千葉県香取市小見川町『うなせん』のうな重

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 霞ヶ浦で張り網を見た後、潮来、神栖と来て、いつのまにか迷ってしまった。出来れば潮来を見てから佐原、小見川と回るつもりが、潮来の街があまりに見るべきものがなく、駅前から南に下る内にカーナビを見てもどこを走っているのかわからなくなる。どうも利根川の北は広大すぎてとりとめがない。仕方なく利根川を千葉県側に渡り、左手を見ると懐かしい北総漁協の船だまりへの道、そしてほどなく右手に『うなせん』がある。

 かれこれ小見川も3年ぶりとなる。おもわず『うなせん』の暖簾をくぐると、これまた懐かしい菅谷敏夫さんの顔。奥さんも娘さんも元気そうである。
 ちょっと立ち寄ったつもりが、なんと名物の『うなせん流 うな重』をご馳走になる。

 店内で菅谷さんと話し込んでいると、厨房では二代目の正治さんが蒸し器に向かっている。
「修業から帰ってきましてね」
 菅谷さんはうれしそうだ。
 厨房は3年前と少しも変わっていない。相変わらず清潔至極だ。そこで菅谷さんとともに、息子さんの焼きの工程を見る。

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『うなせん』の仕上げ焼きは一種独特である。東京の老舗うなぎ屋で修業したという正治さんをして「一から学び治すようです」とのこと。

 まず蒸しをかけたら、その水分を飛ばすかの如く焼く、そしてタレにくぐらせて焼き、くぐらせて焼き、最後にはタレがカラメル状になるところまで焼く。

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「この焼き方はね。ウチ以外じゃ誰もやっていないの。前に天然を食べてもらったけど、中はふんわりして外はとても香ばしかったでしょ。せがれにもそれを教えてるんですよ」
 相変わらず鴨撃ちで耳が遠くなっている菅谷さんの声は大きい。

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 うな重が出来ると、まずはそのままいただく。これは菅谷さんから教えてもらったこと。ウナギの風味を楽しむには山椒は邪魔なのだ。そして菅谷さん自身の持ってこられたのがワサビである。
「これは私の考えなんだけど、ウナギにはワサビがいちばんあうね」
 あいかわらず表面は香ばしく、ウナギの風味が生きている。これが炊きたてのご飯と合わさって幸せすぎる味なのだ。これは蛇足かもわからないが、ボクの仕事では比較的都内でウナギを食べる機会が多い。ときに出前と言うこともある。そのどれもが『うなせん』の味に遠く及ばないのだ。まさに『うなせん流 うな重』は小見川にしかない味である。

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うな重は、肝吸い、香の物、うなぎの頭の佃煮、果物。漬物の中に見える鉄砲漬けは地元の『ちば醤油』のもの

「今は天然が少ないけど、また秋になったら来てくださいね。そりゃ最高の利根川ウナギの味を楽しんでもらいますから」
 天然ウナギと聞いて途端に満腹感が薄れて4年前の官能的な美味が蘇る。小見川町での“ウナギ鎌漁”解禁は9月だ。秋にはぜひ利根川名物の「ぼっかうなぎ」を食べたいものである。待ち遠しいな!

 お土産まで頂いて、店を出る。店に入った途端、カミナリが落ちて雹混じりの豪雨となっていた。それが小雨となっている。北総漁協の周りをクルマで見て回り、銚子を目差す。

●うなせんは注文を受けてから割き、焼き始めるので出来上がるまでに小一時間かかる。できれば予約してから行く方がベスト。また事前に天然ウナギがあるかどうかを確かめて欲しい。利根川の天然ウナギはこのまま国の無策が続くと幻の味となりかねない。
うなせん 千葉県香取市小見川5628 電話0478-82-1804


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このページは、管理人が2007年5月19日 17:43に書いたブログ記事です。

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