朝方、6時に起きる。外は曇り空ながら雨は降っていない。姫を起こして市場に向かう。
八王子魚市場、やはり土曜日で低調。そんななかに1袋のアレがあるではないか!
「坂本君、アレ、幾らかな」
「今日は安いすよ1万8千円ですから」
「そうなんだ。昨日は?」
「3万6千円かな。すぐ売れましたけど」
そうか今年もそんな季節になったんだな。築地での初物値段はいくらだったろう。4万、5万、もっとかな。「高いんだから触るなよ」、知り合いの魚屋がわしゃ関係ないよ、と通り過ぎる。この時期のアレとは当たり前だが新子(コノシロの稚魚)である。「市場寿司 たか」では3枚つけくらいで仕入れるのだが、1袋2000円を割ってから、やっと「買おうかな」という気持ちになるらしい。この「高嶺の花」誰が買っていくのかな? 1かん幾らになるんだろう?
『源七』に回ると若だんながでっかいメバチをおろしている。その脇にうまそうな「かきだし(中落ちからスプーンでかきとったもの)」。
「幾らかな」
「幾らだといいの」
Vの字を出すと横を向く。当たり前だ! 手を開いて(500円という意味)、
「これだといいな」
「仕方ないなもってけ」
これで今夜はうまい酒が飲める。
八王子総合卸売協同組合、『光陽』でアジフライ定食、姫は冷やし中華。
『三恵包装』でお菓子と素麺を買い。
『丸幸水産』には天然の本鮪(クロマグロ)、尾長(ハマダイ)もいい。
「クマゴロウおはよう」
これは姫のお言葉。
八王子綜合卸売センターに回り、そろそろ年貢納めどきかと『高野水産』でたまっていた借金を払う。
「謝金払うと気持ちいいだろ」
高野の恐いお姉さんがポツリ。
「気持ち悪い。オエだ。伝票一枚くらい計算漏れしてもいいよ」
「バカ言うんじゃないよ。これっくらいの額で」
後ろにいたお千代姉がケツで思いっきり押してくる。
「まったく邪魔なんだから、冷蔵庫入れないだろ」
早々に退散。後ろからお姉さんが爽やかさに欠ける声で
「次はすぐ払えよ」
『フレッシュフード福泉』でめかぶを買う。
「うまい干物ないの」
「ダメなんだよ。時期的な問題かな、コレというのがなくてさ」
『総市』には解凍サンマ。解凍サンマを見かけるようになるとそろそろサンマ漁の解禁近しである。
一箱950円(税込み1000円)。25本入りなので1本あたり40円。スーパーの目玉商品にして2本で100円ということもあり得る
『ビックリ屋』で枝豆、ミョウガ、青じそ、一本ネギ、卵を買う。
『河辺ハム』にまわって。
「なんか安くてうまいもんないかな」
「そうだなうちは全部安くてうめーんだけど。三角バラ持ってく」
「高いな580円(100グラム)だろ」
「なに言ってんだ。デカイ腹して。これぐらい買ってやれよ」
これはお隣の「プラカロ八王子」(冷凍食品卸)の社長。
「大きなお世話だ。好きで腹がデカイんじゃねえ」
「それじゃ、牛はやめようか、これどう」
「これなに」
「ラムなんだけど、うめーぞ。負けてやるから買えよ」
負けてくれるなら素直に買うのだ。
帰宅は8時半。そして悪戦苦闘の一日が始まるのだ。
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