サケの考現学10 高級サケの代表選手となったアトランティックサーモン01

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 ある日、市場で知り合いの魚屋が、仲卸に呼び止められて、
「あの、安い“キング”あるんすけど持ってきません。2本だけなんすけど」
 その会話に割り込んで、箱の中を見せてもらう。これがアトランティックサーモン(標準和名のタイセイヨウサケ)なのである。
 アトランティックサーモンは今でこそ「サーモン」で通るのだけれど、長い間「キングサーモン」と呼ばれていた。その名残がなかなか消えないのだ。生食用サケでは今や最高級品としての位置を確保している。

 日常的に市場でみられるサケ科の序列をみると生食用と加熱用で2つに分かれる。
 生食用では
一、アトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)
二、サーモントラウト(ニジマス)。量的にはアトランティックサーモンを抜き去っている
三、ギンザケ(宮城県産 値段は高いが量は非常に少ない)

 この中で生食用のトップにくるのがアトランティックサーモンである。生食用にできるのはサケ科でも養殖されたものだけ。天然は原則としては生食は不可となる。もし食べるなら寄生虫などの問題から自己責任となる。そして養殖のサケというとノルウェーでのアトランティックサーモンが嚆矢とも言えよう。同時期に国内では宮城県女川でギンザケの養殖が始まるが、量的にはまったくノルウェーの敵ではない。ノルウェーでの養殖ものが輸入され始めたのが1980年代。生食できると言うことで人気を博したのが1988年あたりからだろう。そして養殖サケが世界的に見ると天然魚の生産量を抜き去り。今日では日本に置いても天然のものを凌駕する勢いなのである。すなわちアトランティックサーモンという養殖魚は日本のサケ科の歴史ある硬い秩序を根底から破壊してしまったのである。
 ノルウェーから本種の輸入が始まったときいちばん問題となったのが「タイセイヨウサケ」という標準和名、もしくは「アトランティックサーモン」という英語名である。これではあまりに馴染みがなく誰も買っていくわけがない。それで苦肉の策で「キングサーモン」として売り出してしまったのだ。この“キングサーモン”が回転寿司、街の一般的な寿司屋でも料理屋でも瞬く間に受け入れられてしまうのである。そして今や生鮮品としての輸入量が2万トンを超えてアトランティックサーモンなくしては寿司業界は成り立たない状況となっている。
 アトランティックサーモンの養殖はノルウェーで始まり、南米のチリの飛び火、そして現在ではイギリス、カナダ、アメリカ、オーストラリアなどへも広がっている。この各地からの輸入ものが築地では一同に交いして見ることが出来る。
●本稿はボクのメモである。アトランティックサーモンに関しては、これからも書き加えていく

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これはイギリスからのもの

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このページは、管理人が2007年2月14日 11:38に書いたブログ記事です。

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