水産加工の世界は広く深く、なかなかとらえどころがない。早くその筋の文献をあさって調べていきたいと思うのだが、とても時間がないという状況にある。
その水産加工用語のなかでも特に意味がわからないのが「ロイン」という言葉。
要するに「カツオなどを四つ割にして急速冷凍超低温で保存したもの」というのはわかるが、それでなぜ「ロイン」なのか。例えば英語でLoinと言うと腰をさす。例えば牛肉の「サーロイン」がそうだ。まさか魚に「腰」はないだろうし、加工法から生まれてきた新語だろうか? どなたか教えていただきたいものだ。
さて、市場などに氾濫する「ロイン」、その多くがカツオである。今回の気仙沼ほてい「カツオロイン(皮つき)」というのは気仙沼沖でとれた戻りガツオ(?)を港まで運んで4つ割、即急速冷凍したもの。ボクはこの市場で「とろがつお(トロガツオ)」と呼ばれるものがあると便利なのでついつい買い求めてしまう。「とろがつお(トロガツオ)」というのはその土地土地でいちばん脂がのっている時期にとったもの。もしくは「単に脂ののったカツオの冷凍もの」という意味らしい。これは一般家庭の冷凍庫でも1週間くらいなら味が落ちないもので買い置いてとても重宝である。
これでキロ当たり1000円ほど。腹側で300円と少しの値段。頭もはらわたもないのだから超お得
驚くことに、この冷凍ガツオは質の悪い生鮮のものよりも遙かにうまい。例えば食べるとシコっとした食感すらあるし、脂ものって旨味も上々である。冷凍でも低い温度で急速に氷らせるためか自然解凍してもまったくドリップが発生しない。だから黙って出されたら、だれも冷凍物だと思わないかも知れない。
市場を歩いていて、思うのだけれど冷凍など加工品が急速に増えてきている。また割合は明らかに生鮮品を上回っているように見受けられる。例えばサケ科の魚などはほとんど総てが加工品となる。それにマグロ、カツオ、ホタテ、イカ、タコ、干物全般など冷凍加工されるものを挙げていったら切りがない。この加工品は多種多様で、膨大なのである。すなわち養殖されたものでも天然ものでも、その多くが在庫化できるものとなっている。ボクのような魚貝類を動物としても食材としても捉えている人間には、これはちょっと寂しい。でも漁港を訪ねる旅を続けていると、この冷凍や干物などの加工業の存在がいかに漁業を支えているかが明確にわかる。これは鮮魚の大きな値崩れを防ぐとともに、食物の廃棄を避けることができる。
閑話休題。
さて、カツオは足の速い食材である。「だからなかなか仕入れられないよ」と市場ではよく聞かれるのだ。もちろん生の旨さには及ばないが、保存性の優れた冷凍ガツオは寿司屋、料理屋にとっても便利極まりないものだろう。だからカツオをどんどん冷凍加工していいという気はしない。それではただでさえ、失われつつある季節感が、より食材に感じられなくなってしまう。このあたりのほど良さが市場にあるのだろうか? 「トロガツオ」を食べていて思うのだ。
気仙沼ほてい
http://www.kesennumahotei.co.jp/
市場魚貝類図鑑のカツオへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/saba/katuo.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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