皮剥の煮つけに晩秋を感じるのだ

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 築地場内の『大音』さんで野締めながら大振りでうまそうなカワハギを見つける。
 この店のよさは店のせまいことからもいいものを、選んで仕入れてきている点だ。
 どの魚をとっても、それなりに満足のいくものばかり。

 カワハギは秋になるとぐっとうまくなる。
 そういえば「餅はぎ(もちはぎ)」なんて呼ばれることがある。
 これはどうやら、秋になるとぐんと値段が上がることから、漁師さんの餅代の元になるためではないだろうか。

 秋の日は釣瓶落とし。
 寒くなってきていて、これは鍋だななんて、皮をはぐ。
 頭の角(第一背鰭棘)の前を包丁でまさかりのように叩き切り、この切れ目をぐっと前後に引きちぎる。
 するとワタは破れることなくきれいに飛び出してくるし、肝もきれいに露出する。
 残念ながら肝はやや崩れてきている。
 細心の注意をはらって肝をとりだす。
 頭は半割にして鰓を取り去り、目玉をとる。
 ここで気が変わり、「煮つけにしようか」と生姜を出してくる。
 魚を料理するときには、こんな気まぐれがよく起こる。
 これを熱湯をかけて冷水にいれる。
 ザルに上げて水気を切っておく。
 煮汁は味醂少々、酒、ほんの少し砂糖、しょうゆ、調味料と同量の水。
 カワハギの肝と身は煮立ったところに放り込む。
 途端にカワハギの身がプチプチっと割れる。
 これは鮮度がいい証拠だ。

 後は中火、やや強火で一気に煮あげていく。
 コトコト弱火にしてはだめだ。
 落としぶたを煮汁が持ち上げる程度に火加減する。

 待つこと暫しで皮剥の煮つけは出来上がる。
 あとはむさぼり食うのだけど、へたに箸で上品になんて思ってはいけない。
 煮汁の甘さよりも、カワハギの身の旨味をともなった甘さが、口の中に広がるのだけど、それを、味わって、その余韻をしみじみ感じていてはいけない。
 うまいカワハギの煮つけは、立て続けに一気食いする。
 残った煮汁で作る骨湯もまたうまし。

 さて、ボクはと言えば、こんな理想的な食い方をしているわけではない。
 片手に『多摩自慢 本醸造』を持っているわけで、口をしょうゆだらけに汚す姫達を見ながら、ボチボチ煮つけをつまんでいるのだ。
 煮汁の中に肝を見つけてはつまむ。
 この肝のうまさをなんに例えるべきか思い浮かばない。

 冷や酒をそそぎながら、ふとそろそろぬる燗にかえようかなんて、丹波・清水美和雄さんのとっくりを出してくる。
 この丹波立杭焼きであたためた酒がうまいのである。
 肌寒くなって、また立杭の集芸館に行ってみたくなる。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、カワハギへ
http://www.zukan-bouz.com/fygu/kawahagi/kawahagi.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑(いちばぎょかいるいずかん)へ
http://www.zukan-bouz.com/
集芸館
http://www3.ocn.ne.jp/%7Eleeko/top.htm


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このページは、管理人が2008年11月 1日 17:43に書いたブログ記事です。

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