2015年5月アーカイブ

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 勝浦市内、朝市のある下本町の遠見岬神社入り口そばにある。店は間口二間あるかないかで、非常に古くて狭い。勝浦にはクロダイ釣りに通っていたのだが、その当時(1970年代)から同じ建物であった。

 朝市に店を出すオカアサン達にラーメン(中華そば)を配達していたので、教えてもらったと記憶する。朝市のオカアサン達が食べるくらいだから、当然、この店の普通のラーメンは美味しい。

 丼物と麺類のいたって普通の食堂であったはず。サザエ丼やアワビ丼などもあるが、これは近年になって作り始めたものだと思うが確かめていない。



 千葉県勝浦市は「タンタン麺」は歴史があり、味もいいということで最近よくテレビなどで見かける。ボクの場合、かなり当地に通っていたつもりだが知らなかった。いちばんよく通っていたのが、1970年代後半から1980年代前半だが、食堂などに入っても品書きにはなかった気がする。

 個人的にB-1グランプリがあまり好きではないので、どこかしらいかがわしく感じるが、味はとてもいい。。

 しょうゆ味のラーメンをベースにしているのだろう。そこに玉ねぎと挽肉を炒めて、大量のラー油を加えてをのせる。『いしい』のものは生の玉ねぎ、いりごまを加えているが、これもなかなかいいと思う。かなりの辛さで、まだ早朝というのに完食。

 この店はいつも朝ご飯を食べるところなので、やはりラーメンの方がよかったかも。タンタン麺は昼飯向きだとも思い知る。


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 名古屋栄にある『島正』は 昭和24年に名古屋市で創業。創業時の店名は『きむらや』で、店主の名字「喜邑」からの店名。新国劇の島田正吾が気に入って通ったことから「島正の通っている店」と呼ばれるようになって店名を変えたという。

 名古屋では豆みそ(八丁みそ)ベースの煮汁で煮込む、おでん、牛すじを「どて焼き」と言う。これに串かつ、焼き鳥を加えると名古屋居酒屋メニューの基本形になる。

 みそ味で煮込むおでんを、「みそ煮込みおでん」などというが、当店ではこれも「どて焼き」のひとつで「どて焼き」の種としている。このあたり今後の名古屋食文化研究の余地が大ありである。

 この店はその名古屋居酒屋の基本形を守っているところがいい。しかもそのどれもが実にうまい。多少待ってでも飲みたい食べたいという店だと思う。


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 居酒屋のしめの一品というと、ご飯もの、麺類などだろう。ここでは「どて飯」がその主流だと思う。みそで煮込んだ、豆腐、大根、コンニャクなどをつまむ。その後で串かつか焼きものをお願いして、しめにまた「みそ味」でというのがいいのである。

 ご飯に、「どて焼き」の牛すじ煮込みをかけたものが「どて飯」なのだが、そこに半熟卵がぽよよーーーんと乗る。


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 この半熟卵を適度に崩し、ご飯と牛すじともども、あらく混ぜてかき込む。名古屋のみそ味が意外にさっぱりと後味がいいのは知っていたが、この美味しさをなんと表現すべきだろう。食感はドミグラスソースのようであるが、あきらかにみそ、そのみそが実にクリーミーであって、こくがある。

 ああ、これは昼間に大をお願いすればいいのだ。酒の後ではなく、昼飯として食べたらもっともっとうまかろうな。


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 五城目町に中心地というものがあるのだろうか? あるとすれば朝市のある夕下町周辺だと思う。ここに道幅の広い県道があり、この道沿いに料理店が数軒並んでいた。

 夕方、酒を飲むために町を歩く。最初、この『松竹』の外観のあまりにも素っ気ない造りなのと、それでいながら「料亭」という文字を嫌い通り過ぎる。

 かなり歩いてもこれといった店が見つからない。それで仕方なく入った。

 店内に入ると、いかにも店舗造りのプロというか、実はなにも考えていないヤカラたちが無理矢理規格どおりの店の設計を押しつけたといったもの。このようにその土地らしさ、よさをダメにする店造りはやめた方がいいと思うな。

 そこで待っていたのが、「いかにも秋田のおっかさん」といった雰囲気をいっぱい発散している女将さん。肌がきれいでふっくらとして、実に魅力的。

 女将さんはボクがカウンターについてもせっせとミズの皮を剥いている。酒の注文だけ聞き、「次ね、北島三郎がでっから、歌終わるまでまって」という意味のことを言ったと思う。

 この女将さんが下ごしらえをした青いミズの入った「だまこ」汁が実によかった。ただしこの店のすごいところはラーメンもあれば丼物もある。お弁当もあるというところだろう。秋田県という明らかに鄙の地のバイタリティーがこんなところにも横溢している。


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 鉄鍋に入った具材の主役は「だまこ餅」。これはご飯を半殺しにして丸め、表面を焼いたもの。ほかには朝市にも並んでいたチシマザサの竹の子、ねぎ。これに女将さんが下ごしらえしたばかりの青いミズが入っていたが、これが初夏の「だまこ餅」の代表的な具材なのだろう。この上に、ごぼうや豆腐や季節外れの舞茸も入って賑やかかつ豪華である。汁は鶏ガラと鰹節だしを合わせたしょうゆ仕立てで、まったりと優しい味。

 この汁が実に味わい深い。塩分濃度もほどよく、あくをよく引いているのか苦みもない。「だまこ餅」はむっちっとしているが、ご飯の粒感も残っていて、甘味がある。そしてなによりもこの鍋を支配しているのが、青いミズの香りである。シャキシャキとした食感がして野生を感じさせてくれる香りが鼻に抜ける。

 ここで問題となってくるのが「きりたんぽ」と「だまこ餅」の違いである。この二つは基本的に同じもので、形が違っているだけに思える。「きりたんぽ」は古くは単に「たんぽ」で秋田だけのものではない。また「きりたんぽ」は秋田県北部大館市などで作られていたもので、秋田市や八郎潟周辺、男鹿では「だまこ餅」を作るのが一般的であった。

 八郎潟に面した五城目町は「だまこ餅」の本場に当たるわけで、この地で「だまこ餅」を食べることができたのもうれしい限りではある。


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 名駅にもほど近い那古野というところはまことに不思議な区画だ。名駅の高層群が見えようかというところなのに円頓寺という昔ながらの商店街がある。そこから路地に入り込むと仕舞た屋や古い食堂があり、もっと狭い路地に入りこむと地蔵尊のほこらがあったりする。

 この円頓寺商店街のいちばん外れにあるのが『五条』。正確には「どて焼 五条」なのかも知れない。もつを豆味噌で煮込んだ、「どてやき」、「みそおでん(これも「どて焼」と言うらしい)」、「串かつ」、「焼き鳥」などがある。酒は主に焼酎と日本酒。一品は総て300円以下。「串かつ」は1本70円と非常に安い。

オヤジさんは愛想がよく聞くと丁寧に対応してくれるが、女将さんの無愛想振りは稀に見るといったところ。


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「串かつ」は豚肉を串に刺し、フライに揚げたもので、名古屋居酒屋でもっとも重要な品のひとつ。値段は、高くて1本100円前後、安いとこの店のように70円ほどしかしない。これなら子供にも買い食いできるはずで、きっと駄菓子屋などにもあるのではないか? 要するにいたって下手な料理である。

 名古屋ならではと思うのが、この「串かつ」を「どて焼」の煮汁(豆みそで作ったソースのよう)に浸して出してくれること。

 これは明らかに名古屋の居酒屋の基本中の基本、「どて焼」の鍋が店の中央部というか、分かりやすいところにあり、揚げたての「串かつ」を「つけてみてもおかしくない」状況にあることから自然発生的に生まれたものだろう。

 ちなみに「串かつ」はいつ頃、どこで誕生したのだろう。例えば「とんかつ(揚げ油に泳がせるように揚げる)」の誕生が明治の終わり頃だとして、この料理店の料理が、「串かつ」というより簡便な形に変わった、その意味合いを探るといいのだと考えている。ようするに「串かつ」の誕生は屋台などの屋外的な料理提供の場から生まれたに違いない。

 さて、名古屋で「串かつ」を食べるときは、必ず半分は「どて焼」の煮汁に浸したもの、半分はソースにする。どちらかを選ぶとすると、よそ者のボクには「どて焼」に汁につけていただくことになりそう。

 この『五条』でもソースと「どて焼」を半々でお願いする。この「どて焼」の汁が色の割りにはあっさりして、少々脂っこい「串かつ」と相まって飽きの来ない味になっている。食べ過ぎ、飲み過ぎに要注意。


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 新潟市、燕市への旅の帰途に立ち寄った長岡市内のスーパーにて購入したもの。『越後製菓』は新潟県長岡市に巨大な工場をかまえる全国的な食品会社。米菓で有名。国内流通して知名度の高い製品も多い。


 一般に赤飯とはもどした小豆、ささげを戻し水と一緒にもち米に混ぜ込んで蒸し上げたもの。基本的には塩味である。

 新潟県長岡市などで作られている「赤飯(こわめし、もしくはおこわ)」はインゲン豆を使い、味つけはしょうゆ。ご飯を染めているのはしょうゆなのである。

 塩味で小豆を使うものよりも、どこかしらお総菜的な味だが、このしょうゆの風味ともち米の甘さが実に相性がいい。

 ひじきやにんじんの入った「お赤飯(五目赤飯)」もある。


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『福そば』は越前大野の中心街、朝市で有名な七間通りそばにある、いたって普通の構えのそば屋さん。店の正面右手、ガラス越しににそば打ちが見られること、「手打ちそば地方発送します」の看板があり、店の外観はやや賑々しい。

 紺ののれんをくぐり店に入る。店内はやけに奥行きがあり、広い。清潔感のある店内は外観とは違い落ち着きがあり好ましい。

 品書き総てが麺類。そしてそのほとんどがそばであり、温かいうどん三品がなんとなく余計に思えてならない。あとは郷土料理の「里芋の煮っ転がし」、「山菜漬け」、「味つけにしん」、「ゴボウの唐揚げ」。なぜ「ゴボウ」とカタカナなのだろう。それにそばの後に付け足されたような「ご飯(白飯)」は何で食べることを想定しているのだろう。まさか福井県では、そばでご飯を食べるのだろうか?


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 さて、あらかじめ「福井に来たら"おろしそば"だ」と思い込んでいたとおりに「おろしそば」(500円)をお願いする。

 待つこともなく、やってきた「おろしそば」はあまりにもこぢんまりして慎ましやかだ。器は明らかに昭和に作られた"なます皿"で、もっとも基本的な5寸(約直径15cm)である。そばを盛るのに5寸は小さすぎないだろうか。中に太めの白っぽいそば、ねぎ、鰹節。左手の小鉢には大根下ろしを溶かし込んだつゆ、そして厚手の筒型の湯飲みにそば湯。この3点があまりにもお行儀良く並びすぎている、ような気がする。

「おろしそば」を食べるのは何度目だろう。初めてではない。前回は確か鯖江市で食べた。でもその折りの記憶も写真も残っていない。とするとこれをもって「おろしそば」の初食いとしてもいいだろう。まずはこの3点の配列、器使いを「おろしそば」の基本型として銘記しておく。

 食べ方は、つゆを"なます皿"のそばにぶっかけて、あとは食べるだけ。鰹節とねぎ、そしてそばがつゆとからんでまとまり、まずは汁の控えめな辛みと味が先に来る。これが実に爽やかで、そばの香りはかなり後から感じられる。

"なます皿"一杯のそばではもの足りないというか、あっけない。


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 そばを食い終わり、追加注文した「里芋の煮っ転がし」が実にうまかった。そばの印象を完全に消し去るほどにうまい。これなら先に「里芋の煮っ転がし」を食べた方がよかったのかも。

 ではこの「おろしそば」の味はいかがなものだったかというと、不思議なことに大野市を離れて、勝山市市街に行き着いたとき、もう一杯食べればよかったと後悔したのだ。この時間差でくる「おろしそば」のうまさとはなんだろう。


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 名古屋市堀田には名鉄、地下鉄の2つの駅があるが、『喫茶 シューカドー』は賑やかな方、名鉄駅近くにある。名古屋の道路は無意味に広く、名鉄堀田駅前といってもいいはずなのだけれども道を挟んでいるので、駅との一体感はまったくない。昔の人は広い道路は人間性を破壊するという、ことを知らなかったようだ。これが実に残念。

 だだっ広い道を渡るとなんと2軒喫茶店並び(愛知県らしい)、向かって左にあるのが『シューカドー』。「しゅーかどー」は漢字にするといいのかも。とすると前身は和菓子屋だったのかも知れない。

 店に入ると奥行きがあり、思った以上に広い。店内全体の色合いが「焦げ茶色」で落ち着く。歩き疲れて座り込んだ窓際の4人がけのテーブルもゆったりしている。昼過ぎにもかかわらず、かなりのテーブルが埋まっていて、そのほぼ総てがご近所の方のよう。平均年齢高そうだ。

 メニューが実に多彩。パンメニュー、ホットケーキを筆頭に定食類各種、ピラフに赤だしがつくというのも、名古屋らしいではないか。


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 店に入った途端、ケチャップを炒めた香りがした。メニューを見ながらコーヒーをお願いすると、小皿に小袋の「柿ピー」、「フライビンズ(フライビーンズではない)」などが出てくる。

 ナポリタンが食べたかったのだが、ない。メニューを見ると「スパゲティー」とあり( )のなかに「イタリアン、ミートソース、インディアン」とある。店内にただようのはケチャップを炒めた香り。それなのにオムライスもチキンライスも、ナポリタンもないというのは、東京暮らし40年近い身にはげせない。

 よくよくメニューを見ると2枚の料理写真が載っている。そのひとつがイタリアンだという。

 明らかにケチャップ味らしいので、「これナポリタンですよね。なぜイタリアンなのですか」と聞くと「前のコックが考えたものですから」とのことだ。

 お願いすると「卵ありにしますか?」と聞いてくる。わからないまま「あり」にする。このときオバチャンが見せた笑ったような、「それで正解よ」と言っているような表情がよかった。これをナゴヤ的曖昧微笑としておきたい。

 まず出てきたのがサラダとナプキンに包まれたフォーク。ガラス鉢にはいったミニサラダにオレンジがどんと乗っているのにも、どこかしら「どえりゃー」感じがする。

 出てきたものがハンバーグなどに使われるような鉄板の皿に半熟卵。その上にナポリタン状のものがのっている。左右の赤いウインナーが魅力的だ。

 どう食べるべき悩んだ末に、グチャグチャにかき混ぜて食べたら、実に、ものすごくボクの子供の部分(どちらかというと大人の部分よりも多い)が喜んだ。同部分がヤッターと二度叫ぶ、そんな味である。あっという間に食べてしまって、ふと感じるむなしさがやりきれない。「もういっぱいくれ、こんどはインディアン」という感じなのだ。

 ちなみに『なごやめし』(なごやめし研究会 双葉文庫 2005)には名古屋市東区葵の『喫茶ユキ』のご主人、丹羽清さんが1960年代に考案したと出ている。とするとイタリアンは明らかに名古屋ならではの食である。とすると、とするとやはり気になるのがインディアンスパゲティーのことである。


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『浅田屋』は愛知県名古屋市西区那古野にある。この那古野というところは名古屋駅に近く、周辺にビジネス街を控えているようで、通勤時にはこの狭い路地を大勢のスーツ姿が行き交って活況を呈すとのこと。

 古い家並みの四間道の西側にあり、周辺には仕舞た屋、理髪店、料理店、地蔵のほこらなどが密集して東京の下町を思わせる。

 店は外見からしていかにも庶民的、食堂然としているのがいい。紺色ののれん、「麺類」、「丼物一式」などの文字がかかり、中央に大きな「きしめん」の看板があってとてもいい感じだ。

 品数は多く、ラーメン、きしめん、うどん、各種丼物、定食など多彩すぎるほど多彩。毎日通ってもよい、そんな魅力がある。


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 愛知県名古屋市は日本屈指の麺食いの町である。その特徴はうどん、きしめん、ラーメンなど小麦粉系の麺が多いことだろう。食堂などの定番としても、そばよりもうどん、きしめんが主である場合が多い。

 なかでも「みそ煮込みうどん」は名古屋を代表する料理で、明治期以来食堂の定番料理として今に至っている。特徴は鰹節だし(そうだ節)に豆味噌の汁を使い、必ず土鍋で煮込まれて出てくること。

 さて、名古屋の下町とも言えそうな那古野にある『浅田屋』で食した「みそ煮込みうどん」だが、汁は豆味噌味なので見た目は濃厚そうに思えるが、意外にあっさりとしており、豆味噌に酸味があるためか後味がいい。うどんは煮込んでも腰があり、適度にみその味をからめているのもいい。具は名古屋ならではの赤い「名古屋蒲鉾」、卵、油揚げ、しいたけにねぎと絢爛豪華。

 汁もよし、うどんもよし、具も賑やかといいことずくめ。名古屋人でなくともハマル味である。


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 柳橋の市場群の一角にあるのが「柳橋食品ビル」。「丸中」や「水産物協組」などと比べると小さく、総菜などを売る店が数軒あるのみ。

 この中ほどにあるのが『食堂 かつや』。細身のご主人と、女性二人で切り盛りしている。ほかには小皿盛りの総菜、串カツ、フライ類、ラーメンなどもある。


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 ご主人は恐ろしく寡黙。ただただお客の注文に応じて料理を作る。女性2人はたぶんご飯をよそおうのと、みそ汁をつぐのとくらいかも。出前があるかなどは不明である。

 ちなみにラーメンも実にうまい。


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 愛知県で「あかしゃえび」というのはサルエビだとか、アカエビのことだとかいろいろ聞くが、ようするに三河湾で揚がる小エビ類の総称のようである。三河湾に面した一色に通っていたので、この小エビ類がいかに三河、名古屋などで重要なものなのかは知っていたが、名古屋のスーパーで普通に売られているのを見ると改めて思い知る。


 さて、この愛知県ならではの「あかしゃえびの天ぷら」が手軽に食べられる店が柳橋中央市場の一角にある。「食堂 かつや」である。両手を広げた程度の間口しかない小さな店で、厨房を囲むようにあるカウンターだけの店。そのくの字型のカウンターに座ると目の前に頭部の硬い部分と胴の殻を取り去ったエビが置かれている。

 これを指さすだけで、即座に天ぷらに揚げてくれる。朝だけの営業とは言え、名駅から10分足らずの場所にこれほど優れた愛知ならではの天ぷらが食べられる店がある。これも名古屋の底力かも知れない。まあ無機質で人間性に欠ける名駅から脱出して、ここに来るとやっと一息つける、そんなよさもある。

 揚げるや無造作に皿に盛り、出てくるのだけど、カウンター上に天ぷらがある時間は数秒でしかない。まだ熱いうちに口に放り込むとエビの風味がふんわりと広がり、香ばしくて、身が甘い。そしてまた口に放り込むと、エビの風味がふんわりと広がり、香ばしくて、身が甘い。この繰り返しなのだけど5、6尾揚げてもらって1分足らずで皿の上は空である。

 これも愛知県の22世紀まで残したい食の財産である。

 現在、休業中とのよし。


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 中村区は膨大な人が行き交う名駅東口とは真逆で、ひっそりと人の少ない西口にある。この周辺は昔は「西口市場」があったところであるよう。砂糖だけの専門店、食材店、八百屋、衣類を扱う個人経営の店が多い。公設市場もあったようだが、今やスーパー形式になってしまっている。

 そこにぽつんとあるのが『喫茶・軽食 プリンス』。70代はじめの女将さんひとりだが、昔はご主人と夫婦でやっておられたようだ。

 席に座ると、ここが名駅から数分のところだとはとても思えない、のどかさなのがいい感じ。

 店名は「お客様はみなプリンスですよ」という意味だという。


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「小倉トースト」愛知県全域の喫茶店で出されているのだと思う。

 愛知県は喫茶店がすさまじく多い。ほんの100m前後に3店舗などということもあるくらいなので、都内の探さなくては見つからない状態からすると格段の差がある。

 その膨大な数の喫茶店が切磋琢磨しているためか軽食メニューも実に豊富である。その店独自のものも多いようだ。そんななか共通するメニューのひとつが「小倉トースト」。焼きたてのパンとあんこのみの相性は微妙であるが、バターが塗ってあることでひとつの料理として格段にまとまっている。

 あんこ好きでもあるので都内の喫茶店にもあるといいな、と思う反面、愛知だけの物であって欲しいとも思う。


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愛知県編 黄飯

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 愛知県名古屋市で端午の節句に食べるものに「黄飯」というのがある。ようするに梔子(クチナシ)で染めた強飯(おこわ)で、黒豆が散らしてある。一説には梔子には魔除けの霊力がありとのことで端午の節句に作られるようになったとも。同じように黄色く染めない「白飯」というものもある。

 ほどよい塩加減で、薄く黄に染めた梔子(クチナシ)の匂いや味は感じられないものの、白よりもより味わい深い気がする。


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 津乃国屋は名古屋市の懐かしいたたずまいの商店街の入り口にある。ご主人の笑顔がなんとも失礼ながら可愛らしいのもいい。

 同店の名物はウイットに富んだ名古屋弁の接尾語「なも」を二つ重ねた「なもなも最中」。

 ふらりと旅に出て、端午の節句にだけ売り出される「黄飯」に出合えたのは実に幸運。いい旅であった。


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