吉永サヨリが旬である

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 八王子は郊外にある。だから週末は築地などが寂しいのに反して、一般客が入ってきて市場は賑わいを見せるのだ。そんな八王子綜合卸売センター、『高野水産』には荷が溢れている。トラック2台分。到着の8時半とともに荷が下ろされる。本日の目玉は1匹100グラムほどの形のいいサヨリである。
「そら出たぞ、サヨリちゃん、吉永サヨリちゃんてか」
 突然、日野市の飲み屋のオヤジがサヨリの発泡に下手な洒落をいいながら突入するのだ。
 買い物に来ていて中国の方が不思議な顔をしている。若い主婦もそうだ。ボクだって吉永小百合の全盛期(1960年代)はしらないぞ。
 でもとにかくサヨリちゃんを買わなければ、春じゃないような気がする。
 これがキロ当たり1800円という破格の値段。あわてた割には手にしたのはたったの2本。知り合いの寿司屋に「1本どれくらいある」と言われて計りまで往復したのが敗因となった。1匹だいたい100グラム強。大きいと180グラムもある。

 サヨリの産卵期は春なのである。もう既に腹には真子が詰まっている。多くの魚が真子が大きくなると味が落ちるのに対して、サヨリは産卵の直前まで脂がある。だから産卵期にむかって買い手が殺到するのだ。
 サヨリを買い込んだら八百屋に立ち寄り、スダチを買い込む。まだまだ高いけどサヨリちゃんのためである。なんといってもボクは徳島県人なのだから、スダチがなくてはサヨリが食べられない。

 夕食には旬のホタルイカとサヨリをアテとする。そのサヨリの旨さをなんに例えようか。吉永小百合ではない。これは間違いない。映画『卒業』のキャサリン・ロスだろうな。これも誰もわかってくれねーだろうな。ボクの永遠のマドンナだ。
 なにしろサヨリの旨さは鮮烈である。その一片が舌に触れた途端、サヨリならではの旨味がしみてくる。しかも春だから脂の甘さもある、そして旨味もある。これなら酒の旨口辛口吟醸本醸造などどうでもいい感じである。ただただ舌に春だなという余韻を残してサヨリは一片一片消えていく。加山雄三ではないが「幸せだな」と言った気分になる。

 さてサヨリの旬もそろそろ終了となりそうだ。春を惜しむようにせっせとサヨリちゃんを買い込んで、「幸せだな」という春の宵を楽しまねば。


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このページは、管理人が2007年4月 1日 22:42に書いたブログ記事です。

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