サケの考現学14 「醤油すじこ」原料はカラフトマスの鱒子

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 水産の世界には魚卵を主に扱う業者というのがいるそうである。その実体を知らないのであるが、標準和名でサケ、カラフトマス、ギンザケ(少ない)、スケトウダラ(たらこ)、マダラ(まだらこ 少ない)等の卵を取り扱う。まあ主な商品としてはスケトウダラの「たらこ」とサケの「イクラ」「筋子(すじこ)」ということになる。
 この「イクラ」と「筋子」の違いは本来はサケの卵の成熟度によるものである。「またあるていど成熟したものでも「イクラ」というのは丁寧にほぐすという工程があり、例えばアメリカでとれたサケなどの卵はほぐさないで「すじこ」として加工するという。そして今回の「筋子」の原料である「鱒子」であるが、まあ良識的に考えるとカラフトマスの卵だろう。この卵は卵粒が小さく、あまり商品価値の高いものではない。だから成熟が進んだものでもほぐさない。もしくは未成熟のものが漁期では多くとれるなどの理由があるのだろう。

 でもなぜに原材料が「鱒子」なのか? きっと業者としては「鱒=カラフトマス」、という常識と「鱒子」という言葉に馴染みがあるために知らず知らずにそれを消費者にも押しつけようとしているのである。そしてたぶんこれには農林水産省もあまり気にも留めていないように思える。そうでもなければ、世に出回るカラフトマスの卵商品の多くが「鱒子」となって流通している理由がわからない。
 ボクが思うに原材料名に「鮭」「鱒」という文字、最低限漢字は排除した方がいい。なぜならばこれほど曖昧な言葉はないからだ。古くは我が国において「鮭」というのは唯一標準和名のサケを差す言葉であった。だから「鱒」とあればカラフトマスに決まっているだろう、という常識が成立しえたのだ。でも今の世の中サケ科の食用魚は増えに増えている。「筋子」であってもギンザケであったり、ときにはアトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)のも流通しているのだ。「鱒」「鮭」という言葉ではとても原材料を正確に表現できない時代が来ているのだ。
 消費者がこの「醤油すじこ」を買う。原材料を見て「鱒」という魚がいるんだと思う。その「鱒」とはニジマスなのか、もしくはただ単に「マス」という魚がいるのかわからないだろう。たぶんほとんどの消費者がカラフトマスにいきつかない。例えば今回の「醤油すじこ」の加工業者、大興水産自体は水産業界の常識で「鱒子」としているのであって悪意はないのだろうが、出来れば標準和名での表示に変えてもらいたい。

 ここ数週間は旧正月前後と言うことで鮮魚が少ない。そのせいなのか「鱒子」をそこここで見かけるのだ。当然、原材料表示は総て「鱒子」、そして産地は圧倒的にロシア、ときにアメリカである。これを冷凍輸入して醤油やみりん、砂糖、塩で調味する。合成着色料、発色剤、防腐剤なども添加して、冷凍保存して在庫化できる商材である。値段は小売値で100グラム前後で300円前後となる。「だいたいアメリカなどからのサケの筋子の半額近いものでしょう」とは塩干の仲買からの話。この安さから、よく売れているという。
 それではと1パック買ってくる。そのままご飯にのせて「鱒子ごはん」でお昼とする。これが意外にうまいのだ。冷凍流通だし、苦みは確実にあるものの魚卵のもつ濃厚な旨味が感じられ、味付けも上手である。これなら出来るだけ無添加とし、パッケージを紙パックにするなど使い勝手、エコロジーのことも考慮にいれる。加えるに表示を正確にすればもっと人口に膾炙するはずである。
●今、ベニザケなどの魚卵に関する情報を探している。

大興水産
http://www.taiko-suisan.co.jp/
市場魚貝類図鑑のカラフトマスへ
http://www.zukan-bouz.com/sake/karafutomasu.html


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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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このページは、管理人が2007年3月 6日 11:24に書いたブログ記事です。

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