マルソウダガツオを生で食べるというのにはちょっと抵抗がある。これは伊豆半島で海釣りをしたおりに、まったく獲物がなく(これを釣り用語で「ぼうず」という、20年以上前につけたボクのペンネーム「ぼうずコンニャク」にはこんな意味もある)、帰途、網代の魚屋で買い求めたのがマルソウダだ。どうしてこんな雑魚的な魚を買ったのかというと昼過ぎの魚にあったのがマルソウダとマアジだけだった。これは防波堤釣りには格好の荒天が漁船の出漁を阻んだためだろう。ちなみにこんな好条件でねらったメジナがゼロというのはいかにボクがヘボであったかが、わかる人にはかわるだろうね。
そのとき魚屋で言われたことが
「マルソウダは生で食べたら当たる。毒があるだからね」
ということで若い身空で、その夜はマルソウダの煮つけと唐揚げ、近所のスーパーで買ったお総菜で酒を飲んだんだった。
その後、伊豆半島ではなんどもマルソウダは「当たるよ」という話を聞いた。
これをマルソウダがたっぷりとれる鹿児島の若潮君に聞くと、南さつま市笠沙ではマルソウダ自体をあまり食べない。また鹿児島では小さなマルソウダは生でも食べるが大きいものはやっぱり食べないのだという。
じゃあ、マルソウダはまずいかというと晩秋から冬にかけてのものはビックリするほどうまい。ボクはヒスタミンに強いのか生で食べても当たったことがない。でも万人向きじゃないだろうな。
神奈川県の雑魚を仕入れてきて、なかなか面白い店頭にしている「やまぎし」でやや小振りのマルソウダを見つけて俄然万人向きのうまい料理を作ってみることにする。それが「たたき」と「なまり節」である。
『やまぎし』で買ったのはまだ秋なのに脂がのっている。
まずは美味なる「たたき」を作る。
背の前の部分のウロコをすき引きし、三枚に卸したものから血合い部分を取り去る。ボクはこの血合いが当たる原因ではないかと不得要領に考えている。
これを金ぐしに刺して強火で炙り、みりんと醤油(みりんより多め)、ニンニクで風味漬けしたタレをかけ回す。脇には名残の茗荷、生姜。
マルソウダの身には本当に濃厚なまでの旨味がある。これを強火で思いっきり引き出したわけだからまずいわけがない。というか旨すぎるのである。
マルソウダの旬は黄昏の10月から初冬まで。この官能的な美味をお試しくだされ。
●マルソウダを生で食べることに関しては自己責任で!
若潮君のお魚三昧生活
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/komendago
八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マルソウダへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/saba/marusouda.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/