クラカケトラギスは地味な好青年なのである

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 和歌山の魚々ちゃんから楽しいお魚セットが送られてきた。ボクはこれを「魚々便」と呼んでいる。鮮度や種類によって「市場寿司 たか」で握りに仕立てたり、また煮付けに、塩焼きにしたり、忙しい中でも楽しい時間を持つことができた。そのなかにまとまってあったのがクラカケトラギスだ。なかでも小振りのを集めて天だねに仕込んでいく。

 トラギスの仲間は比較的温かい(水温)浅場からやや深海までの砂地に棲息する小魚。大きく育ってもせいぜい20センチ上。砂地でせっせと環形動物や小エビを食べて生きている。遊魚船などでの釣りでもお馴染みだし、底引き網や定置網にも入る。
 食べると「うまいよな」とは漁師のご意見、また釣り師でもベテランやうまいもん好きには評価が高い。でも流通の場では見向きもされなかった雑魚のひとつ。それがこのところ築地でも見かけるし、それなりに値を付けている。

 話はかわるがトラギスはどこか人間的な顔をしている。例えばオキトラギスはずばり悪女。こんなに典型的な悪女顔は最近女優さんにもありはしない。でもこのドハデさの裏には情の深さを秘めているのかな。それに反してクラカケトラギスは向学心に燃える地味な好青年である。でもこんな真面目そうな裏側には社会党の浅沼委員長を暗殺した少年(1960年の話)のようなすごみも秘めていそうだ。ぼうずコンニャクの提案なのだがトラギスに限ってはじっくり顔をながめて欲しい。本当にどれほどながめても見飽きることがない。

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まさに絵に描いたような好青年。でもつき合いたくはない。食べたいけど

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濃艶、ドハデ、二番落ちした娼婦、例えるとこんなところだろうか? 永井荷風なら「おもしろかるべし」とでも書きそう


 さてそんな木訥とした顔つきは関係ないだろうが、じょじょに天ぷら種として注目を浴びてきている。きっと釣り人には「おそいよ」と思われるだろう。この魚の評価はたぶん釣り師の方が先に上げてきていたのだ。築地には天だねだけを扱う仲卸があるのだが、そこでも見ているので「キスがなけりゃトラギスにするか」と天ぷら職人に新しい常識感が生まれるのもすぐだろう。

 さて話をボクの手元にもどす。高温の油でトラギスを揚げていく。トラギスは前日に開き、少し水分を抜いている。キスよりも背ビレ付近のウロコや小骨が強いので注意が必要だ。この天ぷらのうまさよ、いかに例えるべきか? 間違いなくシロギスに劣らずであるし、また皮の香ばしさはシロギス以上だろうか? 甲乙つけがたい味わいだと思うがどうだろう?

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 この和歌山の「魚々便」こんど我がサイトで通販を始めて見たくなる。いかがでしょうかね「お魚好き」の皆さん。和歌山の雑魚、小エビなどの「魚々便」、我ながら面白そうな企画になりそうだ。

市場魚貝類図鑑のクラカケトラギスへ
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/toragisu/kurakaketoragisu.html


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このページは、管理人が2006年12月 3日 10:40に書いたブログ記事です。

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