市場で「イカの塩辛で今人気があるのはドーレ?」と聞いて、即持ってきたのがコレである。
「塩辛くなくて甘いのがいいらしいんだ。ウチでも毎日食べてるよ」
こんなことを言ってくる魚屋もいる。
それが『マルヨ水産』の「浜そだち 八戸名産 ゴールデンいか塩辛」というもの。
買い求めて早速食べてみると、これは明らかに塩辛じゃない。イカのワタらしきものも入ってそうだし、塩辛くもある。でも肝心要の熟成した複雑な味わいがまったくなく、むしろ微かな渋みしかないところに旨味を遙かに超える甘味が感じられる。
これは明らかに珍味佳肴ではなく、お総菜の一種でしかない。じゃあ、嫌いかというと、この味わい、なかなか良くできているのだ。塩辛くないから、むしろイカの刺身をワタ入りの甘い和え衣で包んだように感じられる。驚いたことに、酒の肴には玄妙さを欠いているが、ご飯にのせてうまいのである。
そして改めて裏面を見て、これまた驚くのである。原材料が凄まじく複雑。イカとあるのはスルメイカだろうか? もしくは輸入ものの「松いか」やイレックス? このあたりしっかり明記して欲しいな。そこにハチミツ、酒精、ステビア、甘草とあって、これ総て甘味である。アミノ酸はわかるとして発酵調味料というのはなんだろう? 醤油かな。でも、大豆を原料としたものが入っていると書かれていないところからすると酒類? だとしたら、甘味の後押しのひとつだ。酸化防止剤、色素など、とにかくこの味わいを作り出し、商品とするのに「出来る限りのことをやってしまった」というもの。
ボクは決して自然食品の信奉者ではないので、こんなことには驚きはしない。むしろ努力してるんだろうな、くらいに感心する。でも、ここまで複雑に混ぜ合わせないと、今時の人々に愛される味はできないのだろうか? 「困った世の中だなー」とも思うのだ。
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