毎年梅雨も明けたかな、と思う頃に三河湾や大阪湾などから小振りのイワシが到来する。この時期だと大羽イワシも入荷してくるのだが、ボクの眼はそんな見かけ倒しは無視、小羽イワシに釘付けになる。そして念のためにひとつ、ふたつ手に持って確信する。「やっとコイツがきた」んだな、と。
夏の小羽はそれこそカツオ、サンマをあざ笑うがごとく、ましてや貴族顔のマダイなど闘わずして敗退するほどにうまいのである。
嘘と思うなら大羽と小羽をともに買い求めて、手びらきにし、皮を剥いて目の前に並べてみて欲しい。かたや体表近くに分厚く鑞を浮かせたように白く、かたやその鑞の層が薄いことを。それではどっちが分厚い脂の層を蓄えているのかというと、小羽の方なのだ。
小羽イワシは片身半分でちょうど刺身一切れとなる。晩酌のアテにするなら2本もあれば充分。薬味はショウガだけでよろしいな。ネギや青じそは邪魔とはなっても、小羽イワシを味わうにプラスにはならない。
そして合わせる日本酒だが辛口、甘口を選ばない。むしろ単味、単純な味わいの酒がいい。ここ数日、香川の「川鶴」をやっているのだが、この辛口も小羽に合う。
外は雷鳴ひびき、土砂降りの雨である。ラジオでは湿度93パーセント、気温20度だという。こんな荒天の深夜に小羽イワシの刺身を口に放り込む、と噛む前に舌の上でとろけていく。そこに辛口の酒を流し込み、まことに小羽イワシはうまいなと痛感する。
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料理の途中でなんでも放り込む。我が家風煮つけ