駐車場への階段を下りていくと、雑木林は浅黄に染まっている。これから5月にかけて季節は急ぎ足になる。当然、海の状況もいちばん変化する時期。市場に行くのが楽しいのである。
それで入った八王子魚市場場内。貝の売り場はさすがに「貝春」というごとく楽しい。
三重県鳥羽市からデカイ平がい【タイラギ ハボウキガイ科の大型の二枚貝。福島県、日本海中部以南の泥の海底に突き刺さるように棲息。主に貝柱を食べる。当然プロが見るのも貝柱の大きさ、決して貝殻の大きさではない。値段は安くて350円前後、高いと1000円を超える。貝柱1個の値段と思って考えるに高いものだ。ホタテは甘い味わいでクセもない、これに対してタイラギには微かな渋み苦みとともに独特の風味がある。このクセがホタテよりも値を高くしているのだ。寿司ネタにして最高にうまい】。1枚550円(これはあくまで卸値)。
市場魚貝類図鑑のタイラギへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/uguisugaimoku/tairagi.html
鹿児島県阿久根市「マルホ せいうん水産」からキビナゴ【相模湾以南に棲息するニシン科ウルメイワシ亜科の小魚】の刺身。このきれいに開いたキビナゴの刺身は意外に便利でうまい。当然生を開いた方が上だが、こんなものを夕食に1パック買うのもいいのでは。近海、特種ともに荷は少ない。これは荒天のためである。
『源七』の店の入り口に、いちご【ツメタガイ 千葉県船橋では「つべた」ともいう。北海道南部以南の浅い砂地に棲息する。アサリなどを襲って食う肉食貝で、しかも値のつかないものなので漁師には嫌われている。茹でて、煮て美味】。
奥に入ると、あんちゃんがなにか塩ゆでにしている。
「アカガイのワタだよ。うまいぞ」
というので茹で上がりをつまむ。アカガイ【北海道南部以南、朝鮮半島、中国などに棲息。近年国産物は少なく、市場で見かけるのは中国か韓国のもの。値段は高い】は産卵期前でもっとも味のいい、身の太ったとき。切りとったワタと身がぷっくら膨らんでいる。これがうまいんだな。ワタの微かな渋み、貝臭さが身の甘さと混ざって「酒が欲しいな」という気分になる。
市場魚貝類図鑑のアカガイへ
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/pteriomorphia/funegai/akagai.html
八王子綜合卸売センター『ケン水産』には北海道根室「カネマ 浜屋商店」から灯台つぶ【オオカラフトバイタイプ。「灯台つぶ」にはシライトマキバイ、クビレバイ、ヒモマキバイ、オオカラフトバイの4種があり、非常に紛らわしい。中でもヒモマキバイ、オオカラフトバイの区別は至難。大産地の厚岸から来るのはヒモマキバイが多く、根室はオオカラフトバイが多い。値段は安い】。キロ/700円なので5個買い150円くらい。
市場魚貝類図鑑のオオカラフトバイへ
http://www.zukan-bouz.com/makigai/ezobai/buccinum/ookarafutobai.html
『高野水産』に14キロのクロムツ【北海道南部以南から本州中部太平洋側に棲息する深海魚。非常に値が高い】。
八王子総合卸売協同組合、八王子綜合卸売センターともに荷は少なく、それなのに値は安い。市場の天井を滑空するツバメが喧しい。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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