12月31日(土曜)のこと

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 真っ暗な、そして寒々しい部屋に明かりをともす。午前4時に近い。散らかる新聞に耐震構造偽造の事が載っている。我が家の近くにも「ブランドステージ」という名のマンションがあり、知りあいに入居している方もいる。夜明け前のこの時間にも「現代の鬼達」に苦しめられて呻吟する人多しではないか? パソコンを立ち上げて大急ぎで画像の保存にかかる。昨日からの尾鷲の魚貝類撮影に、過去のデータ整理を済ませる必要があるのだ。

 6時過ぎに我が家を出る。雑木林を抜けるその足元から刺すような冷気が上がってくる。車が凍りついていないのは空気中の水分が皆無であるからだろう。平山橋に向かい豊田の水路の道に入る。この道は久しぶりだ。ここで鹿児島から帰省している、わかしおさんに会い、市場にお連れする。わかしおさんは薄暗い住宅地の小道にいて、初対面の挨拶もほどほどに車に乗ってもらうが、なぜか初めての人とは思われない。鹿児島県笠沙町での定置網、また自然のこと聞きたいことがいっぱいあるが、こんなことが苦手なのだ。
 八王子綜合卸売センターには6時半過ぎに着く。まだ薄暗いのに駐車場に人。そして場内にも人がいて、思ったよりも賑やか。『大商ミート』で豚肉を注文して、『高野水産』に向かう。『フレッシュフード福泉』にも『高野水産』にも商品は残り少ない。八王子総合卸売協同組合に踏み入れるやいなやもの凄い人混み。『光陽』で、わかしおさんにモツ煮込み定食を食べてもらう。今日も客は多く、疲れているのか、お母さんのご機嫌斜めと見る。
『光陽』から『ワンダ』、そして『市場寿司 たか』と渡り歩いて、わかしおさんと話す。どうして、聞きたいことが多いと、うまく会話が出来ないのか話していて自己嫌悪に陥るのだ。『市場寿司 たか』ではお持ち帰りのみの営業。まず持ち帰りの「ちらし」を確保して9時前まで話し込む。自宅には撮影しなければいけない尾鷲からの魚貝類が待っていて、時間がない。
 わかしおさんは37歳。今、鹿児島県笠沙町の定置網の船頭をしている。背は高くないが肩幅が広く、海水でそうなったのだろうか、荒れた手のひらが印象的だ。その上、話していて、とても落ち着きがあり、またつい話し込んでしまうほどの話題や魅力も持っている。なんだか初めて千葉の海人つづきさんに会ったときを思い出す。つづきさんとわかしおさん、3人で飲みたくなる。定置網と言えば今や各地の定置網は地方での就労に置いても重要な位置にあると思われる。そこで船頭をするのは大変なことかも知れない。話しているうちに鹿児島に行きたくなる。
 わかしおさんからは、またおいしい「つけ揚げ(薩摩揚げ)」と珍しい魚をいただく。マテアジ、クロホシヒラアジ、コバンヒイラギなど、初めて見る魚ばかりでワクワクするとともにすっかり大晦日であることを忘れてしまう。だいたい大晦日などいらないのだ。
 帰宅すると、家人が実家に行く用意をしている。土産用の出汁巻き卵を焼いて持たせる。そして撮影。魚から始めて、同定も同時に行うが、わかしおさんからのマテアジの同定が意外に難しい。撮影は6時過ぎまで。まだまだ撮影しなければならないものが残るが、腰が限界になる。
 画像の整理だけして、コタツに潜り込む。井上靖『北の海』を読んでいると家族が帰宅。いきなりテレビをつけてくだらない番組を見る。仕方なく、わかしおさんからの、「つけ揚げ」、『薬師神かまぼこ』からの、「あげ巻き」、沼津の菊地さんからいただいた「潮かつお」で岐阜の「三千盛 純米吟醸 しぼりたて」。7時45分まで『ドラえもん』、そして『紅白歌合戦』。
 これが終わって「花巻そば」を作る。砂糖、みりん、しょうゆ、水を合わせてかつお節で、そばつゆを作る。これにさば節と昆布でのだしを加えて、かけしるにする。ゆで上げた乾麺のそばを水洗い熱湯に通し、かけしるをかけて、刻み海苔を乗せるのだ。

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 年越しそばを食べながら「行く年来る年」を見る。新年になって寝床で『北の海』を読む。家族はまだテレビを見ている。


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このページは、管理人が2006年1月 1日 12:26に書いたブログ記事です。

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