2007年1月22日アーカイブ

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 面白いことに富山で有名だと思われる「マスの押し寿司」というものがコンビニでは定番なのである。どうして定番になったののだろうだれか教えて欲しい)。もともと富山市を流れる神通川の「マス」、サクラマスは有名で、この「ますの寿司」の原型は1717年(享保2年 大岡越前が江戸町奉行になった)に富山藩士吉村新八が藩主に献上するために作ったもの。『日本山海名産図会』1799(寛政11)年にも神通川のマスはある。これを富山市での鉄道開通とともに駅弁として売り出したのが明治の終わりで大正の始まりというややこしい1912年(受験の時に、この年のこと覚えておけよ、と言われた人おおいだろうね)のこと。
 名物となってデパートなどでも売られているので「富山に行ったら“鱒寿司”買わなければ」と思っている名物恐怖症の人も多いはずだ。この駅弁の「ますの寿司」も手軽に都内で買える。そしていつの間にか「ますの寿司」は総てのコンビニの定番と成り上がった(成り下がった? どっちだろう)ようなのだ。

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 そしてまず最初に買ってきたのがセブンイレブンのもの。ボクなんて学生の頃にはコンビニなんてなかった世代であり、やっと姿を見せたのがセブンイレブンだった。と言うことはセブンイレブンはコンビニ貝の老舗である。
 コンビニでよく見かけるのは丸い形のもの、でもセブンイレブンのは四角形であった、作っているのは富山県ではなく東京都武蔵村山で作られたもの。武蔵村山と言えば志村けんしか思い浮かばないかもしれないが、都区内への通勤圏にある中堅都市である。そこにある「わらべや日洋」が生産、セブンイレブンに卸しているようである。(この「わらべや日洋」面白そう。一度工場見学させてくれないかな?)
 さて、この押し寿司の原料は「トラウトサーモン(サーモントラウト)」でも原産国の表示がない。たぶん原産国表示は寿司に加工した時点で不必要になるのだろう。でも「サーモントラウト」は国産はまずなく、ノルウェーかチリからの輸入だろう。すなわちセブンイレブンでの「マス」は「サーモントラウト」ニジマスということになる。
 あとは甘酢に使う調味料や多少の添加物でなかなか身体には優しそう。
 この「押し寿司 ます」の特徴は表面に貼り付けた「サーモントラウト」そしてすし飯、いちばん下にもすし飯となり真ん中にコンブの佃煮が挟まっていること。この味わいはなかなか侮れぬもの。出来るだけ早く富山県産の「鱒の押し寿司」を食べてみたいと思っているが、高速のサービスエリアなんかで買い求めたものよりもセブンイレブンのほうが旨いかも知れない。また原料が「サーモントラウト」ならわざわざ富山で作る必要はないのである。

わらべや日洋
http://www.warabeya.co.jp/
セブン-イレブン
http://www.sej.co.jp/index.html
参考文献/『ふるさとの味と技 いきいき富山特産品ガイド』富山県貿易物産振興会
市場魚貝類図鑑のサーモントラウトへ
http://www.zukan-bouz.com/sake/sarmont.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

 まずはここでサケマスで問題となる魚種を限定しておく。まず間違いなく我が国でサケ、もしくはマスと呼ばれているのはOncorhynchus(サケ属)と大西洋に棲息するSalmo(タイセイヨウサケ属)、Salvelinus(イワナ属)のサケ科3属の魚たちである。これらが我が国ではサケ、もしくはマス、もしくはイワナと呼ばれている。英語ではsalmon(サーモン)とtrout(マス)のどちらかにあたる。
 このなかでイワナ属で「マス」と呼ばれているのがアメマスであり、陸封型をエゾイワナというが、サケマスの話から外しても問題ではないと思うのでこれを外してしまう。以下イワナを取り上げないので、ここで簡単に説明するとイワナ属で「trout(マス)」と呼ばれているのがレイクトラウト(北アメリカ、カナダ原産)、ブルックトラウト(カワマス 北米東岸)がいてともに我が国での認識は「マス」である。とすると本州に棲息するイワナも英語圏では「trout(マス)」になる。だから「イワナ」=「マス」の異名と考えても問題はないのかもしれない。

以下問題となるサケマスの仲間を列挙する。
太平洋に棲息するOncorhynchus(サケ属)
1 サケ
2 カラフトマス
3 サクラマス
4 ギンザケ
5 ベニザケ
6 マスノスケ(キングサーモン)
7 ニジマス
8 ニジマスから改良されたサーモントラウト(トラウトサーモン)
大西洋に棲息するSalmo(タイセイヨウサケ属)
9 タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)
10 ブラウントラウト

 さてサケとマスの使い分けはどのような法則でなされるものか。調べ始めると意外に厳密な言葉での区別はない。例えばsalmonは海性のサケ科の魚、troutは淡水性のサケ科に魚とわけるとあるが、これも陸封されれば「マス」であり、海に下れば「サケ」なのかという疑問が湧いてくる。
 それではその法則を摘要できそうなものを探すとベニザケにいきつく。ベニザケはたまに紛れて日本にまで回遊してくるものの本来は我が国よりも北に棲息するもの。でも陸封(一生淡水で暮らす)ものが阿寒湖、チミケップ湖(津別町)にいて、これをヒメマスという標準和名で呼んでいる。すなわちベニザケに関する限り、明らかに陸封、すなわち淡水型のものをマスと呼んで区別しているのだ。
 ところでそんなわかりやすい例とは違い、複雑なのがカラフトマス、サクラマスである。カラフトマスなどは川で生まれ下って一年間海で暮らす。そのやや小振りの時期にとったものを「あおます」と呼ぶが、大きくなってもカラフトマスであって、サケと同じような生活環なのに生涯「マス」なのである。またサクラマスは陸封型をビワマス、ヤマメ、アマゴと斑紋の違いなどで呼び分けられている。厳密に言えばこの陸封3型が「マス」であり、海に下ると“サクラサケ”とならなければいけないのにサクラマスと「マス」のままなのだ。ということで「マス」だからこうではなければ、「サケ」はこうだという定義がないのだ。
 この在来種、半在来種以外に「マス」という概念を明らかに我が国に植え付けた魚が登場する。それが1877年(明治10年)にアメリカからもたらされたニジマスである。ボクの子供の頃などカラフトマス、サクラマスなどのいない四国にあっては「マス」とはニジマスを差す言葉であった。これがサケのように海に下るなんて我が国の一般人には思いもよらず。淡水のサケ科で「マス」の代表格のようであったはずだ。このニジマスの海に下るタイプがスティールヘッドである。そう言えばこれは英語ではsalmon(サーモン)なのだろうか。現在ではニジマスは海で養殖されている。これがサーモントラウト(トラウトサーモン)であるので現代の食生活においてはもっとも身近なものとなっている。
 以上は太平洋のOncorhynchus(サケ属)の話である。それではこれを大西洋のサケ科の魚に話を移す。我が国で食用としているSalmo(タイセイヨウサケ属)で重要なのがタイセイヨウサケである。これはノルウェー、チリ、オーストラリアなどで大々的に養殖されて輸入ものが出回っている。市場では英語名の「アトランティックサーモン」とか「サーモン」と呼ばれている。これは世間一般では明らかに「サケ」なのではないか? でも「サケ」と呼ばれることはなくあくまで「サーモン」であるが、これは言葉としての「サケ」「サーモン」の分離だろうか。市場に見る限り「アトランティックサーモン」は明らかに「サーモン」とは認識されるが「サケ」ではない。

 さてここに始めるのは「サケの考現学」なのであるが、そんな面倒なことをやらかすわけではない。世に出回っているサケ科を材料とするお握りや、加工食品などが「サケ」と表示されているのか「マス」と表示されているのか、その標準和名は種名はなになのかを調べていくだけである。真面目なお勉強と言うよりもお気軽な読み物となるはずなので、適当に読み飛ばしてボクの混乱振りを笑っていただけるとありがたい。またくれぐれも銘記しておいて欲しいのは「表示はこうあらねばならない」という思いはまったくない。

市場魚貝類図鑑のサケマスへはここから
http://www.zukan-bouz.com/zkanmein/fish.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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