サケの考現学15 塩サーモントラウト

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 ニジマス(サーモントラウト)の海での養殖は1980年代初頭に始まり、とくにチリでは顕著に増大している。そして今や市場や小売りの場で見かけない日はないくらいである。このサーモントラウト(トラウトサーモン)というのは「自然界に存在するニジマスそのもの」ではなく、作られた一世代だけの交配種、すなわち成熟しない「食用だけのために作り出されたもの」だ。言うなれば鶏で言うなら成長の早いハクショクレグホンをブロイラーとした以上に、人口的である。
 サケというのは成熟すると味が落ちる。例えば標準和名のサケが未成熟の白サケ、時サケ、鮭児を珍重し、成熟がすすんだ「ぶな」が安いのを見てもわかるだろう。だから養殖する家畜としてのサケはギンザケのように成熟するものよりもサーモントラウトのように成熟しない一世代交配種が優れてるのだ。

 サケ科の魚は種により用途を違えている。まず天然のサケは原則的に生食は出来ない。養殖ものだけが生食として公に流通できるのだ。その養殖サケで例えばタイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)は値段が高くほぼ総てが鮮魚として流通している。輸入ギンザケはほとんどが加工されたものでの輸入。そして多くが冷凍輸入、それを解凍して塩鮭やムニエル用の切り身に加工される。すなわちタイセイヨウサケは刺身、スモークサーモン、そして高級な切り身になる。ギンザケは主に熱を通す食材になるのだ。ここにサーモントラウトがあって、これは生食、塩鮭などの加工品にも使える。これは身自体の味がいいということと、また原材料の値段が安いからだろう。とするとサーモントラウトは万能のサケと言える。

 さて、この画像の説明を始めよう。これは我が家からクルマで十数分のところにある大型のスーパーにあったもの。加工品の種類としては「塩鮭」である。「塩鮭」とは言っても昔ながらの塩に漬け込むというのではなく、塩水に漬けたもの。最近は市場で見る限り、「山漬け」とか「ふり塩」とかよりも、塩水で立て塩にしたものの方が多い。またパッケージに「脂がのっておいしい」とある。これなど現代の嗜好を顕著に表している。塩鮭を選ぶ場合も「脂が少ないがアミノ酸による発酵がすすみ、風味旨味の増した昔ながらの天然サケ」よりも「風味も熟成による旨味もないけれど脂ののった養殖サケ」の方が好まれているのだ。
 この製品の表示としては「トラウトサーモン・養殖・チリ」とあって消費者が最低限知りたいことを明確に伝えている。この点で三和というスーパーは合格だ。最近思うことだが、大型のスーパーやデパートの方が小さな魚屋や小型スーパーよりも表示はしっかりしている。このあたり個人商店も負けないようにして欲しい。そうしないと消費者の信頼は大型小売店に持って行かれてしまう。
 そして当日、同店舗で目立つ場に置かれていたサケが、このトラウトサーモン(サーモントラウト)、タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)、ギンザケという輸入養殖サケ。そして特売のコーナーにベニザケ、標準和名のサケが置かれていた。
 また100グラムあたりの値段は158円。これは東京近郊での塩鮭の一般的なプライムゾーンだ。八王子、築地など市場の卸値で見ると100円前後、大型の流通業だったらもっと大きなロットでの仕入れとなり、卸値はより低いだろう。まるで工業製品のように生み出されていく養殖サケ、価格も安定しているだろうから「出来るだけまとまった量を取り扱う小売店ほど有利な商品」と言える。とすると、養殖サケは街の魚屋よりも大型小売店(スーパー)で買う方がいいということになる。
●サケの考現学はまだまだ書き進む

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このページは、管理人が2007年3月23日 11:02に書いたブログ記事です。

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