市場の寿司屋である『市場寿司 たか』のお客は当たり前だが市場で働いている人たちが多い。彼らはみな食品を扱う仕事をしているだけに、なかなか味にはうるさいし、また毎日のように『市場寿司 たか』で食べているとさすがに「飽き」が出てくる。そんなときに彼らの我が儘をいちいち聞いている内に寿司屋としてはいささか変化球的な代物が作り出されてくる。
「あのさ、巻物が食いたいんだけど、太巻きでさ、卵もマグロもキュウリも食べたい」
こんなことを言ってくるし、
「オレさ、歯が悪いから乗せるのを全部細かく切って、そこに玉子焼きをいっぱい乗せてよ」
こんな我が儘というか、やんちゃな注文をしてくる肉屋もいるのだ。
「今日は熱があってさっぱりしていて、そしてパワーが出るヤツ」
これは無理だろうというのもある。
そんななかで、たかさんが風邪をひいた市場人に隠れメニューとして作っているのがこれなのだ。
「これって栄養的にもいいんじゃないかな。納豆が植物質でねぎとろは脂があってイカにはタウリンがあるだろ。絶対に精がつくよな」
まあ、本当に風邪に効くかどうかわからないのだが、この「ねぎとろいか納豆丼」がうまいのは間違いない。ボクも我が儘なのでここに刻んだたくわんを散らしてもらう。とろと納豆のそれこそトロトロ感にイカが意外なほどに味わいを深く複雑にして、そこにネギのアクセント。これじゃトロトロでうますぎてやりすぎじゃないの? ないの? と思ったところにたくわんの爽やかな甘味が加わってくる。まあ、これだけうまけりゃ風邪も治るだろうな? という味わいになる。
これは隠れメニューなので値段がない。それで市場人が勝手に名物の「豪海投げ込み丼」と同額の600円を置いていくのだ。当然、ボクはもっと身内だから500円にしてもらっている。
「市場寿司 たか」のことは
http://www.zukan-bouz.com/zkan/zkan/rink/gest.html
八王子の市場のことは
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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