2008年9月19日アーカイブ

 魚貝類を調べていて、常に壁となるのが水産会社なのだ。
 国内に水産会社は凄まじく多く、しかも規模が大きい。
 特に大手などは外部から見て、いったい何をやっているのかぜんぜん理解できなかったりする。

 そんなときシーフードショーで見つけたのがマリンフーズという会社である。
 水産加工の世界にうといボクでも名前だけは知っているという、知名度の高い企業だ。
 ただし実際にどのような商品を取り扱っているのかなど、まったく未知の世界といえる。

 そのマリンフーズの展示会に行って来た。
 そして圧倒された。
 いろんな人から「すしだねを中心とした会社だね」と聞いていた。
 実際に製品をみせてもらって、ゆでエビとかイカのゲソなんかだったので身近な小規模なものを想像していたのだ。
 ところが取り扱う商品の多種多様なこと、また魅力的であることに驚かされることとなった。
 展示会とはいうなれば試食会なのである。
 多種多様なものが食べてくださいと並んでいる。
 この会場をマリンフーズの方に案内して頂いて、どんどん食べて、食べて食べまくってきた。

 その初っぱなが冷凍鍋・スープなどのパックなのだが、このような商品はまず買わないだろうもの。
 だいたい「お湯をそそぐだけ」という簡便さだ。

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 インスタントに抵抗があるので、期待はゼロで食べてみたら、これがよくできている。

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 次に、冷凍寿司だねで、すでに切り付けしてあるので解凍するだけで、あとは握るだけだ。
 いろいろ食べたが、マダイの湯引きが素晴らしい。
 冷凍刺身と同じと思えるもので、解凍しても、これほどに美味なのに驚く。
 また家庭向けといっていいのか、冷凍すし飯があり、これを加えると、気軽に家庭で握りずしが楽しめる。
 我が家もそうだが、子供が大きくなるごとに別々に食事をとるように変化していく。
 これは現在の普通の生活をしている限り、避けては通れない道だ。
 こんなとき、この冷凍ずしってありがたいな。

 今話題の「CAS」があった。
 ここでホタテ、ウニを生、冷凍で食べ比べてみたが、これがほとんどかわらないうまさだ。
 将来漁師さんが減り、ますます漁業が衰退していくだろうけど、この冷凍技術はその歯止めになるかもしれない。
 また日本各地の魚貝類を冷凍したものもある。

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島根県産魚も取り扱っていた

 千葉県産マダコの足、長崎産サザエ。
 もちろん中国産であったり養殖魚をフィレにして冷凍したものもある。
 これを見ていく限り、ますます魚貝類を在庫化できる状態にする傾向が強くなりそうだ。
 なぜなら解凍した刺身、加工品などの味が抜群にいい。

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家庭で簡単に刺身盛り合わせが食べられる

 冷凍寿司ネタ、新しい寿司ネタのコーナーなども見物だった。
 北海道産チカ、三陸産のイラコアナゴ、キンメダイは輸入物だったように記憶するがとてもうまい。

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 昆布締め、酢締めにすると、すでに冷凍食品であることは誰もわからないだろう。

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お総菜、おつまみなどの新しい食べ方の提案もあった

 最後に今年の恵方巻きのコーナーを見て会場を後にした。
 実をいうと多くの人たちが家庭の荒廃とか、自宅で料理をしなくなった、とか喧しい。
 ただ、それは普通の人々が怠慢になったわけでも、食に無関心になったわけでもないと思う。
 この現代があまりに複雑な価値観をもたらし、また膨大な情報を垂れ流しており、普通に生きているだけで、なかなか忙しくも大変なのである。
 ましてやこの不況であるけど、共働きは当たり前だし、子供だってアルバイトに塾に、クラブにと忙しい。
 どうやって家庭でうまいものを食うのだ?
 そんな解決法がマリンフーズの作り出すものにも見つけられそうに思える。
 「食育」も現在の社会の状況に合わせたものに変えるべきだな。

マリンフーズ
http://www.marinefoods.co.jp/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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 関東の市場でフジツボが売られていたとして、それは十中八九、いやほとんど百パーセント青森県産のミネフジツボだろう。
 ミネフジツボは青森県では古くから食べられており、養殖されている。
 不思議なことに呼び名は「かき」だ。
 “小型のグラスほどもある”というのがあって、それならチリ産のピコロコだったりする。
 両種の特徴は“大きくなる”ことにつきる。
 さて関東の市場で見かけるフジツボはこの2種だけと思って間違いないだろう。
 フジツボというのは歩留まりからして、最高値の魚貝類だと思われる。
 例えば1キロ2500円也で買って、可食部は10分の1よりも、はるかに低いだろう。
 それでも毎日のように見かけると言うことは、フジツボはまだまだ魅力のある商材・魚貝類といえそうだ。

 国産のフジツボには他にアカフジツボ、オオアカフジツボ、クロフジツボ、オオイワフジツボ(?)が食用となる。
 クロフジツボは伊豆半島などで昔から食用とされていたもの。
 ただし非常にローカルな食材だし、岩に強固に張り付くという習性から、採取はなかなか困難を極める。
 オオイワフジツボは広島県倉橋島の日美丸さんに送って頂いたものを、ボクなりに同定したものだが、これは保留にしておきたい。
 アカフジツボ、オオアカフジツボはよくブイや発泡の浮きに付着している、そのなのとおり赤いフジツボのこと。
 とても味のいいフジツボなので、今、養殖などが試みられている。

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 このアカフジツボを築地場内で発見した。
 トレイ1ぱい(約500グラム)1000円だった。
 『一吉』という仲買で産地ははっきりしない。
 「たぶん北海道でしょう。大都(魚類)で仕入れたんですけど」ということ。
 それで大都魚類に問い合わせたのだけど、どうしても産地がわからなかった。
 ちなみに現在、アカフジツボの養殖を行っているのは宮城県であるようだ。
(参考/『フジツボ類の最新学』日本付着生物学会 恒星社厚生閣)

 持ち帰って、『フジツボ類の最新学』の記述を参考に同定してみる。
 周殻(フジツボの富士の山状の殻)と背板、楯板を見る限り、アカフジツボである可能性が非常に高い。
 いくつか殻の白いものが混ざっているのも決め手になりそうだ。

 その昔、磯釣り(防波堤釣り)をやっていたとき、ときどき野宿に近いことをやる。
 当然簡単な料理を作るのだが、もっとも基本となるのがみそ汁なのだ。
 いろんなものをみそ汁の具に使い、ボクがその美味の王様に違いないと考えたのがアカフジツボ(オオアカフジツボかも)である。
 すばらしい出しが出るし、殻を割りながら食らう中身もいい味なのだ。

 その原始的な野外での食事とはうって変わって、家庭では蓋つき手つき鍋で酒蒸しにする。
 少々、水を加えて、蒸気を鍋にこもらせる。
 できるだけ早く、火を通していく。
 まあ、酒蒸しなんて簡単至極な料理で、ささーっと五分もかからない。

 富士山の噴火口から、楊枝を使って身をせせりだし、せせりだして食べるのだけど、クチバシがザリっとつぶれて、その根元の身らしきものが濃厚な旨味を綿ボコのように保有している。
 綿ボコだけど、やはり身だろうね。
 間違いなく、腹にたまらない綿ボコを楽しんだら、噴火口にたまった汁を飲み。
 ときどき蒸して出た、汁をスプーンで飲む。
 濃厚で、塩味をつけていないのに塩辛い汁は、フジツボの生体からでた旨味の全部に思える。

 残念ながらフジツボの酒蒸しは酒の肴にはなりはしない。
 合いの手に酒を飲むのがわずらわしくていけない。
 純粋に純粋にフジツボを味わう料理だ。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、アカフジツボへ
http://www.zukan-bouz.com/koukakurui/fujitubo/akafujitubo.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/

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