鯛の粕漬けとアラスカメヌケ

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 市場で「鯛の粕漬け」と呼ばれるものがあって、この原料がアラスカメヌケ、もしくは大西洋でとれる「目抜け類」のモトアカウオなのである。これらはカサゴ目メバル属の魚であって間違ってもタイの仲間ではないが今でも下町の食堂などに行くと「鯛かす定食850円」などと品書きにある。
 この「鯛かす」は決して商品名でもなければ、実際に市場で「鯛粕漬け」というものを探しても見つかるわけがない。これは40代以上の市場関係者、もしくは昔ながらの食堂だけで通用する言葉。今では「鯛かす」はなくて総て「赤魚の粕漬け」となっている。すなわち食堂でも「あこう」、もしくは「赤魚」くださいと言うところ、未だに昔のまま「鯛かす」でも通用する。
 この「赤魚の粕漬け」が「鯛の粕漬け」と呼ばれていたのは、どれぐらい前までなんだろう。明らかに戦後北洋漁業が盛んになってアラスカメヌケなどがふんだんにとれていたとき、加工されていろんな商品名で流通したのだろう。そこで粕漬けにしたときに……アラスカメヌケ=アコウダイの仲間=あこう鯛の粕漬け=「鯛」の粕漬け……と言葉が推移した。「あこう」が小さくて「鯛の粕漬け」が大きく表示されて「鯛かす」と呼ばれていた例は実際にみている。これは彼のJAS法以前までのこと。それ以前に堂々と「鯛の粕漬け」という商品名があったのかは実は知らない。この歴史も面白そうだ。
 さて、この「鯛かす定食」もしくは食堂で「鯛かす」を注文するのは年間一度か二度。めったに食べないのだが、ないと寂しい。そしてなぜか自宅では決して食べないのが「赤魚の粕漬け」である。粕漬けは焦げやすく家庭では焼けないなんて思っている方も多いかと思うが、魚焼き器にレンガを乗せて金ぐしを使うといとも簡単に美しく焼ける。もっと自宅で食べてもいいのに不思議なことだ。
 味わいは、さすがにカサゴの仲間だけあり白身の上品な味わいで、脂がのってうまい。ご飯にもあうのもで、自宅でももっと食べようかと思っている。でもこれが朝ご飯に出るとふと下町の場末の食堂を思い出しそうで嫌かも知れない。

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八王子総合卸売協同組合「光陽」にて

市場魚貝類図鑑のアラスカメヌケへ
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このページは、管理人が2006年6月25日 12:04に書いたブログ記事です。

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