2007年4月 1日アーカイブ

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 八王子は郊外にある。だから週末は築地などが寂しいのに反して、一般客が入ってきて市場は賑わいを見せるのだ。そんな八王子綜合卸売センター、『高野水産』には荷が溢れている。トラック2台分。到着の8時半とともに荷が下ろされる。本日の目玉は1匹100グラムほどの形のいいサヨリである。
「そら出たぞ、サヨリちゃん、吉永サヨリちゃんてか」
 突然、日野市の飲み屋のオヤジがサヨリの発泡に下手な洒落をいいながら突入するのだ。
 買い物に来ていて中国の方が不思議な顔をしている。若い主婦もそうだ。ボクだって吉永小百合の全盛期(1960年代)はしらないぞ。
 でもとにかくサヨリちゃんを買わなければ、春じゃないような気がする。
 これがキロ当たり1800円という破格の値段。あわてた割には手にしたのはたったの2本。知り合いの寿司屋に「1本どれくらいある」と言われて計りまで往復したのが敗因となった。1匹だいたい100グラム強。大きいと180グラムもある。

 サヨリの産卵期は春なのである。もう既に腹には真子が詰まっている。多くの魚が真子が大きくなると味が落ちるのに対して、サヨリは産卵の直前まで脂がある。だから産卵期にむかって買い手が殺到するのだ。
 サヨリを買い込んだら八百屋に立ち寄り、スダチを買い込む。まだまだ高いけどサヨリちゃんのためである。なんといってもボクは徳島県人なのだから、スダチがなくてはサヨリが食べられない。

 夕食には旬のホタルイカとサヨリをアテとする。そのサヨリの旨さをなんに例えようか。吉永小百合ではない。これは間違いない。映画『卒業』のキャサリン・ロスだろうな。これも誰もわかってくれねーだろうな。ボクの永遠のマドンナだ。
 なにしろサヨリの旨さは鮮烈である。その一片が舌に触れた途端、サヨリならではの旨味がしみてくる。しかも春だから脂の甘さもある、そして旨味もある。これなら酒の旨口辛口吟醸本醸造などどうでもいい感じである。ただただ舌に春だなという余韻を残してサヨリは一片一片消えていく。加山雄三ではないが「幸せだな」と言った気分になる。

 さてサヨリの旬もそろそろ終了となりそうだ。春を惜しむようにせっせとサヨリちゃんを買い込んで、「幸せだな」という春の宵を楽しまねば。


市場魚貝類図鑑のサヨリへ
http://www.zukan-bouz.com/fish/datu/sayori.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 北浦というのは宮崎県でも最北の地にある。地図を見ると面しているのは太平洋ではなく豊後水道といってもいいのだろう。海岸線が複雑に入り組み、風光明媚なところであるように思える。
 この豊後水道の入り口で巻き網でとったマアジを活かしたまま、1週間餌ぬきして出荷したもの、それが「灘アジ」である。市場で見る限り、釣りアジと、巻き網などの一般的なマアジとの中間的な値段で売られている。ボクが見る限り1キロあたり1500円から1800円くらいだ。並のアジはキロ1000円以下なのと比べて、かなりお高いものとなっている。でもキロ当たり4000円以上はする「関アジ」とくらべると遙かに安い。また当日の釣りアジの値段が2300円だから質さえ良ければ手が出ようというもの。

 このアジに最初に目をつけたのが八王子市内の「スーパーイシカワ」さん。
「このアジがいいんだよ。身がしっかりしてる。形(大きさ)も手頃だろ。使いやすい。それに脂もあるよ」

 北浦の「灘アジ」は大きさを揃えて浅い発泡にキレイに並べられてくる。まずこれだけでも買い手の目を引く。しかもここ数日続けて入荷してきているので、既にかなりの人気をはくしている。だから発泡を開けるとすぐに売り切れとなる。大急ぎでこれを2本ほど確保する。

 夕方になって迷うことなく刺身にする。卸していても腹の部分がしっかりしている。これは未消化の餌が体内から除かれているためだろう。皮を引くと身に弾力があるのか、まな板に置いてコロンとしている。まずは何もつけないで食べてみる。生臭みは皆無だ。やや小振りであるが脂がある。なによりもシコっとした食感があるのがいい。
 これは醤油よりもスダチと塩の方がいいのではないか。手塩皿に粗塩とスダチを用意して晩酌のアテとする。これがまさに絶品である。窓を開けると気持ちの良い風が桜の花びらを運んでくる。春の物憂い宵に辛口の酒とうまいアジの刺身というのが、一庶民のお父さんには至福の時である。

 北浦漁協のホームページを見ると2003年に宮崎県の水産物ブランド認証をとったとある。「関アジ」ほどには話題性はないものの。巻き網という比較的一般的な漁法で漁獲。餌抜き期間をもうけるだけだから、あるていどまとまっての出荷も可能だろう。値段も高からず、低からずと、ほどよいもの。そこにあるのは商品としての最低限の「差」であろう。今、市場に求められているのは明らかにこの最低限の「差」なのである。「関アジ」の行き過ぎたブランド化を真似しないで、独自の形を確立したというのが素晴らしい。北浦漁協は見事である。

北浦漁協 宮崎県延岡市北浦町市振541-4
http://www.jf-kitaura.jp/index.html


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