深い場所を曳くトロール船のある港でときどき目にするのがイガグリガニである。我が娘はこれを見て思わず「かわい〜〜い」と叫び。底引きの船頭は「幾らにもなりゃしねー」と蹴飛ばし。沼津の甲殻類学者飯塚さんは「これはいい標本が出来そうだ」と笑みを浮かべる。そしてボクは思わず「うまそうだ」と思いながらも「いたそうだな」と躊躇する。そんな甲殻類なのだ。
「まさかこんなぬいぐるみのような生き物を食べるの? 可愛そう」なんて思うのはあまりに了見が違う。「可愛いから殺してはいけない。頭がいいからイルカを保護しろ」なんて言うグリーンピースのような陥穽に落っこちることだけは絶対にやめよう。周辺海で海産物をうまーく利用しなければならない我が国の人類であるなら「食えるもの、また殺してしまったものは食うのだ。これが宿命なのだ」。水産物をうまく利用しないと自然など保護できるわけがない。
と言うことで要するにイガグリガニはうまいのである。料理法は蒸してもいいし、塩ゆででもいい。とにかく毬(いが すなわち栗の実に似ている)の痛さに絶えながら、それでも乏しい足の肉、甲羅の下の肉をちまちまと食う。微かだが甘味があるし、旨味というか味にコクもある。
味がいいのはさておき「歩留まりが悪い」、「棘とげで取り扱いが大変」、「あまりとれない」の3点を持って商品価値はかなり低い。それでも水産物に興味のある、また好奇心旺盛、食の冒険が大好きな人、これは是非一度お食べてみて欲しい。
市場魚貝類図鑑のイガグリガニへ
http://www.zukan-bouz.com/koukakurui/tarabagani/igagurigani.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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