沼津の佐政水産、青木修一さんからケータイがきて、
「伊東赤沢でカライワシの仲間でなんていいましたかね。この辺では珍しいんです」
形を聞くと間違いなくイセゴイである。画像は持っているもののまだ食べていない魚なので面倒だが送ってもらうことにした。
まあイセゴイを食べるというのは聞いたことがなく、定置網に入っても捨てられてしまうもの。大きくて見たところ立派なのに利用されないというのはまずいからに違いない。それを食べてみるというのも「市場魚貝類図鑑」を作る上での避けて通れないことではある。
やや遅れて到着したイセゴイの鮮度はまだまだよく、その鱗の輝き美しさは見事というしかない。それを押っ取り刀で『市場寿司 たか』へ持ち込んだ。
「これきれいな魚でしょう」
「そうだね。でも鱗が硬そうだけどね」
まな板にのせたイセゴイ、その鱗は硬くとてもとるのは無理。仕方なくすき引くのもだめなんだな、包丁がダメになりそうだ。それでもなんとか3枚に卸す。
「なんだこれ、身がベトベトしているな。それに軟らかいな。あっれ、骨が、ここと、ここと、ここにもあるよ」
「まあ、世の中に食べられない魚はないというでしょ」
このあたりで明らかに、たかさんの顔に険しさが浮き上がってきている。
柳をとりだして骨をよけて身を切り離す。そしてどこに包丁を入れても骨に当たるのだ。
「これは無理だろ。これだけやって3かんとれるかな」
まな板の上にはイセゴイの身が散乱している。
そしてやっと握りが出来た。味わいは寿司図鑑に掲載するとして。
「どうして、毎回疲れる魚ばっかり持ってくるんだよ。たまにはまともな魚持ってこれないのかな」
よく見ると目に涙をためて怒りに打ち震えているのだ。でも50歳を過ぎるとときどき理不尽なことに遭わないと余計に歳をとるらしいから、これもボクの親心なんだ。だから「ごめんよ」とは言わないからね。
そして帰宅して半身を塩焼き、唐揚げ、煮付けにする。こんどはボクが泣いてしまった。
辛きこと悲しきことおおかかりし五十路の秋。
市場魚貝類図鑑のイセゴイへ
http://www.zukan-bouz.com/fish/sonota/isegoi.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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相模湾の小ガツオ
中国の青島で居酒屋を経営してます。昨日市場で約30cmのイソゴイを買いました。名前が分からず、地元の漁民もあまり見かけない魚だと言ってました。とりあえず冷蔵庫にしまってあります。とにかく名前が分からなかったので、このサイトで調べていてイソゴイだとわかりました。でも、これこそ煮ても焼いても食えない魚なのでしょうか?試食の意欲半減です。ちなみに中国の南方では、このイソゴイを開いて日干しに
しているようです。彼らは美味だと言ってますが私は試したことありません。
babioneさん、イセゴイがまずいというのは日本料理でのことです。中華のように強火で揚げる、香辛料、香菜などを使えばうまい料理が出来るかも知れません。そのときには教えてください。