷらなんて、「うまいに決まっている」の最たるものだ。
 シバエビ、アカエビ類はクルマエビ科。
 小エビはクルマエビ科に多い。
 そんななかで沖合、やや深海に棲むものにサクラエビ、シラエビがある。
 シラエビは富山湾特産で4月から11月が漁期。
 まさに今、食べんと欲すべきエビなのである。

 最近では生鮮品として毎日のように関東の市場で見かける。
 プラスティックのトレイにのり、一枚600円くらいから1000円ほどだろう。
 ほぼ半年ぶりに、シラエビを買い込んでくる。

 当然作りますものは天ぷらだ。
 最近では面倒だが、一匹一匹剥き身にして刺身で食べるというのもあるが、これは暇なときに置いておく。
 軽く軽く、揚げるだけがコツなんだけど、シラエビは下ごしらえが不要というのがいい。

 さて、揚げ終わる。
 大皿に山盛りにして、食卓にだす。
 香ばしくて、エビの風味が高くて、とうぜんエビの旨味があってと3拍子揃ったうまさだ。

 一瞬にして食卓からエビの天ぷらは消え去ってしまう。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、シラエビへ
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 最近、市場が寂しい。
 それでも盛んに入荷してくるのがホンビノスガイだ。
 安いし、見た目が立派なので、みんなが覗いていく。
 種名を聞いて、「ホンビノス」というと、なぜか買っていこうとしない。
 ようするに知らないから買わない典型的なもの。
 だいたい国内にもともといる貝ではなく、アメリカ東岸大西洋に面した地域に生息するもの。
 船のバラスト水などに幼生(プランクトン期の)が紛れ込んで東京湾に定着した。
 増えているのだから、もっと知名度が上がって、人気が出ると漁師さんも喜ぶだろうに。
 後の課題はどう食べるかだ。

 同じようにオオミゾガイだって、知名度がない。
 ホッキガイ(ウバガイ)に混ざってとれるもので、市場でも知る人は少ない。
 こっちは食べてみると、明らかにうまいのだから、そのうちなんとかなるだろう。

 ともに剥いて、開いて、軽く湯引き。
 ウルイとともに盛り合わせて、二杯酢(酢としょうゆ)をかけ回しておく。
 貝は生醤油にワサビ、ウルイはこのままで食べる。

 忙しい最中の夕食なので、簡単にやる。
 こんなざっかけないつまみが意外にうまい。
 なんといってもオオミゾガイのうまいこと。
 適度に甘く、食感もよく。
 残念なのはホンビノスガイ。
 旨味に欠ける。
 これは韓国酢みそで食べてうまかった。

 春の宵、酒は多摩自慢無加糖。
 ちょっと金欠の日々なのである。

2008年3月28日
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、オオミゾガイへ
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ホンビノスガイ
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 島根県浜田市のブランドアジ、「どんちっち」は旬の時期に、脂質を計測して出荷しているというもの。
 古くから春から夏にかけて島根西部で揚がるマアジの知名度は高く、加工業界(干物)などで最高のランクを得ていた。
 ここに価格的な根拠、また証明を与えたのが、「どんちっちあじ」なのだ。

 ちなみにボクはマアジのよしあしを判断するとき、もっとも信頼が置けるのが干物業界の基準だと思っている。
 ついでに言っておくと、雑誌・テレビ・グルメ旅ライターの書いていること、言っていることになんの価値もない。
 干物のプロは、本当にいいマアジしか買わない。
 千トン、二千トンと買いつけるとき、宣伝文句や見た目のよさだけで仕入れていたのでは大損しかねない。
 その干物業界が最高のランクをつけるのが浜田のマアジなのだ。
 「どんちっち」はここから、なお脂質を計測することでマアジを厳選する。

 さて、沼津市千本にあるサスヨ水産の工場は、外見からは干物工場であるとは思えない。
 レンガ造りの瀟洒なもので、なかに入っても、近代的な衛生管理がなされている。
 沼津っ子の言葉に「干物は小さい店の方がうまい」というのがある、一瞬、これはダメなんじゃないか、と思う。

 今回のサスヨ水産の工場見学は浜田産「どんちっちあじ」が「アジ開き生産で日本一」を誇る静岡県沼津市に嫁いできた、その結婚後の状況を見に来たのだ。
 ただ干物を探してきたなら、こんな大きな新しい工場は避ける。
 仕事だからと入ったら、中は昔ながらの職人の世界だった。
 職人さんも地元の方達で、その開くのを見て、あまりの手練に感激する。

 うまそうだったので、案内の渡辺さん(専務)に「ちょっとわけてくださいな」とお願いする。
 「どんちっち」はそんなに大きなマアジではない。
 大西洋産のニシマアジと比べると重さで半分くらいだろう。
 干物好きなら、マアジの開きでは、もっとも味のいいサイズなのがわかるだろう。

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 そして実際食べてみたら期待以上にうまかった。
 たっぷり頂いた干物が焼いても焼いても、あっというまになくなる。
 脂がのって表面が唐揚げ状となっている。
 でも国産マアジなので脂がさっぱりと上品。
 だから箸がとまらないのだ。
 サスヨ水産おそるべし。
 こんなうまい干物屋(干物工場)だとは思わなかった。
 「どんちっちあじ」も沼津に嫁いできてよかった、よかった。

 サスヨ水産さん、もっと食べたいな!
 なんておねだりしたい気分なんですな。

サスヨ水産 静岡県沼津市千本21
どんちっち
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 本日、先週からのことを振り返ると、まったくてんやわんや、なにがなんだかわからない。
 先週でひとつの仕事が一段落、またひとつの仕事に専念できるようになる。
 食材辞典のお手伝いなんだけど、考えてみると水産物の食材図鑑・辞典はろくなものがなく、まともなものを作れるのはボクしかいないんだなと確信する。
 ちなみに羅列した種は600。
 これを千種ほどにして基本ベースとして持っておくべきだなと思う。
 ほっとした金曜、『築地土曜会』の反省会を翌土曜日に行うことになる。
 無理だと言ったのだけど、「言い出したのはお前だろう」と言われて、仕方なく目黒で会のメンバーと落ち合うことに。

 土曜日、目黒での会合は、ボクが集中砲火を浴びることになる。
 繊細なので食べた中華の味わいも、紹興酒の味もわからぬままに、二次会に突入。
 花見をしながらワインと日本酒をやる。
 途中、桜の木に登る人あり、子供の遊具を取り上げる人有りで大変だった。

 さて目黒川の護岸の味気なさに驚き、そこに散りゆく花びらの無残かな、と思い、我の寂しさはもっともっと深刻じゃないか、なんてことも思う。

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 そこへいくと当日話題になった都の水道局のワッペンを作り直したバカな、まるでどう考えても下等動物のようなろくでなし都職員のように「なにも物事を考えない」でいられたらいいな、なんて思う。
 日記とは関係ないけど、この都職員が処分(こんなろくでなしは懲戒免職しろ)されないでは都民としては怒りを感じるな。

 二次会のあとに三次会までへて帰宅する。
 翌日曜日午前3時前に沼津に向かう。
 昼酒を飲んでから8時間以上経っているので、酒酔い運転ではない。
 HNKラジオ深夜便を聞いていたら筒美京平特集。
 坂本スミ子の「夜が明けて」、堺正章の「さらば恋人」はボクが小中学校のときもっとも好きな曲だったな、なんてしみじみ聞いてしまう。
 しかも「さらば恋人」の作詞者が北山修なのも今回初めて知ったことなのだ。
 ボクのもっとも大好きな作詞家だ。

 沼津魚市場には4時半に到着。
 山丁・菊貞 菊地利雄さんに近況を聞き、イーノの社長に会う。
 競り場は満月のために魚がまことに少ない。
 オオエンコウガニ、オニソコホウボウを青木修一さんに競ってもらって、クルマに帰って仮眠。
 夕方までやることがないので静岡市まで。
 市内に入って初めて日曜日であったことを思い出す。
 午前10時になった途端、人出がありじっくり町歩きも出来ない。
 結局なにも見ないで沼津に帰ってくる。
 そういえば観光も、ドライブなんてことも、バイクのツーリングにしても総て大大大嫌いなんだよな、ボクって。

 午後2時過ぎにホテルにチェックイン。
 シャワーを浴びて、メモをしながら、いつの間にか居眠り。
 午後4時過ぎに島根県浜田水産事務所のヒゲナス2さんがやってくる。
 ここで予め打合せ。
 今回は大田市(おおだし)、浜田市、江津市の方、業者2名を沼津視察で案内する。
 夕食は駅前の『Lion』。
 島田市と比べると沼津にはろくな居酒屋がない。
 これが残念でならない。

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 翌13日は午前5時前からイーノの視察。
 お役人が考えて、バカな設計者が作った外見きれいな建物がいかに困った物なのかを知ってもらう。
 しかし、このような施設を設計するなんてろくでなしだな。もしくは無能だ。
 これも下等動物のような、むしろ害悪があるので毒虫のようなヤツラだと思う。
 この使いづらい建物を現社長以下、いかによくしていくか日夜考えて実行に移している。
 だんだん良くなっていくイーノに期待。
 朝食はイーノで。
 イーノの海鮮食堂はここ数ヶ月で格段によくなっている。
 ここで朝ご飯が食べられる魚市場職員は幸せである。
 午前9時から佐政水産を視察。
 この新工場のすごいこと、見事なこと。
 地魚の新しい可能性が見えてくる。
 お昼は双葉寿司。
 午後からサスヨ水産。
 今年から島根県浜田市の「どんちっちあじ」を沼津で加工してもらうことになった。

 午後3時で視察は終了。長い長い2日間であった。
 帰宅は5時半過ぎ。
 夕食は、とにかく食べたような食べないような。
 午後8時にダウン。

 さて、火曜日から平常通りとなる。

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 島根に行って、出雲人と「野焼き」の話をする、その鬱陶しいことったらない。
 いちばん煩わしいのが、ある1店舗の蒲鉾屋を「うまいね」なんてことを、つい漏らしてしまったときの彼らの反論である。
 必ずや否定する。
「あのですね。●●屋はそんなにええと思われんですね。他県の方は野焼きの本当の旨さがわかっちょらんのですわ。●●町の●●屋のを食べたら、他は食べれんと思います」
 そう言えばそんなことを言う出雲人に限って、うまい野焼きを送ってくれた試しがない。
 さて、野焼きの歴史とかを詳しく語っても、これもまた煩わしいので、簡単に。
 夏になると、日本海を西南から東北に回遊してくるのが、「アゴ」、すなわちホソトビウオだ。
 それこそ大量にくるのを、煮干しに、また干物にと加工するのだが、とにかくたくさんとれるので、すり身にしてしまう。
 これを棒状の物に、くるくる竹輪状にして、焼いたものが「あご野焼き」なのだ。
 「野焼き」とつくのだから、その昔は露店で焼いたものなのだろう。
 この野焼き製造過程を我ながら見てみたいものだと思う、そして焼き上がったばかりの野焼きにかぶりついたら、どんな味なんだろうね。
 想像するだけで腹が立つほど、唾が沸き上がってくる。
「こら出雲人、責任とれ!」

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 当然、これほど出雲人が愛して止まない野焼きだから、出雲地方には膨大な数の野焼き製造メーカー(店)が群雄割拠する。
 ボクなど他県人は、とにかくうまそうな野焼きを食うしかないのだけど、今回の『岩永邦商店』あご野焼には感動した。
 裏面を見ると「とび魚(あご)を70パーセント以上使用している」と書かれているけど、そのせいだろうか?
 それ以上に味わい深く、またその旨さが殷々と続く。
 加うるに適度な歯切れ感、弾力。
 文字で書く以上にうまい「あご野焼」なのですよ、と断りをいれたいくらいだ。

 これで270グラム一本600円ほど。
 使っているトビウオ類(主にホソトビウオ、ツクシトビウオも混ざる)の数からして「安いな」と思わざる得ない。
 
2009年2月16日
岩永邦商店 島根県出雲市大社町杵築南1382-13
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 魚を料理するに、「メバルは煮つけ」でしょう、とか「もしくは塩焼きも定番ですね」なんて言われると虫ずが走る。
 わけもわからず抵抗したくなってしまって、ムニエルだ、昆布締めだとか、新しいから刺身でいこう、なんてことになる。
 そう言えば、小振りのは唐揚げにしてもうまい。

 でも本当はメバル類は素直に煮つけたり、塩焼きにするのが、もっとも最上の料理法なのだと、実際に作るたびに思う。
 そして都心に出なくてもいい、夕食の時、やっぱり塩焼きでしょ、となる。
 水洗いしたウスメバルは水分をよく拭き取って、切れ目をいれて、振り塩。
 小一時間、できれば数時間寝かせる。
 魚焼き器の上にレンガを置き、金ぐしを刺したウスメバルをこんがりコンと焼き上げるのだ。
 塩焼きというもっとも単純な料理を作るたびに、理想通りに作り上げるのが、いかに困難であるかを痛感する。
 だから上手に焼き上がったときのうれしさは一入大きい。

 後は食べるだけだけど、なぜかメバルに大根おろしをつけないでいる。
 たんに柑橘系を一切れ、スダチ、かぼす、レモン。
 何度食べても、感動できるウスメバルの塩焼きをまさに食べんとす。

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 本日は築地に行く予定としていた。
 しかし今、自宅だ。
 終わるはずの仕事が終わらず、禁足状態にある。
 これは出版社からたのまれた食材図鑑の水産物部門の一覧表と簡単な解説を書き始めて、数日で終わると思っていたら、意外や難敵だったためだ。
 現在320種を掲げて、200種までは整理して、本日中に終わるとは思うが、先は見えない。
 考えてみると、このように整理をしたことがないので、これは続けていくべきだと思う。
 我が家にある食用水産生物はたぶん1000種を大きく上回り、ほとんど総ての最新データが揃っている。
 これをいい機会として、総て整理してみよう。
 ただ本日仕上がらないと、日曜日、月曜日と沼津へ旅に出るので、危機的な状況に陥る。

 本来行わなければならない、ページ改訂が遅々として進まない。
 今週はなんと2ページ。
 モロトゲアカエビ、クロシビカマスのみ。
 現在進行中のカツオ、ハマトビウオ、マダイ、ウスメバルはぜんぜんアップロードの見通しがつかない。
 公開ページは2000種を超えているが完全に近いのは100種にも満たない。

 魚貝類の撮影も日々続いている。
 昨日はブダイ雄と雌、イラ、オアカムロ、ツバイ。
 撮影枚数は175枚で今朝整理し終わる。
 日々疲れがたまっていく。
 沼津に行ったら温泉にでもつかろうかと思う。

 さて8時を回って本日も市場に行きますか。

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 食卓に寂しさを感じるとき、練り製品はとても便利なのだ。
 特に朝ご飯のとき。
 一分一秒を稼ぐために、あらゆる手段を使って手抜きする。
 そのもっとも効果的なのが練り製品となる。

 さて、ここで小田原風の洗練された蒲鉾もいいのだけど、ちょっと味が単調だ。
 そこに今回の「あじ蒲」が登場する。
 “あじ”は「鰺(マアジ)」のことで、国内屈指のマアジの水揚げ港浜田ならではの、ご当地蒲鉾といえそうだ。
 これがなんとも味わい深い。
 また味つけが少々キッチュな感じなのもいい。

 蒲鉾評論家を自認する我が家の姫がまずは太鼓判。
「この蒲鉾はうまいね、父ちゃん」
 喜んだ喜んだ。
 大きさが、一食に使い切るのにちょうどいい150グラム。
 これもまことに便利である。

 このような小振りの練り製品があるだけで、食卓が豊かに見えるんだな、なんて感心する。
 東京の朝食には納豆に小松菜のお浸しあたりが定番だろうか?
 ここに玉子焼きと、蒲鉾を足し算すると、かけ算したほどに賑やかな朝食となる。
 しかも魚梅蒲鉾の練り製品の味は抜群にいい。
 赤てんに、天ぷら(薩摩揚げ)、そして蒲鉾。
 ここから一品ずつ毎朝食べたいものだ。
 
2009年2月16日
魚梅蒲鉾 島根県浜田市京町88
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 赤エビとか「甘エビの仲間」というと、分類学的にみるとタラバエビ科のエビをさす。
 鮮魚でいちばん目立つのがホッコクアカエビ(甘エビ)、二番目がトヤマエビ(ぼたんえび)。
 ぐっと下がって本種となる。
 本種がいちばん少ない。

 値段はトヤマエビと同じくらい。
 非常に高い。
 今回のも増毛産でキロ当たり4000円なり。
 1尾200円近くなる。
 このような高いエビは少しだけ買って味見する。

 モロトゲアカエビは市場では縞模様から「しまえび」と呼ばれる。
 殻を剥いても縞模様がくっきり。
 甘みがあって、食感が強くて、まことに最上級の味わいに感動しますな。

 頭の部分は軽く焼いて、みそだけすするとよろしおますな。
 幸せになれるほど美味なエビでおます。
 
2009年3月26日
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 新年から入荷し始めているのが屋久島産のハマトビウオだ。
 トビウオ類ではもっとも大型になるもので、味もいい。
 いつもは、たたきにする。
 たたきには色々あって、相模湾真鶴、小田原などから広まった、アジのたたきをまねたもの。
 まずはハマトビウオを三枚に卸して、血合い骨を抜き、細かく切る。
 これに青じそとかショウガをざっくり混ぜると、これが我が家の定番料理となる。
 でも、たまには洋風に。

 まずは白ワインビネガーと太白胡麻油を合わせ、塩コショウ。
 タイムとニンニクを加えてドレッシングにする。
 玉ねぎ、セロリ、ニンジンは細かくあらみじん切り。
 ハマトビウオの身と合わせて、タルタル風サラダの出来上がりだ。

 これを軽くトーストしたパンに乗せて食べる。
 お父さんはビールを飲みながら、こんな夕食もアリかなと、メインのシチューなども作るのであった。
 
2009年2月28日
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 4月の土曜会は盛況の内に終わる。
 目出度し目出度し、と書きたいところだが、実はうまくいったものか、どうかわからない。
 築地は世界一の水産市場。
 そこに集まる魚貝類・水産加工品は膨大な量になる。
 これを多くの方と見て、実際に味わってみるというのが、土曜会の柱となっている。
 あちらこちらで「お魚マイスター」だとか食育だとか喧しいけど、私的な意見としては、ほとんど総て無駄だと思っている。
 もしくは垣間見た限りでは感動が薄いし、魅力に欠ける。
 もっともっと直接的に、わかりやすく、食の勉強をしたらどうか、という意味合いの土曜会でもある。
 だいたい本会には講師(世の中見回して魚貝類のプロという人を見いだせない。存在しない)も会長もいない。
 すべて生徒という集まりである。
 ボクが中心になって、この魚は、こうやって卸します、なんてことをやっているが、これ自体がボクの食の勉強。
 「こう料理したらどうですか」という意味合いで、実際に作って見せるけど、これも提案であって、教えているつもりはない。
 あえて言えば、食育ではなく、『食の冒険をする会』と思って頂きたい。

 ちなみに今回作った料理を並べていくと、jasminさんが毎味水産のトリガイ、エビ(バナメイ)を使ったパスタ、サラダ、マダイのカルパッチョなど。
 今回はjasminさんの料理の腕のほどをまざまざと見せてもらった気がする。
 jasminやるなー!
 マダイの炊き込みご飯、皮霜造り、真子の煮物、時間がなくてうまくいかなかったが、マダイの昆布締め、オオサガの湯引き、ベニテグリの天ぷら。
 あらを使ってみそ汁。
 場内にある『イリヤマイチ斉藤』のファンキーな連中がうまい八角(トクビレ)を持ってきてくれて、卸してくれたのも収穫だった。
 ありがとうね。

 ホンビノスとアカボヤを解説のために買ったのだが、アカボヤの解説をし忘れてしまった。
 アオメエソは料理できなかった。

 残った魚や、あらなどは最後まで手伝っていただいた方にお分けした。
 これなど平等にとはいかなかったが、お許し願いたい。

 課題はたくさん残ったが、築地を食べてみる会という方向性が示せたのではないだろうか?
 次回はもっと「うまい会」としたい。

 また今回もそうだが、実施するにあたって、働いているのは、会の中心メンバーで、ボク自体がそのなかのひとりだ。
 jasminさん、ヤガラさん、ネズミフグさん、ヒモマキバイさん、そしてとりまとめの鮟鱇さん。
 よくよく鑑みるにボクがいちばん働いていない。
 この五方にはまさしく「ありがとうございました。お疲れさまでした」と言いたい。
 また海老名の海老さんの不思議な存在感も大きいな。笑顔がいい。
 それに会場の片づけを最後まで手伝ってくれた方達にも感謝いたします。

 最後に今ひらめいたモットウを「食通にならない 生かせない知識を披露しない(知に走らない、もしくは知るは無知になる) メタボをコウカイしない 一生実践的でありたい」。

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 『高野水産』で高知県産マアジの箱の中に混ざっていた4、5匹のクロシビカマスの幼魚をいただいてきた。
 撮影した後には、開いて振り塩。
 ビニール袋に入れて密閉して一日寝かせる。
 後はやや強く干す。
 魚には生干しして、軟らかい方がうまいものと、硬干ししてうまいものがある。
 ボクの考えではクロシビカマスの幼魚は硬干しして美味だ。

 ほんのり焼き目のつくほどに焼く。
 成魚の脂は望めないが、風味があって、十二分に旨味がある。
 ご飯にも合うし、酒の肴にもいけそうだ。

 ときに定置網などにまとまって入る、ようするに雑魚ともいえそうなものだが、まことにうまい。
 これを神奈川県小田原では「ケンケラケン」といい干物にして珍重するという。
 小田原という土地には「オシツケ(アブラボウズ)」といい、独特の魚食文化がある。
 なぜか小田原に行ってみようか、なんて思う春の宵なのだった。

2009年3月26日
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4月4日土曜日に土曜会を行います。
参加を募集中。
詳しくは
掲示板
http://csi.or.tv/tsukiji/kb/rb.cgi
参加応募は
http://csi.or.tv/mail/doyoukai.html


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「流らみ」発見!

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 本日の市場は寂しかった。
 なんにもなかった、がっかりだ。空しく帰ろうかと思ったら、そこにあったのが「ながらみ」。
 漢字で書くと、どうなるのだろう。
 タイトルはボクの想像による。

 愛知県産で、やや小振り。
 そのせいか、キロ当たり800円と安い。
 これを一握り、100円分買ってくる。
 仲買のお姉さんが「けちな買い方するなよ」と言ったのを聞かぬ振り。

 持ち帰って、片口を用意して、「ながらみ」を放り込み、熱湯をそそぐ。
 3分から5分待って、出来上がりだ。
 「ながらみ」で用意するものはお湯だけ。

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 そう言えば、静岡県島田市在住の級友は「昔はこいつがおやつだったんだ」といって食べ方を教えてくれたっけ。
 お湯は捨てないで、楊枝で身を取り出してついている砂をここで洗う。
 そう言えば「ながらみ」はこの熱湯をそそぐだけというのがいちばんうまい。
 身に甘みがあって、食感があり、ワタがまたすこぶるつきに美味なのだ。

 さて、言い忘れていたが、「ながらみ」とはダンベイキサゴ、もしくはキサゴのこと。
 今回のものはダンベイキサゴであった。

2009年3月31日
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