春も長けてきて、花吹雪が地面を埋め尽くすときとなった。この花びらを踏みしめてあるく夜道がなんだかもの悲しいな。
「トリガイもそろそろいちばんいい時期になって、ある日突然いなくなる」
とは寿司職人のお言葉。そうなのだ活けトリガイは突然市場から消えて、入荷もぽつんぽつんという状態になる。ちなみに活けトリガイとは貝殻のまま活かして入荷したもの。ただ単にトリガイというと開いて湯引きしてタテに並べたものを言うことが多い。生きたものと出来上がったもの。寿司屋で食べても味の違いは歴然としている。とにかく春にはトリガイを毎日でも食いたいものである。
うまいトリガイが食べたくなると、なんといっても八王子魚市場源七に限る。源七は船橋の貝問屋が経営している。当然貝に関してはプロ中のプロなのである。
そのトリガイを仕込んで数十年の源七の若だんな。まずはトリガイの貝殻をひねって中身を掴み出す。それを黒い色素が落ちないように滑りのいいプラスティックの板の上で、これまた滑りのいいゴム手袋で軟体を固定して開いていく。きれいに開いたものを湯通しするのだが、そのところは企業秘密。
「何秒だろうね。ボク、わかんない」
なんてバカ顔をしてとぼけるのだ。
この熱湯に通す何秒かがトリガイの味わいを大きく左右する。
そして源七のトリガイの見た目と味の見事さは、食べないとわからない。
市場魚貝類図鑑のトリガイには
http://www.zukan-bouz.com/nimaigai/heterodonta/zarugai/torigai.html
八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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小振りのハタハタがくると
築地ではお世話になりました。先月末に富津の港に行ってきました。富津でもそろそろトリガイの曳き網が始まるようです。型がやや小さいようで、愛知産の様子を見ながら出荷になるようです。突然市場から姿を消すのは産卵後死んでしまうからだそうです。年魚ならぬ年貝ということでしょうか?
つづきさん、トリガイの市場での動向は難しいんです。今年はやけに安い。富津の港というとどこでしょうね。行ってみたいですね。