2009年7月アーカイブ

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「姫サザエください」
居酒屋の若い衆が市場の仲卸で注文を飛ばす。
「今ないよ。そこにあるサザエの小さいヤツ持ってけば」
「サザエじゃなくて姫サザエが欲しいんです」
「ちょっと大きいだけだろ。大丈夫だ」
「だって姫サザエ買ってこいって書いてあるんすから」

さて、仲買があきれ顔して、姫サザエとはサザエの子供なのだよ、と教えているのだ。
「オタマジャクシはカエルの子って言うだろ」
意味不明だけど、なんとなくわかったようなわからないような、首をひねりながら若い衆は小振りのサザエを持って行ったのだ。

さて「お玉杓子は蛙の子、ナマズの孫ではないわいな(灰田勝彦のヒット曲だったんだね、驚き)」というのは、見かけは似ているけど縁もゆかりもない、という歌だ。
それとは逆に「見た目通りに大人と子供なのさ」と仲買のオヤジは言いたかったわけだ。
まことにまどろっこしい。

「姫サザエはサザエの子供ですか?」
よくある質問なので、「そうなんです」と高らかに宣言するのだ。
サザエは季節によって値段の変動が激しい、でも姫サザエだけは年間を通して高値安定。
いつでも引っぱりだこだ。
なぜか? たぶん見栄えと、食べてうまいためだろう。
小さいのにちゃんとサザエの親とおんなじくらいにうまい。

姫サザエ焼きの作り方
1 適当に汚れを落としたら、水分を拭き取る。
2 ガス代に餅焼き網を2、3枚重ねて、直火で短時間で焼く。のせるとすぐに水分が沸騰して焼き上がる。

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3 煮切りみりん(アルコールを飛ばしてある)と醤油を半々に合わせたなかに、焼けた姫サザエを放り込んで行く。タレには我が家では山椒を振り込んである。ニンニクを加えてもうまい。

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4 皿に盛りつけて出来上がり。
注/タレを用意しないでニンニクバターをのせてもいい。

市場に来ませんか? 市場には素晴らしい食材がある
八王子の市場に関しては
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北海道への旅 06

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登別温泉駅に到着しても、雨はあがらない。
駅で苫小牧行き普通列車を待っていると、「函館本線は森駅付近で冠水のため運休しています」とアナウンスが流れる。
駅構内はざわざわして、慌ただしい。
見回したところ、ボク以外はほとんど総てが観光客らしい。

幸運なことに在来線は通常運行だった。
赤い2両編成の車両に飛び乗ると、座席は5割方埋まっている。
これはローカル列車としては優秀だと思うな。

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虎杖浜は登別温泉駅から一駅。
そういえば駅と駅の区間が長いのも北海道だ。
右車窓からは太平洋が見える。
線路脇にイタドリを探すが見つからない。
昔、この浜はいちめんのイタドリ(たぶんオオイタドリ)が生い茂っていた。
それで虎杖(イタドリ)浜と名付けたのだという。

駅前には何もない。
駅舎というかコンクリートの空間に入ると老婦人がぽつねんと登別温泉方面の列車を待っている。
時刻表を撮影して、「このへんに宮森水産ってありませんか?」
「みやもりですか、そこをまっすぐ行くとあますよ」

駅からの道をまっすぐ浜に向かって歩くと、すぐに宮森水産の作業所がみつかる。
ホッキガイの出荷作業で大忙しの伊藤さん、武田さんが出迎えてくれた。

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そして虎杖浜名産のクシロエゾバイの塩ゆでをいただく。
やっぱりクシロエゾバイの塩ゆでは最高なのだ。
この宮森水産の方たちには、貴重な魚や情報を何度もいただいている。
ここに改めて「ありがとうございます」。

本日の荒天のために出荷する荷は思いのほか少ない。
虎杖浜は室蘭と苫小牧の中間にあり、噴火湾、太平洋岸であがるホッキガイ(ウバガイ)を名産としている。
このホッキガイに加えて、アカガレイ、エゾバフンウニ、キタムラサキウニなどが東京へ、川崎へ送られて行く。

正午過ぎには出荷が終わり、宮森水産の事務所でひとしきり北海道の魚のことなど話す。
ここで出迎えてくれた女将さんからは貴重なお話をお聞きした、ここでも改めて感謝。

お昼となって、伊藤さんの案内で近くの浜を見学。
やはり魚はほとんど揚がっていない。

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白老の浜に忽然と現れる『蟹御殿』。中国からの観光客がいっぱい

そのあと『蟹御殿』というのを見て、お昼は『炉端焼き 池田』。
この店で今回の旅行でもっともうまい魚を飽食する。
まことに宮森水産さんには感謝、感謝多々なのであった。

午後2時近く、伊藤さんに登別温泉まで送っていただく。
千歳発6時半のANAなので登別温泉で時間つぶし。
ここで改めて観光地と、観光化された温泉場というのが大嫌いであることを再認識する。
登別温泉の公衆浴場のおばちゃんの不親切であること、この旅の汚点となる。
せっかくだから書いておくと、登別温泉は白濁した硫黄の匂いの強い、体によさそうな湯であった。

さて、4時前、登別温泉駅を南千歳まで、千歳空港を定刻よりも20分も遅れて、ANAは北海道を離陸する。
ここに北海道の旅は終わる。

宮森水産 北海道白老郡白老町虎杖浜116
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そろそろサケの筋子(卵巣)の入荷がありそうだ、と思ったらマス子がやってきた。
マスにもいろいろあるが、筋子として入荷してくるのはカラフトマスなのだ。
カラフトマスの産地はいろいろあるけれど、代表的なのが根室海峡。
ここから親子揃っての到来である。

カラフトマスの親は、サケと同じくらいの値段でキロあたり600円から800円。
筋子はサケの三分の一くらいしかしない。
安い。

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値段はキロあたり1000円ほど。
サケだとここ数年キロあたり3000円前後なのでお得なのだ。
このところ我が家は貧窮生活なので助かるなー!

親の方はオス、そろそろ産卵回遊で沿岸に近づいてきたのだろう。
せっせと塩マスを作る。
筋子はサケと同様にしょうゆ漬け。
今回は姫に丸投げして作らせる。

しょうゆ漬けは思った以上に手がかかる。
とにかく熱い湯のなかでボクがほぐし始め。
あとは姫にたくし、何度も何度も洗って、みりんと生しょうゆのタレに一日漬け込むわけだ。

イクラ大好きであるばかりでなく、魚の卵はなんでも大大大好きという姫なので、ご飯も大盛り、マス子も大盛りだ。
ご飯とマス子の比率は1対1。
酒の肴としては、少々不向きなので、ボクは楽しくはない。

マス子の味わいは、魚卵通の姫にいわせると、そんなにサケの子と変わらないらしい。
ボクはやっぱりサケの方が好きだけど、確かにそんなに大きな違いは、ないよなー。

マス子のしょうゆ漬けの作り方
1 筋子は500グラム以上用意する。多い方が作りやすい。
2 煮切りみりんを用意する。みりんを鍋に入れて煮立たせて、アルコールをとばす。生しょうゆにみりんを加えて、味加減をする。かなりしょうゆの比率が高い。味付けは好みで。
3 大きなボウルを用意して、手が付けられないくらいのお湯をはる。ここに筋子を入れ、ほぐす。

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4 だいたいほぐれてきたら、お湯を捨て、水を替えながら卵膜、脂肪分、壊れた卵殻(卵のから)を洗い流す。
コツ/よくよく水洗いして、マス子の臭みや汚れを洗い流す。よく洗うべし。
5 ペーパータオルなどにとって水分を切る。なんどもペーパータオルを取り替え、冷蔵庫で冷やす。

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6 タレと合わせて一昼夜くらい寝かせる。

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コツ/味が濃いと、マス子てんこもりご飯にはできない。味加減は大切なのだ。

八王子の市場に関しては
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イサキを三枚に下ろして、皮を引く。
驚いたことに、イサキとは思えない、白い上身が突然のごとく目の前に現れた。
活け締めしたものなので、どこかしら透明感が感じられる、がそれ以上に白い。
見た目であっても白いイサキの刺身なんて、めったにあるものではない。
このイサキの産地は鳥取県境港『小林冷蔵』からだった。
ということは鳥取県であがったもの? ではないと思う。

何度も境港に足を運んでいると、なんとなくこの「境港産」の真の産地が見えてくる。
たぶん絶対ではないけど島根半島だろう。
地図を見るとすぐにわかってもらえることがあって、境港は文字で見るがごとく、鳥取県と島根県の国境にある。
数百メートルの狭い境水道を渡ると、そこは松江市、島根半島なのだ。
島根半島の東部の港にあがった魚はほとんどが境港に行くのだ。
しかも境港の市場自体、JF島根が半分以上を占めているのだから、「境港産=鳥取県産」ではないのだよ、と声を大にしていいたいところだ。

さて、島根半島でとれるイサキやマアジ、マダイは絶品である。
境水道から西にかけて大量のシラス(カタクチイワシの稚魚)が湧き、エサが豊富であるためだろう。
このあたりで揚がる魚の脂ののりはすごい。
島根半島ブランドを確率できたら、素晴らしいだろう。
よそ者がついつい、そんなことを考えずにはいられないほど見事な魚たちだ。

さて、食べてみなければはじまらない。
その一片をとり、醤油に浸すと、ぱーっと脂の玉が浮かんでくる。
明らかに醤油をはじいて、口に入れた刺身が甘いのだ。
脂からくるまったりした甘さだけど、ちゃんとイサキらしい微かな酸味を出している。
コイツは今年最高のイサキだ。
間違いなく、ここ数年でも最高のものだろう。

口の中で美味に暴れるイサキに、遠く島根半島を思い。
また行きたいものだ、なんて強く考えてしまうのだ。

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魚貝類料理は単純な方がいい、というのが最近感じていることだ。
すり身にしたり、手のこんだソースを用意したり、どうにも無駄に思えてならない。
特に白身で身の味わいに力強さがあるハタ類の料理に複雑な方程式はいらない、足し算でやろう。

白身で上品すぎるくらい上品な味わい。
そこの油を足し、ニンニクの香りを足す。
ようするに小振りのシロブチハタ半身を、オリーブオイルで焼いただけ。
できるだけ香ばしく、じっくり時間をかけて焼き上げる。

出来上がったら、手づかみで、片手にビールでむさぼるように食う。
このまま食べてもいいし、市販のタルタルソースで食べてもいい。
香ばしいなか、シロブチハタの旨味のある白身の味が、口中幸せ感で満たしてくれるはずだ。
ハタ類などを食らうたびに、旨い魚は足し算くらいの料理でいいと、改めて思う。

シロブチハタのオリーブオイル焼きの作り方
1 三枚に下ろした半身に塩こしょう。
2 しばらくおき、出てきた水分を丁寧にふきとる。
3 フライパンにたっぷりのニンニク、オリーブオイルを入れて、火をつける。
4 ニンニクの香りが立ち上がってきたら、魚を皮を下にしていれる。
5 後はじっくり、香ばしく焼き上げる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、シロブチハタへ
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シロブチハタのページを作成
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オキメダイのページを作成
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メガネカスベのページを作成
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掲載種 2014


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『海鮮市場 魚かつ』、古川佐幸さんが、我が土曜会に遊びにきてくれた。
会場で見事な魚さばきを見せていただき、また山口の魚の話もうかがった。
もっと時間があったらよかったのだけど、ネットのページを見て、なんとも魅力的なのに驚く。
山口県宇部市と聞くだけで魚の絵柄が浮かんでくるのは小数派なのだけど、ここは知る人ぞ知るといった魚の宝庫なのだ。
まだまだ間に合うだろう山口県のハモ、ブトエビ(サルエビ)、マダコ。
私ぼうずコンニャクも一度宅配をお願いしたいな。

海鮮市場 魚かつ
http://www.rakuten.co.jp/uokatsu/


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起きたら7時を超えていた。
ダウンしたのが3時半だから、朝寝坊というわけではないが、最近体力の衰えを感じる。
姫も起こして、8時前に市場に向かう。
土曜日はいつも市場から一日が始まるのだ。
発車しようとしたら、ケータイがなる。
なんと海老名の海老さんだ。
ケータイを買うなんて、海老さんあんたは、偉い!

朝ご飯は中華『さくら』で。
すでに海老さんが到着していて、前にあるのはマンゴスチン。
ボクは、カレー、姫は中華そば。
本日は、つけめんにするつもりが、うますぎる市場人限定カレーの誘惑に負けてしまう。
このカレーのうまいこと。

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「まささん、つけめんも食べたい」と言いたいところを我慢する。
マンゴスチン1個で朝ご飯になる海老さんがうらやましいような、なぜ、マンゴスチンなのか? 疑問でもあるな、などとあれこれ考えて、無駄思案はしないほうがよさそうだと思う。

総市には厚岸の刺し網サンマがいっぱい。
イワシにカツオに、マアジがあって、すでに人だかりができている。
ほどなく『高野水産』が到着。
イチロウさん一家もやってきて魚を見て回る。
本日いちばんは『マルコウ』の活けマコガレイ。
これは海老さんがお買い上げ。
『高野水産』には境港産のイサキ。
ちゃんと締めてあって、これがなんとも素晴らしいもの。
迷わずに1尾。
そのうち、ネズミフグさんがきて、土屋食品でところてん、恒川で、温室育ちの高いナシを買った。

コリアンフーズで石焼ビビンバを食べて、コーヒーを1ぱい。
『高野水産』で活けイカ(スルメイカ)1ぱい買い足して、市場を後にする。
イチロウさんが1袋2千円の新子を買っていたのだけど、今日は大変だろうな。

八王子大和田の農協で野菜、近所の酒屋で澤乃井、ビールにアイスクリームを買って帰宅。

以後一歩も外に出ていない。
久しぶりにラジオを聞いて、1時間ほどお昼寝していると、皆既日食の話が出ていた。
まったく興味のないままに「そんなこともあったなー」なんて思い。
ラジオを消すと、昼日中なのにニーニーゼミが鳴いている。
朝方のヒグラシとともに夏なんだなと思う。
夕方までとにかく食材図鑑、メモの整理。

家族は花火を見に外出。
一人っきりの夕食は境港産イサキの刺身、活けイカの刺身、自家製塩漬けカラフトマス、カツオの皮の唐揚げ。
第三のビール、澤乃井大辛口。
境港産のイサキは今年一番と言えそうなもの。
たぶん美保関あたりで揚がったものだろうから、島根県産だろう。
久しぶりにイサキで感動する。

食後、深夜零時まで画像の整理、『水産統計』を読み、うとうととしていつの間にかダウン。
たまにはこのような楽な土曜日があってもいいだろう。

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北海道への旅 05

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7月10日、午前6時過ぎ、タクシーで土砂降りの室蘭魚市場に到着した。
守衛さんに止められて、入館バッヂ渡される。
近年こんな厳格な市場も珍しい。
市場までは距離にして100メートルほどを走ろうか? ずぶぬれになる、と思っていたらタクシー運転手さんが「乗って行きなさい」とドアを開けてくれた。
北海道なのにTシャツ一枚で寒くない。
暴風雨である。

市場に入ると宮森水産の伊藤さんが出迎てくれる。
この天候では魚の入荷はダメかなと思ったら、豈図らんやずらりと魚が並んでいる。
「今日はこの天候なので、少ないんですけど、明日はもっとないと思います。今日でよかった」
伊藤さんがすまなさそうに話す。
「ここが室蘭の浜となんです。水揚げする場所なんですよ」

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競りに参加する伊藤さん

ここでたっぷりの魚を見て、たっぷりウニ(キタムラサキウニとエゾバフンウニ)を食べさせてもらった。
このウニのなんといううまさ。

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これは“がぜ”、エゾバフンウニ。この生きている殻つきのウニの味。名状しがたい

小樽、札幌で食べたウニはなんだったのか?
室蘭魚市場で見たの真カスベ(メガネカスベ)、オヒョウ、カジカ類、マスノスケ、などいろんな課題がここに見いだせる。
魚貝類を研究していると、心躍るときなのだ。
そういえば、普通の旅行とはどんなものなんだろう。
生まれてから、それほど観光旅行というのをやったことがない。
旅は常に自分に課題を残すことはあっても、行楽ではない。

市場飯は、伊藤さんに市場飯をごちそうしていただく。
ごちそうになった『いこい食堂』のご飯はまことにうまかった。
伊藤さん、ならびに宮森水産さんには感謝のしようがない。

その後、『日の出町共同売り場』、『丸三市場』を見て回る。
『日の出町共同売り場』では北海道産サクランボ、ニシン漬けなどを買い求める。

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八百屋さんでイチゴを買いたいと言ったら、とても東京までは送れない、と断られる。
この2つの民間市場、とても楽しい、心温まる市場だ。
また来たいものだと、切に思う。

いっとき雨あしが途切れる、鷲別駅を目差す。
歩くうちに雨あしは強く、風が横殴りに吹いてくる。
鷲別駅にたどり着くとへとへとになる。
暴風雨のなかほんの十数分歩く、この大変さはだれもわかないだろうな。

鷲別駅から登別温泉駅まで、そして虎杖浜駅に向かう。
登別温泉駅には不安そうな観光客が駅員と話している。
函館本線、森駅近くで線路が冠水。
特急などが運休しているという。

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今年は市場にたっぷりサンマの入荷をみる。
関東の市場で見ると、サンマに、姿形がよく値の張るものと、首の周りが傷ついて値段の手頃なものの二種類があることがわかってくる。
方や棒受け網という光に近づいてきたサンマを、すくい取る漁法でとったもの。
これを棒受けサンマとでもしておこう。
方や目のやや大きな網を海に流して、気づかずに突き刺さってきたサンマをからめとるような漁法、刺し網でとったもの。
こちらが刺し網サンマなんだろうな。
棒受けサンマは魚体が傷つかないので見た目がきれいだ。
刺し網は首周りが見るも無惨。
この姿形から刺し網サンマは棒受けの三分の一で買える。

同じ日にやってきた厚岸の刺し網サンマと、釧路の棒受けサンマを『市場寿司 たか』で下ろしてみる。
これが脂ののりも鮮度のほうもほとんど変わらない。
「ウチなんて薄利だから迷わず刺し網もんだな」
本日の『市場寿司 たか』でだすサンマも刺し網ものなのである。

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さて、帰宅して塩焼きにしたら、脂ののり、味、香り、そしてその神髄ともいえそうなワタともにずば抜けたうまさなのである。

棒受けものの腹にはウロコがいっぱい詰まっている。
これでは肝心要のワタが味わえない。
対するに刺し網のワタにはウロコ一つ入っていない。
ワタの複雑な苦みをともなった味わいのなんと喜ばしいことか。
この苦みのあるサンマのワタで冷や酒3杯はいけそうだ。
すなわちサンマの身はおかずだが、ワタは佳肴なのである。
おかずでもあり佳肴でもある、ここに刺し網サンマの真の価値があるのだ。

これで澤乃井大辛口。
手元不如意なので、コストパフォーマンスで買い求めた良酒だ。
サンマに冷や酒がうまい夏の宵なのだ。

さて、刺し網サンマと棒受けサンマ。
刺し網サンマが出回るのも7月中なんじゃないだろうか、大型棒受け網船に代わるまで、どっちを買うべきか、わかるかなー?

サンマの塩焼きの作り方
1 軽く水洗いして、残っているウロコなどを取り去る。水気をよくよく拭き取る。
2 肛門の後ろから背に向かって斜めに包丁を入れて2等分する。決して切れ目などは入れない。これは不要と思われたい。

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3 振り塩をして半時間以上おく。ここまでの行程を終えると、保存がきく。
4 中火の遠火で焼く。脂が落ちて燃え上がったら素早くサンマを火から離しながら焼く。

 一般家庭ではあまりきれいに焼き上がらないけど、見た目とは裏腹に、最高の塩焼きとなる。

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最近釣りに行けなくて悲しい。
本当に丸一日を釣りに費やしてみたい。
大艢(とも 船の一番後ろ)に釣り座を構え、グワンググワラングワランとスローに落としたエンジン音を聞きながら、汗びっしょりとなってイサキを釣る。
最近では外房がとても遠くなってしまった。
今年のイサキ釣りのシーズンもあとわずかだ。

さて本題、イサキは夏の魚だなんて、そんなに単純であるはずはなく、むしろ「夏になったら食べたい魚」なんだと思うな。
夏が旬のイサキなんだから、単純明快だと思われるかも知れない。
でもボクはあくまでもリアリズムを追求している。
だから真冬の外房辺りのイサキと、夏のイサキを比べると、旬がわからなくなる。
うまいだけで考えると、冬が旬となりかねない。

まあまあ、話を複雑にしてもはじまらない。
手頃な塩焼きサイズのイサキを買い求めてくる。
魚屋(仲卸)のまな板でウロコと、ワタとを取り去り、切れ目を入れて紙に包んで持って買える。
遅い外出なので、お昼ご飯のおかずがこれなのだ、ちょっと贅沢だねー、我ながら。
持ち帰って振り塩をして、メールの返信、その他諸々。
1時間ほどおいて、強火の遠火で焼き上げる。

ボクの好みは表は焼きすぎるほどに焼き、裏側はしっとりと水分を残して焼く。
ちなみに本当に好きなのは、香ばしく焼いたもの。
しっとりした焼き方よりも香ばしさを好む。
このあたり変に通ぶらず、自分の好みに忠実にいこう。

塩焼きで食べる、このご飯がうまいんだなー。
特にイサキの皮目の風味と、絹を思わせるような繊維質な身。
この身がほどけるほどに、口の中で旨味を放出するのだ。
これがご飯の糖質と一緒になったらたまらんなー。
一尾で茶碗三杯は軽くいける。
せっかく見えてきた、80キロ台だけれど、イサキ一尾で遠のいてしまうのだ。

イサキの塩焼きの作り方
1 水洗いをする。水洗いとはウロコをとり、内蔵を抜き。汚れなどを洗い流すことをいう。
2 体に切れ目を入れて振り塩。
3 半時間以上寝かせる。これが塩焼きのコツなのだ。
4 化粧塩(鰭に塩を厚くつける)して鰭がこげて落ちないようにする。また化粧
塩も飾りではない。塩分の少ないときなど鰭についた塩で補う。
5 強火の遠火で焼く。我が家では市販の魚焼き器にレンガをおき、金串を打って焼く。

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北海道への旅 04

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函館本線は今回の旅に限ってだろうか、乗るたびに混んでいる。
札幌→東室蘭まで1時間20分、室蘭までは乗り換えて20分ほど。
宿を室蘭にとったのは、親戚から賑やかだという町の様子と、市場があるという情報を聞いていたため。
そして町にあるという市場だが、地図やネットで見た限りでは『室蘭中央市場』というのが現在では一軒あるのみらしい。

駅構内に高校生らしきが一人、老人が一人。
こぢんまりした駅をおりて、歩くこと数分で市場にたどり着く。
残念ながら魚屋、肉屋、八百屋、乾物屋などが数件並ぶだけの小さな市場だった。
小さいけど暖かい雰囲気。

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1軒だけある清水鮮魚店でイカの刺身を買って、市場の隅っこで食べる。
それを見ていた、文房具屋さんらしき店の女性がワンカップを恵んでくれた。
甘い月桂冠ワンカップに鮮度抜群のイカ刺し、なんだか旅情を感じるのだ。

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清水鮮魚店には伊達(噴火湾を臨む町)産のマアナゴ。
たぶん、噴火湾から室蘭あたりがマアナゴの漁業的な北限なのだと思われる。

けだし工業都市であるはずの室蘭の町は、さびれていた。
まちのあちらこちらに、にぎやかだった痕跡が残っている。

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飲食街があり、文房具店に家具屋、商店街の店はどれも造りだけは立派なのだ。
町の交差点近くに大きな時計店があって、店内に店主らしき人が立つ。
夕暮れ時、ここだけが明るい。

その夜は室蘭焼き鳥。
鶏肉ではなく豚肉が主役で、たれがさっぱりしているのが特徴なんだという。
鶏の唐揚げが「ザンギ」。
「ザンギってなんですか?」
「なんでしょうね。唐揚げのことかな」

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品書きに「たこザンギ」というのを見つけて食べてみる。
軽く酒を飲み、夜の室蘭をそぞろ歩きするが、なんにもない。
坂道をのぼり、下り、そのまま『オーシャンホテル』という名の安い宿に帰る。
すっかり夜となったどこからか甘い香りが漂ってくる。
見上げると街路樹に白い花。

海辺の小さなホテル、多すぎるメモの整理をして、ダウン。
時計はまだ10時にもなっていない。

翌日は土砂降りの雨の音で目覚める。
午前4時過ぎ。
致し方なくタクシーを呼び、鷲別へ向かう。

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白ミルは焼くのだ

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漁師だという人から匿名のメールをいただいた。
我がサイトは原則としてメールは受け付けない(原則的に掲示板)のだけど、内容が面白かった。
なぜ匿名なのか、もしくは名前を書き忘れただけなのか、本人にお聞きしたいな。
メールの内容は「白ミルはゆでるんじゃなくて焼いた方がええよ」というもの。

[白ミル(ナミガイ)]は、まず貝を外し、ワタを取り、原則的に水管のみ湯引きして、冷水に落として、皮をむいて刺身とする。
この湯引きする、というのをやめて焼いてみろ、という意味合いだろうか。

[白ミル(ナミガイ オオノガイ目キヌマトイガイ科)]は[ミルクイ(ミルクイ マルスダレガイ目バカガイ科)]の代用品と見なされている。
これは身(足、水管)に含まれる旨味成分の少なさが原因とされて、一段下手のものと見なされているわけだ。
ゆでると、少ない旨味成分をわずかだが失うのではないか? だから焼いた方がいいといっているように思える。

ここで[白ミル(ナミガイ)]を焼くとは、本当に塩焼きにするという意味かもしれない。
もしくは我が家でときどき作る[白ミル(ナミガイ)]の干物だって、焼くことでは変わらない。
「おおい、漁師さんで匿名さん、もっと詳しく説明してくれ」

とりあえず貝殻から外した水管とその周辺部を、直火であぶる。
急速に炎のなかで熱を通して、冷水にとり皮をむく。
水分をよくよく拭き取って、さて刺身に造る。

味はよくなったのか、久しぶりに本わさびをすって、うやうやしく食べていると、確かに確かに旨味・甘みが強く感じられる。
しかも食感すらもよくなっているのだ。
冷やした一ノ蔵特別純米がうまい。
これからはゆでるのではなく、焼くのだな、得心する。

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ニジマスの塩焼きを家庭で作っていいものだろうか?
いいに決まっている。
でも抵抗がある人が多いのでは?
ボクなどもその一人で、ニジマスにはアウトドアのイメージがつきまとう。
だいたい多摩地区でも八王子辺りには何カ所かのマス釣り場があり、このマスがニジマスなのだよな。

マス釣り場に行くとする。
河原に集合すると、養魚場(マス釣り場)のお兄さんが、「今日は多めに放しときます」なんていいながらバケツに入ったニジマスを釣り場にざばーっとやる。
こいつをイクラエサで釣ると、それこそイクラでも釣れそうだから恐い。
でも放流した分をあらかた釣ってしまうと、ぱたっと釣れなくなるから、釣れない話だね。

ちょうどそこに先ほどのお兄さんがやってきて、バーベキューの用意。
ニジマスの塩焼き、豚肉、牛肉、ウインナーに野菜、なんでもとりあえず焼き、焼きするのである。
このシチュエーションで食べるニジマスが、なかなかうまい。
帰宅するとき、コンビニに立ち寄って、「ますのすし」だけは買わないでほしいものだ。
それこそ昼も夜もニジマスを食うことになる。
世の中、こんなことでいいんだろうか?

そうだ、マスと言えばこの国の人半数以上がニジマスのことだと思うに違いない。
1877年にアメリカから持ってきて各地に移植されている。
ちなみにこの年、西南戦争が勃発、やっと明治も10年目のときである。
ニジマスがもたらされるまで、実をいうとマスとは、サクラマスとかカラフトマスとか、ベニマス(現在ではベニザケ)など標準和名のサケ以外の魚のことだった。
それが、「川にいるのがマスで、海に下るのがサケだとか」言語的な混乱が起こったわけだ。
また、多くの人がニジマスが海に下ることもあるという事実を知らないというのもマスをめぐる混乱の原因だね。
海に下るタイプがスチールヘッドで、陸風型がニジマス(レインボートラウト)と呼び変わるけど同じ魚なのだよ。

今ではニジマスといったら塩焼きでしょ、というくらいに万人におなじみとなっている。
そのためだろう、内水で養殖しても1メートルくらいになるのに、ニジマスの基本的出荷サイズは20センチほどなのだ。

さて、その小振りのニジマスを3本ほど買い込んでくる。
夕方となって、振り塩をして、小一時間ほどおき、鰭に化粧塩して焼き始める。
我が家では強火の遠火で、じわっと焼く。
焼いたら、お好みのスタイルで食べる。

マヨネーズもよし、柑橘類もよし、そのままむしゃぶりつくもよし。
国内で食べるニジマスもまんざら捨てたもんじゃない。
やっぱり片手にはビールでしょうな。

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7月21日の日記風

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目覚めた時間がなんと6時過ぎ。
昨日は10時過ぎにダウン、目が覚めると文庫本を読み、目が覚めると『聞き書 日本の食事 北海道』を読むなどしていたら、眠ったような、眠っていないような。
疲れているわけでもないのになー。

朝ご飯はボクと太郎のみ。
養殖ギンザケの塩鮭(おかしな表現だ)、オクラ(ベニー)、トウモロコシ、納豆、ワカメのみそ汁、ご飯。

8時過ぎに市場に向かう。
曇り空、フロントグラスに水滴が時々落ちてくる。
16号バイパスが渋滞中、これは夏休みのせいだろうか?

市場に魚なし。
サンマの山があるのみ。
厚岸産で脂ののり、大きさからしてものすごく安いサンマがあってよく見ると、必ず首のところに傷がある。
これなんだろう?
立川の居酒屋『太鼓』のオヤジと首をひねる。

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結局市場では何も買わずに、9時過ぎに帰ってくる。

午前11時まで食材図鑑の原稿、ブログ(画像整理)、メモの整理。
メモはすぐにたまってしまう。

お昼前に都心へ。
カバンには北海道関連の本数冊。「水カスベと真カスベの正体」を再検討。
「真カスベ=メガネカスベ」はいいとして、「水カスベ=ドブカスベ」が曖昧だ。
衆議院解散のニュースを中央線のモニターで知る。
ついでに北山薫の直木賞受賞に“まだとってなかったの?”という意味で驚く。
九段下に出ると雨、傘を持っていないので俎板橋まで逃げる。
4時までよしなしごと。

早く終わったので荻窪へ。
大好きなタウンセブンに立ち寄る。

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ここは戦後闇市をビルにおさめたもので、都内に残る数少ない市場のひとつ。
闇市起源の市場も調べると面白いだろうな、と思ってはいるが、実行に移せないでいる。
ここには優秀な魚屋が数件にうまい佃煮屋、肉屋、八百屋、総菜屋、みな魅力的だ。
うまい佃煮屋『籾山商店』でお茶漬け昆布、小女子、大正金時の煮豆。
大正金時くらい自分で煮ろよ、と我を叱る。
朝、魚を買わなかったので『東信水産』でしめ鯖とカツオのたたき。
ああ、そうだ荻窪に来るたびに井伏鱒二の「荻窪風土記」を読まなくてはと思う。
西友でワンカップ。
吉祥寺へ出て一仕事。
お刺身を初めての会社の冷蔵庫に預かってもらう。
我ながらずうずうしいヤツ。

帰宅は9時。
刺身とワンカップ、ホッケの素干しで遅い夕食。
食後、チカメキントキとサーモントラウト改訂の準備だけする。
そのまま『オホーツクの魚』(辻敏 オホーツク書房)を読みながら寝てしまう。
このところ眠くて眠くて仕方がない。危険だな!

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 函館本線室蘭鷲別の駅近くには室蘭魚市場、青果市場があり、その周りに一般人でも利用できる2つの市場がある。
 まことに素朴で、観光化されていないところで、市場好きには堪えられないところだ。

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日の出町共同売場は観光地化されてなくて、素朴で、しかも暖かい

 そのひとつ日の出町共同売場内『味丸 氏家食品』で見つけたのが「鰊漬」だ。
 ニシンの漬け物というと、会津若松などでつくられるニシンの酢漬けなんかが思い浮かぶが、北海道のものはより漬け物らしくて、主役は身欠きニシンではなく、野菜となる。

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 主役がキャベツというのがいい。明治になって北海道の開拓が始まったとき、いち早く西洋野菜の栽培が行われた。
 ジャガイモ、ニンジンにキャベツ。
 だからキャベツはまことに北海道らしい野菜に思える。
 大根とニンジンと切り昆布がきて、もどした身欠きニシンが切り込んである。
 白く点々と見えるのが麹。
 すなわち北海道のニシン漬けとは、身欠きニシンと野菜の麹漬けなのだ。

 麹からの甘みとキャベツの甘み、ほんのり昆布の旨味があって、そこに身欠きニシンの旨味と微かな渋みが加わっている。
 どこかまったりして円やかな、のどかな味わいがする。
 旨口のぬる燗の日本酒にもってこいの味ではないか。

 蛇足になるが、ニシン漬けはばくばく食べられる。
 まるでサラダを食べているようだ。

日の出町共同売場 北海道室蘭市日の出町2丁目
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休日を振り返る

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 土曜日は午前3時過ぎに起きる。
 ベッドで文庫本を読みふける。
 これは最悪の状態だ。
 佐藤雅美、国田独歩、鈴木晋一、鈴木理生、読み散らかす。
 5時から図鑑改訂、軟骨魚類を新形式に改めはじめる。
 ツノザメ・エイ上目、ネズミザメ上目の分類詳細を読んだだけで、すでに7時。
 アカエイ改訂の準備だけ終えておく。
 7時過ぎに八王子総合卸売りセンターへ、ちなみに隣は組合。
 『さくら』でレバニラ炒め、うまいし、元気が出てくる。
 そのうち、イチロウさん、takさん、ねずみふぐさん、ムスシャモさんが来る、9時過ぎには真菌さん。
 総市でニジマス、高野水産でナミガイ(白ミル)とタカベにマサバを購入する。
 カワベで牛肉、豚肩ロース、鶏腿肉。
 午前11まで姫の買い物につきあう。
 正午から食材図鑑の原稿を書く。画像の整理、メモの整理(ブログの更新と同義語)。
 4時からニジマスの撮影。
 午後7時まで食材図鑑の原稿。
 カワヤツメ、アカエイなど大物を改訂する。
 無顎類の取り扱いをどうするか? は最近の懸案のひとつ。まだ体系化できないでいる。息苦しいな。
 夕食は宮城県産トラウトサーモンのマリネ、タカベの塩焼き、サバのみそ煮、中華サラダ、焼き鳥、ポトフ、小樽で買い求めたホッケの素干し、ウミゾウメン、ヒジキの煮物。
 午後10時にダウン。

 日曜日は午前4時まで眠りこける。午前7時まで読書。
 午前9時までカツオの改訂。
 朝ご飯は納豆、高知県高知市土佐の廣丸・永野廣さんにいただいたマアジの干物、サンマの塩麹漬け焼き、ベーコンエッグ、わかめのみそ汁、ご飯。
 午前中は『つり丸』の原稿を書く。画像の整理、メモの整理、ブログの更新。
 『つり丸』は今回から新しい試みをする。
 正午過ぎに、うどん。所謂大阪での「きざみうどん」。
 午後からまた図鑑の改訂。
 カツオの改訂、非常に難航する。
 もう一度やり直ししなければ。
 3時から食材図鑑、6時半に終了。
 夕食はニジマスの塩焼き、野菜炒め、ナスとシイタケの煮浸し、昨日のサバのみそ煮、サーベル(インゲン)の酢みそ和え、ニシン漬け、トラウトサーモンのムニエル、ウミゾウメンの酢の物。
 9時までぼんやりしてしまう。
 11時にダウン。

 翌20日は2時半に起きる。
 『つり丸』原稿の校正を終わる。メールで送信。
 午前8時までもう一度カツオの改訂。非常に難航して、膨大な時間を要す。しかもまだ改訂が必要。
 自分の文献読みの能力の低さに身悶えする。苦しいな。
 午前8時に八王子大和田の農協に、スイカ、ニンジン、オクラ、伏見甘長唐辛子、九条ネギの間引き、小振りのトマトを買う。
 9時に帰宅して、姫と朝ご飯。
 サーモントラウトの塩鮭、ヒメジの煮干しの炒りもの、ヒジキの炒り煮、冷凍サバ(国産マサバ)のリエットでサラダ菜とニンジン・オクラのサラダ、納豆、ワカメのみそ汁、ご飯。
 正午まで改訂、画像の整理、メモの整理、食材図鑑の原稿書き。
 お昼は茶漬けを明太子で立ったままかき込む。
 午後からカツオの改訂。ぜんぜんうまくいかない。表現したいことが表現できない。ボクに欠陥があるようだ。
 島根県への報告書を縮めて縮めて書く。
 午後4時気持ち悪くなり、少し『白樺たちの大正』(関川夏央 文春文庫)を読む。
 午後6時過ぎに、北海道の旅の画像整理を終わる。8ギガバイト撮影して、画像整理に一週間要す。収穫非常に多し。
 7時に太郎と、ギターをひきながら夕食。
 ギターをひくと癒される。

 この3日間、気象も知らず、事件も新聞すらも読んでいない。
 テレビもまともに見ていないのだから、世間から隔絶している。
 本日夕方アブラゼミの鳴き声を今年初めて聞く。

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北海道への旅 03

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 札幌に着いたのが午後3時。まだ昼日中だけど、本日は3時起きなので、少々疲れてしまっている。
 シャワーを浴びてぼんやりしていたら、千歳空港に来てくれるはずだった御仁からケータイ。今更どうしようもないので、今回の旅の目的についていろいろ聞き取りをする。
 6時に島根県職員の方、漁業者の方と合流。
 夕食は、すすきのの『だるま支店』でジンギスカン。『だるま本店』には大学時代に何度か来ているのだけど、まったく記憶にない。ジンギスカン鍋を炭火にかけてのジンギスカンはうまかった。

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 店を出ると札幌の歓楽街。ボクはこの雰囲気があまり好きではないのだ。

 翌、10日は札幌中央市場を視察。やっぱり北海道ならではのものが多いなー、と圧倒される。特にヒメマス(チップ)、カスベ類、目抜け類にマスノスケ、時知(サケ)。
 今回の目的は陸送・空輸便を見ることだったが思った以上に多い。当たり前だがロシアからの輸入ものも多く、発見発見で興奮する。
 その後、丸水、曲〆で会議。
 会議終了後、曲〆の春原さんにマルカセンターまで案内していただく。マルカセンターはなかなか優れていて、これなら魚好きだって楽しいだろう、と思った反面、その後の場外市場がダメだった。各店舗にはとても立ち入る勇気がわかないのであった。

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マルカセンターはなかなか安心価格でいいものが多かった

 そういえば札幌に地下鉄が走っていることも知らなかった。これも忘れずに書いておかなくちゃだめだな。図形的に+の形で2路線あって、3度乗車して3度ともなかなか混んでいたのだ。
 駅地下、大丸などの売り場を見て歩き、午後2時過ぎに札幌を後にする。

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 夏の塩焼きといったらタカベしか、ないでしょ。
 イサキじゃないのと言った方、間違いじゃないけど、ちょっと違う。
 イサキは市場でも年中見られて、冬にだって、それなりにうまい。
 心底夏らしいと思える魚とは言えそうにない。
 そこへいくと、タカベのなんと夏らしいこと。
 7月ともなるとギンギンギラギラ、脂がギンギンなのだ。
 体色だって、夏らしく派手、キラキラしている。
 このキラキラした、すーっとオレンジ色の筋の通ったところに、ピシャーと振り塩して、炎があがらないようにこんがり焼く。

 この野性味を感じる、ちょっとクセのある塩焼きの味わいが、もうたまらん。
 そういえば多摩地区では、あまりにうまいとき、「たまらん、たまらん、たまらんざか(坂)」と言うのだ。
 たまらん坂は国分寺から国立に抜ける長い長い坂道なんだけど、買い物で通るたびに、「どうして、たまらんのだろう」と思ったものだ。

 うまいので、最後は手でむしり取って、食うようになる。
 夏と言ったら、やはりタカベの塩焼きだろうね。
 お値段からして、毎日とはいきませんが。

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北海道への旅 02

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 道路を隔てて見つかったのが中央市場、これがなかなか普段着の市場でよかった。
 ここでおいしいと評判の食堂「なると本店」というのを教えてもらって、ついでに「あったかいみそ汁と、鶏を食べなさい」と言われたので、そのごとく素直に鶏の唐揚げを食べる。
 中央市場から坂道を上って、妙見市場に。
 ここがまるで1960年代に後戻りしたかのようだった。

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 正午を過ぎて雨が強くなって、仕方なく(ずぶぬれになりそうだったので)タクシーで、なんたるいちばへ。ここがいちばん活気があった。
 ここで、おすしを食べる。

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 三角市場のあまりの観光化されていたのに、一時はそどうなるか、と思われたが、中央市場、妙見市場、なんたるいちばと巡り、小樽までやってきてよかったと思った。
 雨が上がったので市場から南小樽駅まで歩いて、札幌へ。

2009年7月8日
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 土曜日の八王子総合卸売りセンター『高野水産』に見事なマサバが入荷。
 キロ800円は安いし、どんどんプロたちの手が伸びて、なくなりそうなのでつられて1尾買う。
 パーチもふたもなくなってしまって、産地不明だ。

 持ち帰ったマサバはしめ鯖にするか、みそ煮にするかで少々思案。
 姫の「生はやめようよ」というのでみそ煮となる。
 ここでどうして「塩焼きというのが出てこないんだ」と思った人はちょっと偉い。
 塩焼きは脂がのっている方がうまい。この時期だと、脂はそこそこあるものの、塩焼きで真っ向勝負は難しい。だから塩焼きという線を捨てたわけだ。
 ちなみに水分を使う料理は、脂の少なさを補ってくれる、というのも覚えておいてほしいものだ。

 さて、みそ煮のためにマサバは筒切りに、さっと熱湯をくぐらせて、冷水にとり、水分をよくよくとっておく。
 後は白みそ、赤みそ(三河みそ、桜みそなど)とことことと煮込んでいく。
 汁がクリーム状になったら出来上がりなのだ。

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 みそ煮は肴でよし、おかずでよし。
 だが、やっぱりご飯と一緒がいちばんだから、おかずでよしよしって感じだな。
 7月中旬のマサバは抱卵していることから、たぶん東北あたりから来たものだろう。
 思ったよりも脂がのっており、身がしっとりしている。
 このサバの身にクリーム状のみそをからめながら食べるのだけど、至福の味とはこのようなものなんだろう。
 サバのみそ煮に関しては、この至福だと思う味わいが秋に向かって毎回更新して、より強くうまいなと思えるようになる。

サバのみそ煮の作り方
1 マサバの細かい鱗を取り、頭を切り落とす。ここから内蔵を出す。

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サバには細かい鱗があるので丁寧に取る。最近札幌中央卸売市場でかったステンレスブラシが非常に便利なので使っている。

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サバは胸鰭の前あたりから切る。

2 きれいに洗って、背びれを取り、筒状に切る。

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背鰭は取っておく方が食べやすい

3 熱湯をくぐらせ、冷水にとり、汚れや残った鱗などを取り去る。よく水気を切っておく。

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この状態で熱湯にくぐらせる

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冷水にとり、鱗や汚れを取ったもの

4 鍋にショウガ、サバ、白みそ、赤みそ、酒たっぷり、砂糖を合わせて火にかける。(決してみりんは使わない。みりんは煮崩れしそうな材料のときに使い、柔らかく仕上げたいときには酒を使う)
5 ホイルの落としぶたをして、後はコトコト時間をかけて煮るだけ。汁が少しとろっとなったら出来上がり。煮詰めすぎないのかコツなのだ。

マサバ
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 毎日のようにコノシロを食べている。
 体長30センチくらいの立派なコノシロが1尾、百円以下で買える。
 近所の魚屋オヤジなんて「もうただでくれてやる」なんてうれしいことを言ってくれる。あんたは偉い!
 どうやら産卵期に群れを作ったコノシロが五万と定置網なんかに入ってきて、「売れないけど、海洋投棄するのももったいない」てなことで出荷されてくるようだ。
 このコノシロの氾濫を喜んでいるのはボクだけじゃないよな。

 産卵期のコノシロだから卵を抱えているのも多く、これが知る人ぞ知る珍味。
 卵巣だけ集めて、煮付けにして食いたいものだが、本体だって捨てたもんじゃない。
 問題は骨の多さだろう。

 コノシロは煮ても焼いてもうまい。
 この場合にも、細かく骨切りしてから煮たり焼いたりする。
 でもこの猛暑のなか、もっとさっぱりしたものが食いたいなー、ということで刺身と酢の物で晩酌の友とする。
 酢の物にしたのはコノシロ以前のナカズミクラス(20センチほど)。
 これを背ごしにして、塩をして甘酢につけ込む。
 刺身はそれこそ30センチ以上ありそうなコノシロクラスのコノシロ。
 魚屋(仲卸)で三枚に下ろして持ち帰り、食べる直前に1ミリ以下に切り、氷水でシャラシャラと洗う。
 これを韓国風酢みそで食べるのだ。

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 背ごしの酢の物は微かに骨が当たるのだけど、意外にこれが心地よい。
 ナカズミくらいになると旨味があって、そこそこ脂がのっている。
 酢の物といっても食ってまことにうまいのだ。

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 刺身は洗いにして、さっぱりした味わいになっている。
 単にショウガ醤油でもいいのだけど、あえて韓国風酢みそを作ってみた。
 暑いと辛みが欲しくなるのは、どうしてなんだろう。

 本日はウイスキーの水割りをやる。
 海老名の海老さんの真似をして、水割りを作ってペットボトルに詰め込んで、冷凍庫に放り込んだもの。
 このような野卑な、晩酌もいいもんだ。

ナカズミの酢の物の作り方
1 ナカズミを水洗い、鱗をとり、腹側を大きく切り取る。

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2 このまま1ミリ以下に刻んでいく。
3 塩を振り、30分ほど置く、これを水洗いして、水分をよく拭き取っておく。

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4 甘酢は酢(我が家では山吹)と砂糖を合わせる。ここに半日ほど漬け込んで出来上がり。

コノシロの刺身、韓国風酢みそ添えの作り方
1 水洗いして三枚に下ろす。これを一ミリ以下に刻む。

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2 氷水でしゃらしゃらと洗い、水分をよく拭き取り、ミョウガ、青じそをからめる。

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3 韓国風酢みそは、コチュジャン、酢、ごま油を合わせるだけ。好みでおろしニンニクを加えてもいい。飾りに白ごま。
 
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 室蘭生まれの伊藤裕行さん、宮森水産の女将さんから聞いたお話で、もうひとつ面白かったのがカレー。
 室蘭から苫小牧は全国有数のホッキガイ(ウバガイ)産地で、サラガイ(白貝)はその副産物に過ぎない。
 しかし副産物なのに、こんなにうまくていいんだろうか。
 本当に白貝ってやつはすごい。
 すごいついでにカレーの話。
 伊藤さん曰く、この辺りではホッキでもカレーを作る、だが断然白貝の方が上だ、という。
「白貝の方が旨味が出るというんでしょうか、カレーがまろやかな味になるんですよ。ボクらホッキだって、なんだっていいんだけど、やっぱりカレーは白貝ですね」
 作り方は肉の代わりに剥いた白貝。
 野菜と一緒に最初から炒めて、野菜が柔らかくなったら市販のカレールーをとくだけ、なんだという。
 そこで中央沿線帰り道、白貝カレーのためのルー探し。
 振り出しは日本橋三越、いろいろあるけど全部ダメ。
 新宿伊勢丹もダメ。
 三鷹駅構内クイーンズシェフもダメだな、と思っていたら。
 片隅にあったのだ、これだと思うカレーが。
 じゃじゃっっじゃーん、それはですね、グリコワンタッチカレーなのですよ。
 貝の味わいを殺すようなやりすぎスパイスが入っていない。
 味のバランスが抜群にいい。
 なによりも子供でも食べられる。
 それなら何も中央沿線途中下車しなくてもいいじゃない、と思われそうだが、あれこれ、それなりに考えての結論、その過程は苦難の連続であった。
 そういえば、最近ご当地の海産物を使ったカレーというのがあって、いろいろ工夫の跡が見える。
 でも全部失格。
 どうしてこのようなことになったかというと、カレーにこだわり過ぎているからだ。
 サザエ、カレイのカレー、ホッキガイ(ウバガイ)、どれを食べてもろくなもんじゃない。
 海産物を使ったカレーは普通でいいのだ。
 平凡だから海産物本来の味わいが生きてくる。

 それに、伊藤さんとか北海道で育った人が、子供の頃から食べていたカレーなのだから、カレールーはいたって平凡なものだったわけでしょ。
 それがうまかったという、その素直な気持ちが正しいのだよ。
 グリコワンタッチカレーとジャガイモ、ニンジン、タマネギだから、平凡すぎるくらい平凡だよな。
 非凡なのは肉ではなく白貝(サラガイ)のむき身だというだけ。

 さて作ってみたら、お、お、お、これは本当にうまい。
 とてもうまい。
 ライスカレーがこんなにうまいものだった、とは久しく思わなかったこと。
「今日のカレーは肉じゃないの」
 不満そうだった子供たちが、夢中で食べる。
 面白いことには優等生的なグリコワンタッチカレーの味に、しっかりと白貝の旨味が感じられる。
 その上、煮込んでしまったにも関わらず、白貝は柔らかいのだ。
 結論めいたことを改めて書いておくと、貝を使ったカレーのルーは平凡なものが向いている。
 平凡に徹するべし。

白貝カレーの作り方
1 白貝をむき身にする。薄い塩水で洗っておく。
2 むき身は2等分にする。
3 ジャガイモ、ニンジン、タマネギのサイコロと白貝を炒める。
4 水を加えて、ジャガイモが柔らかくなったら、ルーを溶き入れ火を消す。
注/白貝カレーのカレールーはなんでもよろしい。

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 福島県相馬市原釜『八巻水産(ヤ印)』から小型のサメガレイがたっぷり入荷してきている。
 サメガレイは大きくなる魚で70センチ、ときに90センチくらいになる。
 表側(右側)の黒く鮫肌のごつごつした手触り、裏側は薄汚れた羽二重のようで、しかも粘液をたっぷりまとっている。外見から鮮度がうかがい知れないのもあって、関東では鮮魚でくると人気がない。
「気持ち悪りーなーー」
 市場では、だれも手を出さないのだ。
 このサメガレイの値段がキロあたりたったの500円なり。
 1尾400グラム弱だから、2尾買っても400円で税込みおつりがくる。
 サメガレイは買い求めたら、よーくよーくぬめりを落として持ち帰る。
 その外見の悪さとは裏腹に5枚に下ろした中身のきれいなこと。
 この下ろした身と、外見のギャップが大きいのがサメガレイの最大の見せ場だ。
 付け加えるなら、魚の知識がこういった場合に生かされる。
 知っている、という強みはこんなときに発揮されるのだよ。

 なにもつけずに食べてみると、シコっとした食感で旨味に欠けることは欠けるが、悪くない。
 この冊取りしたのを適当に切り、ミョウガと青じそ、ショウガの千切りを合わせる。
 からし酢みそを添えて、出来上がったものが「沼田(ぬた)」なのである。

 子だくさんの我が家にあって、意外や意外な人気料理があって、それがぬたなのである。
 ボクが一杯やるために作っているのに、卓上での存在時間が短過ぎるのだ。
 それで最近ではからしをうんと利かせるのだけど、それでも「父ちゃん辛いけどうまいね」なんて箸を出す。
 白みそで作った和え衣にシコっとしたサメガレイ、香辛野菜のさわやかな香り。
 まことに夏の酒肴としては天下一品。
 今度はもっとからしを増やして作ろうか。

サメガレイのぬたの作り方
1 サメガレイのぬめりをよくよく取り去り、水洗い、5枚に下ろす。
2 適当に切り、ミョウガ、ショウガ、青じその千切りとからめておく。
3 からし酢みそを作る。白みそ(西京味噌)、酢(我が家では山吹)、砂糖を適当に混ぜるだけ。甘みにみりんを使ったり、だしで泥酢風に作る向きもあるが、味わいが重くなるだけ、無駄なので一般家庭ではさわやかにやろう。
4 サメガレイとからし酢みそを盛りつけて、食べる直前に和える。
 
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 北海道室蘭市室蘭魚市場は楽しかった。
 市場が楽しかった上に宮森水産の伊藤裕行さんにお会いでき、しかも地元の話をたっぷり聞かせていただいた。
 室蘭生まれの伊藤さん、宮森水産の女将さんから聞いたお話で、意外で、また思っても見なかったサラガイ料理があって、それが野菜炒めだ。
 伊藤さんによると至って平凡な家庭料理だけど、なかなかうまくて、毎日食べても飽きがこないのだという。
 サラガイはぬたにしたり、刺身で食べたり、なめろうにしたりとクセのない貝なので、料理を選ばない。
 酒蒸しにしても、味わい深いのは、いいだしが出るからだろう。
 野菜とサラガイのだしを絡めるように、ささっと野菜炒めを作ってみよう、そんなことを考えて歩いていると、「おお! なぜか中華『さくら』の前に来ていた。
 この店の野菜炒めは絶品、すごいのである。
 野菜炒めで感動できる店なんて、多摩地区広しといえども、『さくら』以外には考えられない。
 店をのぞくと、まささん、お母さんが麺の仕込みに急がしそうだ。
 まあ、人が忙しいことなんてどうでもいいことなので、前を通りかかったついでに白貝の野菜炒めを作ってもらう。
 むき身を手渡し「野菜炒めを作ってよ」とお願いすると、
「丸のまま入れるの。野菜炒めじゃない方がいいんじゃない」
 困ったことに別の料理を作ってしまいそうだ。
「野菜炒めを作ってね。普通のヤツね」

 まささん、いやいやながら、白貝をむき身丸ごと放り込み、ささーっと野菜と炒める。
 野菜はキャベツ、セロリ、もやし。
 味付けは塩こしょうと、『さくら』特性のたれ。
 作る時間はほんの数分。

 なんともあっけなく出来上がった野菜炒めだけど、困ったことに味は名状しがたい。
 うますぎるのだ。
 まささん曰く。
「オレの味付けがいいからうまいんだ」
 こんなことを言ってくれるが、明らかに間違っている。
 今回に限り、まささんの腕が3割、白貝の味のよさが7割で、このウルトラうまい野菜炒めが出来上がったとみるべきだ。
 サラガイのよさは、熱を通してもあまり硬くならないことだろう。
 炒めるそばから旨味がにじみ出て、しかも、それなりに炒めているのにむき身は程よく柔らかい。
 塩こしょうが中心となって、酒、醤油などが少々混ざっているのだけど、サラガイの旨味と相乗効果しているようなのだ。
 この炒めて、にじみ出てきた汁のからんだ野菜がまたうますぎる。
 たぶん、ご飯と一緒に食べたら最高なんだろう。
 朝ご飯をすましてきたことに強い後悔の念が浮かんでくる。

 さて、サラガイの入荷が続いている。
 当分の間、我が家で白貝の野菜炒めが続きそうだ。

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 北海道札幌中央市場で目についたもの、スケ(マスノスケ。キングサーモンのこと)、時鮭(サケ)、八角(トクビレ)、バラメヌケに真ゾイ(タヌキメバル)、数え上げら切りがない。でもひときわ、ボクの琴線に触れたものがあって、それが「チップ」なのである。
 ボクがスケ(マスノスケ)の大きさに感動していると、『丸水(荷受け。札幌中央水産)』の方が
「チップ見ました。そろそろ終わりなんですけど、入荷してきているはずです」
 親切にも声をかけてくれた。
 慌てて、彼の指差す方に走って行くと、銀色に輝くヒメマスがたくさん並んでいる。思わずうっとりするほど美しい。
 夢中になってシャッターを押していると、
「どう、きれいでしょ。今じゃ高級品だね。めったに食べられないよーー」
 こちらは『曲〆(荷受け。高橋水産)』の競り人。
 これがキロあたり3千円から4千円。300グラムほどのもので千円以上にもなる。
 どうしても欲しくなって『丸水』の方に仲卸を紹介していただき、1本手に入れる。
 これを宅急便で送ると、すごいことに翌日夕方には我が家に届く。
 北海道から空路帰り着いて、取る物も取り敢えず、ヒメマスの刺身を食べてみる。
 仲買の方たちは「ヒメマスだけは今日中じゃないとだめだよ」と言ってわりには鮮度もよく、とろっとした中に旨味の凝縮されている。刺身の色合いが紅というのも美しい。

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 そして翌日には塩焼きに、これがまさに美味の極地。これほど端正な真正面きったうまさって、なかなかないんじゃいだろうか。
 ついつい酒を飲むのも忘れて、ヒメマスの味わいにただただ酔うのであった。

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 島根県出雲地区に「あご野焼」という“蒲鉾”がある。
 外見は焦げ茶色の巨大なちくわ状だから、「ちくわじゃないか?」という素朴な疑問がわき上がるが、実は本来の蒲鉾の形は、現在のちくわ状なのである。“蒲鉾”とは魚のすり身を木竹などに、まるで湿地に生息する蒲(ガマ)の穂のように巻き付けて焼いたもの。だから現在のちくわが本来の蒲鉾の形であって、板についた蒲鉾は比較的新しい形なのである。
 魚をすり身にして、その辺にある木などに巻き付け、しかも野にあってたき火などにかざして豪快に焼き上げる、この原始さながらの蒲鉾を作るのは。島根県出雲地方のみ。
 材料は初夏から島根半島に押し寄せてくるトビウオ。主にホソトビウオで、ときにツクシトビウオが混ざる。

 島根の知るべが「あご野焼きのほんまもんを食べてみませんか?」と誘ってくれた。よそ者には、あまたある「あごの焼」に本物と、偽物があるなんて思いもしない。しかも我が家では島根県の親戚にいただく三大いやなお土産というのがあり、その第一が「あごの焼」なのだ。あえてここで書いておくが、個人的には「あごの焼」が好きとは言い兼ねる。「嫌いだ」と明言してもいい。

 こんな思いで臨んだ青山蒲鉾店の「野焼見学」、目の前におかれた巨大な丸太ん棒のような野焼きを、手でムギュっとむしり取り、口に頬張るや、そのあまりの美味にヘナヘナと腰のくだけるような衝撃を受けて、突然「野焼ファン」と変貌したのだ。

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 直径10センチ以上、長さは70センチくらいある。その焼きたての熱いのを我慢して、一端をつかみ、抵抗するのもかまわず千切りとる。その野焼が繊維質に千切れる。この繊維質を見ているうちにフランスパンに似ているな、と思い至。実際、魚のうまみと風味のある、ずば抜けて見事に焼き上がった「野焼」が本当に焼きたてのフランスパンを食べているよう、不思議だ。「これが蒲鉾といっていいものやら」、非常に疑わしく思えてくる。
 この美味なる対象物に、ボクは明らかに理性を失ってしまい、千切っては食らい、千切っては食らい、まるで原始に生きる野生人と化してしまうのだ。

 いかん、『青山蒲鉾店』の、野焼のことを書くはずが、いかにうまいか、だけで終わってしまいそうだ。
 閑話休題。
 江戸時代より続く『青山蒲鉾店』はもっとも頑固に古来よりの製法を守っている。当日焼く分だけの魚(トビウオ)を下し、すり身にして、これまた出雲が誇る地伝酒で風味付けする。これをステンレスのポールに巻き付けて、炭火であぶり焼くのだ。

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 この炭火で数本ずつ焼き上げるのが至難の業なのだと言う。当日は弱火で全体を焼き上げ、最後に強火で焦げ目をつけていく。ただ焼き上げるだけでは、すり身がはぜてしまうので、針のついた大きな刷毛のようなもので、何度も、何度もパンパンとたたいて、蒲鉾の中の気泡を抜いている。
「野焼蒲鉾」はすり身作りも焼き上げるのも、熟練の技が必要なのだ。
 さて、たった一人で「野焼」3分の一ほども食らってしまったようだ。重さにしてどれほどだろう。「野焼」で腹がくちくなるほどなのに、まだ食い足らない。それほどにこの「野焼き」の味は上品でしかも深みがある。
 最後の一切れが掌にある。そっと真二つに割るとやはりきめ細やかな繊維が見える。やはり「野焼」はフランスパンのようで、しかも魚の芳醇な旨味に満ちている。
 ここで念のために書いておくが、冷えた「野焼」には、また別種のうまさがある。実はじっくり考えるに、冷えてからの方が魚の旨味を真に味わえる、ようなのだ。
 青山蒲鉾店の「野焼」は大量に作っているものではない。家内工業的に作れる分のみ作っているわけで、今度また松江に行く機会があれば、絶対にもう一度あの口福感を感じてやるのだと思う。

青山蒲鉾店 島根県松江市中原町88
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北海道への旅 01

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 7月8日早朝、曇り空なのか、晴れているのか,うすぼんやり夜明け前の道を駅に向かう。始発中央線各駅停車で熟睡、気がついたらお茶の水だった。ここで非常に体調の悪いのを知る。疲れが沈殿して鬱陶しい。浜松町からモノレール、日本航空で新千歳へ。空路揺れもなく快適だった。それでも高所恐怖症のボクは眠れない。着陸した北海道は大雨だった。
 新千歳でいきなり人には話せないトラブルが勃発。一時間以上ロスして、札幌に向かう。座席につき、ほっと一息ついていると隣の列車に入った若い男性が座席を反対側に向けている。ひょっとしたらと思う以前に動き出したら座席は後方向きだった。どうやら北海道では座席の方向転換はセルフでやるべきであるようだ。南千歳で若いきれいな女性が隣に座って、「座席の向きを変えていいですか?」と聞かれて、ちょっと面映い思いをする。
 車窓から見る家々の造りはまさに雪国、北の国だ。見晴るかす景色も、やっぱり大きいな。広葉樹が豊かに緑色だ。
 札幌に到着するも、トラブル解消されず。延々待つ。ここで致し方なく、小樽を目差す。小樽に向かう列車のホームには既に行列ができている。
新千歳から札幌、札幌から小樽と、車内は満席に近い。札幌を後に車窓から見える景色は無機質だ。東京都なんら変わりがない。札幌が政令指定都市なんだと改めて思う。
 この無機質さが銭函、朝里、小樽築港駅からがらりと変わり、日本海は鉛色に沈んでいる。南小樽にくると、なぜか高層マンションが林立して、観覧車が日本海を背景にしてある。ホームに石原裕次郎のポスター。
 そして小樽は、やはり古い町の面影を残している。

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 小樽には十時過ぎに到着。駅を出て左手上に『三角市場』がある。この市場は北海道でももっとも早くから観光化したとされている。まさにその通りの品揃えだった。ただただ通り過ぎる。市場巡りで困るのは客に対する勧誘である。『三角市場』の勧誘は店頭の魚貝類を見て歩くには邪魔、もしくは阻害するもので観光客というのは、このような不愉快な接客が好きなのだろうか? 世の常のわからぬボクなのであった。
 ちなみに『三角市場』に並ぶもの、タラバガニ、ケガニ、活けトヤマエビ(ボタンエビ)。ウニ、塩ウニ、ホッケ干物、イクラにサケ類。これが北海道というものの平均的なイメージなのだろうなーーー。

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 平日なので観光客は少なかったものの、『三角市場』の北海道らしい市場食堂に吸い込まれる人多し。
 小樽着直後の『三角市場』にむなしさがこみ上げてくる。ただし市場のそこかしこに古きよすがが残っている。この古さびた痕跡を撮影して、ただただ通り過ぎて、北(海に向かって)に出る。

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 その目の前にまた市場あったのだ。

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 ジンドウイカというあまり大きくならないイカがいて、料理好きな料理人(当たり前じゃないか、と言うなかれ)に人気がある。
 大きくなっても、せいぜい手のひらサイズだから、あまり値段は高くない。でも抜群に味がいい。味がいいのに安いのは、くどいようだが親戚筋のヤリイカなどと比べて小さいためだ。
 ここでお気づきだろう。小さいから下ごしらえが大変そうだ(それほどでもないけど)、面倒だから料理が好きな人でなければ買わない、ということが言いたいわけだ。蛇足だけど、このような小物の価値のわからないヤカラは嫌だね。
 とかくうまいものというのは、このように平凡な外見をして、ありふれたものの中にあるものなのだよ。

 北海道南部以南の沿岸に普通に見られるイカで、手軽な釣りの対象としても人気がある。
 関東では“ひいか”というのだけど、これは「火烏賊」、すなわち、ろうそくの炎の形をしているイカ、の意味だと思う。「赤烏賊」という地域もあって、これは生きているときには透明で、死んだ直後から赤く色づくからだ。
 そして標準和名ジンドウイカは漢字で、「神頭烏賊」と書き、神事などに使われる、木製の矢の先につく鏃の形に似ているためらしい。

 これが初夏には常磐、東北太平洋側などからたっぷり入荷してくる。安いイカだから、取り扱いも至って雑。真っ白に変色したものが無造作に発泡スチロールに放り込まれてくる。そんななかときたまだが、鮮度が抜群によく、身が生きており、色素胞が茶色地に宝石の原石を見るかのように明滅しているヤツが、関東近県から入荷してきて、料理好きを興奮させる。
 見事なジンドウイカを見つけたら、とにかく大慌てで買ってしまう。そうしないと八王子の市場では瞬く間に売り切れとなる。
 さて、ジンドウイカのいちばんうまい食べ方は、生ではなく、軽く湯がいたものではないだろうか? 我が家では皮を剥いて、熱湯のなかで、軽く振る。
 これに、からし酢みそを添え、盛りつけた湯振りのイカに青ゆずをおろしかける。今年初めて海老名の海老さんからいただいた、まだ小さな青いゆずだけど、香りがまことにいい。
 当然お供の酒は冷や。このところ懐具合が寂しいので、多摩自慢の無加糖をきりりと冷やして飲(や)る。

ひいかの酢みそ和えの作り方
1 水洗いして、ワタを取り去り、汚れを落とす。
2 皮を剥く、この場合、ゆびきするのであまり丁寧にやらなくていい。
3 適当にきり、熱湯のなかで2度、3度振る。これを氷水に落とす。
4 酢みそは三重県尾鷲市で買い求めた、麦みそ。思ったよりもうまみがある。これにミツカンの山吹(酢)と砂糖、からし。青ゆずはおろし金ですり、茶筅で上から散らす。

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オキメダイ騒動記

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 ことは火曜日にさかのぼる。
 ちょうど島根県水産アドバイザーの仕事で築地にいたのだ。
 そんなとき気仙沼のmakoさんからケータイ。
「ぼうずコンニャクさんお久しぶりです。今日90センチくらいのボウズコンニャクがとれたんですけど」
 これは問い合わせであって、ボクにその巨大ボウズコンニャクを頂けるという話ではない。
 でも、そのとき、こみ入った話をしている最中で、しかも明らかに、その魚はオキメダイではないか? と思い、頭にドカーンと花火が散ったような衝撃とともに「オキメダイ欲しい」というのがキラキラ光って心のなかで明滅する。
「makoさん、お願いします、それください」
 思わず言ってしまったのだ。
 実はその得体の知れない魚は気仙沼魚市場に置かれている。
 結局makoさんが交渉してもらい受けてくれた。
 そして東京へ。

 今週の月火水はホテル泊も含めて、睡眠時間を総て合わせて足し算しても10時間以下だろう。
 しかも東奔西走、歩く走る、そして仕事で立てこもる、会議で発言する、斡旋する、問い合わせるなど、息苦しいまでの日々だった。

 荷物は佐川急便で送られてきた。
 我が家族がたまたま不在であった。そのため営業所まで持ち帰ってもらう。
 その営業所が八王子のハズレにあって遠いのだ。

 木曜日は午前3時前に起きる。
 なんと昨日が雑誌『つり丸』の原稿締切。
 まだ原稿は半分しか書いていないのだ。
 午前4時過ぎに一応書き終わり、車で営業所まで。
 喉がカラカラに乾いている。コンビニエンスストアに立ち寄る時間が惜しい。
 しかも受け取った荷物が想像以上に重い、大きい。
 午前6時前にやっと自宅に持ち帰る。
 7時過ぎまで原稿の校正、書き直し、書き直し。
 7時過ぎから、魚の同定、検索。
 やはりオキメダイであることが判明する。
 昨日来、各地の博物館などに問い合わせて「オキメダイはそれほど珍しくはない。ただし北でとれたのなら貴重な事例だ。大きさも1メートルを超えなければ標本としてもどうしても確保したいものではない」ということを知人のみの問い合わせで確認済み。

 8時過ぎ、自宅で撮影を試みるが大きすぎて無理。
 八王子総合卸売センター『市場寿司 たか』店の前で撮影する。
 その後、重さなどを量って、たかさんにさばいてもらう。
 当然、すしネタにしてみる。

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たかさん、12キロのオキメダイと格闘す

 さて、5時前に受け取って、検索、撮影、重さを量り、下ろして、寿司図鑑撮影、帰宅がなんと正午前。
 全身画像だけ画像整理して時計を見たら1時を過ぎていた。

 1時半大急ぎで外出。
 本日は都心での出稼ぎはそんなにきつくない。

 夜9時前に帰宅。
 シャワーを浴びて、なんと10時前にダウン。
 今週は疲れ果てたのだ。

 気仙沼のmakoさんには改めて感謝いたします。

宮城県気仙沼市makoさんのAnglers-market
http://www7a.biglobe.ne.jp/~Fish-Fish/index.html
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