最近、思うに「こはだ」とは、なんとうまいものなのだろう。毎日、毎日、食べても、食べても、また、食べたくなる。
「こはだ」とは、江戸に置いてのコノシロの幼魚、10センチ前後のものを言う方言である。でも最近、「新子=4、5センチ」「こはだ=7、8、10センチ前後」「なかずみ=12〜13センチ」「このしろ=15センチ以上」という厳密な区分の内、「なかずみ」を知らない、もしくは省いてしまう傾向を見受ける。ということで「こはだ」の区分が広がって来ている。これには古い職人たち、寿司通と言われる人たちは大いに嘆かれているようだ。でもボクのようにいつも懐寂しいオヤジは、そんな「嘆き」とは無縁である。「こはだ」と出されたものが「なかずみ」であっても全然気にならない。冬の時期なら脂ののった「なかずみ」大歓迎である。それよりむしろ“こはだ”サイズが少ない時期に法外な仕入れをする寿司屋の方が怖い。
「冬になると、脂がのってくるのはいいんだけど“こはだ”サイズは少なくなるね。ちょっと骨が気になってきた。でも味からすると“なかずみ”はいいよ」
たかさんがネタケースに「こはだ(厳密にはなかずみ)」を仕舞いながら呟く。確かにその通りなので、やや脂が落ちてきたとは言え、この「なかずみ」がすこぶるつきにうまい。
「でも、最近の客は“しめもの”を頼まないよ。だからさ、知ってる顔だけにすすめるだろ。これが嫌なんだよ。すすめなくちゃいけない」
だから『市場寿司 たか』でもあんまり仕込みすぎても無駄になるそうである。もったいない話である。また“光りもの““しめもの”が嫌いというヤツは愚か者であり、寿司屋での楽しみの大半を知らぬものたちである。
たかさんの作る「こはだ」は酢も塩もしっかり、適度に利いている。ちょうどすし飯と合わさっても、その酢は感じられないほどで、塩加減から「こはだ」の味わいが浮き上がってくる。ボクは昼の営業前に出来上がったばかりの「こはだ」をつまむのが最上級の楽しみである。
天気予報では、九州には黄砂が見られたという。とすると今年は「新子」が出るのも早かろう。反面、「なかずみ」すら少なくなって、たかさんが市場を右往左往探し回るようになってしまうのも早いのだろうか。この暖冬傾向が気がかりでしかたない。
市場寿司 たか
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八王子の市場に関しては
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