2007年10月22日アーカイブ

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 マグロ屋は深夜ともいえそうな早朝からマグロの解体に忙しい。それで普通に朝がきて一段落、一休みして、こんどは廃棄する頭部、また尾の部分から利用できそうなところを外していく。本当に大変な仕事なのである。
 その頭部にあるのが「八の身」である。ちょうど魚の先端部分から背にかけて八の字を描くように頭蓋骨に埋まっている。たぶんこの筋肉が体からすると小さすぎる脳みそを保護しているのだろうね。暑さ寒さを断絶する目的でたっぷり脂がのっている。

 この八の身に「大トロに匹敵する」という意見あり、「いやいや、やはり下手は下手」という意見ありだけど、ボクは好きなんだね、この部分。やや細かく切り、寿司飯の上に散らすと、まさに濃厚な旨さが光るし、これをマグロぶつにしても味わいが光る。なんてうまいんだろうね。八の身は光に満ち満ちている。

 そんなことを思ってマグロ屋の前までくると、これを掘りとっている店長の頭まで「ピッカリ」光っている。さすがマグロ屋だ、偉い。この光に「きっとマグロの八の身もうまいだろうな」と思わせる何かがある。

 八王子総合卸売センター『マルミ』にて。

八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 築地場内でも八王子総合卸売センター『高野水産』にも様々なフグが入荷してくるようになった。その代表がトラフグであるけど、これはお高いね。「あがり」すなわち活けで入荷したものが売りにだされる以前にとん死したのや、少々キズありのものならキロ当たり2500円(1本あたりも2500円前後)という破格のものもあるけど、やはり味わいからすると養殖でもキロ当たり3500円以上、天然ならキロ当たり1万円くらいのがざら。とするとやはりお手軽に夕食でとはとてもいかない。
 そんなフグ界の主役がトラフグなら、ここに名脇役がいて、その名がショウサイフグなのである。別名「名古屋」。すなわり「終わり名古屋は城で持つ」の「終わり」に「終わり=死」をかけての呼び名だ。こっちはキロ当たり1000円前後しかしない。しかも総て天然物だ。

 ショウサイフグの毒性は、肝臓、卵巣は猛毒(10グラム以下で致死的)、皮、腸、その他内臓は強毒(10グラム以下では致死てきではない)、筋肉は弱毒(100グラム以下では致死てきではない)。ということにもとづいて厚生省ではショウサイフグの可食部は筋肉のみとしている。
 どうして弱毒のある筋肉を食べていいかというと、かなり飽食しても生命に問題はないということに他ならない。

 ショウサイフグはまず、毒の除去をする。ようするに筋肉だにするということ。頭部にもワタ(毒がある)があるので捨ててしまい。皮を剥くとかなり歩留まりが悪くなる。これをペーパータオルに包み一日寝かせる。こうすると余分な水分が抜け、旨味が増す。
 一日置いたら、ぶつ切りにして軽く湯引きにして「ふぐちり」にする。「ちり鍋」の原則はフグ刺しにしてあまったアラの部分を昆布だしだけで、あっさりと煮ながら食べる。だから本来身自体を使うことはない。すなわち高価なトラフグを骨までしゃぶる料理法だったのだろう。(……ところが最近でも養殖フグの出回っていることから身自体を食べるように変わってきている。……)そこへいくとショウサイフグの場合、庶民的な身がそのままゴロンと入った食べでのある鍋の材料だった。これは江戸時代、そして明治大正、そして現在でも変わらないものだ。
 庶民の味だったわけだから天然トラフグの上物にはかなわない。でも天然トラフグが1本2万円なんてことになると身まで含めた河豚ちりを堪能するのは難しい。そうすると廉価なトラフグのちりはやはり養殖ものとなってしまう。それでもみがき(毒を除去した身)にして晒しに包んで寝かせてくれればいいものを「活けをすぐに」鍋に使うのが当世流行ときている。バカなタレントが旅番組で「まだ身が動いてますね」なんてのを鍋に放り込んで感激する芝居をうっているが、それじゃあね。

 賢い庶民はこんな大バカ野郎は放って置いて、ショウサイフグをひと晩ねかせて鉄刺(てっさ 刺身)でも河豚ちりにでもして堪能するべし。
 ちり鍋の中からボリューム満点の身をつかみだして紅葉おろしでいただく。これそんじょそこいらの河豚屋には絶対に負けるもんじゃない。ずば抜けた旨味、しっかりした身、そして旨味充分の出汁。我が家の姫などは河豚の身を器にとり、出汁とポン酢を合わせて、なかでほぐしながら食べているが、これもうまいねー。鍋を管理するお父さんとしては野菜や最後の雑炊のためにだし汁を残しておきたい。でも結局自らがそんな食い方におつき合いして最後の最後に悔しい思いをする。

 この市民的かつうまいショウサイフグ、なかなかスーパーなどでは手に入らない。八王子総合卸売センター『高野水産』のようにフグ調理師がふたりもいる店はほとんどないのだ。そこに東京湾、外房などで釣りで手に入れるという迂遠だけど楽しい方法がある。道具も簡単だし、釣り上げたものは船宿で毒の除去をしてくれる。これについてはボクも連載人のひとりとなっている『つり丸』などを参考にしてもらいたい。
 また東京湾でも昔からたっぷりショウサイフグはとれていた。当然昔ながらのフグ屋では「名古屋のちり鍋」が楽しめる。下町散策のついでに「ふぐちり」というのもいいだろうな。

 河豚ちりを思うと、早く冬になってしまえと思うのである。ちなみに「ひれざけ」はショウサイフグでは出来ません。熱燗で我慢、我慢。
●ショウサイフグを一般人が料理するときには自己責任においてやっていただきたい。また商用に利用するときにはフグ調理師免許が必要となる。

『つり丸』へ
http://www.tsurimaru.com/
八王子の市場のことは
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ショウサイフグへ
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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