川越「深井屋」のうな重

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 ウナギ屋というのは難しい商売だ。買い入れるウナギから、焼き方、タレなど、その味わいを作り出す要素は複雑多様。それだけにウナギ屋にはいるとじっくりその複雑さを味わい鑑みる。しかも値段からかそれだけのうまさを求めてしまう。

 埼玉県川越はウナギでも有名な土地柄、できればうまい蒲焼きを食べたいものだ、と探してみた。もともとガイドブックなど嫌いなたちで店の構えを見て入るのが常套。
 そんなそぞろ歩きで見つけたのが「深井屋」である。店構えもほどほどに抑制された造りで好ましい。ここで午後のひとときを過ごすのもいいだろう。実際、はいった様子もいい感じである。店のいちばん道路側に座り、道行く人の足元だけが見える低い窓。なんだか時が止まっているように感じる。まあ店内の造りは今風で決してじっくり見てあか抜けた雰囲気ではないが「これはいいんでないかい」。
 そこでウナギの頭の佃煮を肴に熱燗を1本。待つことしばしでうな重(1680円)が出てきた。すなわち蒸しの行程まで済ませたものを焼いて出しているのだ。食通じゃないのでこんなことはどうでもいい。蒸しまで置いておいてもうまいうな重は多々あるのだ。肝吸いが来て新香がきて。銚子にのこった酒を一口にあおってうな重を食う。
 上に1串半の蒲焼き。これが軟らかく香りも悪くないが平凡なもの。どうもこれでは面白くないのだ、食べていてウナギの味わいがそこそこ出てはいる。仕入れからしても間違っていないだろう。タレはやや都会的で甘味を抑えていて、ある意味洗練されているのだろう。でも食っていて良識的すぎる。優等生だ。ウナギ料理に関する限り、これはいけないと思う。もともと野卑な料理なのだ。味わいのどこかに野性的、精悍な躍動感が最低限ないと寂しい。それが「深井屋」には感じられない。
 このうな重を食べていると宮崎の「浜乃茶屋」さんや「うなせん」さんのウナギの旨さが思い出されてならない。我ながら罪な旨さを知ってしまったものだ。ウナギの味わいには「なにかもう一つプラス野卑、野生」が必要なのだ。それからすると「深井屋」は後二歩くらい足りない。
●入店したのは3時前。少々昼時をのがしてしまっている。これで「深井屋」の味わい自体を判断することは出来ない。これはあくまで悪条件での評価。こんな条件でそこそこの味わいを出せるのは凄いのかも知れない

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深井屋 埼玉県川越市仲町2-8


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このページは、管理人が2006年5月12日 21:57に書いたブログ記事です。

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