サケの考現学06 塩鱒を買う02

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 八王子で唯一塩鱒を常備する『興実水産』で塩鱒(一キロほど)1300円を購入する。『興実水産』ではこれを「青鱒」と呼ぶ。初夏に根室釧路沖でとったものだろう。「隣には「めじか」がある。「めじか」はサケの銀毛で産卵回遊する以前の沖にいるもの。これは鱒よりは値がいい。でも秋に沿岸の定置に入った「秋鮭」は明らかに人気がないのだという。それでここにも置いていない。当然、値段は最底辺となる。

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 1本買うと、これを見事にさばいてくれる。頭を落として背ビレ尻ビレを切りとる。それを二枚に下ろして切り身にするのだ。さすがにプロは早い。ほんの5分とかからないで油紙の袋に1本の塩鱒が収まる。

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 塩鱒は香ばしく焼き上げると、なかなかうまいのである。ただし難点は冷えてから。冷えるとやはり脂がないのでパサパサする。でもお握りに入れる限りは充分すぎるほどに美味である。なんといっても香ばしさがいい。でもこのパサパサ感が子供たちの好みには合わないようだ。そのためだろう。今、コンビニお握りの「鮭」は鮭でもカラフトマスでもなく輸入もののベニザケやギンザケ、サーモントラウト(ニジマス)が主流となっているのだ。
 また、この塩鱒には「丘」の文字がある。これは水揚げしてから陸上で加工したということだ。この塩をするにもいろいろあり、輸入もののギンザケなどは「立て塩」すなわちフィレにして塩水の中に浸すことで「塩をしている」ものばかり。この塩鱒は明らかに塩をまぶして作っている。ということで香ばしい旨味を感じる風味もある。でもこれが並木町「魚茂」の言う腹の辺りが真っ黄色な塩鱒と同じ物だろうか。古くは「山漬け」といわれる長時間塩に漬け込む方法で作られた。これはたくさんのカラフトマスを何段にも重ねて長時間塩に漬け込むことで熟成させる。それによって有象無象の旨味成分が醸し出されるので味わいは薄塩を遙かに上回るようだ。この「山漬け」というのも実際に味わってみたいものだ。

 沼津魚の達人菊地利雄さんは御年58歳。代々魚を扱う家に生まれている。中学生の頃の話として、
「当時の物は山漬けであったと思います。現在、山漬けの製品を探しても見つかりませんし、『山漬け』と言う名称を知ってい
る方が何人いらっしゃるのか」
 昔の塩鱒の味わいを思い出してメールをもらった。この「山漬け」の塩鱒のことももっと調べる必要がある事も痛感した。

 最後に肝心な話をしていこう。食物にも「自然に優しい」、「害がある」のふたつが存在する。これは明確に分かれるわけじゃなく、「やや優しい」、「やや害がある」なんて微妙な話でもある。そこをじっくり考えてみるとサケ科の魚を食べるときにいちばん自然に害がないのがカラフトマスではないだろうか? それはまず「養殖ではない」、「完全なる天然でもないが孵化事業は明らかに養殖よりもエネルギーを使わない」、「回帰までの年数が短い」、当然、「天然の海で捕食する他の生物も少ない」、「輸入など移動にかかるエネルギーも国産なので少ない」、ということでサケを次点にしてどうどうの自然に優しいサケ科の雄である。
 またはっきり言って自然保護、温暖化などのことを考えると養殖もののタイセイヨウサケ、ギンザケ、サーモントラウトなどは自然には害はあっても益はない。喜んでいるのは飽食している北の諸国(南北問題の)だけだとも言える。

市場魚貝類図鑑のカラフトマスへ
http://www.zukan-bouz.com/sake/karafutomasu.html
八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html


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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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コメント(2)

こちらでは、はじめまして。

画像掲示板へは何度かお邪魔しております、まるま、です。

この頃の「サケ考」、大変興味深く拝見させていただいております。私の地元ではけっこう沢山、サケやカラフトマスが獲れており、販路拡大に努力しているのですが、いまいち市場ニーズがとらえられないようです。

山漬け、美味しいですよね!
我が家では一塩冷凍秋サケ(格安物)を使って即席山漬け?を作っております(^^;;

「山漬け」と称する商品はネットで検索すると結構
ヒットします。多くは鮭ですけどカラフトマスの
ものもあります。最近は新巻よりも山漬けの方が
人気があるのだとか。
http://www.fishexp.pref.hokkaido.jp/exp/abashiri/kakou_HP/%E5%8E%9F%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB/kakoujyoho/kakou%20No30.pdf

ただ、「山漬け」と言っても塩漬けしただけのものと
塩抜きして干したものがあるようです。

網走で作っている「カラフトマスの山漬け」は
干してあります。
http://www.okhotsk.biz/abasiribrand.html

一方、こちらで販売されているのは干していないようです。
http://www.rakuten.co.jp/shiretokoya/659461/772868/

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このページは、管理人が2007年2月 8日 10:53に書いたブログ記事です。

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