銀座ギャラリーおかりや『武内立爾』作陶展

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 ボクにとっては倉敷市児島高洲で貝を取る人である武内立爾さん、本来は陶芸を生業(なりわい)にされている。瀬戸内海で白みる(ナミガイ)やタイラギをとっているというのと、陶芸、なぜか知らないがその人となりを自然児だろうと想像していた。

「一度会ってみたいな」と思っていたところに今回の銀座での昨陶展である。
 地下鉄を西銀座デパートそばの出口から地上に出た。松屋デパートに向かう“松屋通り”をファッションメーカービームスのあるビルの角で右に曲がる。そこからほどなく、やや背高のっぽのビルの地階に「銀座ギャラリーおかりや」を見つけた。
 エレベーターを地下二階でおりるとアプローチもなくすぐそこがギャラリー。そしてぽつねんと立っている精悍な男性が間違いなく武内さんであった。

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 挨拶をしても初めてあったような気がしない。まずは作品を見せてもらう。驚いたことに非常に欲しい皿がある。鉢がある。その作品はボクがまだ若いとき、器というものに対する思い入れに「狭い空間しか持ち得ないでいた」なら受け入れられないものである。なにしろ器から様々な野生というか、武内さんの個性が見えてくる。その根源は色であるようだ。
 あるネットのページを見ると武内さんといえば「辰砂」で有名だという。だから当然鮮紅色に目が奪われるかと思っていたら意外なことに、その青と銀を含んだような黒に強い磁力を感じる。またその黒を浸食する緑。そして武内さん自身に赤と青の話を聞いてから、やっとその色合いの強さを知ったのだ。実を言うと武内さんの器はじっくり目を凝らして見ないと、その真価がわからない。そして手にとって、大振りの魚などを盛りつけるとより魅力的に違いない。

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 武内さんとは倉敷市児島のこと、また魚のことなどいろいろおしゃべりをした。仕事の受け渡し、打合せがなければもっともっと、とりとめのない話を続けていたかも知れない。でも話をするほどにどこか憂鬱なかたまりがボクの中で出来てしまう。これは初めて信楽のガーリー・モーラという人の昨陶展を見たときにも感じたこと。そのときも懐が寂しすぎた。そしてその魅力的な器を手に入れられないで諦めた。今も同じような状況にいる。八方ふさがりの生活にこの器があったらいいな。話を切り上げてお別れするときに、驚いたことに初めてあったボクに板皿を持たせてくれた。

「寿司図鑑にでも使ってください」

 うれしいな。ありがたいな。ちょっと感激である。いい年してちゃっかりし過ぎだろう、と思われてもいい。ボクの中では「この器に合う寿司ネタはなんだろう?」という楽しい問題の回答を探し始めていたのだ。
 さて、この器が「寿司図鑑」に登場するのも遠くないぞ。できればビックリするほどの珍魚にしたい、でも平凡でもこの器が言い画像を作り出してくれるかも知れない。やっぱり新しい器を持っての帰宅は、まだ仕事を残していてもウキウキするのだ。

●武内立爾作陶展は19日月曜日まで。銀座ギャラリーおかりやは朝11〜午後7時、最終日は終了5時
このような個展の時には買う買わないは別にしても必ず作者の声をかけて欲しい。

銀座ギャラリーおかりや 東京都中央区銀座4の3の5 銀座AHビルB2F
武内立爾 岡山県倉敷市酒津1678


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このページは、管理人が2007年3月16日 08:38に書いたブログ記事です。

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