初夏の築地土曜会記01

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 まだ各駅停車の中央線に乗って築地を目差す。新橋からのバスで築地に到着して驚いた。そこには海外からの観光客がわんさかいたのだ。その目差すところは、場内、そして所謂「築地の味どころ」である。まず腹ごしらえに入った『喜久』でも外人さんがかわるがわる店内をのぞき込む。カウンター内の女将さんが「ラーメンってヌードルだっけね」なんて構える姿がおかしい。腹の虫を納めて店を出ると、2軒先のすでに築地では“観光客の行く店”となった『大和寿司』には行列が出来ている。このとき時刻は6時を回ったところ。当然、本日の仕入れはまだのはずだ。とすると早々と並んでも昨日のネタを食うこととなる。

 場内を一回りして鮟鱇さんと合流、波除神社に。境内にはひっそりと紫陽花が咲いている。いつものように5円のお賽銭(裕福になったら500円にします神様)で手を合わせる。これは明治政府が作り上げた無粋な神社の序列、また神道とも関わりのない、宮沢賢治のえがくような「地の神様」への祈りである。間違っても彼の右傾化の顕著なこの国の愚かな首相と同じしないで欲しい。「このまま築地が末永くここにありますように」。境内で待つ間にも場内へ目差す人多々。鳥居の前にかなり幅広の男性が立っているのを見いだす。
 この巨漢が境内に入ってきて「ぼうずコンニャクさんですか?」と身体に比して小さすぎる声を鮟鱇さんにかけてくる。この方、仲野水産の鳥飼さんである。鳥飼さんは今回の参加者であるとともに、助っ人案内役でもある。ここでいろいろ打合せ。そのうち参加者がぽつりぽつりと集まってくる。時刻は7時半を過ぎて簡単な説明の後、場内に入る。全員揃っていないのであるが築地場内を見て回る限り、時間は貴重である。待っているわけにはいかない。遅刻した方には申し訳ない。(注/次回からボクのケータイ番号を返信メールに明記することにする)
 場内は表側の二筋を省略して3筋目から歩く。総勢10人あまり(これはちょっと多すぎた。反省)で2組に分かれて、仲卸の店にあるものを点々と説明しながら、見ていく。後々、買い物のアドバイスをしたり、また参加者がついてきているか、と振り返りながらの場内歩きがいかに大変であるかは帰宅してから思い知ることとなる。

 さて、本日の場内歩きの目玉になるのはこの季節には比較的珍しい「鬼えび(イバラモエビ)」、オオミゾガイ、めじまぐろ(クロマグロの子供)、イサキ、カツオ、イワガキ、ウニであることは下見でわかっていた。
 そのイワガキを最初から探していたのがMコンデンスさん(これはボクのつけた仮名、以後MC)、ありとあらゆる魚貝類の旺盛な興味をぶつけてくる、Mレギュラーさん(これも仮名です。以後MR)。この二人の女性陣が今回の買い物ツアーをどんどん引っ張って行くことになる。また冷静で観察力大、のHさん、穏やかなSさん、明らかに研究者を思わせるWさん、何を欲しているのがつかめないKさんなど、なかなかメンバーは多彩である。(男性の方、総てお名前・個性を覚えられなかった。しかも、ぼうずコンニャクは人類自体の名を覚える能力を欠いているので、女性も含めて自分流の符号にしていしまうクセがあることをお断りしておく)
 さて一筋目から、参加者の方達は築地場内の多彩な魚貝類に目を奪われてしまったようである。たぶん初めて場内にはいると、目に飛び込んでくる魚貝類は凄まじく膨大で、「わけのわからん状況に陥る」のではないか、MRさんなど料理のプロであるだけに初っぱなから「めくるめく」事態となっているのがはっきり見て取れる。エビやクジラの『登美粋』で11000円のぼたんえび(トヤマエビ)などを見て、パック詰めのマグロなどの説明をしていく。この途中で千葉の海人つづきさんが加わる。つづきさんは明らかに助っ人なので、この意外な飛び入り参加はありがたい。

 ここでなぜ土曜日に築地場内を歩くかの説明をする。築地場内に買い出しに来るプロたちの多くが飲食店である。スーパーや大型店舗のバイヤーも仲卸の顧客だが、仕入れのためにいちいち場内を歩くことはない。その飲食店のほとんどが日曜日が定休日なのである。とすると土曜日に仕入れる可能性は少ないというわけだ。だからいちばん商品が多く並んで本来混み合うこの時間帯も人影まばらで歩きやすいし、普段はプロ相手の仲卸もこの日だけは一般客に比較的優しく接してくれる。
 ついでに土曜日以外では不定休の水曜日が狙い目となる。卸売市場は日曜日と、月に2,3回だけ水曜日が休み。どうして水曜日を休みとしたかというと、中日水曜日はもっともお客の少ない日なのだ。
 だから開市の水曜日、土曜日が一般客の築地お買い物日和となる。

 今回の市場巡りでは何カ所かの仲卸を拠点とすることにしてあった。それが『大音』さん、『翔友』さん、『近長』さん。驚いたことに、こんな目玉の店を作らなくても、ダブルMさん達はどんどん積極的に買い込んでいく。意外に冷静そうなHさん、Wさん、Sさんも同様で今回の場内歩きは初めて上京してきた中学生が原宿竹下通りを歩くようにノロノロと進まない。
 この団体がいちばん興奮したのが『翔友』でのマグロ半身買い。ここに大船渡産の本まぐろ(クロマグロ)のめじ(マグロの幼魚を差す言葉)の半身があって、これがなかなかいいのである。これを会のメンバー8人でまとめ買いし、お店の人にお願いして解体してもらう。言うなれば即席の解体ショー。ここで大活躍したのがMRさんである。

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 いつの間にか中落ちをかき取っているではないか。この人、料理研究家だけあってその小気味いいこと、さすがである。この支払はHさんにお任せする。今回この「人数の多いことをいかしてまとめ買いする」「とりあえず、代表者が支払、後で伝票を見て割り算で精算する」というのが場内ではとても便利なのを知ることとなる。
 そして後一筋を残して時刻は9時近くとなっている。ここで剥きタイラギが欲しいというSさんのリクエストに鳥飼さんが行きつけの店に案内してくれる。そこから場内には少ない乾物を扱う『近長』へ。
 ここ『近長』で買い求めるのは当然、名物の桜海老など12品目入った「梅ちりめん」である。これを味見するや、ほとんど全員が「買いたい」と手を上げる。

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 そう言えば、今回の築地買い物案内では「買いたい人手を上げて」というのがいいものを見つけたときの恒例となった。ボクもここでちりめんを買い、鮟鱇さんは名品だというサラミソーセージを、また上等の日高昆布を買った人もいた。『近長』には看板おじいちゃんがいなくて残念であったが、ご主人、美人の奥さんが親切に対応してくれた。『近長』さんお騒がせしました。

 結局場内を出たのが9時半近くとなっていた。今回の反省点はやはり少し人数が多すぎたこと、また予め、欲しいものをもっと詳しく聞いておかなかったことである。「ああすればよかった。こうすればよかった」と後悔の多い土曜会となったが、皆さん楽しんで頂けただろうか? また今回参加出来なかった、または遅刻された方は次回をお待ち下さい。それと多摩地区にお住まいの方はもっと頻繁に八王子市場案内を致します。申し込みは随時、メールにて。


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このページは、管理人が2007年6月 3日 11:23に書いたブログ記事です。

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