茂さん、梅雨にサバで悩む

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 八王子並木町、甲州街道沿いの『魚茂』さん、マサバの前で悩みに悩む。結局、一箱分のマサバを取りだして、また悩んで「どうしようかな」。

「茂さん、悩むことないだろ。もうよくなってきてないか」
「そう思うだろ、ほらこれ見てみな」
 2本箱から出して見せる。左は腹が軟らかく、
「これはまだ産卵してないか、したところ。こっちはいいだろ」
 この問題ありのマサバが2本、3本混ざってる。

「これ使えないよな」
「でも茂さん(先代)待ってるだろう」
「そうなんだよ、おじいちゃんのこと考えると」
 並木町『魚茂』の「茂」は先代の名前。面白いのは当代・和智潮は市場では「茂」さんっと呼ばれ、帰ったら締め鯖名人の茂じいさんが待ちかまえているのだ。
「仕方ないな。じいさんのために仕入れるかな」
 ここで市場のダイちゃん、
「お買いあげ、ありがとうございました〜」

 春に産卵するマサバやマイワシは産卵期が場所や群によってずれていて、本来この時期には回復しているはずでも「遅れているヤツがいるんだよね」と魚屋の目は厳しいのだ。しかも魚屋にとって致命傷なのはマサバなどで産卵間近、産卵直後のものは煮つけや塩焼き用にも売れない、まるまる損をしてしまうもの。その分を値段に転化出来るかと言えば、茂さんなんて出来ないタイプなので悩んでいるのだ。
 こんなささいなことだが、大型スーパーにはできないこと、こんなことを大切に「魚選び」をするから魚屋の存在理由があるのだ。
 ちなみに『魚茂』の締め鯖、こはだはまことにうまいのだ。

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このページは、管理人が2006年6月29日 08:18に書いたブログ記事です。

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