原釜での長い長い競りもやっと終わろうとしていたとき。水を流しながら「どんこ(エゾイソアイナメ)」を卸している女性を見つける。
「これどんな料理になるんでしょう?」
「そぼろだね」
見ていると肝は捨てているように思える。
「そぼろってね。鍋で炒って、味噌と砂糖を卵を入れるんだ」
原釜の人たちは皆早口の上、なかなか方言が聞き取れない。でも要するに、どんこを卸して、細かくする。これを鍋で炒って味噌と砂糖と卵を加えて、そぼろ状に仕上げるもの。
「どうして肝を捨ててるんですか」
「これ入れてもいいんだけど生臭いでしょう」
とすると本来は肝を入れるんだろうか? 休憩所でも聞いてみると
「やっぱり肝は入れるね。あとネギだろ、唐辛子ね」
どうやら肝を使う方が本来の形であるようだ。これでご飯のおかずにするそうである。
「子供の頃はよく食べたね」
それで『八巻水産』でどんこを分けてもらい、実際に作ってみる。
どんこは身だけにし、スピードカッターですり身にする。これに肝も加えてテフロンフライパンで炒りながら酒、砂糖、味噌を加えて軽くコンガリするくらいに炒る。最後に七味唐辛子を加えて出来上がり。ネギを入れるといいと教わったのだが、これは後から加えてもいいし、まずはもっとも単純な“そぼろ”にしてみる。今回は最後に溶き卵を入れたのだが、最初から調味料をすり身に混ぜ込んだ方がよかったように思える。
卸したどんこの身と肝
これを炒りながら調味料を加える
甘味は抑えてあるのだが、どんこの肝や身のあたりから甘味が加わって優しい、子供にも受けのいい味わいとなった。七味唐辛子を入れたのは大正解。このユズや山椒の香りで、魚の生臭みはまったく消えてしまっている。子供達がとくに気に入ったのが焦げたところ。この香ばしさと適度な甘味、旨味でご飯とともに“そぼろ”もどんどんなくなっていく。
出来上がり
非常にご飯にあう
市場魚貝類図鑑のエゾイソアイナメ
http://www.zukan-bouz.com/taraasiro/tigodara/ezoisoainame.html
●原釜の底引き船「恵永丸」ほかに教えていただく
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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