クマゴロウが老眼の目で切っているのはびんはらも

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 八王子綜合卸売協同組合『マル幸水産』のクマゴロウが、老眼ながらもなにかをせっせと切ってパック詰めしている。
「クマゴロウ、何切っているの?」
「びんちょうの腹も。見りゃわかるだろ」
 この言い方が気にくわない。いかにも忙しいから「あっちへ行け」とでも言わんばかりだ。こういう態度は嫌いだな。ちょっと嫌がらせに「一本売ってくれよ」と攻撃する。市場では、このパック詰めの慌ただしいとき邪魔されるのがいちばん困るのだ。しかも切り身にして儲けようと企てているのに、煩わしいだろうな? と思っていると、案の定。
「だーめ、欲しかったら一袋買えよ。5キロ入りだけどな。ハハハ」
「そう言う意地悪を言うからクマゴロウは嫌われるんだろ」
 さんざん粘ったら、一本よこした。これ「税金負けろ」といったらぴったり200円なり。

 話は大幅にそれるが、スズキ目サバ亜目サバ科マグロ属というのは市場では花形なのだ。特にクロマグロなんて、昔でいうところの美空ひばり(ボクは大嫌い)とか今で言うとSMAP(未だにこのグループが認識できない)のごとくだろうか? またまた古い表現ではあるがその他にもドル箱スターは数知れず。そのマグロ類が標準和名で呼ばれることが皆無だというのもテレビスターと似ていないだろうか? 例えばクロマグロは「本鮪(ほんま)」、メバチマグロは「ばち」、ミナミマグロは「いんど」、コシナガマグロは「ばけ」、ビンナガマグロが「びんちょう」。唯一、キハダマグロだけが「きはだ」で例外である。

 閑話休題。
 この200円の腹もは回転寿司などで「ビントロ」と呼ばれる、キハダマグロのいちばん脂ののった時期の副産物。ひとつで200グラム以上あり、煮ても焼いてもうまい。だから市場で見つけるとつい買ってしまうのだ。
 市場から持ち帰ると、とにかく塩コショウしてムニエルとオリーブオイル焼きにする。日々慌ただしく、面倒な料理を作るわけにはいかないので、とにかく簡単に。

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ムニエル

 ムニエルは粉をつけて高温で素早く表面を焦がす。こうすると表面はカリっと中は脂がのっているので柔らかい。思わず昼間からビールが欲しくなる。そして仕事から帰り、深夜に焼いたオリーブオイルでマリネー、これも予想外に美味。オーブンレンジのグリルで焼き上げて、海老名の海老さんにもらった柚を振りかけて食べたら初めての味わいで新鮮だった。

 八王子綜合卸売協同組合『マル幸水産』では「びんちょうの腹も」をかなり仕入れているのではないか? とすると今日もクマゴロウが老眼の目でせっせと切り身にしている可能性大。今日は3本くらいせしめてやるのだ。
●八王子綜合卸売協同組合『マル幸水産』は“わかる人”にはすごい店である。しかも一般客にも優しい。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、ビンナガマグロへ
http://www.zukan-bouz.com/saba/maguro/binchou.html
八王子の市場に関しては
http://www.zukan-bouz.com/zkan/sagasu/toukyou/hatiouji/hatiouji.html


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コメント(2)

私の行く店の人はクロマグロを「ほんま」ではなく「まぐろ」と呼んでいます。別格扱いですね。

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鮟鱇さん、それはマグロ屋の典型です。たくさんのマグロ屋と話をするとわかることですが、そんな人類が多いのです。是非は問いませんが。でも市場歩きしていて、いちばん困るのはこの手の人たちです。面白いんですけどね。この方達のことは一歩引いて観察しましょう。

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このページは、管理人が2007年10月 4日 08:43に書いたブログ記事です。

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