スルメイカの別名を「夏イカ」という。市場にばらイカ(スルメイカの小さなもの。形が小さすぎて並べられない)、下氷(大きくなって氷を敷き詰めた上に並べる)もある。そこにとうとう本格的な入荷が始まったのが「活けスルメイカ(略して活けスル)」である。これは決して水槽で元気に泳いでいるわけじゃなく、身は生きて、吸盤を触ると吸い付いてくる、まるで「活け」のようであるというもの。
産地は千葉や伊豆半島周り、三重、和歌山などである。それぞれ関東など消費地に近いところであり、すべて釣ったもの。しかもたくさんの釣りロボットを使い大量にとるのではなく、一本一本丁寧に釣り、氷入りの海水で急速に締める。これを冷やした海水をはった発砲に入れて、ビニール袋に入れた氷をそえる。すなわち輸送中にも海水は薄まることなくスルメイカの生きて泳いでいるときのままの状態にある。あとは翌日の消費地での競りまでに運び、その日の内に消費者のもとに届けられる。漁師さん、また流通ともに一丸となって「活け」のスルメイカが我々のもとに到来するのだ。
旬の夏とはいっても、「スルメは使わないよ」といった寿司屋も多いのである。これは同じく夏が旬のアオリイカと比べて身の透明感、旨味でかなわないがためである。ところがこの「活けスル」の登場で庶民派のスルメイカもちょっと上等になった。すなわち寿司屋のネタとして認知されてきたのだ。
しかし手間のかかった「活けスル」最初こそは値があがったものの、近年目新しさがなくなったのか求めやすくなってきている。安いとキロ/800円、1本あたり300円以下での取り引き。これでは漁師さんや流通業の手間からすると割に合わない。もっと「活けスル」は評価されていい。透明感のある身、そして弾力、甘味、寿司屋も上握りの主役に選ぼうではないか? 夏の「活けスル」。
また街の魚屋を見て歩いていて、しっかり「活けスル」が並んでいる。大量に流通させることで成り立つ大型店舗では無理でも魚屋を覗けば「活けスル」が手にはいるのだ。食卓に「活けスル」の刺身、川本三郎さんの真似をしてビールというのも新鮮な気分になる。
殺菌海水にビニール入りの氷、泳いでいる活けスルメイカの筋肉はまだ生きていて、吸盤を触ると吸い付いてくる
市場魚貝類図鑑のスルメイカへ
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